高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (2) 通話を終えた90分後、桐野に関するおおよそのプロフィールは、私のPCのHDDに収まっていた。氏名:桐野ヒトシ年齢:41才と11ヵ月現住所:港区の築8年の2LDK賃貸マンション仕事:結婚相談所<シルバー... 2013/04/09 Comment(1) 高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (1) 真夜中にかかってくる電話が、いい知らせであったためしがない。そもそも小指の先ほどでも常識を所有しているヤツなら、よほどのことがない限り、日付が変わった直後に他人に電話をかけるという選択はしない。不幸に... 2013/04/08 Comment(7) 鼠と竜のゲーム(終) あなたの人生の物語 11月30日、16:00。五堂テクノ本社で、記者会見が行われた。もちろん、大手企業の会見といっても、全国ネットで生中継されるようなことはなかった。ほとんどの一般市民が関心を持つような重大事件ではないし... 2013/03/18 Comment(25) 鼠と竜のゲーム(24) King of Solitude 「座ってくれ」久しぶりに見た城之内は、野崎の予想に反して、落ち込んだり、ふてくされたりしてはいなかった。ミーティングルームの椅子に、身体を投げ出すように座ると、以前にも増して挑戦的な視線をぶつけてきた... 2013/03/11 Comment(20) 鼠と竜のゲーム(23) トゥルーライズ 対談の後半の展開が急すぎて、たぶん思考がスリープ状態にあったのだろう。ぼくは、田嶋社長に促されるままに、五堂テクノの社屋を出て、帰社の途についた。電車の中で、田嶋社長と東海林さんは別件の業務の話をして... 2013/03/04 Comment(16) 鼠と竜のゲーム(22) ストームブリンガー ぼくは思わず安堵のため息をつき、隣に座った東海林さんに囁いた。「遅かったですね。何かわかりましたか?」「ああ」東海林さんはそれだけ答えると、手を上げた。「すみません、よろしいですか?」五堂テクノの和田... 2013/02/25 Comment(27) 鼠と竜のゲーム(21) まっ白な嘘 「対談だと?」野崎は顔をしかめて訊き返した。「誰が、どこと対談するんだ?」「うちと、例の会社ですよ」城之内は薄ら笑いを浮かべながら、こともなげに言った。「サードアイです」「それをデジタルITがセッティ... 2013/02/18 Comment(15) 鼠と竜のゲーム(20) すべて灰色の猫 「知り合い?イノウーが?」田嶋社長は目を剥いてぼくを凝視した。「クロラ氏と?」「倉敷さんです」ぼくは訂正した。倉敷さんからの電話をもらった後、ぼくは社長に用件を告げた。当然のことながら、社長は、倉敷さ... 2013/02/12 Comment(7) 鼠と竜のゲーム(19) 失われたソースを求めて 「どういう意味でしょうね、これ」ぼくはメーラーを指した。ぼくの机の周囲には、田嶋社長、東海林さん、川嶋さんが集まっていた。個人情報だけではなくソースも流出している。「なんで、イノウーにこれが来たんだ?... 2013/02/04 Comment(9) 鼠と竜のゲーム(18) 事情 めったに足を踏み入れることのない役員用会議室の椅子は、野崎にとって座り心地がいいとはいえなかった。椅子そのものは、通常の会議室に置かれているパイプ椅子に比べて、値段も材質も比べものにならないぐらい高価... 2013/01/28 Comment(17) 鼠と竜のゲーム(17) 個人情報流出 「2のワンペアで勝てるとはな」田嶋社長はそう言うと、会議室に揃った面々を見回した。ギャンブル好きの社長らしい言葉だが、その顔に浮かんでいるのは勝利感というより、戸惑いのようだった。ぼくたちは、サードア... 2013/01/21 Comment(12) 鼠と竜のゲーム(16) PING 五堂テクノロジーサービス、ソリューションデベロップメントDivisionの野崎Div長は、間断なく襲ってくる苛立ちと、心の一部を浸食しようとする不安の両方を押し殺しながら、来客スペースの椅子に座ってい... 2013/01/15 Comment(17) 鼠と竜のゲーム(15) レス・ザン・ゼロ 「……また機会あれば、よろしくお願いします」タカシは丁寧な口調で会話を終えて受話器を置くと、起こりえない奇跡を期待するかのように、しばらく電話機を見つめたまま顔を上げようとしなかった。有限会社アクアシ... 2013/01/07 Comment(4) 鼠と竜のゲーム(14) 隠された醜聞 大抵の会社組織にあてはまることだが、組織の規模が大きくなるにつれて「社外秘」と呼ばれる事項は増えていくものと決まっている。五堂テクノの場合、社外秘は大きく3種類に分類される。1つは内線番号表とか役員報... 2012/12/25 Comment(11) 鼠と竜のゲーム(13) 追跡 「とにかく、このままにしてはおけないな」田嶋社長は固い声で言った。「どうすればいいか、みんなの意見を聞きたい」翌日の20時過ぎ、ぼくたちは会議室に集合して、目下の事態を打開すべく対策を検討し始めた。参... 2012/12/17 Comment(8) 鼠と竜のゲーム(12) コードを見れば分かること 野崎が「LIBPACKRoomNo.2」のドアを開けると、室内で続いていたらしいなごやかな会話が、瞬時にピタリと途絶えた。開発ルームにいた7、8人のエンジニアが、一斉にドアの方を怯えたような視線を向け... 2012/12/10 Comment(26) 鼠と竜のゲーム(11) 拡散 うちの会社のように、特定の分野の業務知識が豊富なわけでもなければ、他社にはない技術力があるわけでもない小さなSIerが、継続した利益を出すためには、なんと言っても業界内のネットワークが頼りになる。ぼく... 2012/12/03 Comment(13) 鼠と竜のゲーム(10) 帝国の論理 株式会社五堂テクノロジーサービス、ソリューションデベロップメントDivisionの野崎Div長は、本社ビルの7階の通路を早足で歩いていた。普段は温和なその顔には、常にない険しい表情が浮かんでいて、すれ... 2012/11/26 Comment(11) 鼠と竜のゲーム(9) ネットの噂 ぼくがその記事に気付いたのは、気温が低下する気配すら見せないうんざりするような8月23日の朝だった。リブパック・クロラ関連は、Twitterでは、#libcrawlerのハッシュタグで共有されていて、... 2012/11/19 Comment(3) 鼠と竜のゲーム(8) リブパック・クロラ T市立図書館事件について、最初の数日間は続報を追いかけていたものの、少なくともネット上に目立った新情報が上がってくることがなかった。ネット上での議論も次第に沈静化していた。Twitterや、2chでは... 2012/11/12 Comment(4) 前のページへ 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 次のページへ SpecialPR
高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (2) 通話を終えた90分後、桐野に関するおおよそのプロフィールは、私のPCのHDDに収まっていた。氏名:桐野ヒトシ年齢:41才と11ヵ月現住所:港区の築8年の2LDK賃貸マンション仕事:結婚相談所<シルバー... 2013/04/09 Comment(1)
高村ミスズ女史の事件簿 結婚詐欺篇 (1) 真夜中にかかってくる電話が、いい知らせであったためしがない。そもそも小指の先ほどでも常識を所有しているヤツなら、よほどのことがない限り、日付が変わった直後に他人に電話をかけるという選択はしない。不幸に... 2013/04/08 Comment(7)
鼠と竜のゲーム(終) あなたの人生の物語 11月30日、16:00。五堂テクノ本社で、記者会見が行われた。もちろん、大手企業の会見といっても、全国ネットで生中継されるようなことはなかった。ほとんどの一般市民が関心を持つような重大事件ではないし... 2013/03/18 Comment(25)
鼠と竜のゲーム(24) King of Solitude 「座ってくれ」久しぶりに見た城之内は、野崎の予想に反して、落ち込んだり、ふてくされたりしてはいなかった。ミーティングルームの椅子に、身体を投げ出すように座ると、以前にも増して挑戦的な視線をぶつけてきた... 2013/03/11 Comment(20)
鼠と竜のゲーム(23) トゥルーライズ 対談の後半の展開が急すぎて、たぶん思考がスリープ状態にあったのだろう。ぼくは、田嶋社長に促されるままに、五堂テクノの社屋を出て、帰社の途についた。電車の中で、田嶋社長と東海林さんは別件の業務の話をして... 2013/03/04 Comment(16)
鼠と竜のゲーム(22) ストームブリンガー ぼくは思わず安堵のため息をつき、隣に座った東海林さんに囁いた。「遅かったですね。何かわかりましたか?」「ああ」東海林さんはそれだけ答えると、手を上げた。「すみません、よろしいですか?」五堂テクノの和田... 2013/02/25 Comment(27)
鼠と竜のゲーム(21) まっ白な嘘 「対談だと?」野崎は顔をしかめて訊き返した。「誰が、どこと対談するんだ?」「うちと、例の会社ですよ」城之内は薄ら笑いを浮かべながら、こともなげに言った。「サードアイです」「それをデジタルITがセッティ... 2013/02/18 Comment(15)
鼠と竜のゲーム(20) すべて灰色の猫 「知り合い?イノウーが?」田嶋社長は目を剥いてぼくを凝視した。「クロラ氏と?」「倉敷さんです」ぼくは訂正した。倉敷さんからの電話をもらった後、ぼくは社長に用件を告げた。当然のことながら、社長は、倉敷さ... 2013/02/12 Comment(7)
鼠と竜のゲーム(19) 失われたソースを求めて 「どういう意味でしょうね、これ」ぼくはメーラーを指した。ぼくの机の周囲には、田嶋社長、東海林さん、川嶋さんが集まっていた。個人情報だけではなくソースも流出している。「なんで、イノウーにこれが来たんだ?... 2013/02/04 Comment(9)
鼠と竜のゲーム(18) 事情 めったに足を踏み入れることのない役員用会議室の椅子は、野崎にとって座り心地がいいとはいえなかった。椅子そのものは、通常の会議室に置かれているパイプ椅子に比べて、値段も材質も比べものにならないぐらい高価... 2013/01/28 Comment(17)
鼠と竜のゲーム(17) 個人情報流出 「2のワンペアで勝てるとはな」田嶋社長はそう言うと、会議室に揃った面々を見回した。ギャンブル好きの社長らしい言葉だが、その顔に浮かんでいるのは勝利感というより、戸惑いのようだった。ぼくたちは、サードア... 2013/01/21 Comment(12)
鼠と竜のゲーム(16) PING 五堂テクノロジーサービス、ソリューションデベロップメントDivisionの野崎Div長は、間断なく襲ってくる苛立ちと、心の一部を浸食しようとする不安の両方を押し殺しながら、来客スペースの椅子に座ってい... 2013/01/15 Comment(17)
鼠と竜のゲーム(15) レス・ザン・ゼロ 「……また機会あれば、よろしくお願いします」タカシは丁寧な口調で会話を終えて受話器を置くと、起こりえない奇跡を期待するかのように、しばらく電話機を見つめたまま顔を上げようとしなかった。有限会社アクアシ... 2013/01/07 Comment(4)
鼠と竜のゲーム(14) 隠された醜聞 大抵の会社組織にあてはまることだが、組織の規模が大きくなるにつれて「社外秘」と呼ばれる事項は増えていくものと決まっている。五堂テクノの場合、社外秘は大きく3種類に分類される。1つは内線番号表とか役員報... 2012/12/25 Comment(11)
鼠と竜のゲーム(13) 追跡 「とにかく、このままにしてはおけないな」田嶋社長は固い声で言った。「どうすればいいか、みんなの意見を聞きたい」翌日の20時過ぎ、ぼくたちは会議室に集合して、目下の事態を打開すべく対策を検討し始めた。参... 2012/12/17 Comment(8)
鼠と竜のゲーム(12) コードを見れば分かること 野崎が「LIBPACKRoomNo.2」のドアを開けると、室内で続いていたらしいなごやかな会話が、瞬時にピタリと途絶えた。開発ルームにいた7、8人のエンジニアが、一斉にドアの方を怯えたような視線を向け... 2012/12/10 Comment(26)
鼠と竜のゲーム(11) 拡散 うちの会社のように、特定の分野の業務知識が豊富なわけでもなければ、他社にはない技術力があるわけでもない小さなSIerが、継続した利益を出すためには、なんと言っても業界内のネットワークが頼りになる。ぼく... 2012/12/03 Comment(13)
鼠と竜のゲーム(10) 帝国の論理 株式会社五堂テクノロジーサービス、ソリューションデベロップメントDivisionの野崎Div長は、本社ビルの7階の通路を早足で歩いていた。普段は温和なその顔には、常にない険しい表情が浮かんでいて、すれ... 2012/11/26 Comment(11)
鼠と竜のゲーム(9) ネットの噂 ぼくがその記事に気付いたのは、気温が低下する気配すら見せないうんざりするような8月23日の朝だった。リブパック・クロラ関連は、Twitterでは、#libcrawlerのハッシュタグで共有されていて、... 2012/11/19 Comment(3)
鼠と竜のゲーム(8) リブパック・クロラ T市立図書館事件について、最初の数日間は続報を追いかけていたものの、少なくともネット上に目立った新情報が上がってくることがなかった。ネット上での議論も次第に沈静化していた。Twitterや、2chでは... 2012/11/12 Comment(4)