ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

人形つかい(終) エピローグ

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 2月1日午前9時、「承認くん」は無事に本番稼働した。

 橋本さんが電話してきたトラブルはたいした問題ではなかった。ログに出ていた、

 java.lang.OutOfMemoryError: Java heap space

 のメッセージを見ただけで原因は明らかだった。APサーバのJVMパラメータを確認すると、案の定、-Xmx128m になっていた。これはテスト環境用のパラメータだ。-Xmx2048m に修正して再起動することで、問題はあっさり解決した。

 東海林さんとぼくは、高杉さんの言うとおり、午前10時まで待機していたが、まだ利用者が少ないこともあって、システムが止まってしまうような深刻な問題は発生しなかった。東海林さんはその間に、予備環境としてtomcatをインストールし、「承認くん」をデプロイしておいた。万が一のときは、稼働中の本番環境を停止して、予備環境を動かすことができる。

 やがて、午前10時になると、交代要員としてライズの石川さんたちが到着したので、ぼくたちは長い夜勤から解放されることになった。

 「おつかれさまでした」石川さんの顔は同情が半分、自分でなくてよかったという表情が半分だった。「大変でしたね」

 「いえ、仕事ですから」

 ――厳密には、うちの仕事じゃない気がするけどね

 東海林さんは、石川さんに必要と思われる注意事項を伝達していたが、その横には高杉さんが立ち、東海林さんの言うことに許可を与えているかのように、いちいちうなずいていた。その時間には、大河内さん他、K自動車ICTシステム部の人たちがオペレーションルームに出入りして業務を行っていたから、彼らに対するアピールだったのだろう。東海林さんも石川さんも、底なしの忍耐力で、高杉さんのパフォーマンスに付き合っていた。ぼくが東海林さんの立場だったら、同じ態度を取れたかどうか、まったく自信がない。

 ようやく解放されたぼくたちは、社長に電話で簡単に報告した後、それぞれの自宅へと直帰した。ぼくが覚えているのは、靴を脱いでコートを放り捨てたところまでだ。そのまま服も脱がずにベッドに倒れ込み、そのまま夕方近くまで、泥のように眠り込んでしまったらしい。後で聞いたら、東海林さんは寝る前に缶ビールを一本空けるだけの余裕があったらしい。

 次の日、出社したぼくたちは、橋本さんに連絡し、「承認くん」がとりあえずは稼働しているという状況を確認して一安心した。いくつかの不具合は出たものの、ライズのメンバーが手際よく対応してくれたため大事には至っていないようだ。

 礼を言って電話を切った後、黒野さんが「承認くん」1次開発は本日付で納品完了となったと、東海林さんとぼくに教えてくれた。途中で追加作業となった分、バッチの対応作業分を合わせて、682万円の請求書を切れそうとのことだった。

 「もうちょっと交渉が必要かなと思っていたけど、あっさり了承されましたよ」黒野さんは笑いが止まらないようだった。「どんな欠点があるにせよ、ケチではないですね、あの会社は」

 「それだけが取り柄だろうな」東海林さんは苦笑した。

 もちろんこれでエースシステムや「承認くん」と縁が切れたわけではない。わずか1日しか稼働していないのに、すでに150件以上の不具合報告や改善要望が、K自動車ICTシステム部経由で、高杉さんの元に届いているそうだ。いずれ、誰かがそれらに対応しなければならないことは間違いない。

 「まあ、うちとライズさん以外にはありえないだろうな」東海林さんは当然のように言った。「機能追加という形でちょこちょこ進めていくのか、まとめて2次開発という形にするのかは分からないけどな。せっかく学んだAフレの知識がムダにならなくてよかったな」

 「それはそうですけどね」

 「それに、これで『承認くん』の導入実績ができたわけだから、他の工場にも売り込みするだろうしな。当面の間、定期的に受注が見込めるんじゃないかな」

 「なんか、早くもうんざりしてきました」橋本さんはともかく、高杉さんと長い付き合いになるのは、楽しい未来とは思えない。

 「まあ、そう言うなよ」黒野さんがなだめるように言った。「安定収入の業務なんて、なかなかないんだから」

 会社としては喜ばしいことであることは間違いない。黒野さんが舌なめずりしながら見積書を作る光景が目に浮かぶようだ。

 その後、エースシステムはK自動車から「承認くん」2次開発を受注することになり、ぼくたちも継続して開発に携わることになるが、それは別の話だ。

 2月のほとんどは「承認くん」の不具合対応に追われることになった。それらの大部分は仕様部分での不具合だったので、うちが瑕疵担保責任を問われることはなかったものの、週に2、3回は打ち合わせに呼び出された。何とかうちに責任を押しつけようとする高杉さんと、遠慮なしに反論する東海林さんが、議論と呼ぶには激しすぎる口調で応酬することもしばしばだった。ぼくは、毎回、ハラハラしながら、口を挟むこともできなかった。

 それでも、「承認くん」は、大きなトラブルもなく稼働し続けていた。それを高杉さんは自らの功績と公言してはばからなかったらしい。あの精神構造は、もはや理解しがたい。

 3月初旬のある日のこと。橋本さんから届いたメールを読んだぼくは文字通り飛び上がった。「関係者各位」で始まるメールには、こう書かれていた。

 ......さて、私はこの3月末をもちまして、エースシステム株式会社を退職することとなりました。本来ならば、お世話になりました皆様方に、直接お会いしてお礼を申し上げるべきところですが、このメールをもちましてご挨拶の替わりとさせていただきます......

 「これはまた」ぼくは東海林さんに言った。「急ですね」

 「そうだな」東海林さんも驚いていた。「いきなりだな」

 何しろ、昨日まで「承認くん」の不具合対応、機能追加について、普通にメールをやりとりしていたし、エースシステムでの打ち合わせ時にも、そんな素振りは毛ほども見せなかったのだ。

 ふと、ぼくは少し不愉快な可能性を思いついた。

 「ひょっとして、例のバッチの仕様書を東海林さんに渡したのがバレたんじゃないですか?」

 「そんなことぐらいでクビにするものか」

 「でも厳密に言えば、機密事項漏洩にあたるんじゃ」

 「個人情報じゃないし、仕様の技術的問題点について、経験者に相談を求めた、とか何とか理由はつけられるだろう」

 「そういえば東海林さん」ぼくはあの日の朝のことを思い出した。「仕様書をゴミ箱に捨ててましたね」

 「それがどうした?」

 「誰かが偶然拾って、それがK自動車かエースシステムに届き、捨てたのが橋本さんのせいにされたんじゃ」

 「まずありえないなあ。4つに破って捨てたし、中にあったソフトクリームの食べ残しに突っ込んだからな」

 「......」

 「それにだな」東海林さんは声を落とした。「高杉さんだって、おれに仕様書が渡ってることぐらい気付いてるよ。あの人は技術力はなくても、バカじゃないからな」

 「知ってて黙認してたってことですか?」

 「じゃなかったら、そもそも、なんでバッチ処理のトラブル対応におれたちを呼び出すんだ?バッチ作成のチームに対応させるのが筋だろうが。ひょっとすると最初は知らなかったのかもしれないが、橋本さんがおれたちを呼び出した時点で、だいたい事情を理解したに決まってる」

 「......」言われてみれば確かにそうだ。

 「だから、もし、仕様書が外部に『流出』したことを問題にするなら、まず、うちに対して、事実確認なり説明なりを求めてくるはずだ。それで、事実関係がはっきりした時点で、監督不行届か何かで、橋本さんを処分する、という流れになるだろうな」

 「なるほど」ぼくは納得した。「それなら、なんで橋本さんはクビになるんですかね」

 東海林さんは笑い出した。

 「お前なあ、どうして橋本さんが『クビ』だと決めつけるんだよ?」

 「え、あ、そうか。自分から辞めるって可能性もありますね」

 「普通はそっちを先に考えるもんだろうが」

 東海林さんのあきれたような言葉に、ぼくは赤面したが、それでも橋本さんがエースシステムを自主的に退職する理由が思いつけなかった。

 突然の知らせに戸惑っていたぼくたちだったが、翌日、もっと戸惑うことになった。午後3時頃、橋本さんから電話がかかってきて、「近くにいるので、ちょっとお会いできないでしょうか」と言われたのだ。

 とりあえず、会社のすぐ近くにあるスターバックスで会うことに決めた。東海林さんは外出中だったので、ぼく1人だ。待ち合わせ場所に行くと、橋本さんはすでに来ていて、ぼくを見つけると手を振ってきた。

 店に入ると、ぼくはキャラメルマキアートを、橋本さんはカプチーノを注文した。席が埋まっていたこともあって、橋本さんは外を歩こうと提案し、運動不足を自覚しているぼくも賛成した。

 3月にしては比較的暖かい日だったが、時折吹き付ける風はまだ冷たい。橋本さんはしばらく口を開かず、寒気をむしろ楽しむようにカップを傾けていた。

 「驚きましたよ」ぼくは水を向けた。「いきなり退職なんて」

 「突然でご迷惑をおかけしてしまい、申しわけありません」橋本さんは軽く頭を下げた。「引き継ぎは済ませてあるので、大丈夫だと思います」

 「いえ、それはいいんですけどね......」正直なところ、橋本さんがいなくなったとしても、「承認くん」の保守にはそれほど影響がない。

 「実は、カットオーバーする前から考えてはいたんですよ」

 「そうなんですか?」ということは、やはり自分から退職を決めたということか。

 ぼくの驚きが顔に出たのか、橋本さんは笑った。

 「そうなんです。別に、例のバッチのことで処分されたとか、そういうことではないので。東海林さんにもそう伝えてもらえますか?」

 「分かりました」そうだとすると、橋本さんが退職を決意した理由は何なのだろう?「でも、なんで退職されるんですか?」

 「実は、今日は、それをお話ししておこうと思ったんですよ」

 「聞かせてください」

 橋本さんはカプチーノを一口すすった。

 「前にも言ったかもしれませんが、私にはプログラミングの経験がほとんどなかったんです。でも、そのことを恥ずかしいとか、技術力がないとか考えたことはありませんでした。システム開発には上流工程と下流工程があって、自分は上流の方にいるのだから、顧客の要求をくみ取り、設計書が書ければそれでいいと思っていたんですね」

 それは、橋本さんの考え、というより、エースシステムの考えなんだろう。

 「『承認くん』の担当になったとき、チャンスだと思ったんですよ。ここでいい実績を残せば、上級SEへの近道だとね。それに、私の勤続年数で1つのシステムの担当を任されることは、普通なかなかないので、自分の能力が評価されたのだと思っていました」

 「なるほど」

 「でも実際はそんなに甘くなかったんです」橋本さんは自嘲気味に続けた。

 橋本さんはエンドユーザとの打ち合わせに同席こそしていたものの、発言する機会などほとんどなかった。要求分析、システム設計は高杉さんが行い、橋本さんはそのサポートに専念させられたのだ。設計書は書かせてもらったものの、高杉さんの言うことを入力し、まとめるだけの仕事に過ぎなかった。

 そして、高杉さんが2週間の休暇――前に東海林さんが「実はバカンスだったりして」と言ったのは当たっていたわけだ――を取ったとき、橋本さんは焦って先走ってしまう。高杉さんの指示を待たずに、自分でいくつかの設計書を書いて、下請け、つまりぼくたちに回してしまったのだ。明らかに技術的に不可能な記述があった設計書は、このとき作られたものだ。

 「その結果はご存じの通りです」

 「でも、それは仕方がないでしょう」ぼくは答えた。「最初からうまく書けるわけがないんだし」

 「今ならそう思いますが、あの頃は、自分がクズ人間になったような気がしたんですよ。この程度の設計書も満足に書けないのは、この仕事に向いてないんじゃないかって。高杉にも、ボロクソに言われましたしね」

 ――あの人なら顔色ひとつ変えずに橋本さんを罵るんだろうなあ。

 「ただ、その後、高杉が書いた設計書にも、東海林さんがよく不備を指摘していましたよね」

 橋本さんは、それを見て、実は上級SEといっても技術的にはたいしたことがないんじゃないか、と思ったらしい。エンドユーザーと打ち合わせし、要求分析を行い、暗黙知を形式知に変換する作業に関しては文句のつけようがないかもしれない。しかし、実装レベルの設計になると、「プログラマごとき」に指摘される問題が、次から次へと発生してくる。

 「うちの会社の技術力は、実は低いのじゃないかと思い始めてしまったんですよ」

 会社に対する信頼が揺らぎ、上級SEに対する幻想が崩れると、橋本さんは客観的な視点で、「承認くん」を見つめるようになった。エースシステムと協力会社の、両方とやりとりする立場にいた橋本さんだったからこそ、そういう視点を持つことも可能だったのだろう。そして、客観的に見ると、エースシステムの上級SEと呼ばれる職位は、単に設計書を書く能力に長けているだけ、ということが分かってきた。

 「決定的だったのは、例のイニシャルデータ作成バッチですね。バッチの仕様書を見てみたのですが、どうも完全にあらゆる問題を考慮しているとは思えなかったんですよ」

 迷った揚げ句、高杉さんに相談するという道は断念した。橋本さんの技術力では、不安要素の根拠を具体的に上げることができず、高杉さんに冷たくあしらわれるのは火を見るよりも明らかだったからだ。

 「そこで、こっそり東海林さんにバッチ仕様書のコピーを渡しておきました。ただ、東海林さんがバッチを修正したりすることは、もちろんできなかったのですが」

 東海林さんは橋本さんからのメッセージを正しく理解した。仕様を隅から隅まで読み、頭に刻み込んでおき、バッチ処理で問題が発生した場合の時間のロスを少しでも短くできるように準備しておいてくれたのだ。

 「心配したとおり、バッチにはいろいろ不備があり、問題が発生してしまいました。結果的には、東海林さんと細川さんのおかげで無事に完了することができたわけですが、事前にチェックできなかったのか、とK自動車からも言われました」

 「高杉さんは何て?」

 「想定外だった、の繰り返しです」橋本さんは冷笑した。「あきれますよね。実行前は、あらゆる問題を想定しています、なんて言っておきながら」

 それを聞いて、橋本さんの幻滅は決定的になった。そして、エースシステムを退職することを決めた。

 「確かにこのままエースシステムにいれば、そこそこの給料をもらえて、将来も安泰でしょう。でも、それは高杉さんと同じ道を歩くことになります。中身のない設計書を書き、不具合の責任を下請けに押しつけるような」

 「......」

 「あるいは、エンドユーザーの望むものではなく、SIerが作りやすく、利益を出しやすいような設計をして、それこそが重要な仕事であるようなふりをするような、ね」

 「......」

 「ピラミッドの上にかじりつく寄生虫ですよ」

 ぼくはあえて何も言わなかった。今の日本のSIerは、そのような「寄生虫」の存在がなければ、回らないような構造になっているということを。大企業が仕事を頼むのは、技術力があろうがなかろうが、知名度の高い大きなSIerであり、サードアイやライズさんのような中小SIerではないということを。

 代わりにぼくは訊いた。

 「4月からどうするんですか?」

 「再就職します」橋本さんは照れくさそうに笑った。「都内にある小さなベンチャーなんですけどね。イチからシステム開発という仕事を勉強してみたいんですよ」

 「へえ」

 「だから今、いろいろ勉強中です。JavaとPHP、それからSQLも。少なくとも、JOINぐらい使えるようになってないと、やっていけないですからね」

 橋本さんが、新しい会社でやりがいを見つけられるかどうかは分からない。下請けや孫請けの立場になって、仕様の変更1つ取っても、元請けにお伺いを立てなければならないことに苛立つこともあるだろう。納期は短く、やるべき作業は多く、1日が30時間あっても足りない日々に疲れ果ててしまうかもしれない。あまりに安い年収に驚き、エースシステムを辞めなければよかったと、後悔する日がくるかもしれない。

 とはいえ、橋本さんは自分で考え、自分で決断したのだ。今、このときに限っていえば、これ以上に正しいことはない。

 「そうですか」ぼくも笑った。「がんばってください」

 ぼくたちはコンビニのゴミ箱を見つけ、飲み終えたカップを捨てた。

 「冷えてきましたね。あまりお仕事の邪魔をしても申しわけないので、これで」橋本さんは丁寧に一礼した。「またいつか」

 「お元気で」ぼくも一礼した。

 橋本さんはもう一度、軽く頭を下げると、まっすぐに駅の方へ歩いていった。

 あの長かったバッチの夜が終わったとき、東海林さんは、この業界の有り様を変えることは、「おれが現役でいるうちは無理だろう」と言っていた。でも、少なくとも橋本さん1人を変えることはできたのだ。たとえ0.1でも、null値よりはマシだ。1つ1つは小さな点でも、そういう人が増えていけば、ハイパーリンクのように相互接続し、やがては目に見える流れに変わる可能性だってある。

 ぼくは少しの間、橋本さんの後ろ姿を見送ってから、仕事が待つ会社へと戻った。

 3月31日の午後、橋本さんから「本日が最後です、お世話になりました」という内容がメールで届いた。ぼくは、まだ間に合うかな、と思いながら「落ち着いたらご連絡ください」と返信した。

 返事はすぐ届いた。

  分かりました。ありがとうございます。

 「拝承」の2文字は、もうそこにはなかった。

(終)

 この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。似たような行動や言動があったとすれば偶然の一致でしかありません。また、特定の技術・製品の優位性などを主張するものではありません。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 あとがきに変えて

 いかがでしたでしょうか。

 サブタイトルの出典などを追記しておきます。

 ・人形つかい
  ハインラインの同名小説から。侵略テーマSFの傑作です。

 ・未知との遭遇
  スピルバーグ監督のSF映画から。

 ・今、そこにある案件
  トム・クランシー「今、そこにある危機」より。秘密任務で海外に送り込まれる特殊部隊の死闘に泣けます。

 ・タンスターフル
  ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」の中で語られる造語で、「無料の昼食などない(There Ain't No Such Thing As A Free Lunch)」の略です。「ただより高いものはない」というような意味ですね。

 ・鳴り止まない電話
  新世紀エヴァンゲリオン EPISODE:3「鳴らない、電話」より

 ・上級SEは無慈悲な夜の女王
  ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」より。

 ・冬がやってくる
  J.R.R.マーティンの大河ファンタジー「氷と炎の歌」に登場するスターク家の銘言より

 ・いつかのメリークリスマス
  B'z の名曲ですね。

 ・果てしなき修正の果てに
  故小松左京先生の「果てしなき流れの果に」より。偉大なるSF作家でした。

 ・深夜プラス1
  ギャビン・ライアルの傑作冒険小説より。男なら一度は読んでおきたいハードボイルドです。もちろん女性でも楽しめます。

 ・それでも、生きてゆく
  2011年7月~9月に放映されたドラマのタイトルから。少年犯罪の被害者家族と加害者家族の交流を描いた、日本ドラマ史上、近年まれにみる良作でした。満島ひかりの透明感あふれる演技が絶妙です。

 コメントでいろいろなご意見を寄せていただいた方々に、この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 本文中に、某有名企業を彷彿とさせる描写がありますが、開発の進め方や議事録などは想像の産物であり、その企業の内情を描いているわけではありません。また、上級SEいう年収1000万円超の役職は純然たる創作であり、その企業に同種の役職が存在するかどうかは知りません。

 おそらく12月あたりに、別の物語を掲載させていただこうと思っていますが、年末にかけて仕事の方がちょっと忙しいのと、区切りがよいので、来年からになるかもしれません。読んでいただけるとうれしいです。

Comment(36)

コメント

mogmog

長期連載お疲れ様でした。
とても面白かったです。

毎週楽しみにしてた連載が
終わってしまいとても寂しいです。

次回作待ってます!!
ってゆーか単行本でないかな。

utg

楽しかったです。こういう話こそビジネス書として世に出して欲しいです。

SinDot

非常に面白かったです。
また、自分自身の立場を省みる良い機会になりました。
体調に気をつけて、お仕事頑張って下さい。
次回作も楽しみにしております。

結構

さ2ちゃんねるの下らない恋愛話とかが出版されるなら、これもいけるはず。
後はエンジニアライフ自体の知名度の問題。

ハムレット

この物語では、最後に寄生虫扱いされてしまった、惨い評価の高杉さんですが、ビジネスが生身の人間の営みである以上、ある意味、必要な状況も出てくるんですよね。

例えば、客先の担当者が非常に厄介な人物で、まともな人間が相手すれば、必ず精神的なダメージを負ってしまう場合とか。今回はk自動車の担当者がまだまともだったせいもあり、完全に浮いてしまった感がありますが。

まあただ、それって総会屋対策の隠れ担当が総務部にいるような物で、ユーザとの関係が成熟して、落ち着いてくれば無用の長物と化するわけですが。

個人的には、高杉さんのいる場所は技術ではなく、営業とかの方が良いように思う次第です。客に媚を売ったり、トボケたり、開き直ったりするの上手そうだし。

ヤミヤ

連載お疲れさまでした><
私の場合、元請けも下請けも両方あるので、どちらの立場も分かって楽しく読めました。
ただ、ちょっと高杉さんはひどすぎですが^^;

PS:蛇足ではありますが、年末に向けてお忙しくなるようで、この業界何かと体と精神両方が壊しやすいのでお気をつけください^^

あかちゃん

橋本、馬鹿だなぁ。
3年後に絶対後悔するはず。
今さら下っ端の会社に就職するなんてアホだ。

プログラムなんて誰でもできる仕事は、要領の悪い奴にまかせて
上流の腕もっと磨けばいいのにな。
プログラムの細かい技術なんか知ってなくても、
ユーザとの調整や要件定義はできるはずだぞ。

mso

おつかれさまでした。
視線は基本的に開発者だった気がします。
SI目線でも気になりますが、いろいろと考えさせられる気がします。

SIの人がすべて高杉さんのような方ではないと自負しておりますが、
高杉さんも暗黙知を整理する素敵な能力者だと思い、システムを構築する上では
大切な人だと思っています。

やっぱり能力、知識は仕事をやる上で必要最低限のことで、
あとはいかに人に好かれるかが大切な気がしています。

wm

お客様に言われた事を別の人に頼むだけが仕事ならそこらの子供でも出来るよね。
いやむしろ、堅苦しい大人に頼まれるより子供から頼まれる方が好ましいかもしれません。

頼む側でもうすうすその辺に気づいて、自分の無能感を感じているからこそ、自分の無力感を補填するかのように他人を貶めることを達成感と感じるようになってくるのではないかな。
はっきりとその事を意識するようになった人だけが、自分でも何か出来るはず、と、努力して勉強しだすのだと思う。

sz

実は橋本さんが再就職したのは(東海林さんたちの)サードアイだった!!という話を期待してしまう.
「都内のベンチャー」なので違うか…

BEL

ついに終わってしまいましたか。生々しいなあ、リアルだなあと
思っていましたが最後はちょっとドラマっぽかったですね。
超激務の中、東海林さんがバッチ仕様書を読み込んだというのは
ちょっとすごすぎるかなとは思いましたが。

サブタイトルの元ネタなど私はほとんどわかりませんでしたが
やはり文才のある方は本を沢山読んでいるのですね。

>今の日本のSIerは、そのような「寄生虫」の存在がなければ、回らないような構造になっているということを。
これは考えさせられるんですよね。問題は構造なんですよね。
少なくとも日本では高杉のような人も(東海林さんも)結局は必要なわけで。
問題なのはそれぞれが正当に評価されているかということです。

プログラミングを誰でもできると思ってる人が多分にいる以上うまくいかない。
下流の仕事を下級の仕事と勘違いしている以上は。

K.Oumi

面白かった。とにかく面白いの一言に尽きました。

利用するものが増えれば増えるほど、関係する物・事・人が増えればそれだけ、物事は複雑になり複雑さの狭間に歪が生じる。そして、その狭間に問題が生じる。人はその立場を守らざるを得ない状況になる事もある。たとえどんな新しい方法を編み出したとしても、複雑であるが故に様々な歪が生じるのは仕方がないことのように思える。やはり、最後はプロジェクトに関わる個々人の人間性という事になるのかなと感じた。そして、個々人の集合体が企業であると。

たっと

つい最近連載を知って、一気に読ませて頂きました。
プログラム下請け業界をよくご存じであり、
「人形つかい」や「深夜プラス1」などおっしゃるのは
私と年代が近いのかなと想像してしまいました。
投稿しているみなさんがおっしゃるように
あなた様の小説をもっと読みたいです。

楽しみにしています。

HAHAHA

面白く読ませて頂きました。
次回作も楽しみにしております。
個人的には、「東海林さんと高杉氏が後日結婚した」みたいなオチがあってもいいなと思いながら読み進みました。
(2人が独身なのかどうかは途中から読み始めたので確認してませんが)
橋本さんはきっと後悔はしないと思います。バッチの仕様書を自分の意思で東海林さんに渡した時から、「自分で動き始めた」のですから。
あのまま会社に残ったらどうなっていただろうと空想することはあるでしょうけど。

K

全話楽しませてもらいました。ありがとうございます。

高杉さんついに寄生虫扱いになっちゃってちょっとかわいそうですね。僕の感覚としては、技術力が足りないことではなく、本来顧客要望とプログラマからの意見をまとめて仕様を作る立場なのに、プログラマを見下して意見を聞こうとしなかったところに問題があったのかと思いました。 そういう意味では橋本さんの決断はちょっと残念です。物語のなかから想像するかぎり、これから橋本さんがプログラムを勉強したところで東海林さんにはならないと思います。もちろんプログラムの勉強はSEとしてもプラスですが、橋本さんにはエースのSEという立場で社内外のプログラマを尊重しながらプロジェクトを推進するような成長を期待したかったです。

ところで、私の会社では反復開発的な意味でのアジャイル手法を導入しています。90日程度の頻度でリリースを繰り返すのですが、その期間内でも上流工程・下流工程というのは存在せず、プログラムマネージャ(SE)とプログラマが机を並べて議論をしながら実装をします。顧客にとっても周期的に動くものがでてくるので進捗を確認しやすいですし、なによりも実際に触ってみてフィードバックをかけることができるので、より要望に即した成果が期待できます。もしみなさんが発注する立場なら、アジャイル開発が可能かどうか打診してみてはいかがでしょうか。実装がプロジェクトの中核になるので、中身の伴わないSI会社だとこの手法の実行はむずかしいと思います。このような手法が多くとり入れられるようになると、業界の構造も少し変わるかもしれません。

次回作期待しています!

K

(どーでもいいこですが)訂正:90日じゃなく6週間がベースです。

FIRE

連載、お疲れ様でした。
次回作も期待しております。

橋本氏が考えたリスク対策は功を奏したと言っても過言ではありませんね。
もちろん、事前対策として本番データを用いての動作検証は行いますが、
それが出来なかった故の対策としては、「良かったのでは」と思っています。


・・・。
・・・・・・。
この「人形つかい」って新人教育としても使えるのでは?
とふと思ってしまいました。

もちろん、技術的な部分は新人には難しいかもしれませんが、
プロジェクトを進めていく上での、
全体の流れとしては使えるのではないかと思っています。

inuko

橋本さん一人は変わったけど、
橋本さんには出世して上の会社から変えて行って欲しかったな

結局、上にアホが残ったままでは……

連載お疲れ様でした。
面白かったです。
仕事場で毎週楽しみにして見ていました。
次回作も期待しています。
待ちます!!!

f

bravo!
「新人教育に使える」というコメントに賛同。本になったら数冊買います。

BEL

>(2人が独身なのかどうかは途中から読み始めたので確認してませんが)
東海林さんは「人形つかい(15) いつかのメリークリスマス」で
「おれには3歳の娘がいる」と言っていますね。

hom

おつかれさまでした。
エンジニアですが、毎週昼休みにこれを読むのが楽しみでした。

次回作は同ジャンルでしょうか?
ぜひ読ませていただきます。

下請SE

何か泣けてきた。何故だか分からないけど。

なっち

連載お疲れ様でした!!
面白かったです。
東海林さんイケメンすぎる・・・!

t

エピローグを今日初めて読んで面白かったので、
第1回からエピローグまで一気に読んじゃいました。

橋本くんと自身をダブらせて読みました。
多くの面で橋本くんよりはマシだと信じていますが・・・。

僕も橋本くんのように内心笑われてるんだろうなぁ
と思うと寂しい気持ちになります。

今でもプログラマさんには敬意を持って接していますが、
今以上に良い関係の開発をしていけるよう努力しようと思えました。

elseorand

「人形つかい」連載終了おめでとうございます。

本来、上流下流が固定化されることなく、
互いに協力できればいいのですが、
個人で両方のスキルがあって、両方の立場も理解していないと、
協力ができないという壁をよく感じます。

それには果て無き学習と実践と挑戦と情報共有の繰り返しが大切ですね。

>>新人教育
この観点で新人に勧めてみるのも面白いかもしれませんね。

次回作を楽しみにしております。

ちょこすけ

私の仕事とは業界は同じながらも職務が違うので、自分にあてはめてって読み方は出来なかったのですが、それでもとっても面白かったです。最後の夜のあたりは、ハラハラドキドキしながら読みました。
しかし、上級SEは沢山お休みがとれていいですね(笑)
次回作も超期待してますっ!!

元SIer

とでも読み応えがありました。
よくあるSEのスリリングな展開に引き込まれました。
私も前の会社には思うところありました。
その思いを代弁してくれているかのようでした。
面白かったです。
ありがとうございました。

新人N

いいお話でした。やってることが自分の部署のことと近いのでいろいろ身につまされる感じです。できれば東海林さんや細川さんに近い感じになりたいですね(少なくとも自分の所は上級SEがいるような会社じゃあないですし…^^;)。

中年プログラマ

>「おれには3歳の娘がいる」と言っていますね。
3歳の娘がいても、既に離婚してる可能性も考えちゃうのが悲しいな。
度重なるデスマで何ヶ月もろくに家に帰らず、ついに堪忍袋の緒が切れた妻から離婚宣告。裁判では「家庭を顧みなかった」ことを根拠に親権も奪われ、娘に会うために元妻とその両親の許可を事前に得なければならない、という状況もリアルに想像できちゃうから、この業界はイヤなんだ。

柳生

文系経由体育会系の自分が読んでも面白かったッス。
技術的なとこは全然ですが・・・。

次回作も是非。お待ちしております。

なぼな

プログラマに限らずどこの技術者も上からの無茶振りに頭を抱えていて、そしてその技術者をサポートする周辺もそれに引っ張られて皆一様に濁流に橋を架けるかのような無謀に挑まなければならないのは如何ともし難い物ですね。
仕事貰うために頭を縦に振るのもいいが、要望に答えるためには労基法以外の法律で出来た壁の上を歩かせるのは勘弁してもらいたい物です。
まぁ労基法だって守ってもらいたいのは言うまでもないですが。

元SE

技術を知らない上司の無茶振りも、
設計を知らない上司の無茶振りも勘弁願いたいですよね。
PMは基本的に上流専門でいいと思いますが、一つくらいはがっつり開発業務を経験しておくべきだと思います。

元コンサル

私はこの舞台となる「拝承」の会社でSEとして勤務しており
その文化が嫌になり外資系ソフトウェアベンダーへ転職してコンサルをしておりました。
懐かしいWeb開発の現場の雰囲気に触れられて楽しかったのですが、
政治力が重視される社風は懐かしくも苛立たしくもありという感じです。
上級SEの給与面だけはかなりのフィクションだなぁと思いましたけどね(笑)。

ななしんぼ

古いエントリーにコメントすんません。

本編はたまたま東海林(リーベルG様専用チートアイテム?)に力量があってどうにかプロジェクトが回っていって橋本君は目覚めて新しい道を選んだ、という結論になっていますが、現実には東海林(や主人公)に相当する人の力量が平凡なのがふつうだと思います。その場合、本編はどのような結末を迎えたのでしょうか?

橋本くんは目覚めることなく東海林に相当する人を振り回しまくってぶっ壊すことになったのやら。

an

東海林さんに相当する人の力量が平凡だった場合
橋本くんは目覚めることなく壊し続けるでしょう。あの環境では。
そして、下請け側の問題を何の未練もなく無視して仕事を進めることが
できるようになった時、一人前の上級SEになるのだと思います。
高杉さんと橋本君の差は、上級SEになる前に今回のように
自分たちの問題点を明確に突きつけられたかどうか
でしょう。

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