冷たい方程式(16) ブルックスの法則 11月1日木曜日、雨の午後。雨って――とても平和な音がする、とか何とかほざいたのは、カポーティの短編の登場人物だったか。あたしは、応接室の窓からぼんやり外を眺めながら、そんなどうでもいいことを考えてい... 2012/05/01 Comment(68) 冷たい方程式(15) もしプロジェクトマネージャが手当たり次第にマネジメント本を読んだら 次の朝、出社したあたしは、自分の席の後ろに、昨日まではなかった物体を発見して少し驚いた。「なんじゃこりゃ?」それは新品のホワイトボードだった。幅120センチぐらいでキャスター付き。会議室などに置いてあ... 2012/04/23 Comment(56) 冷たい方程式(14) 過去の影 渕上マネージャ式マネジメントによって生じた、数少ない良い面の1つは、チームワークが生まれたことだ。国民感情が不満に傾くと、外敵をでっち上げて見せ掛けの団結感を作り出す、ということは無能な政治家や指導者... 2012/04/16 Comment(56) 冷たい方程式(13) 女には向かない職業 「ムツミさん、お昼に行こうか」ムツミさんはキーを叩く手を止めると、ctrl+Sでソースを保存して、にっこり笑った。「はい、行きます」「あ、じゃあ、オレも」亀井くんがそそくさと立ち上がりかけたが、あたし... 2012/04/09 Comment(30) 冷たい方程式(12) 渕上方式における進捗の曖昧さ回避 進捗報告ミーティングとして指定された14時30分。あたしは手ぶらでミーティングルームに入った。自分の担当分についてなら、大抵のことには答えられる自信があったから。先に来ていた渕上マネージャは、何かのチ... 2012/04/02 Comment(20) 冷たい方程式(11) マイクロマネジメント 宣言した通り、渕上マネージャは、開発のあらゆる局面で独自の精査を開始した。まず、作業日報の提出が義務づけられた。これは、その日に行った作業内容を記入するもので、退社前に渕上マネージャに提出し、確認印を... 2012/03/26 Comment(20) 冷たい方程式(10) 誰がためにマネジメントはある やはりというか、当然というか、10月1日までにすべての仕様書は完成しなかった。正確には、ホライゾンシステムさんの必死の努力によって、仕様書自体は送られてきていたのだが、渕上マネージャが、片っ端から「不... 2012/03/19 Comment(58) 冷たい方程式(9) 原則と現実 八木社長とムツミさんは、指定の時刻より10分ほど早く現れた。総務部の受付業務は17時30分で終わってしまうので、反対側の警備センターから入ってもらう。「遅い時間にすみません」八木社長は頭を下げた。「い... 2012/03/12 Comment(40) 冷たい方程式(8) 細部に宿るのは神か悪魔か 9月の最後の週。来週から下期だというのに、秋が近づいてくる気配すらない。同じように設計フェーズの終わりも見えてこなかった。スケジュール通りであれば、すでに詳細仕様書は全て完成していて、渕上マネージャの... 2012/03/05 Comment(37) 冷たい方程式(7) 加速する負担 ホライゾンシステムの八木社長は、次の朝、一番で飛んできた。いつものように、ムツミさんが同行している。昨日の夜、あたしは、渕上マネージャの要望――実質的には要求だ――として、作成して欲しい仕様書の種類と... 2012/02/27 Comment(13) 冷たい方程式(6) 強者の論理 9月3日、月曜日。あたしは、三度来社したホライゾンシステムの八木社長とムツミさんに、新しいPMとして、渕上マネージャを紹介した。渕上マネージャは、ここでも時間をムダにしなかった。名刺交換を終えて、全員... 2012/02/20 Comment(20) 冷たい方程式(5) コストダウンの技術 次に、渕上マネージャがホワイトボードに書いたのは、OSだった。「OSをRHELにしたのはなぜだ?」質問の意図がよくわからない。あたしは左右を見たが、上司からも後輩からも助けは得られそうになかったので、... 2012/02/13 Comment(30) 冷たい方程式(4) コストカッター その週の残りの数日は、業務系の設計をまとめたり、亀井くんのテーブル設計を手伝ったりと、あわただしく過ぎていった。業務系の画面は、画面数こそ少ないものの、1つの画面がかなり多機能になるので、人事部の担当... 2012/02/06 Comment(17) 冷たい方程式(3) 10月1日では遅すぎる 8月20日、月曜日。ホライゾンシステムの八木社長と片寄ムツミさんは、約束の15時ジャストに来社した。この打ち合わせは、本来なら8月上旬あたりに行う予定だったのだが、第2週はお互いに都合のよい日が調整で... 2012/01/30 Comment(1) 冷たい方程式(2) まだ基本設計書じゃない 他の会社はどうかしらないが、モリシタ精機では「社内SE」は、「IT関係の何でも屋さん」と同義語である。組織上は、開発グループ、インフラグループと別れていても、その境界は実のところ曖昧そのもの。開発グル... 2012/01/23 Comment(8) 冷たい方程式(1) 技術力は勘定に入れません 電話が鳴った。あたしはワンコールで受話器を取り上げた。別に待ちかねていたわけではなく、朝から続くしつこい頭痛に干渉する電子音を一刻も早く断ち切りたかっただけだ。「はい、日比野です」『受付です。ホライゾ... 2012/01/16 Comment(12) 人形つかい(終) エピローグ 2月1日午前9時、「承認くん」は無事に本番稼働した。橋本さんが電話してきたトラブルはたいした問題ではなかった。ログに出ていた、java.lang.OutOfMemoryError:Javaheapsp... 2011/10/24 Comment(37) 人形つかい(22) それでも、生きてゆく お許しをもらったぼくたちは、一度、港北工場の敷地から出た。数千人が勤務する工場なので、近くには喫茶店かレストランがたくさんあるだろう、と思っていたが、意外に数は少ない。たぶん工場内に――社員には――安... 2011/10/17 Comment(33) 人形つかい(21) 4で割り切れる年 プロセス3は、予定より7分ほど遅れたものの、無事に完了した。橋本さんは以降のプロセスの予定に合わせるために、結果チェックを5分で終わらせると、すぐにプロセス4を実行した。プロセス3からプロセス9は、同... 2011/10/10 Comment(32) 人形つかい(20) 深夜プラス1 「例外出ました!」橋本さんがうわずった声で告げた。「細川」対象的に落ち着き払った声で、東海林さんがぼくを呼んだ。「場所は?」「A01F003の193行目です。やっぱりヌルポです」東海林さんは素早くソー... 2011/10/03 Comment(21) 前のページへ 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 次のページへ SpecialPR
冷たい方程式(16) ブルックスの法則 11月1日木曜日、雨の午後。雨って――とても平和な音がする、とか何とかほざいたのは、カポーティの短編の登場人物だったか。あたしは、応接室の窓からぼんやり外を眺めながら、そんなどうでもいいことを考えてい... 2012/05/01 Comment(68)
冷たい方程式(15) もしプロジェクトマネージャが手当たり次第にマネジメント本を読んだら 次の朝、出社したあたしは、自分の席の後ろに、昨日まではなかった物体を発見して少し驚いた。「なんじゃこりゃ?」それは新品のホワイトボードだった。幅120センチぐらいでキャスター付き。会議室などに置いてあ... 2012/04/23 Comment(56)
冷たい方程式(14) 過去の影 渕上マネージャ式マネジメントによって生じた、数少ない良い面の1つは、チームワークが生まれたことだ。国民感情が不満に傾くと、外敵をでっち上げて見せ掛けの団結感を作り出す、ということは無能な政治家や指導者... 2012/04/16 Comment(56)
冷たい方程式(13) 女には向かない職業 「ムツミさん、お昼に行こうか」ムツミさんはキーを叩く手を止めると、ctrl+Sでソースを保存して、にっこり笑った。「はい、行きます」「あ、じゃあ、オレも」亀井くんがそそくさと立ち上がりかけたが、あたし... 2012/04/09 Comment(30)
冷たい方程式(12) 渕上方式における進捗の曖昧さ回避 進捗報告ミーティングとして指定された14時30分。あたしは手ぶらでミーティングルームに入った。自分の担当分についてなら、大抵のことには答えられる自信があったから。先に来ていた渕上マネージャは、何かのチ... 2012/04/02 Comment(20)
冷たい方程式(11) マイクロマネジメント 宣言した通り、渕上マネージャは、開発のあらゆる局面で独自の精査を開始した。まず、作業日報の提出が義務づけられた。これは、その日に行った作業内容を記入するもので、退社前に渕上マネージャに提出し、確認印を... 2012/03/26 Comment(20)
冷たい方程式(10) 誰がためにマネジメントはある やはりというか、当然というか、10月1日までにすべての仕様書は完成しなかった。正確には、ホライゾンシステムさんの必死の努力によって、仕様書自体は送られてきていたのだが、渕上マネージャが、片っ端から「不... 2012/03/19 Comment(58)
冷たい方程式(9) 原則と現実 八木社長とムツミさんは、指定の時刻より10分ほど早く現れた。総務部の受付業務は17時30分で終わってしまうので、反対側の警備センターから入ってもらう。「遅い時間にすみません」八木社長は頭を下げた。「い... 2012/03/12 Comment(40)
冷たい方程式(8) 細部に宿るのは神か悪魔か 9月の最後の週。来週から下期だというのに、秋が近づいてくる気配すらない。同じように設計フェーズの終わりも見えてこなかった。スケジュール通りであれば、すでに詳細仕様書は全て完成していて、渕上マネージャの... 2012/03/05 Comment(37)
冷たい方程式(7) 加速する負担 ホライゾンシステムの八木社長は、次の朝、一番で飛んできた。いつものように、ムツミさんが同行している。昨日の夜、あたしは、渕上マネージャの要望――実質的には要求だ――として、作成して欲しい仕様書の種類と... 2012/02/27 Comment(13)
冷たい方程式(6) 強者の論理 9月3日、月曜日。あたしは、三度来社したホライゾンシステムの八木社長とムツミさんに、新しいPMとして、渕上マネージャを紹介した。渕上マネージャは、ここでも時間をムダにしなかった。名刺交換を終えて、全員... 2012/02/20 Comment(20)
冷たい方程式(5) コストダウンの技術 次に、渕上マネージャがホワイトボードに書いたのは、OSだった。「OSをRHELにしたのはなぜだ?」質問の意図がよくわからない。あたしは左右を見たが、上司からも後輩からも助けは得られそうになかったので、... 2012/02/13 Comment(30)
冷たい方程式(4) コストカッター その週の残りの数日は、業務系の設計をまとめたり、亀井くんのテーブル設計を手伝ったりと、あわただしく過ぎていった。業務系の画面は、画面数こそ少ないものの、1つの画面がかなり多機能になるので、人事部の担当... 2012/02/06 Comment(17)
冷たい方程式(3) 10月1日では遅すぎる 8月20日、月曜日。ホライゾンシステムの八木社長と片寄ムツミさんは、約束の15時ジャストに来社した。この打ち合わせは、本来なら8月上旬あたりに行う予定だったのだが、第2週はお互いに都合のよい日が調整で... 2012/01/30 Comment(1)
冷たい方程式(2) まだ基本設計書じゃない 他の会社はどうかしらないが、モリシタ精機では「社内SE」は、「IT関係の何でも屋さん」と同義語である。組織上は、開発グループ、インフラグループと別れていても、その境界は実のところ曖昧そのもの。開発グル... 2012/01/23 Comment(8)
冷たい方程式(1) 技術力は勘定に入れません 電話が鳴った。あたしはワンコールで受話器を取り上げた。別に待ちかねていたわけではなく、朝から続くしつこい頭痛に干渉する電子音を一刻も早く断ち切りたかっただけだ。「はい、日比野です」『受付です。ホライゾ... 2012/01/16 Comment(12)
人形つかい(終) エピローグ 2月1日午前9時、「承認くん」は無事に本番稼働した。橋本さんが電話してきたトラブルはたいした問題ではなかった。ログに出ていた、java.lang.OutOfMemoryError:Javaheapsp... 2011/10/24 Comment(37)
人形つかい(22) それでも、生きてゆく お許しをもらったぼくたちは、一度、港北工場の敷地から出た。数千人が勤務する工場なので、近くには喫茶店かレストランがたくさんあるだろう、と思っていたが、意外に数は少ない。たぶん工場内に――社員には――安... 2011/10/17 Comment(33)
人形つかい(21) 4で割り切れる年 プロセス3は、予定より7分ほど遅れたものの、無事に完了した。橋本さんは以降のプロセスの予定に合わせるために、結果チェックを5分で終わらせると、すぐにプロセス4を実行した。プロセス3からプロセス9は、同... 2011/10/10 Comment(32)
人形つかい(20) 深夜プラス1 「例外出ました!」橋本さんがうわずった声で告げた。「細川」対象的に落ち着き払った声で、東海林さんがぼくを呼んだ。「場所は?」「A01F003の193行目です。やっぱりヌルポです」東海林さんは素早くソー... 2011/10/03 Comment(21)