鼠と竜のゲーム(7) 起訴猶予 タカシのT署での生活は、当初の緊張感がすっかり抜け落ち、怠惰なサイクルで回っていくようになっていた。取り調べは相変わらず小林警部補によって続いていたが、双方ともに手詰まりといった感があった。警察側は新... 2012/11/05 Comment(15) 鼠と竜のゲーム(6) 接見、謎のコード、実況見分 裁判所で裁判官と面接するまで、タカシはまだ希望を捨て去ってはいなかった。検察が勾留請求を行ったとしても、裁判官にきちんと主張すれば、もしくは警察で自分の作成したプログラムの解析が完了すれば、T市立図書... 2012/10/29 Comment(3) 鼠と竜のゲーム(5) 消えたソース その日ぼくは、帰宅してからも、寝る前に何度かT市立図書館事件についての情報をネットで検索してみた。相変わらず、Twitterや2chにはさまざまな意見や憶測や非難の書き込みが続いていたものの、大手メデ... 2012/10/22 Comment(12) 鼠と竜のゲーム(4) 検察取調 これまでタカシは、自分が暮らしている国が、法治国家であるということを疑ったことはない。法を守り、きちんと税金を納めていれば、自分と家族の安全は法によって保護されているのだと信じていた。もちろん冤罪のニ... 2012/10/15 Comment(15) 鼠と竜のゲーム(3) 逮捕報道 ぼくの名前は井上ヨシオ。横浜市内にある小さなベンチャー企業、サードアイシステムに勤務している。25才、独身。趣味は映画と読書。最初からこの業界にいたわけではない。IT業界の悲惨な現実は耳にしていたので... 2012/10/09 Comment(10) 鼠と竜のゲーム(2) 取り調べ ワンボックスカーに乗せられて数分ほど経過したところで、ようやくタカシの動揺も静まってきた。同時に、寒気にも似た恐怖感が、実感となって身にしみてくる。まだまだ冷静な精神状態とはほど遠いものの、タカシは隣... 2012/10/01 Comment(8) 鼠と竜のゲーム(1) 家宅捜索 あなたはもう結末を知っている――T市立図書館システムにまつわる拙速な逮捕劇、そしてクロラ氏が最終的に名誉を回復したいきさつを。だが、あなたは発端――この事件の遠因となった1人の男の不可解な暗躍の理由を... 2012/09/24 Comment(20) 冷たい方程式(終) エピローグ 「亀井くん、辞めちゃったねえ」磯貝課長はつぶやいた。「もうちょっと残ってくれたらよかったのに」「そうですね」あたしは無難に応じた。2月4日、月曜日。新勤怠管理システムのカットオーバーの日だった。2月中... 2012/07/30 Comment(133) 冷たい方程式(28) ぼくたちの失敗 渕上マネージャは、その隣に立つ磯貝課長と、無表情のまま何事か話していた。あたしたちを見ると、2人は同時に口をつぐんだ。すでにデモは終了したようで、会議室には人気がない。渕上マネージャの姿を見た途端、亀... 2012/07/23 Comment(221) 冷たい方程式(27) この世界の片隅に マシンルームの奥、勤怠管理システムサーバが格納されたラックの前の床に、亀井くんはあぐらをかいていた。その目は、憑かれたようにサーバのHDDランプを見つめている。まるで、その点滅から有意の信号を読み取っ... 2012/07/17 Comment(112) 冷たい方程式(26) Daydream Believer デモは予定どおりに進行していたが、参加者の反応は微妙だった。大きな不満はないけれど、手放しで絶賛するほどでもない、といったところだろうか。そんな中途半端な評価の原因は、不定期に発生するレスポンス遅延に... 2012/07/09 Comment(82) 冷たい方程式(25) レスポンスの速さはどれくらい 後になって、あれは渕上マネージャ流の踏み絵だったのかなと思うようになった。あたしが自分の感情のままに、ホライゾンシステムを、ムツミさんを選んでいたら、磯貝課長が言ったように異動を命じられることになった... 2012/07/02 Comment(510) 冷たい方程式(24) 冷たい方程式 『あのですね、日比野さん』VoIPで届けられる東海林さんの声は、うんざりしているのを隠そうともしていなかった。『それだと自己結合になるじゃないですか。ご存じだと思いますが、自己結合というのはコストが高... 2012/06/25 Comment(213) 冷たい方程式(23) 棚卸しにうってつけの日 翌週の月曜日の朝、全社員向けに臨時人事発令が通達された。経営戦略本部ITマネジメント課開発グループ亀井ヒデアキ上記の者を、懲戒の上、減俸処分とする。理由:スタッフ社員規定第7条第2節第1項および第3項... 2012/06/18 Comment(43) 冷たい方程式(22) 不都合な真実 12月6日、木曜日、午前10時。渕上マネージャが、突然、緊急ミーティングを招集した。勤怠管理システムリプレイスプロジェクトに関わる全員が参加を求められた。「急になんですかね?」会議室に向かう途中、亀井... 2012/06/11 Comment(150) 冷たい方程式(21) 笑顔の行方 フォローはします、と八木社長には言ったものの、実際にあたしができることは限られていた。12月にすべての実装を終える、というスケジュールには1日の変更もないのに、あたしや亀井くんは、相変わらず30分以上... 2012/06/04 Comment(159) 冷たい方程式(20) 2人目の脱落者 週が替わってもムツミさんは復帰しなかった。報告に訪れた八木社長の話によると、やはり疲労が相当たまっていたようで、ドクターストップがかかったらしい。とりあえず、今週いっぱいは休養して、来週のことは週末時... 2012/05/28 Comment(80) 冷たい方程式(19) 指揮官不在のチーム 幸いムツミさんは、めまいと貧血を起こしただけで、たいしたことはなかった。ただし真面目で責任感も強い彼女のことなので、自分の病状について過少申告している可能性は十分にある。寝不足、ストレス、少ない食事、... 2012/05/21 Comment(78) 冷たい方程式(18) 第2の協力会社 11月も最後の週になり、空気がすっかり冷たくなってきた。ホライゾンチームには、新たなメンバーが補充され、表面上は小川くんのドロップアウトをリカバリして、何事もなかったように開発を進めていた。新メンバー... 2012/05/14 Comment(206) 冷たい方程式(17) 最初の脱落者 11月第3週。タスクボードのタスクの減少度は、微々たるもので、スケジュールは次第に遅れが目立つようになっていた。それと比例するように悪くなっているのは、ムツミさんの顔色だった。ホライゾンシステムから送... 2012/05/07 Comment(183) 前のページへ 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 次のページへ SpecialPR
鼠と竜のゲーム(7) 起訴猶予 タカシのT署での生活は、当初の緊張感がすっかり抜け落ち、怠惰なサイクルで回っていくようになっていた。取り調べは相変わらず小林警部補によって続いていたが、双方ともに手詰まりといった感があった。警察側は新... 2012/11/05 Comment(15)
鼠と竜のゲーム(6) 接見、謎のコード、実況見分 裁判所で裁判官と面接するまで、タカシはまだ希望を捨て去ってはいなかった。検察が勾留請求を行ったとしても、裁判官にきちんと主張すれば、もしくは警察で自分の作成したプログラムの解析が完了すれば、T市立図書... 2012/10/29 Comment(3)
鼠と竜のゲーム(5) 消えたソース その日ぼくは、帰宅してからも、寝る前に何度かT市立図書館事件についての情報をネットで検索してみた。相変わらず、Twitterや2chにはさまざまな意見や憶測や非難の書き込みが続いていたものの、大手メデ... 2012/10/22 Comment(12)
鼠と竜のゲーム(4) 検察取調 これまでタカシは、自分が暮らしている国が、法治国家であるということを疑ったことはない。法を守り、きちんと税金を納めていれば、自分と家族の安全は法によって保護されているのだと信じていた。もちろん冤罪のニ... 2012/10/15 Comment(15)
鼠と竜のゲーム(3) 逮捕報道 ぼくの名前は井上ヨシオ。横浜市内にある小さなベンチャー企業、サードアイシステムに勤務している。25才、独身。趣味は映画と読書。最初からこの業界にいたわけではない。IT業界の悲惨な現実は耳にしていたので... 2012/10/09 Comment(10)
鼠と竜のゲーム(2) 取り調べ ワンボックスカーに乗せられて数分ほど経過したところで、ようやくタカシの動揺も静まってきた。同時に、寒気にも似た恐怖感が、実感となって身にしみてくる。まだまだ冷静な精神状態とはほど遠いものの、タカシは隣... 2012/10/01 Comment(8)
鼠と竜のゲーム(1) 家宅捜索 あなたはもう結末を知っている――T市立図書館システムにまつわる拙速な逮捕劇、そしてクロラ氏が最終的に名誉を回復したいきさつを。だが、あなたは発端――この事件の遠因となった1人の男の不可解な暗躍の理由を... 2012/09/24 Comment(20)
冷たい方程式(終) エピローグ 「亀井くん、辞めちゃったねえ」磯貝課長はつぶやいた。「もうちょっと残ってくれたらよかったのに」「そうですね」あたしは無難に応じた。2月4日、月曜日。新勤怠管理システムのカットオーバーの日だった。2月中... 2012/07/30 Comment(133)
冷たい方程式(28) ぼくたちの失敗 渕上マネージャは、その隣に立つ磯貝課長と、無表情のまま何事か話していた。あたしたちを見ると、2人は同時に口をつぐんだ。すでにデモは終了したようで、会議室には人気がない。渕上マネージャの姿を見た途端、亀... 2012/07/23 Comment(221)
冷たい方程式(27) この世界の片隅に マシンルームの奥、勤怠管理システムサーバが格納されたラックの前の床に、亀井くんはあぐらをかいていた。その目は、憑かれたようにサーバのHDDランプを見つめている。まるで、その点滅から有意の信号を読み取っ... 2012/07/17 Comment(112)
冷たい方程式(26) Daydream Believer デモは予定どおりに進行していたが、参加者の反応は微妙だった。大きな不満はないけれど、手放しで絶賛するほどでもない、といったところだろうか。そんな中途半端な評価の原因は、不定期に発生するレスポンス遅延に... 2012/07/09 Comment(82)
冷たい方程式(25) レスポンスの速さはどれくらい 後になって、あれは渕上マネージャ流の踏み絵だったのかなと思うようになった。あたしが自分の感情のままに、ホライゾンシステムを、ムツミさんを選んでいたら、磯貝課長が言ったように異動を命じられることになった... 2012/07/02 Comment(510)
冷たい方程式(24) 冷たい方程式 『あのですね、日比野さん』VoIPで届けられる東海林さんの声は、うんざりしているのを隠そうともしていなかった。『それだと自己結合になるじゃないですか。ご存じだと思いますが、自己結合というのはコストが高... 2012/06/25 Comment(213)
冷たい方程式(23) 棚卸しにうってつけの日 翌週の月曜日の朝、全社員向けに臨時人事発令が通達された。経営戦略本部ITマネジメント課開発グループ亀井ヒデアキ上記の者を、懲戒の上、減俸処分とする。理由:スタッフ社員規定第7条第2節第1項および第3項... 2012/06/18 Comment(43)
冷たい方程式(22) 不都合な真実 12月6日、木曜日、午前10時。渕上マネージャが、突然、緊急ミーティングを招集した。勤怠管理システムリプレイスプロジェクトに関わる全員が参加を求められた。「急になんですかね?」会議室に向かう途中、亀井... 2012/06/11 Comment(150)
冷たい方程式(21) 笑顔の行方 フォローはします、と八木社長には言ったものの、実際にあたしができることは限られていた。12月にすべての実装を終える、というスケジュールには1日の変更もないのに、あたしや亀井くんは、相変わらず30分以上... 2012/06/04 Comment(159)
冷たい方程式(20) 2人目の脱落者 週が替わってもムツミさんは復帰しなかった。報告に訪れた八木社長の話によると、やはり疲労が相当たまっていたようで、ドクターストップがかかったらしい。とりあえず、今週いっぱいは休養して、来週のことは週末時... 2012/05/28 Comment(80)
冷たい方程式(19) 指揮官不在のチーム 幸いムツミさんは、めまいと貧血を起こしただけで、たいしたことはなかった。ただし真面目で責任感も強い彼女のことなので、自分の病状について過少申告している可能性は十分にある。寝不足、ストレス、少ない食事、... 2012/05/21 Comment(78)
冷たい方程式(18) 第2の協力会社 11月も最後の週になり、空気がすっかり冷たくなってきた。ホライゾンチームには、新たなメンバーが補充され、表面上は小川くんのドロップアウトをリカバリして、何事もなかったように開発を進めていた。新メンバー... 2012/05/14 Comment(206)
冷たい方程式(17) 最初の脱落者 11月第3週。タスクボードのタスクの減少度は、微々たるもので、スケジュールは次第に遅れが目立つようになっていた。それと比例するように悪くなっているのは、ムツミさんの顔色だった。ホライゾンシステムから送... 2012/05/07 Comment(183)