魔女の刻 (20) オーダーテイカーはなぜ嫌われる 白川さんも全てを見通せるわけではない。白川さんの職務を代行した今枝さんの行動は、プロジェクトをかき回すといった生やさしいものではなかった。白川さんが築き上げたジョブフローを叩き壊し、混沌の鍋の中に放り... 2018/01/29 Comment(21) 魔女の刻 (19) 保険 これほど不機嫌そうな人間を見たのは初めてかもしれない。サクラちゃんに案内されてきた今枝さんは、アイゼンガルドを放逐されたサルマンのように、怒りと不満を隠そうともしなかった。今枝さんは車椅子に座った白川... 2018/01/22 Comment(25) 魔女の刻 (18) 夜の訪問者 「クビ......」田嶋社長は頭を抱えた。「マジかよ」東海林さんと私がクビを宣告された日の夕方、直帰予定だった田嶋社長と営業の黒野が、急遽会社に戻ってきた。東海林さんがメールで簡単な事情を説明したから... 2018/01/15 Comment(19) 魔女の刻 (17) オーダーテイカー 椛山、という少し珍しい名字の人に出会ったのは、開発センターに初めて足を踏み入れた日、Aフレのトレーニングの初日だった。私は二度と椛山氏の顔を見ることも、名前を聞くこともないだろうと考えていたが、それは... 2018/01/09 Comment(32) クリスマスプレゼント サンタクロースが実在しないと思っている人が大勢いる。たいていの成人がそうだし、最近では嘆かわしいことに子どもの大部分もだ。もちろん、それは正しくない。ネットの発達によって、人は多くの情報を簡単に入手で... 2017/12/25 Comment(29) 魔女の刻 (16) 戦争の技術 戦争というものは確かにあまりにもばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない、と書いた作家がいる。私たちは戦争の渦中にいた。非常にバカげた戦争だ。そんなことに費やすリソー... 2017/12/18 Comment(25) 魔女の刻 (15) 白川さんがキレた日 マギ情報システム開発の杉浦さんの件について、東海林さんは白川さんに報告した。東海林さんによれば、白川さんは、その話を軽く受け止めたりはしなかったものの、即座に何らかの手を打つことはできない、と申し渡し... 2017/12/11 Comment(36) 魔女の刻 (14) 東海林さんがキレた日 サードアイの技術部のトップは東海林さんだ。東海林さんは、田嶋社長が以前勤めていたIT企業をスピンアウトしてサードアイを設立したときの創立メンバーでもある。当初は役員だったが、会社経営の雑事に嫌気がさし... 2017/12/04 Comment(15) 魔女の刻 (13) RFC4180 4月に入ると、私たちの開発センターでの一日が、ルーチンとして定着してきた。私の場合、東海林さんか細川くんのどちらかの車にピックアップしてもらい、9:00から9:30の間に開発センターに出勤する。周囲の... 2017/11/27 Comment(24) 魔女の刻 (12) 明日の約束 白川さんの真っ赤なプジョーは確かにかっこよかったし、乗り心地も悪くなかった。自動車を移動手段の一種としてしか捉えていない私だが、これまで乗ったどの車より、遊び心があるな、と思う。東海林さんのキューブや... 2017/11/20 Comment(9) 魔女の刻 (11) 伏魔殿 どんなプロジェクトでも、開始直後の多少のごたつきは付き物だ。くぬぎ市再生プロジェクトも例外ではなかった。白川さんがどんなに優秀なPLであっても、初めて実戦投入するフレームワークに、トレーニングを終えた... 2017/11/13 Comment(14) 魔女の刻 (10) リピーター 草場さんが私をいざなったのは、市役所の地下にある「カフェくぬぎ」だった。カフェというより、喫茶店と呼んだ方がしっくり来る、薄暗いお店だった。4人がけのテーブルが5つと、カウンター席が4つ。市役所の職員... 2017/11/06 Comment(23) 魔女の刻 (9) アマチュア 細川くんに買いにいかせたコンビニ弁当でランチを済ませた後、私は開発センターを出て交差点を渡り、市役所の正面入り口を通った。暇そうな顔の職員に場所を尋ね、階段を3階まで上る。庁舎にはもちろんエレベータが... 2017/10/30 Comment(25) 魔女の刻 (8) 30秒ルール 冬の雨は出勤する社会人をうんざりさせる。ただでさえ寒い上に、身体や顔が濡れるので不快感が二乗になる。しかも今日は霧雨だ。雨が素直に地面に到達せず、風にあおられて全方向から襲いかかってくるのだから始末が... 2017/10/23 Comment(15) 魔女の刻 (7) トレーニングデイズ トレーニング期間中に不要と判断されたのは、田熊システムだけではなかった。火曜日の18:00、自動的にブラウザが起動され、「Aフレ習熟度テスト」とタイトルのついた画面が表示された。Q1からQ20までのボ... 2017/10/16 Comment(18) 魔女の刻 (6) カバーストーリー 午後からは予告通り、Aフレのトレーニングが開始された。トレーニングを担当するのは、エースシステムからやってきた小谷野という40過ぎのトレーナーだった。再びフリースペースに集められた私たちに向き合った小... 2017/10/10 Comment(22) 魔女の刻 (5) 白い魔女 どんな業界でも同じことだろうが、時代のニーズやテクノロジーの進歩によって、否応なしに変化の波にさらされているのはIT業界も変わらない。日本有数のSIerであるエースシステムも例外ではなかった。むしろ図... 2017/10/02 Comment(11) 魔女の刻 (4) 開発センター 私が初めてくぬぎ市に降り立ったのは、説明会の翌週の火曜日、1月24日の午前8時45分だった。空はすっきりと晴れ渡り、遠い山並みの輪郭が視認できるほどだったが、私の気分は天候に同調していなかった。ここへ... 2017/09/25 Comment(14) 魔女の刻 (3) 夢の跡 白川さんが言葉を切ると、耳が痛くなるような静寂が落ちた。ネットやニュースで断片的に耳にしていたことではあったが、改めて一連の事象として提示されると、地方自治に無知な私にさえ、くぬぎ市の民間委託施策が「... 2017/09/19 Comment(7) 魔女の刻 (2) 予兆 この業界の実情を知らない人が、プログラマへ抱いているイメージはどんなものだろう。私の専業主婦の友人によれば、ロジカルで理知的で、数字に強く、スーパーの買い物でさえ綿密に立案した事前計画に基づいて実行す... 2017/09/11 Comment(23) 前のページへ 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 次のページへ
魔女の刻 (20) オーダーテイカーはなぜ嫌われる 白川さんも全てを見通せるわけではない。白川さんの職務を代行した今枝さんの行動は、プロジェクトをかき回すといった生やさしいものではなかった。白川さんが築き上げたジョブフローを叩き壊し、混沌の鍋の中に放り... 2018/01/29 Comment(21)
魔女の刻 (19) 保険 これほど不機嫌そうな人間を見たのは初めてかもしれない。サクラちゃんに案内されてきた今枝さんは、アイゼンガルドを放逐されたサルマンのように、怒りと不満を隠そうともしなかった。今枝さんは車椅子に座った白川... 2018/01/22 Comment(25)
魔女の刻 (18) 夜の訪問者 「クビ......」田嶋社長は頭を抱えた。「マジかよ」東海林さんと私がクビを宣告された日の夕方、直帰予定だった田嶋社長と営業の黒野が、急遽会社に戻ってきた。東海林さんがメールで簡単な事情を説明したから... 2018/01/15 Comment(19)
魔女の刻 (17) オーダーテイカー 椛山、という少し珍しい名字の人に出会ったのは、開発センターに初めて足を踏み入れた日、Aフレのトレーニングの初日だった。私は二度と椛山氏の顔を見ることも、名前を聞くこともないだろうと考えていたが、それは... 2018/01/09 Comment(32)
クリスマスプレゼント サンタクロースが実在しないと思っている人が大勢いる。たいていの成人がそうだし、最近では嘆かわしいことに子どもの大部分もだ。もちろん、それは正しくない。ネットの発達によって、人は多くの情報を簡単に入手で... 2017/12/25 Comment(29)
魔女の刻 (16) 戦争の技術 戦争というものは確かにあまりにもばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない、と書いた作家がいる。私たちは戦争の渦中にいた。非常にバカげた戦争だ。そんなことに費やすリソー... 2017/12/18 Comment(25)
魔女の刻 (15) 白川さんがキレた日 マギ情報システム開発の杉浦さんの件について、東海林さんは白川さんに報告した。東海林さんによれば、白川さんは、その話を軽く受け止めたりはしなかったものの、即座に何らかの手を打つことはできない、と申し渡し... 2017/12/11 Comment(36)
魔女の刻 (14) 東海林さんがキレた日 サードアイの技術部のトップは東海林さんだ。東海林さんは、田嶋社長が以前勤めていたIT企業をスピンアウトしてサードアイを設立したときの創立メンバーでもある。当初は役員だったが、会社経営の雑事に嫌気がさし... 2017/12/04 Comment(15)
魔女の刻 (13) RFC4180 4月に入ると、私たちの開発センターでの一日が、ルーチンとして定着してきた。私の場合、東海林さんか細川くんのどちらかの車にピックアップしてもらい、9:00から9:30の間に開発センターに出勤する。周囲の... 2017/11/27 Comment(24)
魔女の刻 (12) 明日の約束 白川さんの真っ赤なプジョーは確かにかっこよかったし、乗り心地も悪くなかった。自動車を移動手段の一種としてしか捉えていない私だが、これまで乗ったどの車より、遊び心があるな、と思う。東海林さんのキューブや... 2017/11/20 Comment(9)
魔女の刻 (11) 伏魔殿 どんなプロジェクトでも、開始直後の多少のごたつきは付き物だ。くぬぎ市再生プロジェクトも例外ではなかった。白川さんがどんなに優秀なPLであっても、初めて実戦投入するフレームワークに、トレーニングを終えた... 2017/11/13 Comment(14)
魔女の刻 (10) リピーター 草場さんが私をいざなったのは、市役所の地下にある「カフェくぬぎ」だった。カフェというより、喫茶店と呼んだ方がしっくり来る、薄暗いお店だった。4人がけのテーブルが5つと、カウンター席が4つ。市役所の職員... 2017/11/06 Comment(23)
魔女の刻 (9) アマチュア 細川くんに買いにいかせたコンビニ弁当でランチを済ませた後、私は開発センターを出て交差点を渡り、市役所の正面入り口を通った。暇そうな顔の職員に場所を尋ね、階段を3階まで上る。庁舎にはもちろんエレベータが... 2017/10/30 Comment(25)
魔女の刻 (8) 30秒ルール 冬の雨は出勤する社会人をうんざりさせる。ただでさえ寒い上に、身体や顔が濡れるので不快感が二乗になる。しかも今日は霧雨だ。雨が素直に地面に到達せず、風にあおられて全方向から襲いかかってくるのだから始末が... 2017/10/23 Comment(15)
魔女の刻 (7) トレーニングデイズ トレーニング期間中に不要と判断されたのは、田熊システムだけではなかった。火曜日の18:00、自動的にブラウザが起動され、「Aフレ習熟度テスト」とタイトルのついた画面が表示された。Q1からQ20までのボ... 2017/10/16 Comment(18)
魔女の刻 (6) カバーストーリー 午後からは予告通り、Aフレのトレーニングが開始された。トレーニングを担当するのは、エースシステムからやってきた小谷野という40過ぎのトレーナーだった。再びフリースペースに集められた私たちに向き合った小... 2017/10/10 Comment(22)
魔女の刻 (5) 白い魔女 どんな業界でも同じことだろうが、時代のニーズやテクノロジーの進歩によって、否応なしに変化の波にさらされているのはIT業界も変わらない。日本有数のSIerであるエースシステムも例外ではなかった。むしろ図... 2017/10/02 Comment(11)
魔女の刻 (4) 開発センター 私が初めてくぬぎ市に降り立ったのは、説明会の翌週の火曜日、1月24日の午前8時45分だった。空はすっきりと晴れ渡り、遠い山並みの輪郭が視認できるほどだったが、私の気分は天候に同調していなかった。ここへ... 2017/09/25 Comment(14)
魔女の刻 (3) 夢の跡 白川さんが言葉を切ると、耳が痛くなるような静寂が落ちた。ネットやニュースで断片的に耳にしていたことではあったが、改めて一連の事象として提示されると、地方自治に無知な私にさえ、くぬぎ市の民間委託施策が「... 2017/09/19 Comment(7)
魔女の刻 (2) 予兆 この業界の実情を知らない人が、プログラマへ抱いているイメージはどんなものだろう。私の専業主婦の友人によれば、ロジカルで理知的で、数字に強く、スーパーの買い物でさえ綿密に立案した事前計画に基づいて実行す... 2017/09/11 Comment(23)