魔女の刻 (28) クリスマスの惨劇 出典は忘れてしまったが、シェスタという羨ましい習慣を持つスペインには、「寒さが厳しく、日も短い12月は、暖かい部屋で眠るのが最良だ」という言い回しがあるそうだ。意訳するなら、12月は仕事を控えめにしよ... 2018/03/26 Comment(24) 魔女の刻 (27) 10月はたそがれの国 その年の10月は密度の濃い日々が続く月となった。先立つ数ヶ月、開発センターを停滞気味な空気が支配していたから、なおさらそう感じたのかもしれない。白川さん不在の間、代理を務めた今枝さんは、開発センターの... 2018/03/19 Comment(26) 魔女の刻 (26) 監視機構 追加のビールが届いた。私はスマートフォンをカバンに放り込むと、白川さんとグラスを軽く合わせて2杯目のビールに少しだけ口をつけた。私のアルコール許容量は、それほど高くはない。コクがあるうまいビールだから... 2018/03/12 Comment(34) 魔女の刻 (25) 影との戦い その日の午後は、ほとんど仕事にならなかった。私の脳裏を、数多くの疑問がスクロールしていったが、それらを口に出す前に、高杉さんが開発センターに入ってきた。エースシステムの上級SEは、フリースペースの床に... 2018/03/05 Comment(27) 魔女の刻 (24) 魔女の帰還 白川さんは、予定通り9月18日、月曜日の朝から仕事に復帰した。私と細川くんが、8時45分に開発センターに出社すると、すでに白川さんがエース席の横に立って、サブリーダーたちと話していた。まだ右足の回復が... 2018/02/26 Comment(31) 魔女の刻 (23) 鬼のいぬ間に 補充要員12人の投入は、さらなるスケジュールの遅延を招くことになった。教育担当を任命されたプログラマ4名が、ほとんど自分のチケットを消化できなかったためだ。細川くんなどは夜遅くまでモニタに向かっていた... 2018/02/19 Comment(14) 魔女の刻 (22) スペインの雨は主に平地に降る 白川さんの復帰予定日が9月18日に決まった、と発表されたのは、8月28日の朝だった。それは私たちが期待していたよりもかなり遅い日付だったが、遅くても来ないよりまし、ということわざがあるように、いい知ら... 2018/02/13 Comment(19) 魔女の刻 (21) 完璧な夏の日 8月半ばを過ぎても白川さんは復帰しなかった。8月7日の朝、高杉さんは少なくとも2週間程度は退院が難しいだろうと告げ、私たちは一斉に失望のため息をついた。理由は公式には明らかにされなかったが、後日、チハ... 2018/02/05 Comment(25) 魔女の刻 (20) オーダーテイカーはなぜ嫌われる 白川さんも全てを見通せるわけではない。白川さんの職務を代行した今枝さんの行動は、プロジェクトをかき回すといった生やさしいものではなかった。白川さんが築き上げたジョブフローを叩き壊し、混沌の鍋の中に放り... 2018/01/29 Comment(21) 魔女の刻 (19) 保険 これほど不機嫌そうな人間を見たのは初めてかもしれない。サクラちゃんに案内されてきた今枝さんは、アイゼンガルドを放逐されたサルマンのように、怒りと不満を隠そうともしなかった。今枝さんは車椅子に座った白川... 2018/01/22 Comment(25) 魔女の刻 (18) 夜の訪問者 「クビ......」田嶋社長は頭を抱えた。「マジかよ」東海林さんと私がクビを宣告された日の夕方、直帰予定だった田嶋社長と営業の黒野が、急遽会社に戻ってきた。東海林さんがメールで簡単な事情を説明したから... 2018/01/15 Comment(19) 魔女の刻 (17) オーダーテイカー 椛山、という少し珍しい名字の人に出会ったのは、開発センターに初めて足を踏み入れた日、Aフレのトレーニングの初日だった。私は二度と椛山氏の顔を見ることも、名前を聞くこともないだろうと考えていたが、それは... 2018/01/09 Comment(32) クリスマスプレゼント サンタクロースが実在しないと思っている人が大勢いる。たいていの成人がそうだし、最近では嘆かわしいことに子どもの大部分もだ。もちろん、それは正しくない。ネットの発達によって、人は多くの情報を簡単に入手で... 2017/12/25 Comment(29) 魔女の刻 (16) 戦争の技術 戦争というものは確かにあまりにもばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない、と書いた作家がいる。私たちは戦争の渦中にいた。非常にバカげた戦争だ。そんなことに費やすリソー... 2017/12/18 Comment(25) 魔女の刻 (15) 白川さんがキレた日 マギ情報システム開発の杉浦さんの件について、東海林さんは白川さんに報告した。東海林さんによれば、白川さんは、その話を軽く受け止めたりはしなかったものの、即座に何らかの手を打つことはできない、と申し渡し... 2017/12/11 Comment(36) 魔女の刻 (14) 東海林さんがキレた日 サードアイの技術部のトップは東海林さんだ。東海林さんは、田嶋社長が以前勤めていたIT企業をスピンアウトしてサードアイを設立したときの創立メンバーでもある。当初は役員だったが、会社経営の雑事に嫌気がさし... 2017/12/04 Comment(16) 魔女の刻 (13) RFC4180 4月に入ると、私たちの開発センターでの一日が、ルーチンとして定着してきた。私の場合、東海林さんか細川くんのどちらかの車にピックアップしてもらい、9:00から9:30の間に開発センターに出勤する。周囲の... 2017/11/27 Comment(24) 魔女の刻 (12) 明日の約束 白川さんの真っ赤なプジョーは確かにかっこよかったし、乗り心地も悪くなかった。自動車を移動手段の一種としてしか捉えていない私だが、これまで乗ったどの車より、遊び心があるな、と思う。東海林さんのキューブや... 2017/11/20 Comment(9) 魔女の刻 (11) 伏魔殿 どんなプロジェクトでも、開始直後の多少のごたつきは付き物だ。くぬぎ市再生プロジェクトも例外ではなかった。白川さんがどんなに優秀なPLであっても、初めて実戦投入するフレームワークに、トレーニングを終えた... 2017/11/13 Comment(14) 魔女の刻 (10) リピーター 草場さんが私をいざなったのは、市役所の地下にある「カフェくぬぎ」だった。カフェというより、喫茶店と呼んだ方がしっくり来る、薄暗いお店だった。4人がけのテーブルが5つと、カウンター席が4つ。市役所の職員... 2017/11/06 Comment(23) 前のページへ 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 次のページへ SpecialPR
魔女の刻 (28) クリスマスの惨劇 出典は忘れてしまったが、シェスタという羨ましい習慣を持つスペインには、「寒さが厳しく、日も短い12月は、暖かい部屋で眠るのが最良だ」という言い回しがあるそうだ。意訳するなら、12月は仕事を控えめにしよ... 2018/03/26 Comment(24)
魔女の刻 (27) 10月はたそがれの国 その年の10月は密度の濃い日々が続く月となった。先立つ数ヶ月、開発センターを停滞気味な空気が支配していたから、なおさらそう感じたのかもしれない。白川さん不在の間、代理を務めた今枝さんは、開発センターの... 2018/03/19 Comment(26)
魔女の刻 (26) 監視機構 追加のビールが届いた。私はスマートフォンをカバンに放り込むと、白川さんとグラスを軽く合わせて2杯目のビールに少しだけ口をつけた。私のアルコール許容量は、それほど高くはない。コクがあるうまいビールだから... 2018/03/12 Comment(34)
魔女の刻 (25) 影との戦い その日の午後は、ほとんど仕事にならなかった。私の脳裏を、数多くの疑問がスクロールしていったが、それらを口に出す前に、高杉さんが開発センターに入ってきた。エースシステムの上級SEは、フリースペースの床に... 2018/03/05 Comment(27)
魔女の刻 (24) 魔女の帰還 白川さんは、予定通り9月18日、月曜日の朝から仕事に復帰した。私と細川くんが、8時45分に開発センターに出社すると、すでに白川さんがエース席の横に立って、サブリーダーたちと話していた。まだ右足の回復が... 2018/02/26 Comment(31)
魔女の刻 (23) 鬼のいぬ間に 補充要員12人の投入は、さらなるスケジュールの遅延を招くことになった。教育担当を任命されたプログラマ4名が、ほとんど自分のチケットを消化できなかったためだ。細川くんなどは夜遅くまでモニタに向かっていた... 2018/02/19 Comment(14)
魔女の刻 (22) スペインの雨は主に平地に降る 白川さんの復帰予定日が9月18日に決まった、と発表されたのは、8月28日の朝だった。それは私たちが期待していたよりもかなり遅い日付だったが、遅くても来ないよりまし、ということわざがあるように、いい知ら... 2018/02/13 Comment(19)
魔女の刻 (21) 完璧な夏の日 8月半ばを過ぎても白川さんは復帰しなかった。8月7日の朝、高杉さんは少なくとも2週間程度は退院が難しいだろうと告げ、私たちは一斉に失望のため息をついた。理由は公式には明らかにされなかったが、後日、チハ... 2018/02/05 Comment(25)
魔女の刻 (20) オーダーテイカーはなぜ嫌われる 白川さんも全てを見通せるわけではない。白川さんの職務を代行した今枝さんの行動は、プロジェクトをかき回すといった生やさしいものではなかった。白川さんが築き上げたジョブフローを叩き壊し、混沌の鍋の中に放り... 2018/01/29 Comment(21)
魔女の刻 (19) 保険 これほど不機嫌そうな人間を見たのは初めてかもしれない。サクラちゃんに案内されてきた今枝さんは、アイゼンガルドを放逐されたサルマンのように、怒りと不満を隠そうともしなかった。今枝さんは車椅子に座った白川... 2018/01/22 Comment(25)
魔女の刻 (18) 夜の訪問者 「クビ......」田嶋社長は頭を抱えた。「マジかよ」東海林さんと私がクビを宣告された日の夕方、直帰予定だった田嶋社長と営業の黒野が、急遽会社に戻ってきた。東海林さんがメールで簡単な事情を説明したから... 2018/01/15 Comment(19)
魔女の刻 (17) オーダーテイカー 椛山、という少し珍しい名字の人に出会ったのは、開発センターに初めて足を踏み入れた日、Aフレのトレーニングの初日だった。私は二度と椛山氏の顔を見ることも、名前を聞くこともないだろうと考えていたが、それは... 2018/01/09 Comment(32)
クリスマスプレゼント サンタクロースが実在しないと思っている人が大勢いる。たいていの成人がそうだし、最近では嘆かわしいことに子どもの大部分もだ。もちろん、それは正しくない。ネットの発達によって、人は多くの情報を簡単に入手で... 2017/12/25 Comment(29)
魔女の刻 (16) 戦争の技術 戦争というものは確かにあまりにもばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない、と書いた作家がいる。私たちは戦争の渦中にいた。非常にバカげた戦争だ。そんなことに費やすリソー... 2017/12/18 Comment(25)
魔女の刻 (15) 白川さんがキレた日 マギ情報システム開発の杉浦さんの件について、東海林さんは白川さんに報告した。東海林さんによれば、白川さんは、その話を軽く受け止めたりはしなかったものの、即座に何らかの手を打つことはできない、と申し渡し... 2017/12/11 Comment(36)
魔女の刻 (14) 東海林さんがキレた日 サードアイの技術部のトップは東海林さんだ。東海林さんは、田嶋社長が以前勤めていたIT企業をスピンアウトしてサードアイを設立したときの創立メンバーでもある。当初は役員だったが、会社経営の雑事に嫌気がさし... 2017/12/04 Comment(16)
魔女の刻 (13) RFC4180 4月に入ると、私たちの開発センターでの一日が、ルーチンとして定着してきた。私の場合、東海林さんか細川くんのどちらかの車にピックアップしてもらい、9:00から9:30の間に開発センターに出勤する。周囲の... 2017/11/27 Comment(24)
魔女の刻 (12) 明日の約束 白川さんの真っ赤なプジョーは確かにかっこよかったし、乗り心地も悪くなかった。自動車を移動手段の一種としてしか捉えていない私だが、これまで乗ったどの車より、遊び心があるな、と思う。東海林さんのキューブや... 2017/11/20 Comment(9)
魔女の刻 (11) 伏魔殿 どんなプロジェクトでも、開始直後の多少のごたつきは付き物だ。くぬぎ市再生プロジェクトも例外ではなかった。白川さんがどんなに優秀なPLであっても、初めて実戦投入するフレームワークに、トレーニングを終えた... 2017/11/13 Comment(14)
魔女の刻 (10) リピーター 草場さんが私をいざなったのは、市役所の地下にある「カフェくぬぎ」だった。カフェというより、喫茶店と呼んだ方がしっくり来る、薄暗いお店だった。4人がけのテーブルが5つと、カウンター席が4つ。市役所の職員... 2017/11/06 Comment(23)