ひいらぎ飾ろう@クリスマス(後) クリスマスツリーと七面鳥、入手が困難なのは後者に決まっている。七面鳥の入手見込みが立ったという報告を受け、任務の9割方は完了だと安堵していた谷少尉は、すぐに別の問題に悩まされることになった。アンダーソ... 2015/12/25 Comment(9) ひいらぎ飾ろう@クリスマス(前) 「何が消えたって?」谷少尉は思わず訊き返した。「ツリーです、分隊長」サンキストは辛抱強く繰り返した。「中庭のクリスマスツリーが消失しました」ビーンこと谷少尉はこめかみを押さえた。午前3時過ぎまで様々な... 2015/12/24 Comment(8) ハローサマー、グッドバイ(終) 君の名は ぼくが港北基地から解放されたのは、8月も終わりに近づいた頃だった。その間、ひたすら事情聴取の日々が続いていた。最初の2日は下にも置かぬもてなしだった。生還した5人のバンド隊員たち――基地内で英雄のよう... 2015/12/22 Comment(60) ハローサマー、グッドバイ(43) 一握の砂 港北基地に帰還したぼくたちを迎えたのは、歓呼と花束ではなく、よくない知らせだった。地下トンネルを通って基地へ戻る途中、グラスソード中尉は港北基地と連絡を取り、臼井大尉と負傷者のために医療班の待機を要請... 2015/12/21 Comment(18) ハローサマー、グッドバイ(42) 後処理 目覚めるとブラウンアイズの瞳が目の前にある、という経験を、これまで2度した。意識が戻ったとき期待したのは3度目だったが、あいにく、ぼくの近くにいたのは仁志田さんだった。しかも、ぼくの方を見てさえいない... 2015/12/14 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(41) アンダーグラウンド EVヴァンから飛び出したブラウンアイズの動きは、豹のようにしなやかで、バレリーナのように優雅だった。一番近くにいた大柄なZの懐に入り込み、目にも留まらぬ払い腰で投げ飛ばすと、足を止めずに次の目標に突進... 2015/12/07 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(40) 黄泉の川が逆流する できれば正視したくない物は誰にでもある。家屋内に棲息する黒い害虫だという人もいれば、焼き魚の目玉という人もいるだろう。多くのプログラマにとっては「仕様変更」という言葉がそれだ。フライボーイ2から送られ... 2015/11/30 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(39) せめて人間らしく 羽沢駅(仮)は、JR東海道貨物線横浜羽沢駅と県道13号に挟まれたデルタ形状の地域に新駅として誕生するはずだったが、インシデントZで工事は中断し、未だに(仮)がついたままだ。周辺に目印になるような高いビ... 2015/11/24 Comment(12) ハローサマー、グッドバイ(38) 脱出 EVヴァンの後ろを走っているのは、お馴染みのツートンカラーに塗装されたミニパトだった。けたたましくサイレンを鳴らし、パトランプを点滅ながら接近してくる。路上のZたちは、もちろんその音と光に注意を惹きつ... 2015/11/16 Comment(13) ハローサマー、グッドバイ(37) 防衛戦 みなとみらい駅からクイーンズスクエアへと続く、地下3階から地上1階を結ぶ長いエスカレーターから上を見ると、モノリスのような黒い壁一面に刻まれたドイツ語の言葉がある。詩文のようだが、正確には詩ではなく、... 2015/11/09 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(36) 脱出計画 自分がただの駒にすぎないと知らされたとき、人は何をどう感じ、どんな反応を見せるのだろう。しかも、重要な使命を担っていると信じこんでいたとしたら。ボリスの場合は沈黙と拒絶だった。無理もない。ぼくは初めて... 2015/11/02 Comment(11) ハローサマー、グッドバイ(35) Point of Impact 「全員、動かないように」ボリスは繰り返した。「こう見えても、銃の撃ち方は知ってるんでね。少なくとも、臼井大尉とアックスを射殺するぐらいの自信はある。武器を床に置いてもらいましょうか。全員です」「全員、... 2015/10/26 Comment(23) ハローサマー、グッドバイ(34) 再起動 「やれやれ」谷少尉は穏やかな笑みを浮かべた。「そんなうさんくさい話に乗ると、本気で思ってるんですか?」「思ってませんよ」ボリスもあっさり返した。「あなたは仲間を見捨てられる人じゃない。他の隊員さんたち... 2015/10/20 Comment(10) ハローサマー、グッドバイ(33) ブラインドタッチ サンキストが小清水大佐の腕を必要以上の勢いで踏みつけ、カッターナイフが床を滑っていった。「てめえ」サンキストは憤怒で顔を歪めた。「ふざけるな!」「騒ぐな」谷少尉は顔をしかめながらも、平静な声で告げた。... 2015/10/13 Comment(13) ハローサマー、グッドバイ(32) ダーウィンの目 湿気が多く生暖かい空気が肺を満たしている。最初に感じたのは、そんな普段なら気にも止めない物理的現象だった。次に、巨人の手で脳を鷲掴みにされているような鈍いが不快な頭痛。それから遊離した魂が天井付近から... 2015/10/05 Comment(16) ハローサマー、グッドバイ(31) ワイルドカード 予想通り、ボリスは驚愕を絵に描いたような表情を浮かべていた。ただし、ぼくがそれを目にできたのは、ほんの一瞬のことだった。あっという間に動揺から立ち直ったボリスは、これまでのような傲岸不遜な言葉を発した... 2015/09/28 Comment(24) ハローサマー、グッドバイ(30) 陰謀のセオリー ぼくたちがベースキャンプに帰還したのは、13:00過ぎだった。時間がかかった2つの理由の1つは、負傷したアックスの状態が、本人が考えていたよりもずっと深刻だったことだ。アックスは「走れる」と言い張って... 2015/09/14 Comment(21) ハローサマー、グッドバイ(29) インピーダンス・ミスマッチ 通信を終えたサンキストは、トランシーバーを床に投げつけた。トランシーバーはバウンドして壁に当たったが、壊れた様子もない。「くそ。MIL規格か」サンキストは忌々しそうに吐き捨てた。「銃もそうだが、装備は... 2015/09/07 Comment(14) ハローサマー、グッドバイ(28) もう少し あと少し... 「防御態勢」柿本少尉は小声で命じた。「サンキスト、アックス、エスカレーターだ。キトンはそっちの階段を警戒しろ。ブラウンアイズはわかってるな?」全員が素早く動いた。柿本少尉とサンキスト、アックスは、立方... 2015/08/31 Comment(17) ハローサマー、グッドバイ(27) フォネティックコード 『それらしいのが......た』雑音だらけのサンキストの声がトランシーバーから聞こえた。『たぶん、これだと思う。電源が入ってるからな。このフロアの......だけ、電力供給されている......だ。何... 2015/08/24 Comment(19) 前のページへ 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 次のページへ SpecialPR
ひいらぎ飾ろう@クリスマス(後) クリスマスツリーと七面鳥、入手が困難なのは後者に決まっている。七面鳥の入手見込みが立ったという報告を受け、任務の9割方は完了だと安堵していた谷少尉は、すぐに別の問題に悩まされることになった。アンダーソ... 2015/12/25 Comment(9)
ひいらぎ飾ろう@クリスマス(前) 「何が消えたって?」谷少尉は思わず訊き返した。「ツリーです、分隊長」サンキストは辛抱強く繰り返した。「中庭のクリスマスツリーが消失しました」ビーンこと谷少尉はこめかみを押さえた。午前3時過ぎまで様々な... 2015/12/24 Comment(8)
ハローサマー、グッドバイ(終) 君の名は ぼくが港北基地から解放されたのは、8月も終わりに近づいた頃だった。その間、ひたすら事情聴取の日々が続いていた。最初の2日は下にも置かぬもてなしだった。生還した5人のバンド隊員たち――基地内で英雄のよう... 2015/12/22 Comment(60)
ハローサマー、グッドバイ(43) 一握の砂 港北基地に帰還したぼくたちを迎えたのは、歓呼と花束ではなく、よくない知らせだった。地下トンネルを通って基地へ戻る途中、グラスソード中尉は港北基地と連絡を取り、臼井大尉と負傷者のために医療班の待機を要請... 2015/12/21 Comment(18)
ハローサマー、グッドバイ(42) 後処理 目覚めるとブラウンアイズの瞳が目の前にある、という経験を、これまで2度した。意識が戻ったとき期待したのは3度目だったが、あいにく、ぼくの近くにいたのは仁志田さんだった。しかも、ぼくの方を見てさえいない... 2015/12/14 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(41) アンダーグラウンド EVヴァンから飛び出したブラウンアイズの動きは、豹のようにしなやかで、バレリーナのように優雅だった。一番近くにいた大柄なZの懐に入り込み、目にも留まらぬ払い腰で投げ飛ばすと、足を止めずに次の目標に突進... 2015/12/07 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(40) 黄泉の川が逆流する できれば正視したくない物は誰にでもある。家屋内に棲息する黒い害虫だという人もいれば、焼き魚の目玉という人もいるだろう。多くのプログラマにとっては「仕様変更」という言葉がそれだ。フライボーイ2から送られ... 2015/11/30 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(39) せめて人間らしく 羽沢駅(仮)は、JR東海道貨物線横浜羽沢駅と県道13号に挟まれたデルタ形状の地域に新駅として誕生するはずだったが、インシデントZで工事は中断し、未だに(仮)がついたままだ。周辺に目印になるような高いビ... 2015/11/24 Comment(12)
ハローサマー、グッドバイ(38) 脱出 EVヴァンの後ろを走っているのは、お馴染みのツートンカラーに塗装されたミニパトだった。けたたましくサイレンを鳴らし、パトランプを点滅ながら接近してくる。路上のZたちは、もちろんその音と光に注意を惹きつ... 2015/11/16 Comment(13)
ハローサマー、グッドバイ(37) 防衛戦 みなとみらい駅からクイーンズスクエアへと続く、地下3階から地上1階を結ぶ長いエスカレーターから上を見ると、モノリスのような黒い壁一面に刻まれたドイツ語の言葉がある。詩文のようだが、正確には詩ではなく、... 2015/11/09 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(36) 脱出計画 自分がただの駒にすぎないと知らされたとき、人は何をどう感じ、どんな反応を見せるのだろう。しかも、重要な使命を担っていると信じこんでいたとしたら。ボリスの場合は沈黙と拒絶だった。無理もない。ぼくは初めて... 2015/11/02 Comment(11)
ハローサマー、グッドバイ(35) Point of Impact 「全員、動かないように」ボリスは繰り返した。「こう見えても、銃の撃ち方は知ってるんでね。少なくとも、臼井大尉とアックスを射殺するぐらいの自信はある。武器を床に置いてもらいましょうか。全員です」「全員、... 2015/10/26 Comment(23)
ハローサマー、グッドバイ(34) 再起動 「やれやれ」谷少尉は穏やかな笑みを浮かべた。「そんなうさんくさい話に乗ると、本気で思ってるんですか?」「思ってませんよ」ボリスもあっさり返した。「あなたは仲間を見捨てられる人じゃない。他の隊員さんたち... 2015/10/20 Comment(10)
ハローサマー、グッドバイ(33) ブラインドタッチ サンキストが小清水大佐の腕を必要以上の勢いで踏みつけ、カッターナイフが床を滑っていった。「てめえ」サンキストは憤怒で顔を歪めた。「ふざけるな!」「騒ぐな」谷少尉は顔をしかめながらも、平静な声で告げた。... 2015/10/13 Comment(13)
ハローサマー、グッドバイ(32) ダーウィンの目 湿気が多く生暖かい空気が肺を満たしている。最初に感じたのは、そんな普段なら気にも止めない物理的現象だった。次に、巨人の手で脳を鷲掴みにされているような鈍いが不快な頭痛。それから遊離した魂が天井付近から... 2015/10/05 Comment(16)
ハローサマー、グッドバイ(31) ワイルドカード 予想通り、ボリスは驚愕を絵に描いたような表情を浮かべていた。ただし、ぼくがそれを目にできたのは、ほんの一瞬のことだった。あっという間に動揺から立ち直ったボリスは、これまでのような傲岸不遜な言葉を発した... 2015/09/28 Comment(24)
ハローサマー、グッドバイ(30) 陰謀のセオリー ぼくたちがベースキャンプに帰還したのは、13:00過ぎだった。時間がかかった2つの理由の1つは、負傷したアックスの状態が、本人が考えていたよりもずっと深刻だったことだ。アックスは「走れる」と言い張って... 2015/09/14 Comment(21)
ハローサマー、グッドバイ(29) インピーダンス・ミスマッチ 通信を終えたサンキストは、トランシーバーを床に投げつけた。トランシーバーはバウンドして壁に当たったが、壊れた様子もない。「くそ。MIL規格か」サンキストは忌々しそうに吐き捨てた。「銃もそうだが、装備は... 2015/09/07 Comment(14)
ハローサマー、グッドバイ(28) もう少し あと少し... 「防御態勢」柿本少尉は小声で命じた。「サンキスト、アックス、エスカレーターだ。キトンはそっちの階段を警戒しろ。ブラウンアイズはわかってるな?」全員が素早く動いた。柿本少尉とサンキスト、アックスは、立方... 2015/08/31 Comment(17)
ハローサマー、グッドバイ(27) フォネティックコード 『それらしいのが......た』雑音だらけのサンキストの声がトランシーバーから聞こえた。『たぶん、これだと思う。電源が入ってるからな。このフロアの......だけ、電力供給されている......だ。何... 2015/08/24 Comment(19)