夜の翼 (6) セクションD オペレーションルームの中央で仁王立ちになって怒鳴っているのは、末永リンだった。肩までのストレートな黒髪をポニーテールにしている。普段は細い切れ長の目が、怒りのせいか大きく見開かれていた。16歳だが、1... 2019/08/05 Comment(2) 夜の翼 (5) 横浜ディレクトレート アーカム・テクノロジー・パートナーズ横浜ディレクトレートは、根岸森林公園の地下に設けられている。私がこの組織に迎えられる以前は、横浜駅近くのビルを拠点としていたそうだが、数年前にSPUからの大規模な攻... 2019/07/29 Comment(7) 夜の翼 (4) 現実度 私たちが地上に出たのは、すっかり陽が落ち、夜空に浮かぶオレンジ色の月が弱々しく存在を主張し始めた時刻だった。クイーンズスクエアの周辺道路は、多数のパトカーと救急車で埋め尽くされていた。殺気立った表情の... 2019/07/22 Comment(5) 夜の翼 (3) 非常階段のトゥチョ=トゥチョ人 「敵って」私は会議室のドアを見た。「警護は?」『応戦中です。ただ、ハンドガン程度の小火器しか装備していないので、じきに突破されると思われます』「ここは、セイフティポイントじゃないのか」セイフティポイン... 2019/07/16 Comment(3) 夜の翼 (2) スカウト 「スカウトって......」加々見シュンは、不審人物に向けるのがふさわしい視線を、私とサチに遠慮なく注いだ。「おじさんたち、ゲーム会社の人か何かかよ?」「いや違う」「アーカム・テクノロジー・パートナー... 2019/07/08 Comment(11) 夜の翼 (1) 公園のショゴス 私が公園に足を踏み入れたとき、黄昏と呼ばれる時刻まで一時間あまりを残していた。車から早足で歩いてきたせいで、じんわりと汗をかいている。今日は梅雨の切れ間で、空は美しく晴れているが、朝方まで降り続いてい... 2019/07/01 Comment(13) 高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (終) 「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマ・トピ・ザ・ニュース!今日もたくさんのアクセス、ありがとー!このコーナーは......」ピーター斎藤は、いつもと同じように陽気な声で番組を紹介している。私... 2019/03/18 Comment(93) 高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (3) ピーター斎藤は、どこか後ろめたそうに顔をそむけ、横目で私を見ていた。ネットテレビのカメラに撮られているときの陽気で自信満々な表情とは真逆だ。どちらが本当の姿なのだろう、と少し興味が沸いたが、今は心理学... 2019/03/15 Comment(8) 高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (2) 「はじめまして」ユカリが細い手を差し出した。「エマちゃんね?」ユカリがかけているスマートグラスのカメラとマイクを通して、丸顔でショートボブの女の子が、ユカリの手をおずおずと握り、小声で「よろしくお願い... 2019/03/13 Comment(9) 高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (1) 「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマ・トピ・ザ・ニュース!今日もたくさんのアクセス、ありがとー!このコーナーはネット界隈でバズってるバズってないに関係なく、元SEのボクが興味深いなーとか、こ... 2019/03/11 Comment(21) 福袋をめぐる妻の戦争 世の中には、経験するまでわからないことがたくさんある、と細川マモルは思い知らされた。大晦日の午後、暖房の効いたリビングでぼーっとテレビを見ていたマモルに、2歳年下の妻、ミユキが声をかけたのだ。「ね、こ... 2019/01/07 Comment(22) 冬の一日 うずくまるハトと、凍る街路樹......そんな歌詞が思わず口をついて出そうな陰鬱な午後だった。昨夜から関東地方の上空を占拠している重々しい雲が、ただでさえ弱々しい冬の陽光を無慈悲に遮断している。いつ雨... 2018/12/25 Comment(33) 10人いる! アーカム・テクノロジー・パートナーズ横浜ビルの3階の一室で、チーフ・システムエンジニアの佐藤は満足そうな顔でワイヤレスイヤホンに触れ、通話を終えた。飾り気のない事務用アームチェアをぐるりと回転させる。... 2018/09/10 Comment(26) 魔女の刻 (終) 大いなる遺産 秋が終わりに近づき、空気に冬の気配が感じられるようになった頃、Q-LICは11月末日をもって、地方創生ビジネス事業からの全面撤退を決定した、と発表した。一つの事業部が丸ごと解体され、200人以上の社員... 2018/08/13 Comment(75) 魔女の刻 (46) たったひとつの冴えたやりかた ゴーグルを返却して自席に戻った後、私は今日、予定されている作業を確認しながら、たった今目撃した奇妙な隠しコマンドの意味を考えていた。あれが何かの不具合でないと仮定するなら、誰が、何のために、こんなこと... 2018/08/06 Comment(24) 魔女の刻 (45) 機械の中の幽霊 白川さんが病院からいなくなった、と聞いたのは、7月第一週のことだった。できることならお見舞いに行きたかったのだが、病院の名前を知っていた今枝さんと一戸さんは、決して私たちに教えてくれようとはしなかった... 2018/07/30 Comment(27) 魔女の刻 (44) 告白 「うちの会社が」草場さんは真っ直ぐに私を見ながら言った。「くぬぎ市の前回の開発にも参加してた、って話は前にしたね」「うん、憶えてる。カフェくぬぎね」草場さんと最初に二人きりで時間を過ごした場所だ。「そ... 2018/07/23 Comment(52) 魔女の刻 (43) カットオーバー 結局、私はセレモニーでのアテンド業務を全うすることができなかった。今枝さんがパスワードを入力した直後は、KNGSSSに何の変化も現れず、私は不安と緊張を等分に味わいながら待った。高杉さんや今枝さんも同... 2018/07/17 Comment(51) 魔女の刻 (42) あなたが私にくれたもの 不意に周囲が薄暗くなった。大ホールの天井や壁面の照明が同時に落ちたんだ、と気付くのに数秒かかった。とはいえ、メインエントランスの他、数カ所に採光窓が設けられているので、視覚に不自由はない。誰が落とした... 2018/07/09 Comment(53) 魔女の刻 (41) インフルエンサー 午前7時にスマートフォンのアラームで叩き起こされた私は、数分間抗った後、渋々身体を起こした。眠りにつく直前の記憶が曖昧で、もしかするとスーツのまま寝てしまったか、と一瞬焦ったが、下着姿で毛布にくるまっ... 2018/07/02 Comment(60) 前のページへ 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 次のページへ SpecialPR
夜の翼 (6) セクションD オペレーションルームの中央で仁王立ちになって怒鳴っているのは、末永リンだった。肩までのストレートな黒髪をポニーテールにしている。普段は細い切れ長の目が、怒りのせいか大きく見開かれていた。16歳だが、1... 2019/08/05 Comment(2)
夜の翼 (5) 横浜ディレクトレート アーカム・テクノロジー・パートナーズ横浜ディレクトレートは、根岸森林公園の地下に設けられている。私がこの組織に迎えられる以前は、横浜駅近くのビルを拠点としていたそうだが、数年前にSPUからの大規模な攻... 2019/07/29 Comment(7)
夜の翼 (4) 現実度 私たちが地上に出たのは、すっかり陽が落ち、夜空に浮かぶオレンジ色の月が弱々しく存在を主張し始めた時刻だった。クイーンズスクエアの周辺道路は、多数のパトカーと救急車で埋め尽くされていた。殺気立った表情の... 2019/07/22 Comment(5)
夜の翼 (3) 非常階段のトゥチョ=トゥチョ人 「敵って」私は会議室のドアを見た。「警護は?」『応戦中です。ただ、ハンドガン程度の小火器しか装備していないので、じきに突破されると思われます』「ここは、セイフティポイントじゃないのか」セイフティポイン... 2019/07/16 Comment(3)
夜の翼 (2) スカウト 「スカウトって......」加々見シュンは、不審人物に向けるのがふさわしい視線を、私とサチに遠慮なく注いだ。「おじさんたち、ゲーム会社の人か何かかよ?」「いや違う」「アーカム・テクノロジー・パートナー... 2019/07/08 Comment(11)
夜の翼 (1) 公園のショゴス 私が公園に足を踏み入れたとき、黄昏と呼ばれる時刻まで一時間あまりを残していた。車から早足で歩いてきたせいで、じんわりと汗をかいている。今日は梅雨の切れ間で、空は美しく晴れているが、朝方まで降り続いてい... 2019/07/01 Comment(13)
高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (終) 「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマ・トピ・ザ・ニュース!今日もたくさんのアクセス、ありがとー!このコーナーは......」ピーター斎藤は、いつもと同じように陽気な声で番組を紹介している。私... 2019/03/18 Comment(93)
高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (3) ピーター斎藤は、どこか後ろめたそうに顔をそむけ、横目で私を見ていた。ネットテレビのカメラに撮られているときの陽気で自信満々な表情とは真逆だ。どちらが本当の姿なのだろう、と少し興味が沸いたが、今は心理学... 2019/03/15 Comment(8)
高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (2) 「はじめまして」ユカリが細い手を差し出した。「エマちゃんね?」ユカリがかけているスマートグラスのカメラとマイクを通して、丸顔でショートボブの女の子が、ユカリの手をおずおずと握り、小声で「よろしくお願い... 2019/03/13 Comment(9)
高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (1) 「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマ・トピ・ザ・ニュース!今日もたくさんのアクセス、ありがとー!このコーナーはネット界隈でバズってるバズってないに関係なく、元SEのボクが興味深いなーとか、こ... 2019/03/11 Comment(21)
福袋をめぐる妻の戦争 世の中には、経験するまでわからないことがたくさんある、と細川マモルは思い知らされた。大晦日の午後、暖房の効いたリビングでぼーっとテレビを見ていたマモルに、2歳年下の妻、ミユキが声をかけたのだ。「ね、こ... 2019/01/07 Comment(22)
冬の一日 うずくまるハトと、凍る街路樹......そんな歌詞が思わず口をついて出そうな陰鬱な午後だった。昨夜から関東地方の上空を占拠している重々しい雲が、ただでさえ弱々しい冬の陽光を無慈悲に遮断している。いつ雨... 2018/12/25 Comment(33)
10人いる! アーカム・テクノロジー・パートナーズ横浜ビルの3階の一室で、チーフ・システムエンジニアの佐藤は満足そうな顔でワイヤレスイヤホンに触れ、通話を終えた。飾り気のない事務用アームチェアをぐるりと回転させる。... 2018/09/10 Comment(26)
魔女の刻 (終) 大いなる遺産 秋が終わりに近づき、空気に冬の気配が感じられるようになった頃、Q-LICは11月末日をもって、地方創生ビジネス事業からの全面撤退を決定した、と発表した。一つの事業部が丸ごと解体され、200人以上の社員... 2018/08/13 Comment(75)
魔女の刻 (46) たったひとつの冴えたやりかた ゴーグルを返却して自席に戻った後、私は今日、予定されている作業を確認しながら、たった今目撃した奇妙な隠しコマンドの意味を考えていた。あれが何かの不具合でないと仮定するなら、誰が、何のために、こんなこと... 2018/08/06 Comment(24)
魔女の刻 (45) 機械の中の幽霊 白川さんが病院からいなくなった、と聞いたのは、7月第一週のことだった。できることならお見舞いに行きたかったのだが、病院の名前を知っていた今枝さんと一戸さんは、決して私たちに教えてくれようとはしなかった... 2018/07/30 Comment(27)
魔女の刻 (44) 告白 「うちの会社が」草場さんは真っ直ぐに私を見ながら言った。「くぬぎ市の前回の開発にも参加してた、って話は前にしたね」「うん、憶えてる。カフェくぬぎね」草場さんと最初に二人きりで時間を過ごした場所だ。「そ... 2018/07/23 Comment(52)
魔女の刻 (43) カットオーバー 結局、私はセレモニーでのアテンド業務を全うすることができなかった。今枝さんがパスワードを入力した直後は、KNGSSSに何の変化も現れず、私は不安と緊張を等分に味わいながら待った。高杉さんや今枝さんも同... 2018/07/17 Comment(51)
魔女の刻 (42) あなたが私にくれたもの 不意に周囲が薄暗くなった。大ホールの天井や壁面の照明が同時に落ちたんだ、と気付くのに数秒かかった。とはいえ、メインエントランスの他、数カ所に採光窓が設けられているので、視覚に不自由はない。誰が落とした... 2018/07/09 Comment(53)
魔女の刻 (41) インフルエンサー 午前7時にスマートフォンのアラームで叩き起こされた私は、数分間抗った後、渋々身体を起こした。眠りにつく直前の記憶が曖昧で、もしかするとスーツのまま寝てしまったか、と一瞬焦ったが、下着姿で毛布にくるまっ... 2018/07/02 Comment(60)