ハローサマー、グッドバイ(16) デグレード 「なんだ?」胡桃沢さんが睨んだ。「何かのメソッドが未実装になっていますが」「何だと」胡桃沢さんはぼくを押しのけるようにモニタを覗き込んだ。「おい、これは何のファイルだ」ぼくが横から手を伸ばして、該当メ... 2015/06/08 Comment(12) ハローサマー、グッドバイ(15) Hello, World! プログラマなら誰でも一度は、Hello,World!を書いたことがあるだろう。実行すると、画面にHello,World!と表示して終了するあれだ。なぜHello,World!なのかは知らないが、考えて... 2015/06/01 Comment(17) ハローサマー、グッドバイ(14) 頼むから静かにしてくれ エアコンの効いた指揮車両内に戻ると、さすがにほっとした。温度だけの問題ではなく、Zの大群という物理的な危機から逃れたという安堵感だ。もっともブラウンアイズたちバンド隊員たちが、外で危険にさらされている... 2015/05/25 Comment(6) ハローサマー、グッドバイ(13) 私とワルツを ドアが開くと圧倒的な陽光と熱気が襲いかかってきた。ほとんど殺人的な熱量だ。思わず後ずさりしたが、外にブラウンアイズが立っているのが目に入った。こちらに手を差し伸べている。考えるより先に手が伸びた。指先... 2015/05/18 Comment(3) ハローサマー、グッドバイ(12) デバッグ・フォー・ビギナーズ 他人が書いたソースは読めない、と思い込んでいるエンジニアが大勢いる。もちろんこれは正しくない。他人が書いたソースが読めないとしたら、書く方が正しく書く努力を怠っているか、読む方が読もうとする努力を怠っ... 2015/05/11 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(11) 探知不能 綱島街道は多摩川にかかる丸子橋を渡った交差点から始まり、今は動いていない東急東横線に沿うように横浜方面に伸び、第二京浜にぶつかるまで続く幹線道路だ。ソラニュウム・ウィルスが世界を一変させる前、バスや自... 2015/04/27 Comment(12) ハローサマー、グッドバイ(10) Knockin' on Hell's Door 「エンジン停止」ドライバーズシートの後ろに立っていた臼井大尉が命じた。「ここからはモーターだな。サンキスト、バッテリーと通信チェック。予備も含めてな」「バッテリーは全て99.1から99.7%の範囲内で... 2015/04/20 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(9) 出発 7月30日午前9:00ちょうど。オペレーションMMは定刻通りに開始された。今朝、目覚ましの音楽とともにドアがノックされ同時に開いた。寝ぼけ眼で応じたぼくを迎えたのは、医療技術者の仁志田さんだった。「お... 2015/04/13 Comment(6) ハローサマー、グッドバイ(8) 火器管制APIの必然性 格納庫を出ると強烈な陽射しが襲いかかってきた。思わず涼しい格納庫に逆戻りしたくなるような熱気と湿気だったが、ブラウンアイズは少しも気にする様子もなく早足で歩いていく。ぼくは可能な限り日陰を選び、殺人的... 2015/04/06 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(7) BIAC ブラウンアイズが向かった先には、床にブルーシートが敷かれていて、その上に各種装備品が無造作に転がっていた。何人かの隊員がそれを物色していたが、ぼくとブラウンアイズに気付くと、中の1人が、からかうような... 2015/03/30 Comment(5) ハローサマー、グッドバイ(6) やがて明ける夜 「いや、しかし疲れたね」島崎さんはうちわで顔を扇ぎながらつぶやいた。「普段、使わない筋肉をたっぷり使った」「こういうことだと言っておいてくれていたら」ぼくは落ちていたダンボールの切れ端をうちわ代わりに... 2015/03/23 Comment(6) ハローサマー、グッドバイ(5) 説明にならない説明 ボリスによる概要説明が終わった後、谷少尉が、ぼくを部屋に案内してくれた。「明朝は7時にモーニングコールが入ります」谷少尉はぼくに告げた。「それまで、このドアは中からは開かなくなります。シャワールームや... 2015/03/16 Comment(9) ハローサマー、グッドバイ(4) 戦闘証明済 肝心なことを聞き忘れていた、と気付いたのは、先ほどの会議室に戻り、島崎さんと合流したときのことだった。谷少尉が言った通り、他のエンジニアはすでにいなくなっていた。「きっと鳴海さんが残る、と思ってたよ」... 2015/03/09 Comment(9) ハローサマー、グッドバイ(3) アイズワイドシャット JSPKFの隊員が、バンド隊員と呼ばれる理由は、その前身であるICZF――統合対Z軍――に遡る。Z戦争4年目の10月、ベルリンを奪回するためにドイツで行われた2週間にわたる大激戦の後、EUのネットメデ... 2015/03/02 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(2) 選別基準 階段を上った先は、短い廊下になっていた。廊下の照明は全部点いているし、温度は控えめだがエアコンも効いている。うらやましい。さすが、独自の財源を持つ内閣直轄の治安維持組織だ。廊下の両側にはドアが4つ。一... 2015/02/23 Comment(10) ハローサマー、グッドバイ(1) ネコの手 「お名前と会社名をどうぞ」ぼくの目をまっすぐ見つめながら、静かに言ったのはJSPKF第18特殊作戦群第1分隊長、谷少尉だった。右目の上に大きな傷跡が残っているその精悍な顔には、これまでくぐり抜けてきた... 2015/02/16 Comment(17) 賢者の贈り物 (後) 一足先にミスタードーナッツに着いて、奥の席を確保した。店内は混んでいたが、テイクアウトの客の方が多く、イートインコーナーは空席が目立っている。マサルは10分ほど遅れて到着すると、少し息を切らしながら店... 2014/12/25 Comment(19) 賢者の贈り物 (前) 「で、相談って?」私は喧噪の中、目の前に座っているクミに訊いた。横浜駅西口近くにある魚寅本店は、年末、金曜日、20時過ぎという条件が揃っているために満席だ。女子の2人組というのは私たちぐらいで、他のテ... 2014/12/24 Comment(7) 罪と罰(終) 歩み去る人々 また冬と呼ばれる季節が巡ってきた。12月も半ばを過ぎ、街があわただしくなっていく。毎年、ビルの空調が暖房に切り替わる頃になると、週に1度ぐらいの割合で、カスミさんが手作りのお菓子を持ってきてくれていた... 2014/06/16 Comment(97) 罪と罰(48) ツーマンセル カスミさんの退職が公になると、社内、特にWebシステム開発部には少なからぬ動揺が走った。ただし心の底から驚愕した、という人はおそらく1人もいなかったのではないだろうか。誰もがカスミさんの行き場を心配し... 2014/06/09 Comment(64) 前のページへ 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 次のページへ
ハローサマー、グッドバイ(16) デグレード 「なんだ?」胡桃沢さんが睨んだ。「何かのメソッドが未実装になっていますが」「何だと」胡桃沢さんはぼくを押しのけるようにモニタを覗き込んだ。「おい、これは何のファイルだ」ぼくが横から手を伸ばして、該当メ... 2015/06/08 Comment(12)
ハローサマー、グッドバイ(15) Hello, World! プログラマなら誰でも一度は、Hello,World!を書いたことがあるだろう。実行すると、画面にHello,World!と表示して終了するあれだ。なぜHello,World!なのかは知らないが、考えて... 2015/06/01 Comment(17)
ハローサマー、グッドバイ(14) 頼むから静かにしてくれ エアコンの効いた指揮車両内に戻ると、さすがにほっとした。温度だけの問題ではなく、Zの大群という物理的な危機から逃れたという安堵感だ。もっともブラウンアイズたちバンド隊員たちが、外で危険にさらされている... 2015/05/25 Comment(6)
ハローサマー、グッドバイ(13) 私とワルツを ドアが開くと圧倒的な陽光と熱気が襲いかかってきた。ほとんど殺人的な熱量だ。思わず後ずさりしたが、外にブラウンアイズが立っているのが目に入った。こちらに手を差し伸べている。考えるより先に手が伸びた。指先... 2015/05/18 Comment(3)
ハローサマー、グッドバイ(12) デバッグ・フォー・ビギナーズ 他人が書いたソースは読めない、と思い込んでいるエンジニアが大勢いる。もちろんこれは正しくない。他人が書いたソースが読めないとしたら、書く方が正しく書く努力を怠っているか、読む方が読もうとする努力を怠っ... 2015/05/11 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(11) 探知不能 綱島街道は多摩川にかかる丸子橋を渡った交差点から始まり、今は動いていない東急東横線に沿うように横浜方面に伸び、第二京浜にぶつかるまで続く幹線道路だ。ソラニュウム・ウィルスが世界を一変させる前、バスや自... 2015/04/27 Comment(12)
ハローサマー、グッドバイ(10) Knockin' on Hell's Door 「エンジン停止」ドライバーズシートの後ろに立っていた臼井大尉が命じた。「ここからはモーターだな。サンキスト、バッテリーと通信チェック。予備も含めてな」「バッテリーは全て99.1から99.7%の範囲内で... 2015/04/20 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(9) 出発 7月30日午前9:00ちょうど。オペレーションMMは定刻通りに開始された。今朝、目覚ましの音楽とともにドアがノックされ同時に開いた。寝ぼけ眼で応じたぼくを迎えたのは、医療技術者の仁志田さんだった。「お... 2015/04/13 Comment(6)
ハローサマー、グッドバイ(8) 火器管制APIの必然性 格納庫を出ると強烈な陽射しが襲いかかってきた。思わず涼しい格納庫に逆戻りしたくなるような熱気と湿気だったが、ブラウンアイズは少しも気にする様子もなく早足で歩いていく。ぼくは可能な限り日陰を選び、殺人的... 2015/04/06 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(7) BIAC ブラウンアイズが向かった先には、床にブルーシートが敷かれていて、その上に各種装備品が無造作に転がっていた。何人かの隊員がそれを物色していたが、ぼくとブラウンアイズに気付くと、中の1人が、からかうような... 2015/03/30 Comment(5)
ハローサマー、グッドバイ(6) やがて明ける夜 「いや、しかし疲れたね」島崎さんはうちわで顔を扇ぎながらつぶやいた。「普段、使わない筋肉をたっぷり使った」「こういうことだと言っておいてくれていたら」ぼくは落ちていたダンボールの切れ端をうちわ代わりに... 2015/03/23 Comment(6)
ハローサマー、グッドバイ(5) 説明にならない説明 ボリスによる概要説明が終わった後、谷少尉が、ぼくを部屋に案内してくれた。「明朝は7時にモーニングコールが入ります」谷少尉はぼくに告げた。「それまで、このドアは中からは開かなくなります。シャワールームや... 2015/03/16 Comment(9)
ハローサマー、グッドバイ(4) 戦闘証明済 肝心なことを聞き忘れていた、と気付いたのは、先ほどの会議室に戻り、島崎さんと合流したときのことだった。谷少尉が言った通り、他のエンジニアはすでにいなくなっていた。「きっと鳴海さんが残る、と思ってたよ」... 2015/03/09 Comment(9)
ハローサマー、グッドバイ(3) アイズワイドシャット JSPKFの隊員が、バンド隊員と呼ばれる理由は、その前身であるICZF――統合対Z軍――に遡る。Z戦争4年目の10月、ベルリンを奪回するためにドイツで行われた2週間にわたる大激戦の後、EUのネットメデ... 2015/03/02 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(2) 選別基準 階段を上った先は、短い廊下になっていた。廊下の照明は全部点いているし、温度は控えめだがエアコンも効いている。うらやましい。さすが、独自の財源を持つ内閣直轄の治安維持組織だ。廊下の両側にはドアが4つ。一... 2015/02/23 Comment(10)
ハローサマー、グッドバイ(1) ネコの手 「お名前と会社名をどうぞ」ぼくの目をまっすぐ見つめながら、静かに言ったのはJSPKF第18特殊作戦群第1分隊長、谷少尉だった。右目の上に大きな傷跡が残っているその精悍な顔には、これまでくぐり抜けてきた... 2015/02/16 Comment(17)
賢者の贈り物 (後) 一足先にミスタードーナッツに着いて、奥の席を確保した。店内は混んでいたが、テイクアウトの客の方が多く、イートインコーナーは空席が目立っている。マサルは10分ほど遅れて到着すると、少し息を切らしながら店... 2014/12/25 Comment(19)
賢者の贈り物 (前) 「で、相談って?」私は喧噪の中、目の前に座っているクミに訊いた。横浜駅西口近くにある魚寅本店は、年末、金曜日、20時過ぎという条件が揃っているために満席だ。女子の2人組というのは私たちぐらいで、他のテ... 2014/12/24 Comment(7)
罪と罰(終) 歩み去る人々 また冬と呼ばれる季節が巡ってきた。12月も半ばを過ぎ、街があわただしくなっていく。毎年、ビルの空調が暖房に切り替わる頃になると、週に1度ぐらいの割合で、カスミさんが手作りのお菓子を持ってきてくれていた... 2014/06/16 Comment(97)
罪と罰(48) ツーマンセル カスミさんの退職が公になると、社内、特にWebシステム開発部には少なからぬ動揺が走った。ただし心の底から驚愕した、という人はおそらく1人もいなかったのではないだろうか。誰もがカスミさんの行き場を心配し... 2014/06/09 Comment(64)