大竹ツカサのナラティヴ (9) 2009年2月。棚橋のドロップアウトによって、オンスケだった生産管理システム二次開発には大きなブレーキがかかることとなった。主な原因の一つは棚橋が抜けた穴が予想外に大きかったことだ。マーズネットが担当... 2021/04/05 Comment(0) 大竹ツカサのナラティヴ (8) 2009年2月14日。生産管理システムの二次開発は、ボリュームに対する開発期間が比較的短期ということもあり、そのスケジュールは、3月31日のカットオーバーの日まで、1日の余裕もなく詰め込まれていた。土... 2021/03/29 Comment(44) 大竹ツカサのナラティヴ (7) 2009年2月。「えー、まだできてないんですか」岩名ユウコの苛立たしげな声が、大竹の耳まで届いた。岩名が詰め寄っている相手は棚橋だった。「ああ、すまん」棚橋は頭をかきながら謝った。「思ったよりピッキン... 2021/03/22 Comment(22) 大竹ツカサのナラティヴ (6) 2008年12月。痩せた、というよりやつれた印象の棚橋が浮かべた弱々しい笑顔に、大竹は胸を衝かれた。「ご迷惑をおかけしました」棚橋は頭を下げた。「またよろしくお願いします」体調は......と訊きかけ... 2021/03/15 Comment(16) 大竹ツカサのナラティヴ (5) 2008年8月。「これストアドで書き直してください」諸見は平板な声で言った。「パフォーマンスが重要ですから」「え」岩名ユウコは驚いて訊き返した。「あの、このメソッド、全部ですか?」「そう言いませんでし... 2021/03/08 Comment(22) 大竹ツカサのナラティヴ (4) 2008年4月1日。サガラ電装生産管理システム導入プロジェクトはスケジュール通りにカットオーバーし、本番稼働の日を迎えた。ゴールデンウィーク明けまでは旧環境と並行稼働だが、マーズネットの契約は3月末日... 2021/03/01 Comment(27) 大竹ツカサのナラティヴ (3) 「残念な連絡をしなければならん」2日後、大竹は自社のメンバーに向かって重い声で告げた。「諸見が、一身上の都合で、来年1月末に退職することになった」ざわめきがメンバーの間に広がる中、棚橋が驚きで目を大き... 2021/02/22 Comment(15) 大竹ツカサのナラティヴ (2) 2007年12月。大竹の再三の注意と、メンバーからの度重なる非難にもかかわらず、諸見は相変わらずサガラ電装からの雑用を引き受け続けていた。大竹が懸念したとおり、諸見の負荷は膨れあがり、12月に入る頃に... 2021/02/15 Comment(17) 大竹ツカサのナラティヴ (1) 2007年10月17日。午前8時過ぎ、マーズネット株式会社ソリューション開発部の大竹は、株式会社サガラ電装のシステム部に入った。サガラ電装の社員は誰も出社していなかったが、「外注さん島」と呼ばれる一角... 2021/02/08 Comment(17) イノウーの憂鬱 (37) キーマン 結婚を考えるどころか、相手すらいないのに、住宅ローンの話などされても実感が沸くはずもないし、まだこの世に存在してもいない子供のことで、エゴイスト呼ばわりされる筋合いはない。少しムッとしたが、大竹専務の... 2021/02/01 Comment(18) イノウーの憂鬱 (36) エゴイスト 以前、マギ情報システム開発が出してきた工数見積は、管理工数を含めて194.7人日だった。今回、サードアイから届いていた工数は60人日、一人月20人日換算で3人月と半分以下だ。夏目課長から、あらかじめ上... 2021/01/25 Comment(44) イノウーの憂鬱 (35) サードアイ来社 おみくじの吉凶の種類が決定したのは、1月4日の19時過ぎだった。一時は殴り合い寸前までいった(斉木室長談)議論の末、「大吉、吉、中吉、小吉」の4種類と決まった。順序は比較的早めに合意に達したが、最後ま... 2021/01/18 Comment(14) イノウーの憂鬱 (34) おみくじ 本来なら新たな抱負と希望で満ちあふれるはずの新年は、あいにくと明るいニュースに欠けていた。言うまでもなく、一向に感染拡大が収束しようともしない新型コロナウィルスのせいだ。去年までは、大晦日から1月2日... 2021/01/12 Comment(10) イノウーの憂鬱 (33) サンタクロースからの手紙 ぼくたちは一斉にドアを見た。例外は眠りこけているエミリちゃんだけだ。誰もが身動きできずにいると、チャイムが続いた。今度は苛立ったように3連続だ。「よし」ぼくは意を決して立ち上がった。「出ないわけにはい... 2020/12/25 Comment(11) イノウーの憂鬱 (32) 訪問者 「イノウーさん」マリが深刻な表情と声で言い出した。「ちょっとばかり相談があるんすけど」「金ならないよ」「そんなことじゃないです」「紹介できる男もいない」「あたしが欲しいのはイノウーさんだけ......... 2020/12/23 Comment(5) イノウーの憂鬱 (31) 抽選会 少しだけ深く考えてみれば、きっとわかったはずだった。海外との往来が難しくなっているとはいえ、日本がロックダウンしているわけではない。観光目的での入国はほとんど不可能だろうが、ビジネス目的の入出国は14... 2020/12/21 Comment(6) イノウーの憂鬱 (30) ミカン狩り エースシステムとの事業統合にともない、マーズ・エージェンシーではいくつかの社内規定や制度が変更になった。その一つが健康保険組合だ。それまでの情報サービス産業健康保険組合から、エースグループが運営するエ... 2020/12/14 Comment(20) イノウーの憂鬱 (29) 開発プロセス管理 会議室の中を天使が通り過ぎていく。ぼくは天使を数えるとき、どんな単位を使うのか、などと埒もない考えをもてあそびながら、夏目課長の決断を待っていた。夏目課長の葛藤が、物理的な質量を持った波のように伝わっ... 2020/12/07 Comment(37) イノウーの憂鬱 (28) 特権ID 10月1日からシステム開発室の新しい管理者となった夏目課長は、初日から早速いくつかの改革を断行した。まず、週に2日の出社しての定例ミーティングは、毎週水曜日の午後のリモート会議へ変更された。そのため課... 2020/11/30 Comment(24) イノウーの憂鬱 (27) 引き際 9月30日までの間、伊牟田課長はシステム開発室のメンバー全員に様々な雑務を命じた。全社員の検温データのグラフ化、テレワークにおける勤務時間の増減グラフ、rivendellの全ソースのステップ数一覧など... 2020/11/24 Comment(21) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 次のページへ
大竹ツカサのナラティヴ (9) 2009年2月。棚橋のドロップアウトによって、オンスケだった生産管理システム二次開発には大きなブレーキがかかることとなった。主な原因の一つは棚橋が抜けた穴が予想外に大きかったことだ。マーズネットが担当... 2021/04/05 Comment(0)
大竹ツカサのナラティヴ (8) 2009年2月14日。生産管理システムの二次開発は、ボリュームに対する開発期間が比較的短期ということもあり、そのスケジュールは、3月31日のカットオーバーの日まで、1日の余裕もなく詰め込まれていた。土... 2021/03/29 Comment(44)
大竹ツカサのナラティヴ (7) 2009年2月。「えー、まだできてないんですか」岩名ユウコの苛立たしげな声が、大竹の耳まで届いた。岩名が詰め寄っている相手は棚橋だった。「ああ、すまん」棚橋は頭をかきながら謝った。「思ったよりピッキン... 2021/03/22 Comment(22)
大竹ツカサのナラティヴ (6) 2008年12月。痩せた、というよりやつれた印象の棚橋が浮かべた弱々しい笑顔に、大竹は胸を衝かれた。「ご迷惑をおかけしました」棚橋は頭を下げた。「またよろしくお願いします」体調は......と訊きかけ... 2021/03/15 Comment(16)
大竹ツカサのナラティヴ (5) 2008年8月。「これストアドで書き直してください」諸見は平板な声で言った。「パフォーマンスが重要ですから」「え」岩名ユウコは驚いて訊き返した。「あの、このメソッド、全部ですか?」「そう言いませんでし... 2021/03/08 Comment(22)
大竹ツカサのナラティヴ (4) 2008年4月1日。サガラ電装生産管理システム導入プロジェクトはスケジュール通りにカットオーバーし、本番稼働の日を迎えた。ゴールデンウィーク明けまでは旧環境と並行稼働だが、マーズネットの契約は3月末日... 2021/03/01 Comment(27)
大竹ツカサのナラティヴ (3) 「残念な連絡をしなければならん」2日後、大竹は自社のメンバーに向かって重い声で告げた。「諸見が、一身上の都合で、来年1月末に退職することになった」ざわめきがメンバーの間に広がる中、棚橋が驚きで目を大き... 2021/02/22 Comment(15)
大竹ツカサのナラティヴ (2) 2007年12月。大竹の再三の注意と、メンバーからの度重なる非難にもかかわらず、諸見は相変わらずサガラ電装からの雑用を引き受け続けていた。大竹が懸念したとおり、諸見の負荷は膨れあがり、12月に入る頃に... 2021/02/15 Comment(17)
大竹ツカサのナラティヴ (1) 2007年10月17日。午前8時過ぎ、マーズネット株式会社ソリューション開発部の大竹は、株式会社サガラ電装のシステム部に入った。サガラ電装の社員は誰も出社していなかったが、「外注さん島」と呼ばれる一角... 2021/02/08 Comment(17)
イノウーの憂鬱 (37) キーマン 結婚を考えるどころか、相手すらいないのに、住宅ローンの話などされても実感が沸くはずもないし、まだこの世に存在してもいない子供のことで、エゴイスト呼ばわりされる筋合いはない。少しムッとしたが、大竹専務の... 2021/02/01 Comment(18)
イノウーの憂鬱 (36) エゴイスト 以前、マギ情報システム開発が出してきた工数見積は、管理工数を含めて194.7人日だった。今回、サードアイから届いていた工数は60人日、一人月20人日換算で3人月と半分以下だ。夏目課長から、あらかじめ上... 2021/01/25 Comment(44)
イノウーの憂鬱 (35) サードアイ来社 おみくじの吉凶の種類が決定したのは、1月4日の19時過ぎだった。一時は殴り合い寸前までいった(斉木室長談)議論の末、「大吉、吉、中吉、小吉」の4種類と決まった。順序は比較的早めに合意に達したが、最後ま... 2021/01/18 Comment(14)
イノウーの憂鬱 (34) おみくじ 本来なら新たな抱負と希望で満ちあふれるはずの新年は、あいにくと明るいニュースに欠けていた。言うまでもなく、一向に感染拡大が収束しようともしない新型コロナウィルスのせいだ。去年までは、大晦日から1月2日... 2021/01/12 Comment(10)
イノウーの憂鬱 (33) サンタクロースからの手紙 ぼくたちは一斉にドアを見た。例外は眠りこけているエミリちゃんだけだ。誰もが身動きできずにいると、チャイムが続いた。今度は苛立ったように3連続だ。「よし」ぼくは意を決して立ち上がった。「出ないわけにはい... 2020/12/25 Comment(11)
イノウーの憂鬱 (32) 訪問者 「イノウーさん」マリが深刻な表情と声で言い出した。「ちょっとばかり相談があるんすけど」「金ならないよ」「そんなことじゃないです」「紹介できる男もいない」「あたしが欲しいのはイノウーさんだけ......... 2020/12/23 Comment(5)
イノウーの憂鬱 (31) 抽選会 少しだけ深く考えてみれば、きっとわかったはずだった。海外との往来が難しくなっているとはいえ、日本がロックダウンしているわけではない。観光目的での入国はほとんど不可能だろうが、ビジネス目的の入出国は14... 2020/12/21 Comment(6)
イノウーの憂鬱 (30) ミカン狩り エースシステムとの事業統合にともない、マーズ・エージェンシーではいくつかの社内規定や制度が変更になった。その一つが健康保険組合だ。それまでの情報サービス産業健康保険組合から、エースグループが運営するエ... 2020/12/14 Comment(20)
イノウーの憂鬱 (29) 開発プロセス管理 会議室の中を天使が通り過ぎていく。ぼくは天使を数えるとき、どんな単位を使うのか、などと埒もない考えをもてあそびながら、夏目課長の決断を待っていた。夏目課長の葛藤が、物理的な質量を持った波のように伝わっ... 2020/12/07 Comment(37)
イノウーの憂鬱 (28) 特権ID 10月1日からシステム開発室の新しい管理者となった夏目課長は、初日から早速いくつかの改革を断行した。まず、週に2日の出社しての定例ミーティングは、毎週水曜日の午後のリモート会議へ変更された。そのため課... 2020/11/30 Comment(24)
イノウーの憂鬱 (27) 引き際 9月30日までの間、伊牟田課長はシステム開発室のメンバー全員に様々な雑務を命じた。全社員の検温データのグラフ化、テレワークにおける勤務時間の増減グラフ、rivendellの全ソースのステップ数一覧など... 2020/11/24 Comment(21)