飛田ショウマの憂鬱 (4) 飛田がスターバックスに到着したのは、20:00の1分前だった。カナは入り口付近の席に座り、強張った顔でスマートフォンを見つめていたが、飛田の姿を目にすると小さく手を挙げて合図してきた。飛田は頷き、レジ... 2016/11/21 Comment(11) 飛田ショウマの憂鬱 (3) 秘密会談から一週間後、最初の問題が発生した。「どうして全滅なんだ」首藤課長は苛立ちを隠そうともしなかった。「そんなに条件が良くないかね」1日おきに行われることになったリーダー会議の席だった。首藤課長、... 2016/11/14 Comment(6) 飛田ショウマの憂鬱 (2) 以前に、誰かが首藤課長のことを「出世主義者で権威主義者、なおかつ原理主義者」と評していたのを耳にした飛田は、言い得て妙だ、と納得したものだった。出世主義については、周囲の評だけではなく、本人が公言して... 2016/11/07 Comment(6) 飛田ショウマの憂鬱 (1) 「おい、飛田」飛田ショウマは足を止め、首だけ振り向いた。同期の長谷部ケンタが小走りに近づいてくる。「来週から同じ課だな」「ああ」飛田は歩行を再開した。長谷部が並んで歩きながら語を継ぐ。「よろしく頼むぜ... 2016/10/31 Comment(11) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(終) 葉桜と薫風の季節が駆け足で過ぎ去り、自動販売機からホットドリンクがなくなった頃、その情報はもたらされた。『あいつら、今度はお隣の国でやらかしたみたいです』キサラギの連絡によれば、ソウル市ミョンドンにあ... 2016/05/09 Comment(6) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(7) ユカリは早足で通路を進んでいた。手には、館脇センター長の上着から拝借したIDカードが握られている。それが習慣なのか、IDカードの裏面には、木原SVのそれのように、テプラで出力した7桁の暗証番号が貼って... 2016/05/02 Comment(8) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(6) そのウワサを私が耳にしたのは、もう10年以上前になる。当時、今では死語となったWeb2.0という概念が流行っていて、雨後の筍のように各地で講習会やカンファレンスが開催されていた。そんな1つから招待状が... 2016/04/25 Comment(7) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(5) ボスからの連絡がない。ユカリはモニタを見つめながら、何時間も沈黙しているイヤピースに触れた。これまでは、軽く指で弾けば何かの応答があった。それが無機質な電子音1つだったとしても、見守ってくれていると知... 2016/04/18 Comment(7) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(4) キサラギからの連絡がない。私は不安な思いでSkypeのアイコンを見つめた。ナツメシステムの株主に関する調査を依頼したのは2週間前だ。私がそれほど急いでいない、と告げたのを真に受けたのか、最初の報告があ... 2016/04/11 Comment(10) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(3) ユカリが差し込んだUSBデバイスは、USBポートに挿入すると、2ミリメートルほどの厚みのプラスティック片が付いているようにしか見えなかった。元々が備品室だったせいか、モニタルームの照明は、人間が快適に... 2016/04/04 Comment(3) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(2) 横浜市西区に本社を置くダンデライオンコンタクトサービス株式会社、通称、DLコンタクトから、何人かの仲介人を通して私に連絡があったのは、2週間前のことだった。「私」というのは、本名の高村ミスズではなく、... 2016/03/28 Comment(6) 高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(1) 「本日の業務伝達事項は以上です」木原SVは事務的な笑みとともに告げた。「最後になりましたが、先週連絡した通り、本日よりオペレータが1名加わります。前園さんです。みなさん、仲良くしてあげてください。では... 2016/03/22 Comment(5) ひいらぎ飾ろう@クリスマス(後) クリスマスツリーと七面鳥、入手が困難なのは後者に決まっている。七面鳥の入手見込みが立ったという報告を受け、任務の9割方は完了だと安堵していた谷少尉は、すぐに別の問題に悩まされることになった。アンダーソ... 2015/12/25 Comment(9) ひいらぎ飾ろう@クリスマス(前) 「何が消えたって?」谷少尉は思わず訊き返した。「ツリーです、分隊長」サンキストは辛抱強く繰り返した。「中庭のクリスマスツリーが消失しました」ビーンこと谷少尉はこめかみを押さえた。午前3時過ぎまで様々な... 2015/12/24 Comment(8) ハローサマー、グッドバイ(終) 君の名は ぼくが港北基地から解放されたのは、8月も終わりに近づいた頃だった。その間、ひたすら事情聴取の日々が続いていた。最初の2日は下にも置かぬもてなしだった。生還した5人のバンド隊員たち――基地内で英雄のよう... 2015/12/22 Comment(60) ハローサマー、グッドバイ(43) 一握の砂 港北基地に帰還したぼくたちを迎えたのは、歓呼と花束ではなく、よくない知らせだった。地下トンネルを通って基地へ戻る途中、グラスソード中尉は港北基地と連絡を取り、臼井大尉と負傷者のために医療班の待機を要請... 2015/12/21 Comment(18) ハローサマー、グッドバイ(42) 後処理 目覚めるとブラウンアイズの瞳が目の前にある、という経験を、これまで2度した。意識が戻ったとき期待したのは3度目だったが、あいにく、ぼくの近くにいたのは仁志田さんだった。しかも、ぼくの方を見てさえいない... 2015/12/14 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(41) アンダーグラウンド EVヴァンから飛び出したブラウンアイズの動きは、豹のようにしなやかで、バレリーナのように優雅だった。一番近くにいた大柄なZの懐に入り込み、目にも留まらぬ払い腰で投げ飛ばすと、足を止めずに次の目標に突進... 2015/12/07 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(40) 黄泉の川が逆流する できれば正視したくない物は誰にでもある。家屋内に棲息する黒い害虫だという人もいれば、焼き魚の目玉という人もいるだろう。多くのプログラマにとっては「仕様変更」という言葉がそれだ。フライボーイ2から送られ... 2015/11/30 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(39) せめて人間らしく 羽沢駅(仮)は、JR東海道貨物線横浜羽沢駅と県道13号に挟まれたデルタ形状の地域に新駅として誕生するはずだったが、インシデントZで工事は中断し、未だに(仮)がついたままだ。周辺に目印になるような高いビ... 2015/11/24 Comment(12) 前のページへ 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 次のページへ
飛田ショウマの憂鬱 (4) 飛田がスターバックスに到着したのは、20:00の1分前だった。カナは入り口付近の席に座り、強張った顔でスマートフォンを見つめていたが、飛田の姿を目にすると小さく手を挙げて合図してきた。飛田は頷き、レジ... 2016/11/21 Comment(11)
飛田ショウマの憂鬱 (3) 秘密会談から一週間後、最初の問題が発生した。「どうして全滅なんだ」首藤課長は苛立ちを隠そうともしなかった。「そんなに条件が良くないかね」1日おきに行われることになったリーダー会議の席だった。首藤課長、... 2016/11/14 Comment(6)
飛田ショウマの憂鬱 (2) 以前に、誰かが首藤課長のことを「出世主義者で権威主義者、なおかつ原理主義者」と評していたのを耳にした飛田は、言い得て妙だ、と納得したものだった。出世主義については、周囲の評だけではなく、本人が公言して... 2016/11/07 Comment(6)
飛田ショウマの憂鬱 (1) 「おい、飛田」飛田ショウマは足を止め、首だけ振り向いた。同期の長谷部ケンタが小走りに近づいてくる。「来週から同じ課だな」「ああ」飛田は歩行を再開した。長谷部が並んで歩きながら語を継ぐ。「よろしく頼むぜ... 2016/10/31 Comment(11)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(終) 葉桜と薫風の季節が駆け足で過ぎ去り、自動販売機からホットドリンクがなくなった頃、その情報はもたらされた。『あいつら、今度はお隣の国でやらかしたみたいです』キサラギの連絡によれば、ソウル市ミョンドンにあ... 2016/05/09 Comment(6)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(7) ユカリは早足で通路を進んでいた。手には、館脇センター長の上着から拝借したIDカードが握られている。それが習慣なのか、IDカードの裏面には、木原SVのそれのように、テプラで出力した7桁の暗証番号が貼って... 2016/05/02 Comment(8)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(6) そのウワサを私が耳にしたのは、もう10年以上前になる。当時、今では死語となったWeb2.0という概念が流行っていて、雨後の筍のように各地で講習会やカンファレンスが開催されていた。そんな1つから招待状が... 2016/04/25 Comment(7)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(5) ボスからの連絡がない。ユカリはモニタを見つめながら、何時間も沈黙しているイヤピースに触れた。これまでは、軽く指で弾けば何かの応答があった。それが無機質な電子音1つだったとしても、見守ってくれていると知... 2016/04/18 Comment(7)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(4) キサラギからの連絡がない。私は不安な思いでSkypeのアイコンを見つめた。ナツメシステムの株主に関する調査を依頼したのは2週間前だ。私がそれほど急いでいない、と告げたのを真に受けたのか、最初の報告があ... 2016/04/11 Comment(10)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(3) ユカリが差し込んだUSBデバイスは、USBポートに挿入すると、2ミリメートルほどの厚みのプラスティック片が付いているようにしか見えなかった。元々が備品室だったせいか、モニタルームの照明は、人間が快適に... 2016/04/04 Comment(3)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(2) 横浜市西区に本社を置くダンデライオンコンタクトサービス株式会社、通称、DLコンタクトから、何人かの仲介人を通して私に連絡があったのは、2週間前のことだった。「私」というのは、本名の高村ミスズではなく、... 2016/03/28 Comment(6)
高村ミスズの事件簿 コールセンター篇(1) 「本日の業務伝達事項は以上です」木原SVは事務的な笑みとともに告げた。「最後になりましたが、先週連絡した通り、本日よりオペレータが1名加わります。前園さんです。みなさん、仲良くしてあげてください。では... 2016/03/22 Comment(5)
ひいらぎ飾ろう@クリスマス(後) クリスマスツリーと七面鳥、入手が困難なのは後者に決まっている。七面鳥の入手見込みが立ったという報告を受け、任務の9割方は完了だと安堵していた谷少尉は、すぐに別の問題に悩まされることになった。アンダーソ... 2015/12/25 Comment(9)
ひいらぎ飾ろう@クリスマス(前) 「何が消えたって?」谷少尉は思わず訊き返した。「ツリーです、分隊長」サンキストは辛抱強く繰り返した。「中庭のクリスマスツリーが消失しました」ビーンこと谷少尉はこめかみを押さえた。午前3時過ぎまで様々な... 2015/12/24 Comment(8)
ハローサマー、グッドバイ(終) 君の名は ぼくが港北基地から解放されたのは、8月も終わりに近づいた頃だった。その間、ひたすら事情聴取の日々が続いていた。最初の2日は下にも置かぬもてなしだった。生還した5人のバンド隊員たち――基地内で英雄のよう... 2015/12/22 Comment(60)
ハローサマー、グッドバイ(43) 一握の砂 港北基地に帰還したぼくたちを迎えたのは、歓呼と花束ではなく、よくない知らせだった。地下トンネルを通って基地へ戻る途中、グラスソード中尉は港北基地と連絡を取り、臼井大尉と負傷者のために医療班の待機を要請... 2015/12/21 Comment(18)
ハローサマー、グッドバイ(42) 後処理 目覚めるとブラウンアイズの瞳が目の前にある、という経験を、これまで2度した。意識が戻ったとき期待したのは3度目だったが、あいにく、ぼくの近くにいたのは仁志田さんだった。しかも、ぼくの方を見てさえいない... 2015/12/14 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(41) アンダーグラウンド EVヴァンから飛び出したブラウンアイズの動きは、豹のようにしなやかで、バレリーナのように優雅だった。一番近くにいた大柄なZの懐に入り込み、目にも留まらぬ払い腰で投げ飛ばすと、足を止めずに次の目標に突進... 2015/12/07 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(40) 黄泉の川が逆流する できれば正視したくない物は誰にでもある。家屋内に棲息する黒い害虫だという人もいれば、焼き魚の目玉という人もいるだろう。多くのプログラマにとっては「仕様変更」という言葉がそれだ。フライボーイ2から送られ... 2015/11/30 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(39) せめて人間らしく 羽沢駅(仮)は、JR東海道貨物線横浜羽沢駅と県道13号に挟まれたデルタ形状の地域に新駅として誕生するはずだったが、インシデントZで工事は中断し、未だに(仮)がついたままだ。周辺に目印になるような高いビ... 2015/11/24 Comment(12)