イノウーの憂鬱 (46) 見果てぬ夢 映画「2010年」で、チャンドラ博士がHAL9000の姉妹機SAL9000に「私は夢を見ますか?」と問われ、「知的生物は皆、夢を見る」と答えるシーンがある。夢を見るのは人間の権利だ。ぼくは、自分が勤め... 2021/06/21 Comment(20) イノウーの憂鬱 (45) ゲームの達人 初めて入った社長室のイメージは、ドラマや映画で目にするようなエグゼクティブ系のオフィスと、それほどかけ離れてはいなかった。以前にお邪魔した大竹専務の役員室より、少し広めのスペースで、重厚感のある色合い... 2021/06/07 Comment(39) イノウーの憂鬱 (44) 人事と採用計画 片付ける、と明言した斉木室長は、誤解の余地がないほど明確な形で、それを実現した。伊牟田課長はマネジメント三課課長の職を解かれ人事課付となる辞令が、4月1日付で発令されたのだった。役職は課長から課長補佐... 2021/05/31 Comment(21) イノウーの憂鬱 (43) 抵抗勢力 通常であれば4月1日付の人事異動は3月第一週には発表されるが、今年は例年とは異なるパターンで通知されることになった。夏目課長がシステム開発室課長兼務を解かれる通知は3月第二週に通知されたが、これに驚い... 2021/05/24 Comment(17) イノウーの憂鬱 (42) ドライブ 「あ、エンジンかかりましたね」ぼくはディスプレイのエネルギーモニタを見ながら言った。「残量が半分切ったからですかね」「いや」後部シートから東海林さんが言った。「さっきは1/4ぐらいでもバッテリーから来... 2021/05/17 Comment(19) イノウーの憂鬱 (41) 裏バージョン 「開発業務の協業......」マリが木名瀬さんの言葉を繰り返した。「すいません、よくわからないんですが、それって、パートナーマネジメントがやってるみたいに、協力会社さんに開発を発注するのと何が違うんで... 2021/05/10 Comment(13) イノウーの憂鬱 (40) メッセージ 夏目課長の予想あるいは期待に反して、ヘルプの外注としてサードアイを選定するという木名瀬さんの奇策に対して、大竹専務が異を唱えることはなかった。外部協力会社の選定は、役員レベルまでの承認ルートが設定され... 2021/04/26 Comment(24) イノウーの憂鬱 (39) パートナー企業の選び方 ぼくがシステム開発室に戻ると、内線で話していた夏目課長が受話器を置いて立ち上がった。「大竹専務に呼ばれたので行ってくる」夏目課長はそう言うと、もの問いたげにぼくを見たが、急ぎ足で出て行った。ぼくが自席... 2021/04/19 Comment(37) イノウーの憂鬱 (38) ノブレス・オブリージュ 「話が長くなったな」大竹専務は時計を見た。「残りは簡単に話すことにしよう。お互い、ヒマな身ではないからな」ぼくは気付かないうちに止めていた呼吸を再開し、肺に溜まった二酸化炭素を排出した。話の途中で大竹... 2021/04/12 Comment(41) 大竹ツカサのナラティヴ (9) 2009年2月。棚橋のドロップアウトによって、オンスケだった生産管理システム二次開発には大きなブレーキがかかることとなった。主な原因の一つは棚橋が抜けた穴が予想外に大きかったことだ。マーズネットが担当... 2021/04/05 Comment(28) 大竹ツカサのナラティヴ (8) 2009年2月14日。生産管理システムの二次開発は、ボリュームに対する開発期間が比較的短期ということもあり、そのスケジュールは、3月31日のカットオーバーの日まで、1日の余裕もなく詰め込まれていた。土... 2021/03/29 Comment(44) 大竹ツカサのナラティヴ (7) 2009年2月。「えー、まだできてないんですか」岩名ユウコの苛立たしげな声が、大竹の耳まで届いた。岩名が詰め寄っている相手は棚橋だった。「ああ、すまん」棚橋は頭をかきながら謝った。「思ったよりピッキン... 2021/03/22 Comment(22) 大竹ツカサのナラティヴ (6) 2008年12月。痩せた、というよりやつれた印象の棚橋が浮かべた弱々しい笑顔に、大竹は胸を衝かれた。「ご迷惑をおかけしました」棚橋は頭を下げた。「またよろしくお願いします」体調は......と訊きかけ... 2021/03/15 Comment(16) 大竹ツカサのナラティヴ (5) 2008年8月。「これストアドで書き直してください」諸見は平板な声で言った。「パフォーマンスが重要ですから」「え」岩名ユウコは驚いて訊き返した。「あの、このメソッド、全部ですか?」「そう言いませんでし... 2021/03/08 Comment(22) 大竹ツカサのナラティヴ (4) 2008年4月1日。サガラ電装生産管理システム導入プロジェクトはスケジュール通りにカットオーバーし、本番稼働の日を迎えた。ゴールデンウィーク明けまでは旧環境と並行稼働だが、マーズネットの契約は3月末日... 2021/03/01 Comment(27) 大竹ツカサのナラティヴ (3) 「残念な連絡をしなければならん」2日後、大竹は自社のメンバーに向かって重い声で告げた。「諸見が、一身上の都合で、来年1月末に退職することになった」ざわめきがメンバーの間に広がる中、棚橋が驚きで目を大き... 2021/02/22 Comment(15) 大竹ツカサのナラティヴ (2) 2007年12月。大竹の再三の注意と、メンバーからの度重なる非難にもかかわらず、諸見は相変わらずサガラ電装からの雑用を引き受け続けていた。大竹が懸念したとおり、諸見の負荷は膨れあがり、12月に入る頃に... 2021/02/15 Comment(17) 大竹ツカサのナラティヴ (1) 2007年10月17日。午前8時過ぎ、マーズネット株式会社ソリューション開発部の大竹は、株式会社サガラ電装のシステム部に入った。サガラ電装の社員は誰も出社していなかったが、「外注さん島」と呼ばれる一角... 2021/02/08 Comment(17) イノウーの憂鬱 (37) キーマン 結婚を考えるどころか、相手すらいないのに、住宅ローンの話などされても実感が沸くはずもないし、まだこの世に存在してもいない子供のことで、エゴイスト呼ばわりされる筋合いはない。少しムッとしたが、大竹専務の... 2021/02/01 Comment(18) イノウーの憂鬱 (36) エゴイスト 以前、マギ情報システム開発が出してきた工数見積は、管理工数を含めて194.7人日だった。今回、サードアイから届いていた工数は60人日、一人月20人日換算で3人月と半分以下だ。夏目課長から、あらかじめ上... 2021/01/25 Comment(44) 前のページへ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 次のページへ SpecialPR
イノウーの憂鬱 (46) 見果てぬ夢 映画「2010年」で、チャンドラ博士がHAL9000の姉妹機SAL9000に「私は夢を見ますか?」と問われ、「知的生物は皆、夢を見る」と答えるシーンがある。夢を見るのは人間の権利だ。ぼくは、自分が勤め... 2021/06/21 Comment(20)
イノウーの憂鬱 (45) ゲームの達人 初めて入った社長室のイメージは、ドラマや映画で目にするようなエグゼクティブ系のオフィスと、それほどかけ離れてはいなかった。以前にお邪魔した大竹専務の役員室より、少し広めのスペースで、重厚感のある色合い... 2021/06/07 Comment(39)
イノウーの憂鬱 (44) 人事と採用計画 片付ける、と明言した斉木室長は、誤解の余地がないほど明確な形で、それを実現した。伊牟田課長はマネジメント三課課長の職を解かれ人事課付となる辞令が、4月1日付で発令されたのだった。役職は課長から課長補佐... 2021/05/31 Comment(21)
イノウーの憂鬱 (43) 抵抗勢力 通常であれば4月1日付の人事異動は3月第一週には発表されるが、今年は例年とは異なるパターンで通知されることになった。夏目課長がシステム開発室課長兼務を解かれる通知は3月第二週に通知されたが、これに驚い... 2021/05/24 Comment(17)
イノウーの憂鬱 (42) ドライブ 「あ、エンジンかかりましたね」ぼくはディスプレイのエネルギーモニタを見ながら言った。「残量が半分切ったからですかね」「いや」後部シートから東海林さんが言った。「さっきは1/4ぐらいでもバッテリーから来... 2021/05/17 Comment(19)
イノウーの憂鬱 (41) 裏バージョン 「開発業務の協業......」マリが木名瀬さんの言葉を繰り返した。「すいません、よくわからないんですが、それって、パートナーマネジメントがやってるみたいに、協力会社さんに開発を発注するのと何が違うんで... 2021/05/10 Comment(13)
イノウーの憂鬱 (40) メッセージ 夏目課長の予想あるいは期待に反して、ヘルプの外注としてサードアイを選定するという木名瀬さんの奇策に対して、大竹専務が異を唱えることはなかった。外部協力会社の選定は、役員レベルまでの承認ルートが設定され... 2021/04/26 Comment(24)
イノウーの憂鬱 (39) パートナー企業の選び方 ぼくがシステム開発室に戻ると、内線で話していた夏目課長が受話器を置いて立ち上がった。「大竹専務に呼ばれたので行ってくる」夏目課長はそう言うと、もの問いたげにぼくを見たが、急ぎ足で出て行った。ぼくが自席... 2021/04/19 Comment(37)
イノウーの憂鬱 (38) ノブレス・オブリージュ 「話が長くなったな」大竹専務は時計を見た。「残りは簡単に話すことにしよう。お互い、ヒマな身ではないからな」ぼくは気付かないうちに止めていた呼吸を再開し、肺に溜まった二酸化炭素を排出した。話の途中で大竹... 2021/04/12 Comment(41)
大竹ツカサのナラティヴ (9) 2009年2月。棚橋のドロップアウトによって、オンスケだった生産管理システム二次開発には大きなブレーキがかかることとなった。主な原因の一つは棚橋が抜けた穴が予想外に大きかったことだ。マーズネットが担当... 2021/04/05 Comment(28)
大竹ツカサのナラティヴ (8) 2009年2月14日。生産管理システムの二次開発は、ボリュームに対する開発期間が比較的短期ということもあり、そのスケジュールは、3月31日のカットオーバーの日まで、1日の余裕もなく詰め込まれていた。土... 2021/03/29 Comment(44)
大竹ツカサのナラティヴ (7) 2009年2月。「えー、まだできてないんですか」岩名ユウコの苛立たしげな声が、大竹の耳まで届いた。岩名が詰め寄っている相手は棚橋だった。「ああ、すまん」棚橋は頭をかきながら謝った。「思ったよりピッキン... 2021/03/22 Comment(22)
大竹ツカサのナラティヴ (6) 2008年12月。痩せた、というよりやつれた印象の棚橋が浮かべた弱々しい笑顔に、大竹は胸を衝かれた。「ご迷惑をおかけしました」棚橋は頭を下げた。「またよろしくお願いします」体調は......と訊きかけ... 2021/03/15 Comment(16)
大竹ツカサのナラティヴ (5) 2008年8月。「これストアドで書き直してください」諸見は平板な声で言った。「パフォーマンスが重要ですから」「え」岩名ユウコは驚いて訊き返した。「あの、このメソッド、全部ですか?」「そう言いませんでし... 2021/03/08 Comment(22)
大竹ツカサのナラティヴ (4) 2008年4月1日。サガラ電装生産管理システム導入プロジェクトはスケジュール通りにカットオーバーし、本番稼働の日を迎えた。ゴールデンウィーク明けまでは旧環境と並行稼働だが、マーズネットの契約は3月末日... 2021/03/01 Comment(27)
大竹ツカサのナラティヴ (3) 「残念な連絡をしなければならん」2日後、大竹は自社のメンバーに向かって重い声で告げた。「諸見が、一身上の都合で、来年1月末に退職することになった」ざわめきがメンバーの間に広がる中、棚橋が驚きで目を大き... 2021/02/22 Comment(15)
大竹ツカサのナラティヴ (2) 2007年12月。大竹の再三の注意と、メンバーからの度重なる非難にもかかわらず、諸見は相変わらずサガラ電装からの雑用を引き受け続けていた。大竹が懸念したとおり、諸見の負荷は膨れあがり、12月に入る頃に... 2021/02/15 Comment(17)
大竹ツカサのナラティヴ (1) 2007年10月17日。午前8時過ぎ、マーズネット株式会社ソリューション開発部の大竹は、株式会社サガラ電装のシステム部に入った。サガラ電装の社員は誰も出社していなかったが、「外注さん島」と呼ばれる一角... 2021/02/08 Comment(17)
イノウーの憂鬱 (37) キーマン 結婚を考えるどころか、相手すらいないのに、住宅ローンの話などされても実感が沸くはずもないし、まだこの世に存在してもいない子供のことで、エゴイスト呼ばわりされる筋合いはない。少しムッとしたが、大竹専務の... 2021/02/01 Comment(18)
イノウーの憂鬱 (36) エゴイスト 以前、マギ情報システム開発が出してきた工数見積は、管理工数を含めて194.7人日だった。今回、サードアイから届いていた工数は60人日、一人月20人日換算で3人月と半分以下だ。夏目課長から、あらかじめ上... 2021/01/25 Comment(44)