罪と罰(17) ボーダーライン 「では、第2開発課の第1回定例ミーティングを始めます」やや照れながら私が宣言すると、メンバーたちが一斉に拍手を始めた。少し頬が熱くなるのを感じながら、私は軽く頭を下げて応えた。横に座っている五十嵐さん... 2013/10/21 Comment(13) 罪と罰(16) 夏の終わり 今年の夏は猛暑になるという気象庁の予報は大アタリで、9月が終わっても、まだ残暑が続いていた。暦の上でも気分的にもとっくに秋だというのに、いつまでも続く暑さにいいかげんうんざりだ。寒いのは比較的平気だが... 2013/10/15 Comment(15) 罪と罰(15) ラストチャンス 「忙しいんですがね」武田さんは腕を組んで、五十嵐さんに非友好的な視線を向けた。「どんなご用でしょうか?」「シノハラさんの件だ。俺は君に言ったはずだな。仕様書作成は必要最小限度にとどめて、実装の方を進め... 2013/10/07 Comment(36) 罪と罰(14) あるいは仕様書でいっぱいの海 宣言したとおり、それから数カ月の間、五十嵐さんはAチームの指揮をほとんど取らず、週に2回の定例ミーティングに顔を出すこともなくなっていった。その間、何をしていたのかというと、武田さんたち年長組を相手に... 2013/09/30 Comment(18) 罪と罰(13) ハーモニー 私たちのプロダクトの名前は、<ハーモニー>と決定した。メンバーからいくつかの候補を出してもらい、「就活くん」のようなセンスのない名称を除外した後、最終的には無記名投票で決めた。決定したとき、この名称の... 2013/09/24 Comment(9) 罪と罰(12) 成果主義と絶対評価 「......そういうわけで、すでにやってもらっているとは思いますが、自己評価の提出をお願いします」4月の最初の定例ミーティングで、中村課長は通達した。「えーと、9日の水曜日までに上長に提出してくださ... 2013/09/17 Comment(15) 罪と罰(11) 変革への序章 五十嵐さんがイニシアティブを設立した背景を知ったことが原因だったのか、Aチームメンバーの意識は目に見えて変わっていった。元々、五十嵐さんの登場によって変化の兆しはあったものの、それがさらに加速された形... 2013/09/09 Comment(31) 罪と罰(10) その汚れた起源 それは荒木准教授が大手SIer――A社としておこう――で働いていた時の話だった。A社は、いわゆる「元請け」の立場にあったので、在籍するシステムエンジニアの仕事としては、設計書を書いて下請けに実装を命じ... 2013/09/02 Comment(8) 罪と罰(9) 大学訪問 「女子大!」興奮した顔の守屋が叫んだ。「女子大っすか!」「守屋、声が大きい」私はたしなめたが、興奮状態の若い男子はそれぐらいで沈静化しなかった。「だって女子大っすよ、女子大。女子大ってことは、女子大生... 2013/08/26 Comment(12) 罪と罰(8) ミーティングの価値 翌週の月曜日、武田さんは何事もなかったように出社した。金曜日のAチームのミーティングの後、オフィスに戻った私たちは、武田さんが早退したと知らされて、さすがに気まずい思いで顔を見合わせた。「体調不良だっ... 2013/08/19 Comment(16) 罪と罰(7) 経験の価値 「できてない?」五十嵐さんは眉をひそめた。「あれだけ時間があったのに?」金曜日。Aチームの定例ミーティングだった。宿題の提出を求めた五十嵐さんに対して、ジャンケンで負けたらしい木下が、まだできていませ... 2013/08/12 Comment(19) 罪と罰(6) ストーリー 「くそ」母親が聞いたら額に青筋が浮き上がりそうな言葉が、思わず口から漏れた。「なんでこう面倒なのよ」iOSのネイティブアプリケーション開発は、最初のハードルが高すぎる。私が最初に思ったのはそのことだっ... 2013/08/05 Comment(5) 罪と罰(5) 商品開発 「そんでどうよ、そっちのAチームは?」「どうって言われても」武田さんの問いに私は口ごもった。「まだ、走り出してもいないので、何とも......」五十嵐さんによってプロジェクトA発足が発表された週、Aチ... 2013/07/29 Comment(13) 罪と罰(4) プロジェクトA 三度、プレゼンテーションルーム内にざわめきがあふれた。「AdobeのAIR?あのAIRですか?」武田さんが挙手もしないで叫ぶように訊いたが、五十嵐さんは冷静に答えた。「そう、あのAIRだよ」「それはち... 2013/07/22 Comment(22) 罪と罰(3) ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル Webシステム開発部では、毎週月曜日の10時から定例ミーティングを行っている。メンバーが順番に先週の作業内容と今週の予定を報告し、最後に中村課長が連絡事項などを話して終わる。月に1度ぐらいは瀬川部長も... 2013/07/16 Comment(18) 罪と罰(2) 粗にして野だが卑ではない 翌週の月曜日、出社した私は課長席の隣にデスクが増えていることに気付いた。たぶん、土日のどちらかで搬入されたのだろう。デスクの上には21インチワイドモニタとミニタワーPCが設置されていた。村瀬さんがワイ... 2013/07/08 Comment(12) 罪と罰(1) 西からやってきた男 「いや、だからさ」守屋が言った。「引数を1個増やせばすむじゃんかよ。なんでそうしないんだよ」「お前、よく考えてもの言ってるか?」木下が答えた。「この先、項目が1つ増えたら、また引数増やすのか?そのたび... 2013/07/01 Comment(14) 高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (終) 午前4時を回ったころ、そのウワサは2chのみならず、Twitterや、ブログでも話題になり始めていた。「シルバースプーン」と「人工知能」で検索すると、少なからぬ数がヒットし、時間の経過とともに少しずつ... 2013/04/12 Comment(19) 高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (4) またもや深夜の電話だった。「消えた?」私は訊き返した。「会員データが?」『そうなんです』桐野の声は、音声解析ソフトの心理分析グラフを見なくてもわかるぐらい動揺していた。『三村さんからのメールを見て、訴... 2013/04/11 Comment(11) 高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (3) 13時ちょうど。ユカリは、横浜みなとみらいのランドマークタワーにあるスターバックスにいた。向かいに座っているのは、どうみても標準より20キロほどオーバーしている体重を持つ46才の独身男性で、ルックスは... 2013/04/10 Comment(2) 前のページへ 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 次のページへ SpecialPR
罪と罰(17) ボーダーライン 「では、第2開発課の第1回定例ミーティングを始めます」やや照れながら私が宣言すると、メンバーたちが一斉に拍手を始めた。少し頬が熱くなるのを感じながら、私は軽く頭を下げて応えた。横に座っている五十嵐さん... 2013/10/21 Comment(13)
罪と罰(16) 夏の終わり 今年の夏は猛暑になるという気象庁の予報は大アタリで、9月が終わっても、まだ残暑が続いていた。暦の上でも気分的にもとっくに秋だというのに、いつまでも続く暑さにいいかげんうんざりだ。寒いのは比較的平気だが... 2013/10/15 Comment(15)
罪と罰(15) ラストチャンス 「忙しいんですがね」武田さんは腕を組んで、五十嵐さんに非友好的な視線を向けた。「どんなご用でしょうか?」「シノハラさんの件だ。俺は君に言ったはずだな。仕様書作成は必要最小限度にとどめて、実装の方を進め... 2013/10/07 Comment(36)
罪と罰(14) あるいは仕様書でいっぱいの海 宣言したとおり、それから数カ月の間、五十嵐さんはAチームの指揮をほとんど取らず、週に2回の定例ミーティングに顔を出すこともなくなっていった。その間、何をしていたのかというと、武田さんたち年長組を相手に... 2013/09/30 Comment(18)
罪と罰(13) ハーモニー 私たちのプロダクトの名前は、<ハーモニー>と決定した。メンバーからいくつかの候補を出してもらい、「就活くん」のようなセンスのない名称を除外した後、最終的には無記名投票で決めた。決定したとき、この名称の... 2013/09/24 Comment(9)
罪と罰(12) 成果主義と絶対評価 「......そういうわけで、すでにやってもらっているとは思いますが、自己評価の提出をお願いします」4月の最初の定例ミーティングで、中村課長は通達した。「えーと、9日の水曜日までに上長に提出してくださ... 2013/09/17 Comment(15)
罪と罰(11) 変革への序章 五十嵐さんがイニシアティブを設立した背景を知ったことが原因だったのか、Aチームメンバーの意識は目に見えて変わっていった。元々、五十嵐さんの登場によって変化の兆しはあったものの、それがさらに加速された形... 2013/09/09 Comment(31)
罪と罰(10) その汚れた起源 それは荒木准教授が大手SIer――A社としておこう――で働いていた時の話だった。A社は、いわゆる「元請け」の立場にあったので、在籍するシステムエンジニアの仕事としては、設計書を書いて下請けに実装を命じ... 2013/09/02 Comment(8)
罪と罰(9) 大学訪問 「女子大!」興奮した顔の守屋が叫んだ。「女子大っすか!」「守屋、声が大きい」私はたしなめたが、興奮状態の若い男子はそれぐらいで沈静化しなかった。「だって女子大っすよ、女子大。女子大ってことは、女子大生... 2013/08/26 Comment(12)
罪と罰(8) ミーティングの価値 翌週の月曜日、武田さんは何事もなかったように出社した。金曜日のAチームのミーティングの後、オフィスに戻った私たちは、武田さんが早退したと知らされて、さすがに気まずい思いで顔を見合わせた。「体調不良だっ... 2013/08/19 Comment(16)
罪と罰(7) 経験の価値 「できてない?」五十嵐さんは眉をひそめた。「あれだけ時間があったのに?」金曜日。Aチームの定例ミーティングだった。宿題の提出を求めた五十嵐さんに対して、ジャンケンで負けたらしい木下が、まだできていませ... 2013/08/12 Comment(19)
罪と罰(6) ストーリー 「くそ」母親が聞いたら額に青筋が浮き上がりそうな言葉が、思わず口から漏れた。「なんでこう面倒なのよ」iOSのネイティブアプリケーション開発は、最初のハードルが高すぎる。私が最初に思ったのはそのことだっ... 2013/08/05 Comment(5)
罪と罰(5) 商品開発 「そんでどうよ、そっちのAチームは?」「どうって言われても」武田さんの問いに私は口ごもった。「まだ、走り出してもいないので、何とも......」五十嵐さんによってプロジェクトA発足が発表された週、Aチ... 2013/07/29 Comment(13)
罪と罰(4) プロジェクトA 三度、プレゼンテーションルーム内にざわめきがあふれた。「AdobeのAIR?あのAIRですか?」武田さんが挙手もしないで叫ぶように訊いたが、五十嵐さんは冷静に答えた。「そう、あのAIRだよ」「それはち... 2013/07/22 Comment(22)
罪と罰(3) ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル Webシステム開発部では、毎週月曜日の10時から定例ミーティングを行っている。メンバーが順番に先週の作業内容と今週の予定を報告し、最後に中村課長が連絡事項などを話して終わる。月に1度ぐらいは瀬川部長も... 2013/07/16 Comment(18)
罪と罰(2) 粗にして野だが卑ではない 翌週の月曜日、出社した私は課長席の隣にデスクが増えていることに気付いた。たぶん、土日のどちらかで搬入されたのだろう。デスクの上には21インチワイドモニタとミニタワーPCが設置されていた。村瀬さんがワイ... 2013/07/08 Comment(12)
罪と罰(1) 西からやってきた男 「いや、だからさ」守屋が言った。「引数を1個増やせばすむじゃんかよ。なんでそうしないんだよ」「お前、よく考えてもの言ってるか?」木下が答えた。「この先、項目が1つ増えたら、また引数増やすのか?そのたび... 2013/07/01 Comment(14)
高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (終) 午前4時を回ったころ、そのウワサは2chのみならず、Twitterや、ブログでも話題になり始めていた。「シルバースプーン」と「人工知能」で検索すると、少なからぬ数がヒットし、時間の経過とともに少しずつ... 2013/04/12 Comment(19)
高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (4) またもや深夜の電話だった。「消えた?」私は訊き返した。「会員データが?」『そうなんです』桐野の声は、音声解析ソフトの心理分析グラフを見なくてもわかるぐらい動揺していた。『三村さんからのメールを見て、訴... 2013/04/11 Comment(11)
高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (3) 13時ちょうど。ユカリは、横浜みなとみらいのランドマークタワーにあるスターバックスにいた。向かいに座っているのは、どうみても標準より20キロほどオーバーしている体重を持つ46才の独身男性で、ルックスは... 2013/04/10 Comment(2)