ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

ハローサマー、グッドバイ(終) 君の名は

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 ぼくが港北基地から解放されたのは、8 月も終わりに近づいた頃だった。その間、ひたすら事情聴取の日々が続いていた。

 最初の2 日は下にも置かぬもてなしだった。生還した5 人のバンド隊員たち――基地内で英雄のように扱われていた――は、どうやらぼくの功績を過大に報告したらしい。嗅覚麻痺の暗示を解除してもらったぼくは、美味な食事と酒を惜しみなく提供され、大きな個室――もちろん施錠されていない――を与えられて、ゆったりと身体を休めることができた。

 8 月3 日、胡桃沢さんが顔を見せ、短い間だったが情報を交換した。胡桃沢さんが調べたところ、佐分利のドイツ支部に島崎という名の社員はいなかったそうだ。島崎さんを受け入れた日本側の担当者は、単なる異動だと思っていて詳細は知らず、電子データで送られてきた辞令は発信元が不明だったという。ハウンドと関わりのある誰かが関与していたのだろうが、それ以上の追跡は困難だった。ぼくたちは再会を約束して別れた。

 3 日めから事情聴取が開始された。最初はJSPKF の内部調査官による聴取で、談笑を交えた穏やかなものだった。オペレーションMM の全行程について、分単位で詳しく訊かれたものの、単なる事実確認の域を出ていなかった。ぼくは<ナンシオ>とD 型について詳しく説明したが、調査官はあまり関心を示さなかった。または、そう見せかけていた。

 「1 日のD 型の大群、ご存じですよね?」ぼくは水を向けてみた。「あのような事態が再来しないように、ハウンドさんを厳しく追及すべきだと思いますよ。ワクチンプログラムを持っているはずですから。つまり防げたはずの事態に、あの会社は知らん顔を決め込んだんですよ」

 「そうですね」初老の調査官は、人の好さそうな顔で頷いた。「その話は、オペレーションMM に参加した隊員からも、報告が上がっていて、現在、事実関係を調査中です。それがはっきりするまでは、憶測を口にしてはいけませんよ」

 ぼくは反論しなかった。この人はアクションを起こす意志も権限も持っていないんだろう、とわかったからだ。

 「それは鳴海さんのためでもあります」

 「私のためというのは?」

 「ええ。実は、鳴海さんをJSPKF の技術専任職として採用したいとの意向を人事部が示しています。ソリストが正式に納品され、JSPKF 全体で使用されれば、保守チームが必要になりますからね。鳴海さんには、チーフ・エンジニアを提供したいそうです。5 年契約で。失礼ですが収入も大幅アップすると思いますよ。大企業の部長クラス、と考えていただければ、それほど外れていません」

 ぼくは思わず笑った。ボリスに同じような提案をされたことを思い出したからだ。

 「なるほど。いいお話をありがとうございます」ぼくは小さく頭を下げた。「ですが、チーフということは、マネージャということですよね?ぼくは、誰かをマネジメントするには、まだまだ経験が足りませんよ。もう少し開発の現場で経験値を稼ぎたいので、そのお話はお断りさせていただきますよ」

 「そうですか」調査官は肩をすくめた。「まあ、鳴海さんの人生ですから。さて、それでは続けましょうか。羽沢駅(仮)に到着してからのことですが......」

 次の日から、別の事情聴取が追加された。場所は港北基地内の小会議室。相手は、人権監視委員会の監査官、ハウンドの関係者、公安警察と自衛隊で構成された臨時治安維持委員会だ。三者の事情聴取は交代で毎日朝から夕方まで行われ、これはぼくの神経をすり減らしていった。前の3 日で養った英気を、ジューサーで搾り取られているようだった。

 人権監視委員会は、バンド隊員たちが無用にZを殺害したに違いないと決めてかかっていて、ぼくにそれを裏付ける証言をさせようと、言葉尻をとらえる粘着質な聴取を続けた。「ほとんど指揮車両で座っていてソリストのメンテナンスをしていて、セキチューでも同じことをやっていた」と言っても、PC DEPOT やみなとみらいセンタービルでの作戦に同行したことを持ち出しては、細部をつついてくる。朝松監視員に聞いてみてくれ、と言っても、反応はなかった。ぼくは殺伐とした気分になったが、実際に銃を持っていたバンド隊員たちへの聴取は、より厳しいだろう、と考えて、何とか耐えることができた。

 臨時治安維持委員会の主な興味は、島崎さんをピックアップしたヘリと、横浜港で待機していたという輸送船だった。太平洋側の領海警備は、インシデントZ後も海上保安庁が行っている。<大いなるパニック>の余波で巡視船が何隻か失われたこともあり、完璧にとはいかないが、それでも東京湾は比較的警備が厚い海域だ。その間をくぐり抜けて、武装した輸送船が横浜港にまで侵入したことは、平時なら国際問題になりかねないほどの重大事案だという。あいにく、ぼくはヘリを目にしただけだったので、そう答えるしかなかった。

 最も長期間にわたって、ぼくの神経に棘を打ち込み続けたのは、ハウンドだった。「法律顧問」とだけ名乗った数人の男女が、交代でぼくに質問を続け、その後ろではHISS の人間が鋭い視線を向け続けていた。事情が明らかになれば、JSPKF はハウンドに対して、損害賠償責任追及などの厳しい措置を取るのだと思っていたが、上層部でどのように話がついたのか、少なくとも表だっては、そういう動きはないようだ。JSPKF の兵装はハウンドからの納品も多いから、関係を悪化させたくはない、ということだろうか。バンド隊員が何人も犠牲になったというのに。

 「つまり鳴海さん」メガネをかけた太りすぎの男が、エアコンの効いた室内だというのに、ひっきりなしに汗をハンカチで拭いながら質問を続けた。「あなたは、最終的にはハウンドの命令を受ける身でありながら、ボリス氏の許可もなくソリストのソースを、勝手に改ざんしたことを認めるわけですね?」

 「ソースを"修正"したことは認めます」

 「その改ざんによって」男はぼくのささやかな抵抗を無視した。「JSPKF 隊員の命を危険にさらしたわけですね。そういうことですね」

 「それは違います。私は隊員の命を救うために、修正したんです」

 「ですがね、鳴海さん」男の顔に爬虫類のような酷薄な笑みが浮かんだ。「結果として、オペレーションMM では多くの犠牲者が出ました。それは、ソリストを不適切に改ざんした結果だと、考えられるのではないですか?」

 「そんな。そもそも、ソリストが不完全な状態で納品されたからで......」

 「あなたにソリストが完全かどうかなど判断はできないでしょう?違いますか?あなたはソリストの仕様に通じていたわけでもなければ、コア部分のコーディングをしたわけでもない。確か......ああ、部分的なブラックボックステストを担当しただけだ」

 「それは、まあ、そうですが......」

 「ということは、つまり」男の顔が嬉しそうに輝いた。「ソリストの不具合だとかいうものは存在せず、あなたが不用意に手を入れたせいで、デグレートしてしまった可能性もあるわけですね」

 遅まきながらぼくは気付いた。こいつらは、ソリストの不具合を誰かのせいにしたいのだ。ぼくは余計な言質を与えてしまったことを悔やみながら、断固とした口調で言った。

 「とにかく私は、不具合と言われて、それに対処しただけです」

 ぼくは、それ以後、その言葉を表現を変えて口にするにとどめた。

 だが、彼らの本当の狙いが、瑕疵責任の回避などにあるのではないことは、すぐに明らかになった。別の日に相対した、針金のように痩せた男は、穏やかな声でマーカーについて質問してきた。

 「私は事情をよく知らないのですがね」バッタのような顔の男は、タブレットの画面に視線を落としながら訊いた。「ボリスはマーカーのマイクロマシンからのデータを収集していたそうですね」

 「そのようですね。そのデータは島崎さんが持って逃げようとして失敗しましたが」

 島崎、の名前を聞いても、男は全く反応を見せなかった。

 「そうですね。その島崎については調査中なんで、私はよく知らないのですがね。ボリスが持っていたタブレットですが、脱出の際に紛失してしまったということですね。どこにあるかご存じですか?」

 「さあ。羽沢駅のどこかにあるんじゃないですか」

 「ひょっとして、そう見せかけて、誰かが隠し持っているということはありませんかね。あくまでも可能性の1 つとしての話ですが」

 「誰かって誰ですか?」

 「たとえば鳴海さんとか」そう言って男はぼくの顔をじっと観察した。

 「持っていませんね。みなとみらいから持って帰ってきたものは、全部提出しました。靴下1 枚にいたるまでね。そちらをお調べになったらいかがですか?あんな大きなものが隠されているなら、すぐに見つかるでしょう」

 「調べましたよ。鳴海さんに限らず全隊員をね。見つかりませんでした。本当に訊きたいのはね、鳴海さんがタブレットの中身をコピーしなかったか、ということなんです。やろうと思えばできたでしょう?」

 「キーレンバッハさんにも訊かれましたけどね」ぼくは相手を睨み返した。「やっている時間がなかったんですよ。興味もなかったですしね。疑うのであれば、ソリストの中を調べてみたらいいんじゃないですか?中身は、そちらが引き取っていったんですから」

 「それも調べましたよ。ディスクの復元ソフトまで使ってね。あいにく、それらしいものは見つかりませんでした」

 「じゃあそういうことですよ」ぼくは椅子に背中を預けた。

 「これはあくまでも仮定の話なんですが......」

 「仮定とか可能性がお好きなんですね」

 ぼくが入れた茶々に、法律顧問の男ではなく、後ろに控えていたHISS の男が反応した。この日はカトーの番だった。カトーは威嚇するように歯を剥き出して、ぼくを睨み付けた。

 「たとえばUSB メモリなどにコピーして、ソリストからは消してしまう、という手もありますよね。現にあなたは、ご自分のスマートフォンを持ち込んだ」

 「それも調べたんでしょう?」

 スマートフォンは一度JSPKF に預け、エンジニアの手で中を確認され、昨日返却された。考慮してくれたらしく、家族の画像は残っていた。

 「ええ、こちらの技術者も立ち会いましたから。いやいや、私は鳴海さんのスマートフォンにコピーした、と言っているわけではないんですよ。別に何かメディアを持ち込むことも可能だった、と言っているんですよ」

 「そりゃ、可能性で言えば、どんなことだってあり得ますよ。でも仮にコピーしたとしたって、この基地内に持ち帰っていないことは確認したと思いますが」

 「しましたよ。でも、あいにく綱島駅の例の工事現場から、港北基地までの間のどこかの道で、車外に投げるといった手段を取ることはできたわけです。あらかじめ時間を決めておいて、協力者を配置しておけば、すぐにピックアップして......」

 ぼくは思わず笑った。あまりにバカバカしくなって返事をする気にもなれなかった。

 「失礼しました。まあ笑いたくなりますね。でも、もし......」男は繰り返しに気付いて苦笑した。「仮に、そういうものをお持ちだとしたら、いくら出せば譲っていただけますかね?」

 「持っていないものは売れませんよ」

 「わかっていますよ。わかっています」男は降参するように両手を軽く挙げた。「あくまでも仮にです。たまたま私は交渉の権限を与えられているから言うんですが、あ、これはオフレコでお願いしますよ、もしデータを一部でも入手できるのなら、10 万ドルをお支払いすることができるんですよ。税金を払わなくてもいい金です」

 「たったそれだけですか」ぼくはわざとあくびをした。「何だか知りませんが、大したデータではないんですかね。それとも低い金額で交渉が成立すれば、あなたの銀行口座がそれだけ膨れるってことですか」

 男の顔が紅潮した。

 「いいでしょう。30 万ドル。いかがですか?お望みなら、ハウンド内にエンジニア職を提供させてもらいますよ。職場はどこの国でもいい。どうですか?」

 「魅力的な話ですね」この数日で、急に好条件での転職のオファーが殺到してくるようになった。ありがたい限りだ。「実に魅力的です」

 「そうでしょう」男は身を乗り出した。「どうですか?この条件を提示できるのは、今しかないですよ」

 「どうですかも何も」ぼくは肩をすくめた。「何のデータも持っていないし、持っていたとしても、売る気はないですね」

 男は椅子を蹴るように立ち上がった。

 「今、金額の交渉をしたじゃないですか!」

 「仮のね。仮定の話だと、あなたも仰ったじゃないですか。仮定ではなく、現実の話をしたいのであれば、もう少し条件を煮詰めてから出直してきてはいかがですか?」

 男は憎悪と疑念を交互に浮かべると、何も言わずに会議室を出て行った。カトーも後に続いたが、ドアを開けてから振り返った。

 「たいした度胸だ。プログラマなんぞにしておくのは惜しいな」

 「プログラマをなめるなよ」ぼくはみなとみらいで西川に投げた言葉を繰り返した。「この世界で最もタフで知的な仕事の1 つなんだからな」

 「見張ってるからな」

 カトーはそう言い捨てると、外に出ていった。その頑健そうな背中を見送りながら、ぼくは束の間の勝利感に浸った。データを入手できる見込みが全くないと確信できれば、ハウンドはJSPKF に働きかけて、第2 のオペレーションMM を実施するかもしれない。今度は、より鶴見川に近い地域で。だが、ぼくがデータを隠し持っている可能性があり、さらに金で売る可能性が残っている限り、それを入手しようと無駄な努力を続けてくれるかもしれない。

 人権監視委員会と臨時治安維持委員会による事情聴取は、数日で終了し、15 時以降は基本的に自由時間となった。基地内は、セキュリティエリアを除いて自由に歩き回ることができたが、どこに行くにもバンド隊員が1 人、同行していた。ハウンドの要請によるものらしかった。名目は「警護」だったが、ぼくも、バンド隊員本人もそんな言葉を信じてはいなかった。

 ブラウンアイズたちとは、ほとんど顔を合わせることがなかった。何度か食堂などで見かけることはあったものの、接触は許されなかったのだ。ハウンド側が最も警戒しているのが、ぼくとバンド隊員たちが口裏を合わせることで、調査の混乱を図ることだったのだろう。

 基地内を見学するのに飽きると、ぼくは図書室の本を読むか、ビデオライブラリーで映画を観ることで日々を過ごした。港北基地には、邦画、洋画を問わず、無数の映画がストックされていて、部屋の大型テレビで観賞することができた。本当はPC かタブレットが欲しかったのだが、さすがにそれは言を左右にして与えてもらえなかった。ハウンドの影響力は、そんな細部にまで及んでいた。

 ぼくは「警護」の隊員から、臼井大尉の様子を訊いた。検査の結果は、ぼくが事情聴取を受けている間に出ていた。前頭部に受けた強い衝撃による脳挫傷という診断だった。損傷の範囲が広く、脳内血腫の発生も見られ、昏睡状態から復帰する可能性は五分五分とのことだ。別の専門医によるセカンドオピニオンからも同じ答えを得ると、JSPKF は臼井大尉を港北基地に戻して、医療センター内の病棟に入院させた。自発呼吸はあるので、基地内で回復を待つことにしたのだ。人望の厚かった臼井大尉の病室には、毎日のように見舞いの隊員が訪れている。ぼくも、穏やかに眠る臼井大尉の顔を見に、何度か医療センターに出向いた。いつか目覚める日が来ることを願う。

 お盆を過ぎた頃になると、さすがに追及のネタが尽きてきたのか、毎日続いていた事情聴取という名の訊問は、時間が短くなり、やがて1 日おきになり、すぐに2 日おきになった。内容も以前に訊いたことを、ただ繰り返すだけだった。相変わらずデータを高価格で買い取る、というさりげない申し出はあったが、ぼくは曖昧な返事を繰り返して時間を浪費させた。

 もう1 つ、何度か訊かれたのは、「通常機能とは異なる機能に気がつかなかったか」という問いだった。翻訳すれば、「ワクチンプログラムの存在に気付いたか?」または「ワクチンプログラムを解析したか?」だろう。こちらについては、曖昧な答えではなく、明確な否定を返しておいた。

 8 月20 日、朝9 時に始まる事情聴取を待っているとき、基地内がにわかに騒がしくなった。結局、その日はハウンドの人間は現れず、ぼくは自由な1 日を過ごした。夕食のとき、ぼくは警護のバンド隊員に理由を訊いてみた。

 「鶴見川の向こう側で」そのバンド隊員はアイスコーヒーを飲みながら教えてくれた。「Zが大量集結していてね。しかも、D 型が多数混じっていて。戦闘職種の隊員は、ほぼ全員が駆り出されたよ」

 ぼくは背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。ついに来たのだろうか。

 「ま、もっとも昼前には撃退したみたいだけどね。今、やってるのはR 型をゲートから遠くに誘導する作業だよ。数が多いから手こずっているらしいな」

 バンド隊員に被害はなかった、と聞いても、安心することはできなかった。同時に、ここで無益な時間を浪費している自分がもどかしかった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ぼくが帰宅を許されたのは、8 月27 日の朝のことだった。JSPKF とハウンドからは、再度、転職のオファーがあったものの、ぼくは丁重に断った。またしても、10 枚以上の機密保持誓約書にサインさせられ、、ぼくの所有物となったヘッドセットを受け取った。その後、仁志田さんが基地の外まで送ってくれた。

 「じゃあ、ナルミン」仁志田さんはぼくと握手しながら言った。「元気でね。まあ、何もないと思うけど、鼻水が止まらないとか、肋骨をまた折ったとか、マイクロマシンが暴走して目が1 つ増えたとか、そういうことがあったら私に連絡してね」

 「わかりました。ブラウンアイズやサンキストによろしく言っておいてください」

 「うん。本当は見送りに来たがってたんだけどね。まあ、例のあそこの企業が拒んでね。悪く思わないでやって」

 「思ってませんよ。それじゃ、いつかまた」

 ぼくたちは手を振って別れた。

 一般外来受付のプレハブには、7 月28 日にここを訪れたときにいた中年女性の事務官が、同じ場所に座っていた。ぼくは退出の手続きをしながら訊いた。

 「ぼくが乗ってきた自転車って、まだありますかね?」

 「えーと」事務官はバインダーの書類をパラパラとめくった。「あー、ないわね。次の日に、ヤマブキの人が取りに来てるから」

 「ってことは、帰りは徒歩ですね」ぼくは頭上に輝く太陽を見た。「タクシーなんて拾えないですよね」

 事務官は冷たく微笑んで、ぼくを基地の外へ送り出した。ぼくは蒸し暑い中、元住吉のアパートまで歩いて戻る羽目になった。

 1 ヵ月間、人の出入りがなかったアパートの部屋は、よどんだ空気の匂いがした。港北基地に行く日の朝が燃えるゴミの回収日だったからよかったものの、そうでなければこれぐらいでは済まなかっただろう。ぼくは全ての窓を開け放ち、扇風機も風量を最大にして部屋の空気を総入れ替えした。

 大変なことになっていたのは、冷蔵庫の中だった。何しろ、1 ヵ月も留守にすることなど想定していなかったのだ。卵や豚肉、鮭の切り身などの生鮮食品は、そばに近寄るのもはばかられる臭気を放っていたので処分。野菜室のキャベツやレタスは黒ずんでいたので、これもゴミ袋に直行させた。一番悲惨だったのは、紙パックの牛乳で、固体と液体の中間物質に変化していた。無事だったのは、調味料と缶ビールぐらいだ。

 ぼくは丸一日かけて、部屋の大掃除をした。カビ臭い敷き布団をベランダに干し、ほうきとちりとりと雑巾で部屋中にたまった埃を除去した後、冷蔵庫の中身を空にし、コンセントを抜いてから内部を徹底的に洗う。夕方近くまで、とにかく無心で部屋をきれいにすることに集中した。部屋が人間の居住空間らしくなった後、少し生まれ変わったような気分で買い物に出かけた。

 外に出て自転車にまたがった途端に監視の目に気付いた。うまく通行人に溶け込んではいるが、その気になって探せば生活臭のないことがわかる。部屋の大掃除をしたときに、監視デバイスらしきものをいくつか発見したので、予想はしていたことだが、やはり良い気分ではない。ぼくは後ろを振り向かないように、商店街へと向かった。

 まず銀行に立ち寄り、口座を確認した。ヤマブキからの今月分の給与と、島崎さんが口にしていた臨時ボーナスが振り込まれていた。これもJSPKF が佐分利とハウンドに口添えしてくれたおかげだ。ぼくが協力的にならないまでも、敵対心を少しでも和らげておこうという意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、金は金だ。ありがたくいただいておくことにする。

 当面の生活費を下ろすと、次にブックオフに行った。本や衣類コーナーは賑わっていたが、電気製品の一角は人気がない。ゲーム機のコーナーを通り過ぎて、中古PC がいくつか並んでいる棚の前に立ち、消費電力の少ないノートPC を物色する。倒産した企業から流れてきたらしいデスクトップもあったが、昨今の計画停電事情のことを考えると、バッテリーのあるノートPC の方がいい。あれこれ比べてみて、ASUS とAcer のミニノートを現金で購入した。合計、14,800 円だ。

 「これ、OS は10 のままですけど」会計をしてくれた若い店員が言った。「グレードアップするなら、ライセンスもありますよ」

 「ありがとう。でも、Linux に入れ替えるつもりだから」

 「へえ、そうですか。お仕事でお使いですか?」

 「いや、個人的な勉強に使うんだ」ぼくは笑いながら1 万円札を2 枚渡した。「ぼくはプログラマなんだよ」

 「へえ。そりゃ、大変な仕事ですね」

 「大変な仕事というか、今や、仕事がないことが大変なんだけどね」

 ついでにブックコーナーに立ち寄り、110 円の文庫本を何冊か購入するとブックオフを出た。

 最後にスーパーに寄った。とにかく数日分の食料品は必要だ。スーパーの棚に並んでいるのは、やはり地元で取れた野菜や果物が多い。食料品の物流は優先されている方だが、インシデントZ以前のように、築地からの鮮魚が毎日届く、というわけにはいかない。米3 キロと、味噌、キュウリにトマト、チーズとソーセージ、ツナ缶の5 個パック、米粉の食パン6 枚切り、ミネラルウォーターを数本、それに千葉県産の落花生を一袋買い込んだ。財布の中身を確かめることなく買い物ができるのは、ちょっといい気分だ。

 夕食を立ち食いそばで済ませると、のんびりと自転車を走らせてアパートに戻る。周囲に宅配便のユニフォームを着た男性が、私はお届け先の住所を探しています、という顔でうろうろしていた。ぼくが注視していると、さりげなく顔をそらして離れていった。監視員だったのかもしれないが、気にせず部屋に入った。

 再び窓を開け放ち、買ってきたノートPC の梱包を解いた。どちらもバッテリーは完全に上がっていたので、コンセントをつなぐ。充電中のランプが点灯するのを確かめて、ぼくはシャワーを浴びた。この部屋の契約アンペア数は20A だが、最近は契約通りの電流が供給されることの方が少ない。たぶん、2 つのPC がフル充電されるまで、一晩はかかるだろう。ぼくは照明を切ると、ふかふかになった敷き布団の上に寝転がって目を閉じた。眠りはすぐに訪れてくれた。

 次の朝、朝日でというより、暑さで目を覚ました。冷たいミネラルウォーターをゴクゴク飲むと、昨日買ってきたパンにチーズとキュウリをはさんでかじりながら、ノートPC の前に座った。どちらも充電ランプは消えている。Acer の方から取りかかった。

 電源を入れて、BIOS 設定メニューを表示させる。ブート順序を確認すると、外部USB メモリがリストの先頭に表示されていた。机の中からCentOS を入れた4GB のUSB メモリを出して差し込み、電源を入れ直すとインストーラが開いた。

 午前中はCentOS をセットアップして過ごした。午後はヤマブキに顔を出してくる予定だったので、それまでに一通り動作するようにしておきたかったのだ。幸いWeb サーバもデータベースもGUI 関連も不要なので、セットアップ項目はそれほど多くない。苦労したのはネットワーク関連だった。このアパートに来ているのはケーブルテレビが提供しているブロードバンド回線だ。100MB のベストエフォートのはずだが、実質的には下りで3MB 出ればマシな方だ。光回線の選択肢がいくつもあった時代が懐かしい。

 glibc と、ffmpeg 関連のライブラリをセットアップしているとき、固定電話に着信があった。表示は「ヤマブキ・太田係長」だ。

 「はい、鳴海です」

 『太田だ』ぶっきらぼうな声が聞こえた。『元気だったか?』

 「おかげさまで。五体満足で帰ってきましたよ」

 『そうか、それはよかった』

 太田係長はそう言ったきり、言葉を探しているように口をつぐんだ。太田係長が実地テスト参加要員として、ぼくを「売り渡した」ことを知った直後は、面と向かって問い質してやりたいと思っていたが、今ではそれほど怒りを感じていなかった。どの会社も生き残っていくのに大変な時代なのだから。それでも、自分から助け船を出してやる気にはなれなかった。ぼくは、make 中の画面を見ながら気長に待った。開け放したままの窓の外から、生命力あふれるセミの喚き声が聞こえてくる。以前はうるさいと思っていたが、Zのぞっとするような呻き声に比べれば、天上の音楽のようだ。

 『実はな』太田係長はとうとう言った。『お前の仕事のことなんだけどな』

 「午後、行こうと思っていたんですよ。昨日、メール出しましたけど」

 『うん、受け取った。すまんが今月いっぱいで契約終了ということにしてもらえんか』

 太田係長らしくない、人の顔色をうかがうような声だった。ゴネることもできたが、さすがに気の毒になったぼくは、お互いの時間のムダを省くことにした。

 「わかりました。どっちみち、今日はその話で行くつもりだったんですよ」

 『そうなのか』安堵の気配が伝わってきた。『いや、うちとしても、お前に働いてもらいたかったんだが、佐分利、というか、ハウンドの方から......』

 「わかってます」ぼくは詳細は省いた。「実地テストは成功とは言い難い結果に終わりましたからね。ぼくに腹を立ててるのも無理はないですよ」

 『すまん。今月分の給与は来月、ちゃんと振り込むから。あと......』太田係長の声が懇願する口調に変わった。『これは頼めた筋合いじゃないんだが、次の職場でうちの評判に関わるようなことを、その......』

 「わかってますってば」ぼくは思わず笑った。「それぐらいの常識はあります。今までお世話になりましたから。これは本心ですよ」

 『そう言ってもらえると助かるよ。次のアテはあるのか?』

 「まあ、何とか、いろいろ。じゃ、お元気で」

 正直なところ、もう少し別の展開を予想しないでもなかった。たとえば、ヤマブキでの勤務を続けさせておいて、会社の方からそれとなく圧力をかけるとか。その場合は、乗ったふりをして逆に情報を得る、ということも可能だったのかもしれないが。

 とにかく、これで考えなければならない問題が1 つ減ったわけだ。ぼくは受話器を戻すと、セットアップ画面に戻った。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 数日間は何の動きもなかった。2 台のノートPC にはCentOS が無事にインストールされていた。ネットには接続してあるが、ほとんどのサービスはオフにしてある。新たにインストールしたアプリといえば、KVS のRedis と、DLNA サーバのminidlna ぐらいだ。これらを選んだのは、特に意味があったわけではない。どうせ、ネットへのアクセスは監視されているに決まっているから、適当にそれらしいアプリケーションを選択したのだ。Redis には、ネットから時間をかけて落としたRFC 情報を格納し、minidlna には、ネットから落としてきたアニメや海外ドラマの動画ファイルや、フリー素材サイトから落とした画像1000 枚ぐらいを片っ端から入れてある。

 帰宅してから3 日めの昼過ぎ。ぼくは2 台のLinux マシンの電源を入れたままで部屋を出た。自転車に乗って多摩川に行き、川原に寝転んで本を読んだのだ。この日は曇っていて、気温もそれほど高くはなかったので、ブックオフで見つけたフレドリック・ブラウンの短編集を優雅に楽しむことができた。17 時ぐらいに起き上がったぼくは、スーパーに寄って鮭の切り身など、いくつか買い物をしてからアパートに戻った。

 部屋に入って最初にやったのは、2 台のノートPC が置いてあるテーブルを観察することだった。テーブルの上には落花生の殻が散らばっている。誰が見ても、だらしない奴が散らかったテーブルを掃除する手間を省いた、としか思えないだろうし、そこに意味を見いだすことなどできないだろう。もちろん、この殻と渋皮の配置に意味などはない。ただし、出かける直前にスマートフォンで撮影しておけば、それは有意な情報となる。

 撮影した画像と見比べてみると、いくつかの殻の配置が大きく異なっているのがはっきりとわかった。軽い渋皮は半分以上が移動している。ぼくが家を空けている間に、誰かがノートPC を触ったのは明らかだった。たぶん、USB メモリを挿して、HDD の中身をごっそりコピーしていったのだろう。今頃、画像の一枚一枚を詳しくチェックしているに違いない。ソリストに関することは何も見つかるはずがないのに。ぼくは愉快な気分になって、買ってきた缶ビールを開け、退屈な作業を呪っているに違いないハウンドの不幸な誰かの健康を祈った。

 次の日は朝から図書館に行って、短編集の続きを読んだ。もちろん、アパートのテーブルの上には、電源を入れたままのノートPC を放置してだ。その次の日は近くの公園で散歩した後、商店街をぶらぶらし、古本屋を冷やかした。その次の日は、また多摩川に出かけた。毎回、出かける前には、何らかのトラップを仕掛け、不法侵入者は毎回、引っかかってくれた。

 何日も同じことを繰り返しているうちに、監視者たちも考えを変えたらしく、ある日を境に不法侵入の形跡がぱったりと途絶えた。ノートPC からは何も得るものがないと思うようになったのだろう。それでも、ぼくは慎重に同じパターンの毎日を繰り返した。朝食後、ノートPC の電源を入れ、1 時間ほど適当にいじった後、昼過ぎに家を出て、夕方近くまで時間をつぶし、日が暮れる前に帰宅する。その時が訪れるのを辛抱強く待ったのだ。特定の日付や曜日ではなく、別のキッカケを。

 9 月に入って10 日後、そのチャンスは訪れた。朝から雨が降っていたのだ。秋の訪れを予告するように、空気は少しひんやりしていた。

 「今日は部屋の掃除でもするか」

 ぼくはそう宣言すると、朝食を済ませた後、部屋の大掃除に取りかかった。この部屋に戻ってきた日にも掃除をしたが、今日は本気だった。わざと残してあった監視デバイス類を、できる限り排除したのだ。少しでも怪しいと思うものは、残らず捨てた。最近のカメラは、まさかと思うような小さなものにも偽装できるらしいから、古いボールペンや時計、ワンセグテレビ、ラジオ、などもゴミ袋に突っ込んだ。

 昼過ぎまでかかって、ようやく納得がいくまで掃除ができたので、ぼくは一休みして、軽くシャワーを浴びて、昨日の残りのご飯に冷たいお茶をかけてかきこんだ。

 ノートPC の前に座ると、まず、ルータにつながっているLAN ケーブルを外し、ネットから切り離した。そして、掃除の間に充電しておいたヘッドセットを装着した。これまでリュックに入れたまま持ち歩いていたが、一度も装着することはなかった。ディスプレイは跳ね上げたまま、目を閉じてBIAC コマンドを呼び出した。

 たちまち、視覚野に複数の仮想モニタが出現した。コントローラがないので、管理コンソールなどを立ち上げることはできないが、あらかじめ設定しておいた、無数のソースファイルへのエントリーポイントが浮かび上がった。みなとみらいで、ぼくに注入されたマイクロマシン群は、まだ正常に機能を保っていた。

 地下トンネルを綱島駅まで戻ってくる間、ぼくは投与されたマイクロマシンの構成を変更するプログラミングに集中していた。火器管制機能や戦術支援機能を削除し、単純なストレージ領域としての分散メモリ群に作り替えたのだ。そしてノートPC に格納されていた、ソリストのソースをコピーしておいた。本当は全ソースをコピーしたかったのだが、容量的に難しかったので、マーカー関連の機能を中心に、周辺の関連ソースを優先的に選択した。

 ぼくに投与されたマイクロマシンは、ベータ版だが次世代型で、権限を持ったユーザなら、その構成をプログラミングすることが可能なのだ。ただし、そこにアクセスするには、外部インターフェースとしてBIAC が必要になる。だから、このヘッドセットを手元に残せるように、ブラウンアイズに頼んでおいたのだ。

 ぼくはノートPC に向かい、vi で新規ファイルを作成すると、ソースファイルの1 つを仮想モニタに表示すると、先頭行から入力を開始した。英語や中国語のコメントは無視して、純粋にコードのみを入力していく。デバッグができないので、タイプミスがあってもすぐにはわからないが、それはどうしようもない。

 ハウンドがそう簡単に諦めるはずがないことはわかっていた。軍事については素人のぼくでさえ、<ナンシオ>関連テクノロジーがもたらす利益が莫大なものになることは想像がつく。本当にD 型をコントロールできるのであれば、世界中のZ問題を一挙に解決できるのかもしれないのだ。D 型で編成した掃討部隊を汚染地域に送り込み、Zを掃討する。ドローンで遠隔操作できるから、オペレータを危険にさらすこともない。食事も休憩も宿舎も給料も保険もいらないし、素材はいくらでも入手でき、使い捨てにできる。貴重な人命を危険にさらすこともなく、各地の復興が飛躍的に加速され、多くの市民の幸福にもつながるだろう。過去の災厄の後始末ではなく、未来への希望にリソースを振り分けられるのだ。そのような成果に比べれば、一企業が巨額の利益を得ることぐらい許容できるのではないか、と事情を知らない人は言うだろう。

 だが、核エネルギーがそうであったように、科学技術が創造主の意図を越えて大きすぎる力を持ったとき、コントロールから脱する抜け道を見つけ出してしまうかもしれない。数万、数十万に膨れあがったD型が暴走したとき、最終的には近代火器を持つ人類が勝利するにしても、それまでに多数の犠牲者が生まれてしまうだろう。

 さらに別の懸念もある。ハウンドが巨大な国際的軍需企業だということだ。D 型で構成された死を怖れない軍隊、またはその能力を移植された強化人間で構成された部隊、という想像は、もはや荒唐無稽、の一言で片付けることができないぐらい現実感を帯びてきている。

 今、この瞬間にも、ハウンドではマーカーの増産が続けられ、その実験を行うために、第2、第3 のオペレーションMM が計画されているかもしれない。

 ぼくが計画したのは、ソリストのソース内に存在しているはずの、ワクチンプログラムを探し出し、利用できる形に再構成することだった。いずれJSPKF にもソリストの全ソースは納品されるかもしれないが、その中にワクチンプログラムが含まれていないことは、首を賭けてもいいぐらいだ。ハウンド社内のデータベースにも存在しているだろうが、ウィザード級のハッカーでもクラッカーでもないぼくには、厳重にガードされているだろうセキュリティを突破する能力はない。ハウンド社外でワクチンプログラムがあるのは、世界でただ1 つ、ぼくの頭の中、正確には、脳の中のマイクロマシン群で構成されたストレージの中だけだ。

 問題は、ぼくが間に合うようにワクチンプログラムを発見できるか、ということだ。まず、必要なソースを入力し終えたら、開発環境を準備しなければならない。ソリストのIDE などは入手できるはずがないから、Eclipse か何かで代用する必要があるだろう。監視の目は緩んできたかもしれないが、ネットへのアクセスは全てキャプチャされていると考えた方が無難だから、あくまでの趣味で、または技能維持のためにプログラミングをやっているように見せかけなければならないことも障害になる。開発環境は少しずつ整える必要があるだろう。ぼくがプログラマだという事実は、煙幕になるかもしれないが。

 開発環境が準備できたら、次はマーカーの外部インターフェースの研究が待っている。マーカーそのものの仕様などは、ソリストとは無関係だから入手できない。だが、ソリストからマーカーにリクエストを投げることはできるのだから、インターフェースがあるはずだ。そこから、マーカー自身の挙動を推測していくしかない。スタブに該当するモジュールがあれば話が早いのだが、現段階ではそれすらわからない。しかし、ワクチンプログラムの手がかりを探すには、マーカーのインターフェースから逆に辿っていくしかないのだ。

 そして、全てが奇跡的なぐらい順調に進み、ワクチンプログラムの一連の機能が完成したとしても、次に待っているのは、実地テストである。こればかりは、シミュレータ上でテストするわけにはいかない。どうしても、もう一度、封鎖地域へ行かなければならないのだ。

 鶴見川をどうやって渡河するか、コントロールシグナルを発信する機器や、Zがうようよしている地域を走破するための装備と技術をどうやって入手すればいいのか、その目途は全く立っていない。大抵のものがAmazon でワンクリック注文できた世界は、すでに過去の思い出の中にしかない。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 さらに2 日が過ぎた。ぼくは、風邪を引いたふりをして、家に閉じこもり、ソースの入力作業を続けた。やってみてわかったが、いくら鮮明な視覚映像となっていても、ソースを延々と再入力していくのは、精神的に負担の多いつらい作業だった。これがプログラミングであれば、自分でアルゴリズムを考え、変数名の付け方や、各種パターンなどを工夫するという楽しみがあるのだが、どこの誰とも知らない人間が作ったソースを書き写していくのに知性は必要とされない。むしろ、余計なことを考えないマシンになりきることだ。

 その日、ぼくは朝から夕方まで、ひたすら入力作業を続けていて、重い岩石がのしかかっているような痛みを肩に感じるようになっていた。目もかすんでいる。ここまでで入力できたソースは407 個。これで5% といったところだ。

 何か食って疲労した脳にブドウ糖を送り込むか、と手を止めたとき、ドアの方から金属音が聞こえてきた。反射的にドアを見たとき、確かに施錠してあったはずのドアが音もなく開いて、小さな人影が部屋の中に飛び込んできた。

 ブラウンアイズだった。

 驚きのあまり声も出せないぼくを尻目に、ブラウンアイズは広くもない部屋の中をぐるりと見回し、足音も立てずにバスルームとトイレを素早くチェックした。その右手は背中に回されている。ブラウンアイズが背中を向けたとき、ハンドガンを握っているのが見えた。それがなければ、カットソーとショートパンツで、小さなリュックを背負ったブラウンアイズは、どこにでもいるバイト帰りの大学生のようだった。

 「クリア」ブラウンアイズは呟いた。「周囲は任せた」

 右耳にブルートゥースらしいイヤホンマイクがはまっていた。ブラウンアイズは応答に耳を傾けていたが、すぐにぼくに向き直った。

 「何、ぼーっとしてんのよ」

 その言葉で我に返った、というか、返らされた。

 「そっちこそ」ぼくは何とか声を出すことができた。「何やってるんだよ」

 「お届け物よ」

 ブラウンアイズはぶっきらぼうに言うと、ドアのところまで戻った。細く開けっ放しになっていたドアの隙間から手を伸ばし、外においてあった何かをつかんでドアを閉める。渡されたそれは、デジタル迷彩のマガジンポーチだった。

 「印鑑はどこに押せばいいのかな?」

 と軽い冗談を言ってみたが、冷たい視線が返ってきただけだったので、ぼくは受け取ったポーチを開けた。中に詰め込まれていたのは、ソリスト用コントローラが3 台と、USB メモリが7、8 本だ。

 「これは?」

 「USB メモリは、ソリストのソース一式が入ってるらしいわ」ブラウンアイズは床の上にあぐらをかいて座った。「コントローラは予備のやつ」

 「ソース?でも、どうやって?ハウンドか佐分利からもらったわけじゃないよな?」

 「当たり前でしょ。それは分隊長からよ」

 「え!」ぼくは思わず大きな声を出した。「谷少尉、生きてたのか?」

 「もちろん」そのことを一度も疑ったことがないような顔で、ブラウンアイズは頷いた。「あの人が、そう簡単に死ぬはずないって言ったでしょ」

 「じゃあ、基地に戻ってきたのか?」

 「そうじゃないの。実は、5 日前なんだけど、あたしたちはこっそり封鎖地域へ戻っていったのよ」

 「え?それは、例のルートで?」

 「そう。そこが使えることを確認するためだったんだけど、その出口にそのUSB メモリが置いてあった。分隊長のインシグニアと一緒にね。たぶん、ボリスの奴が持ってたタブレットを何とか回収して、データをサルベージしたんだと思う。メモとかはなかったんだけど、メッセージは明らかよね。基地に帰ってから、サンキストに中を確認してもらった。圧縮してあったけど、幸い、暗号化はされてなかった」

 「例のデータは?」

 「それはなかった。存在していると、いつかハウンドが入手するかもしれないと思ったんじゃないかな。あたしのカンだけど、たぶん破棄してると思う」

 また音もなくドアが開いた。顔を覗かせたのは、サンキストだ。ニヤニヤ笑いを浮かべている。

 「よお、プログラマ」サンキストはぼくに笑いかけ、何かを引きずって玄関に放り出した。「こいつはお隣さんか?」

 そこに転がったのは、HISS のカトーだった。気絶している。

 「隣に?」

 隣の部屋に住んでいたのは、冴えない中年のサラリーマンだったはずだ。すれ違えば挨拶ぐらいはするが、顔もろくに覚えていない。帰宅してからは見かけていないが、生活する時間帯が違うせいだろう、ぐらいにしか思っていなかった。いつの間にカトーと入れ替わったのだろう。

 「全然気がつかなかった」

 「だろうな。こいつともう1 人いたが処理しといた。明日まで目を覚まさないだろうな」サンキストはそう言うと、そのまま視線をブラウンアイズに移動させた。「おい、ブラウンアイズ。いくら監視の奴らがドジ野郎ばかりでも、1時間が限度だからな。早く、用事を済ませろよ」

 「わかってるわよ。さっさと消えて」

 「ごゆっくり」

 チェシャ猫のように笑いだけ残してサンキストは戻っていった。

 「監視?」

 「まあ想像ついてたと思うけど、あんたは監視されてたのよ。この汚い部屋にも、電子的、機械的にめいっぱい監視装置があったの」

 「それは、見つけて除去したけどね」

 「知ってる」ブラウンアイズは頷いた。「半分ぐらいはね」

 「半分?」ぼくはぎょっとした。「知ってるって?」

 「よくある手よ。わざと見つかりやすい場所に仕掛けて、わざと発見させる。発見すれば安心するでしょう?あんたが出かけてる間に、JSPKF のエンジニアが残りを除去したのよ。監視の目を逸らしている間にね。気付かなかったでしょ」

 「......全く」

 「ハウンドは何としても、例のデータを入手したいんでしょうね。実験を継続するために。あたしたちは、もちろん徹底的に調査されたわよ。でも、奴らが一番警戒してるのはあんたなのよ。JSPKF の人間じゃないから命令もできないし、会社も辞めちゃったわけだからそっちから圧力をかけるわけにもいかない。ソリストの知識もある。メディアや、他企業に情報を売りつけることができるとしたら、あんたしかいないんだから。まあ、そこまでが想像の限界だったわけだけど」

 帰還したとき、全ての所持品を繊維一本に至るまで厳しく検査されたのだが、まさか脳内に注入されたマイクロマシンをストレージとしてソースを保存しているとまでは疑われなかった。疑われていたら、事故を装って頭蓋骨を切り開かれるぐらいの目にあったかもしれない。

 「作業はしてたみたいね」ブラウンアイズはノートPC を見た。

 「いつか君たちが接触してくると信じてたからね。できるだけのことは。もし来なければ、1 人ででも、もう一度みなとみらいに行かなきゃとも思ってた」

 「あたしたちも同じよ。D 型をあのままにしてはおけないからね。秘かに準備は整えてきたの。JSPKF の大部分はあたしたちに協力してくれたんだけど、ハウンドと関わりが深い人間は外す必要があったから、ちょっと時間がかかった。でも、ようやく準備ができた。移動手段、武器弾薬、食料。多摩川近くに潜伏拠点を確保した。まず、そこであんたが例のワクチンを完成させるのを待つことになるわね。あ、あとソリストを再構築できるように、ノートPC を20 台ほど用意してある」

 「すごいね」

 「あと、胡桃沢さんにも、苦労したけど連絡が取れた。胡桃沢さんにも家族がいるから、表だっての協力はできないけど、できる限り支援はしてくれるそうよ。あとはあんたの決心次第。どう?」

 「いつ?」

 「すぐよ。今夜のうちに」ブラウンアイズはドアの外に目をやった。「今は監視を排除して、ダミーデータを送ってあるけど、たぶん数時間以内には気付かれる。向かい側のビルの屋上に、レインバードとリーフがいるわ。テンプルは港北基地に残ることになった。家族がいるからなんだけど、JSPKF 内にも情報源となる人間が必要でもあるから」

 ぼくは狭い部屋の中を見回した。インシデントZ以来、ここに住んでいる。捨てられない思い出などはないが、それなりに愛着もある。それに、ここを出るということは、単なる転居以上の意味がある。躊躇いがなかったといえばウソになる。その躊躇いを見透かしたように、ブラウンアイズは、ぼくの目を見つめながら語を継いだ。

 「一度、行動を起こしてしまったら、もう後戻りはできないわよ。ハウンドは全力であたしたちを追ってくるだろうし、あたしたちは、表面上、AWOL――無許可離隊ってことになるから、JSPKF の公式な援助は期待できない。警察にも追われることになるかもしれない。今の生活を捨てることになる。バスを降りるなら今よ。どうする?」

 答えは決まっていた。

 「もちろんやるよ。一緒に行く」

 「そう言ってくれると思ってた」ブラウンアイズは微笑んで立ち上がった。「で、今日はあんたが知りたがってたことを教えてあげに来たの」

 「へえ。何?」

 ブラウンアイズは至近距離まで近寄ると囁いた。

 「あたしが、あんたのスマホをどこに隠してたか」紅茶色の瞳が瞬いた。「知りたくない?あたしのコールサインの由来、あたしがこれまで行った国について知りたくない?」

 「ああ、知りたいね」

 ブラウンアイズは手を伸ばして、部屋の照明を落とした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 1 時間後、ぼくたちは服を着て準備をした。生鮮食料品はゴミ袋に詰め、冷蔵庫のコンセントは抜いた。2 人の体温が残る布団は畳んで、壁際に置いた。ヘッドセット、2 台のノートPC、いくつかの私物をまとめてリュックに詰め込み、大切なスマートフォンをポケットに入れる。カード類は使う機会もないだろうから、まとめてへし折りゴミ袋に放り込んだ。

 本当ならもう一度、部屋全体をきれいに掃除したいところだ。大家さんはいい人なので、こんな形で迷惑をかけるのは心苦しかったが、事情が事情なので仕方がない。こういう事態を予想して目立たないように、少しずつ下ろしておいた現金の封筒から、3 ヵ月分の家賃と、適当な事情を書いたメモをテーブルの上におき、部屋の鍵を載せた。できることはこれぐらいだ。

 「いいよ」

 ブラウンアイズが慎重に外の様子を窺ってからドアを開けた。イヤホンマイクに何か囁くと、サンキストが姿を現した。ぼくの顔を見ると、ニヤリと笑って付いてくるように合図し、先に立って階段を降りていった。

 ぼくはブラウンアイズと一緒に部屋から出た。小さいが力強い手が、ぼくの手を握りしめている。これから後戻りのできない道に進むことになる。何事も成し得ないまま、国際的軍需企業という大きな力の前に屈し、後悔することになるかもしれない。だが、ここで足を踏み出さなかったら、ぼくは自分のことを一生許すことができないだろう。ぼくは谷少尉の顔を思い浮かべ、ぼくの命を救ってくれたヘッジホッグ、センタービルでぼくたちの脱出する時間を稼いでくれた柿本少尉を思った。みなとみらいで、義務と責任を果たすために命を落としたバンド隊員たちを思った。

 ブラウンアイズがぼくの顔を覗き込んだ。最後に翻意するチャンスを与えてくれているように。その澄んだ茶色の瞳を見つめ返しながら、ぼくは口を開いた。

 「そういえば、もう一つ知りたいことがあったんだ」

 「何?」

 「君の本当の名前を教えてくれないか」

 ブラウンアイズは小さく笑うと、本名を教えてくれた。日本の姓と、別の国の発音しにくいが美しい響きを持つ名前を。

 「行くわよ」

 ぼくたちは夜の闇の中に足を踏み出した。

(終)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 連載開始前、エンジニアライフにこんな話を載せていいのかと、3 分ぐらい悩んだのですが、主人公がエンジニアだし、別にこういうテーマで連載してはいけない、とはどこにも書かれてないので、開き直ることにしました。自分でも楽しんで書きましたが、同じように楽しんでいただける方が少しでもいたのであれば嬉しいです。

 当初、Zの描写などは、もっと詳細だったのですが、さすがに月曜日の朝8 時から、脳漿炸裂、内臓破裂のオンパレードはどうかと思ったので控えめにしてあります。

 港北基地の場所として設定したパナソニック工場の跡地は、連載開始当初は何もなかったのですが、その後、アップルの技術開発センター、スーパーマーケット、集合住宅が集まった、次世代型スマートシティとして活用されることが決まっています。セキチュー、PC DEPOT、みなとみらいセンタービル、羽沢駅(仮)などは、2015 年12 月現在で書いたとおりの場所にあります。

(※2019年、加筆訂正の上で、電子書籍版をKDPで発売しました。書き下ろし短編、用語集付き)

 例によってサブタイトルの出典などを上げておきます。

□ハローサマー、グッドバイ

 マイクル・コーニィの同名小説より。長らく絶版状態でしたが、2008 年に河出文庫より復刊、続編の「パラークシの記憶」も2013 年に出版されました。作者が「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF 小説であり、さらにもっとほかの多くでもある」と序文で述べている通り、恋愛SF の名作です。そして、SF 史上有数とも言われるラストの大どんでん返しは必読です。ブラウンアイズの名をヒロインから使わせてもらいました。

□アイズワイドシャット

 スタンリー・キューブリック監督の遺作より。

□戦闘証明済

 岡崎つぐお「ラグナロック・ガイ」より。北欧神話ベースのミリタリーSF です。

□やがて明ける夜

 アイザック・アシモフの短編小説より。水星の自転をネタにしたこの短編の設定は、後に観測技術の進歩によって否定されましたが、アシモフ自身は「別にいいじゃん」と修正する気がないことを公言しています。

□BIAC

 ジェイムズ・P・ホーガン著「創世記機械」に登場する、脳に直結するスーパーコンピュータより。「星を継ぐもの」シリーズもお勧めですが、ホーガンの科学万歳な空気が満載のこちらも面白いです。

□Knockin' on Hell's Door

 ボブ・ディラン「Knockin' on Heaven's Door」より。なぜか、クリスマスシーズンに聴きたくなる曲。何でだろ。

□デバッグ・フォー・ビギナーズ

 ケリー・リンクの短編「マジック・フォー・ビギナーズ」より。同名の短編集には、9 篇の不思議な物語が収められています。

□私とワルツを

 鬼束ちひろの同名曲より。TV ドラマ「トリック」第3 シーズンの主題歌。個人的には鬼束ちひろのベストソング。

□頼むから静かにしてくれ

 レイモンド・カーヴァーの同名短編より。

□Hello, World!

 プログラマにはおなじみの文言。作者が最初にこれを書いたのは、C 言語でした。

□無限後退

 何かの説明を行う際、それが無限に続くこと。「新・猿の惑星」に登場する科学者がタイムトラベルが可能な理由として「無限後退」を、少し違う意味で言及していました。

□死者を侮るなかれ

 ボストン・テランの同名小説より。

□Night of the Living Dead

 ジョージ・A・ロメロの古典的名作。「ゾンビ」「死霊のえじき」と合わせて、ロメロのゾンビ映画三部作と呼ばれます。R 型のR はロメロのことです。ちなみにD 型のD は、「28 日後...」ダニー・ボイルのD です。

□ウェットワーク

 フィリップ ナットマンのゾンビ小説より。「汚れ仕事」の隠語だそうです。

□闇をさまようもの

 H.P.ラヴクラフトの同名恐怖小説より。いわゆるクトゥルー神話の一部。「サイコ」の原作者、ロバート・ブロックと親交のあったラブクラフトが、ロバート・ブレイクという名の詩人を主人公に書いたと言われています。

□スナークとブージャム

 ルイス・キャロルの意味不明な詩「スナーク狩り」より。スナークとブージャムは、その中に登場する動物らしいですが、作者にもそれが何だかわからないそうです。読むなら、ホリデイの挿絵が入った版がお勧めです。

□いくつかのZ不測事態対応策

 前述のケリー・リンクの短編集に収録されている「いくつかのゾンビ不測事態対応策」より。ゾンビハザードが発生した場合の対応策を常に考え続けている男の話。アメリカには本当にこういう人がいそう。国防総省は真剣にゾンビ襲来に対する対応策を策定していたそうだし。

□もう少し あと少し...

 ZARD のシングルより。

□陰謀のセオリー

 メル・ギブソン、ジュリア・ロバーツのサスペンス映画。脚本がよく最後まで飽きさせない名作。メル・ギブソンは主人公の口癖「ジェロニモ」を、「リーサル・ウェポン4」でも叫んでました。

□ダーウィンの目

 ランス・ヘンリクセンが渋い主人公のドラマ「ミレニアム」第3シーズン第18 話のタイトルより。結構、好きなドラマだったんですが、視聴率が伸びず、物語途中で打ち切りになってしまいました。

□Point of Impact

 スティーヴン・ハンター「極大射程」の原題より。スワガー・サーガの第1 作。マーク・ウォールバーグ主演で映画化もされましたが、こちらは今イチでした。

□せめて人間らしく

 新世紀エヴァンゲリオン 第弐拾弐話より。新劇場版の最終話はいつになるんでしょうか。

□黄泉の川が逆流する

 ダン・シモンズの同名ゾンビ小説より。シモンズというと「ハイペリオン」「イリアム」などSF 超大作の作家、というイメージが強いのですが、短編、中編にも逸品が揃っています。

□一握の砂

 石川啄木の歌集より。

□君の名は

 1950 年代に大ヒットしたラジオドラマ、映画です。ストーリーは知ってますが、ちゃんと観たことはないです。

Comment(60)

コメント

感謝感謝

ありがとうございました!
毎週毎週楽しみで仕方がありませんでした。
こういう終わり方なんですね。
次回作を楽しみにしています。

CAD

完結おめでとうございます。
連載が始まってからの数週間、毎週楽しみにしていました。
今回、ブラウンアイズが出てくるまで、ひょっとして「人知れずOSSとなったワクチンソフトが世界を救う」という流れになるのかとも思いましたが、少々牧歌的過ぎましたね。
Kindle版が出版されましたら、是非とも購入したいので、ご検討頂けると幸いです。

lav

映画化希望!
ナルミンとブラウンアイズは結ばれたのかー。色んな意味で。
ムフフ

nanashi

過去作を含め一番面白かった
お疲れ様でした

m

完結おめでとうございます&ありがとうございました!
面白かった!!

なるほど、こういうエンディングかー!「俺たちの戦いはこれからだ!」ですね。
これじゃ確かに、胡桃沢さんちでのんきにカレー食ってる場合じゃない(笑)
でも再会のフラグはあるから想像が滾ります。

ブラウンアイズ、なんというツンデレ・・・可愛すぎる。
ナルミンは、これからおそらく大変な苦難の道へ進むけど、ブラウンアイズとの新しい一歩でもあるんだと思うと、祝福したいです。

登場人物が皆それぞれ個性的で、生き生きしてて、素晴らしかったです。
藤田はどうなったのかなぁ・・・単なるサバゲマニアだった彼も今回のことで何かすごく成長したんじゃないかと思ったり。

私もKindle版希望します。
長文すみません。本当に毎週楽しみでした!

shilelo

完結おめでとうございます。
毎週楽しみに読ませていただいておりました。
いつも物語が終わった後の登場人物達を想像しますが、ナルミン達もハッピーエンドを迎えてくれるものと信じております。
面白い物語をありがとうございました。

alt

最初の展開は少しダルメでしたが、改めて読み返すと
伏線が多くより楽しめました。

#ビーンはエンダーからでしょうか?

公ちき

完結おめでとうございます&ありがとうございました。

谷少尉生きてたー!

来週クリスマスですし、番外編期待しています。
┐(´-`)┌の出し方も教えてください!

>lavさん
同じく映画化希望です。

公ちき

クリスマスは来週じゃなかった。今週でした。
来週は年末でしたー。

お疲れ様でした。
面白かったでしたー!
毎週月曜日が楽しみだったと同時に、あっという間に1年が過ぎてしまったことに恐怖を感じつつ。
Zという元から矛盾の多い設定や世界観なので、綻びも出やすいですが、冒険活劇は理詰めより勢いが大事ですよ、はい。
続編も読んでみたいですね。


> ぼくは、誰かをマネジメントには、まだまだ経験が足りませんよ。

ちょっと違和感が。

Ta

面白かったです。毎週月曜日が楽しみで仕方なかった。次回作、楽しみにしてます。ナルミンたちの短編集とか期待してます。お疲れ様でした。ありがとうございます

qwerty

お疲れ様でした。面白かったです。
また暫らくエンジニアライフにアクセスしなくなるなあ…

imo

楽しかったです!是非書籍化してください!

へなちょこ

とうとう完結ですね。お疲れ様でした。
とても面白かったです。
憂鬱な月曜日の唯一の楽しみといって良いくらい。
ラズベリーPiとか、マイクロマシンにデータコピーとか
思わず会社でにやりとしてしまいました。

ワクチン開発して横浜のD型を無害化し、最後にJSPKFに帰ってくる、
そんな続編が早く読みたいです。

ROMらー

連載お疲れ様でした。
ITとSFの融合という今までにないジャンルで最後まで楽しく読ませていただきました。
そして最初から読み直しています(笑)
あと、元サラリーマンと強い女性の組み合わせで勝手にブラックラグーンを連想しながら読んでたのは内緒です。

えの

回収せずに敢えて残してある伏線をみていると、続編に向けて仕込みもばっちりですね、とか思ってしまいました。

ほんと、続きが読みたいです。

ハリス

回収されてない伏線って何があったかな?

p

完結おめでとうございます。お疲れ様でした。

個人的には一番好きなシリーズになりました。ブレインマシンインターフェースが出てくるようなSFでゾンビ物で、主人公がプログラマで、現実よりなIT描写をしてくれる作品はかなり稀有、というかたぶんないので、非常に楽しかったです。

ラストもいいですね。戦友(とも)が迎えに来て、最後の戦いに赴く。絶対ハウンドの襲撃があるし、ワクチンが効かないZが出てきたり、ブラウンアイズがピンチになったところを鳴海さんが助けたりするんですよ。続編見たい。

あと谷少尉が助かってよかったです。この人腹刺されたのに簡単な止血しかしてなかった気がしますが…。つよい。

またしばらく作品読めないのが寂しいですね。連載中はいつも週一の楽しみなので。
また新作(または続編)が読める日を心待ちにしております。

MUUR

>脱出する時間を稼いでくれた「柿谷少尉」

面白かったです!
ちょっと憂鬱な月曜に毎週の楽しみをありがとうございました。

私も、書籍化されたらいいなと思ってます。

ちゃらを

今までで一番読み応えがあり、楽しみな連載でした。
元エンジニア(?)なので細かい部分の理解は他の読者の皆様には劣ってしまいますが、とても楽しめました。
谷少尉が生きていたのも嬉しい限りです。
以前にどなたかのコメントでもありましたが、映画化して欲しいです。

その前に谷少尉の帰還までの話とは、ブラウンアイズとナルミンのプライベート話とか胡桃沢さんとのカレー話とかスピンアウト話も書籍化されたら読んでみたいです。

エンジニアとして働いている上に、ここまで読み応えのある文章を紡げるということにも尊敬しちゃいます。

連載は全て読んでおり、次回作も楽しみにしています。

はど

楽しませていただきました。
D型をコントロールする技術は、何となく伊藤計劃・円城搭の「屍者の帝国」を思い起こさせますね。脳内にサスティナブルなストレージを形成できれば、広範な利用用途が期待できそう。夢とかも再生できたりして。
けど、副作用もあるんだろうなぁ、きっと。

杉野

とても楽しかったです!
寂しいなー。しばらく月曜チェックしてしまいそうです。

本当に素敵な作品をありがとうございました!

false

あと2,3回続くかとそうぞうしたけどこれで最終回なんですね。
自分にとってもこれがNo1のシリーズだったので最終回を迎え良かった様なさびしいような・・・・
基地を出て帰りがけにハウンドに拉致され・・・とかのダークエンドを予想していたけど予想の斜め上を行く良いTrue Endでした!
この結末なら心臓に注射打たれようがZに噛まれようが構わないのでナルミンになりたい。

谷少尉、やってることが格好良すぎでしょう。でもなれるならナルミンに(笑

外伝だけでなく、ハローサマー、グッドバイ2も期待してます!!

来週月曜からまた楽しみの無い月曜かぁ・・・

じゃー

毎週月曜を楽しみにしていました。完結、お疲れ様です。
過去作品を含め、一番面白かったです。

今だからこそ切りとれる近未来に、SFやパニック要素が見事に重なり、とても良い作品だったと思います。

続編、待ってます。

ささん、ご指摘ありがとうございました。「する」が抜けてましたね。

MUUR さん、ご指摘ありがとうございました。
「柿本」少尉でした。

SIG

完結おめでとうございます。
前作「罪と罰」にも匹敵する規模の超大作、
最初から最後までリアルタイムで読めた幸福に感謝。
その「罪と罰」の作者後記に違わぬ、ラブコメかつ、青春スポコンかつ、
/*** この単語は朝松監視員に検閲されました ***/ アクションでした。
あいにく、笑いながら読めるような、思いきり軽い話、とは行きませんでしたが。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

そう、「帰還したら買い置きのカレーをご馳走しよう」は、
死亡フラグではないんです。
「帰還したらあのカレー屋に行こう」ならば、
約束の店のカウンターでひとり寂しく故人を偲ぶことができるけど、
胡桃沢さん秘蔵のカレーを持ち出せるのは、胡桃沢さん本人しかいないからです。
まあ、その日がやってくるのは、もう少し未来のお話になりそうですが。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

厳しいエンジニアライフの中、素晴らしい作品をありがとうございました。
またいつの日か、新たな作品に触れられる日があれば幸いです。

ponch-a

この映画の原作、リアルタイムで読んでいたんだと言える日がきっとくる。

SIG

完結おめでとうございます。
前作「罪と罰」にも匹敵する規模の超大作、
最初から最後までリアルタイムで読めた幸福に感謝。
その「罪と罰」の作者後記に違わぬ、ラブコメかつ、青春スポコンかつ、
###この単語は朝松監視員に検閲されました### アクションでした。
あいにく、笑いながら読めるような、思いきり軽い話、とは行きませんでしたが。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

そう、「帰還したら買い置きのカレーをご馳走しよう」は、
死亡フラグではないんです。
「帰還したらあのカレー屋に行こう」ならば、
約束の店のカウンターでひとり寂しく故人を偲ぶことができるけど、
胡桃沢さん秘蔵のカレーを持ち出せるのは、胡桃沢さん本人しかいないからです。
まあ、その日がやってくるのは、もう少し未来のお話になりそうですが。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

厳しいエンジニアライフの中、素晴らしい作品をありがとうございました。
またいつの日か、新たな作品に触れられる日があれば幸いです。

SIG

二重書き込み申し訳ありませんでした。

やわなエンジニア

やわなエンジニアの私はこれまでのエンジニア達のお話を「嗚呼、こんなことがいつか私の身にも起こるかもしれない」
とガクブルしながら読んでいましたが、非現実的な(?)この話はそういう心配なく楽しく読めました。
本当にありがとうございました。

usd

いったい、どこに隠してあったんだ・・・?

BEL

お疲れ様でした。

スクロールバー小さいからめっちゃコメントついてる?って思ったら、
長いのは本文だった。最後の最後まで楽しませていただきました。

こういう系はあまりわからない私でも、月曜が待ち遠しくなるくらい今作もとても面白かったです。
ありがとうございました。

一つだけ疑問があって、15,28,37話にでてきたロックンロールとは誰(何?)なのか。

lav

映画化はハリウッドの方がいいかも?
タランティーノ監督でやれるだろ?
リーベルGさん、翻訳できるならしてしまいましょう!
Kindle版発行して間もない内に英語版発行しておいてもいいかと。

meron

毎週とても楽しみにしてました!
仲間たちが次々失われていくのはちょっと辛かったですが…
谷少尉、無事でよかった!
ワクチンプログラム開発ストーリー、是非見てみたいですね。


>生還した5 人のバンド隊員たち――基地内で英雄のように扱われていた――たちは

"たち"はひとつで良さそうです。

hpm

最後の1行は海援隊の「スタートライン」を思い起こさせますね。

闇に向かって走り出すためのスタートライン

meron さん、ご指摘ありがとうございました。

BELさん>
「ロックンロール」は、人の名前ではなく、「撃鉄起こせ」ぐらいの意味で使ってます。昔、何かのアメリカ映画で、警官隊のリーダーみたいな人が「ロックンロール」と叫ぶと、後ろに並んだショットガンを手にした警官たちが一斉にポンプアクションで装填するシーンがあったので。
現在でも実際に使用されているかどうかは知りません。

BEL

リーベルGさん
丁寧にご説明ありがとうございます。
そういうことでしたか、元ネタ的なものがあったのですね。

ホワイトオーガ

毎週素敵な月曜日を有難うございました。
完結お疲れ様です。仕事との両立は大変だとは思いますが、
次回作楽しみにしております。
今作も、とても面白かったです。
書籍化、アニメ化、ドラマ化、映画化待ってます。

bird

ついに最終回、いままで大変楽しく読ませていただきました。曲がりなりにもソフトウェアに携わっているので、世にあるアクション映画のIT担当がテキトーに描かれているのを物足りなく思っていたのですが、この作品でもの凄く腑に落ちた感じです。

ところで、ブラウンアイズが部屋に来た時にベッドに腰掛けてるのですが、その後に鳴海さんが2人の体温の残る布団を部屋の隅に寄せていて、鳴海さんベッド派?布団派?となってしまいました。

私の読解力不足で勘違いしていたら申し訳ありません。

bird さん、ご指摘ありがとうございます。
布団派です。ベッドってのは間違いでした。

tak

はじめて投稿します。
毎週とても楽しみにしていた”ハロサマ”(勝手に名前付けてますw)が終わってしまうのはとても残念です。
いつのまにか自分を鳴海に置き換えて、ブラウンアイズやZにドキドキ(いろんな意味で)してしまうぐらいこの世界にハマってしまいました。
皆さんも書かれていますが、エンジニアライフに掲載された数ある小説の中で、私にとってこれがNo.1です。

続編、番外編、ブラウンアイズ目線編など、リクエストはいくら出しても尽きないぐらいです!!
長らくの連載ありがとうございました。

完走お疲れ様でした!凄く面白かったので終わってしまうのが残念な気持ちもあります…

> PC DEPT やみなとみらいセンタービル
PC DEPOT…

そして今気づいたら番外編もある!

羊さん、ご指摘ありがとうございます。DEPOT ですね。

GONGON

毎週月曜日が本当に楽しみでした。今回はこれまでで一番面白かったです!
ナルミン、ブラウンアイズ、谷少尉etcまたでてこないかな・・・と思ったら
早速番外編感謝です!

今までの作品は連載でだけで読んでいました。
最終話を読んだ後に全話を読み返したのは本作品が初めてです。
あらためて読んでみてもページをめくる手を止められませんでした。
あ、実際には”スクロールを止められなかった”、ですが、
紙の本好きとしては是非ページをめくって読んでみたいです。
続編があったらもっと嬉しいですが、なくても書籍化してほしいです。
連載お疲れ様でした。よいお年を!

サボリーパーソン

ナルミン、鮭の切り身が好きなんだね。

ぷらなりあ

これまでの作品もですが、毎週月曜日の楽しみでした。
ハリウッド的なアクションと、ディープな技術的描写がとても調和していて
ひたすらナルミンが格好良いです。
ありがとうございました。

カズキ

結局、ブラウンアイズはスマホをどこに隠し持っていたんでしょうねぇ。それを考えると夜も眠れません(笑)。
大変楽しく読ませていただきました!
次回作も期待しております!

あきと

月曜日の更新が毎週待ち遠しかったです。次の作品も楽しみにしています。

本文では無いですが一応つっこみで、「極大射程」映画版はマット・デイモンではなくマーク・ウォルバーグが主演のようでした。

あきとさん、ご指摘ありがとうございます。
マーク・ウォルバーグでした。

ゆーすけ

完結、お疲れ様でした。
週明けの楽しみがなくなって寂しいです。

映画のバイオハザードやワールド・ウォーZより面白かったです。
これ、続編も期待してしまいます。
生き別れた鳴海の妻子、実は生きててブラウンアイズとの関係がギクシャクとか、逆にZとして登場して鳴海の精神にダメージとか、妄想は尽きません。

tamu

すみません、過去作含め一番面白かったっていう意見が多かったのですが
正直最後まで読むのが苦痛でした。。
コメントが前作に比べてかなり少ないのも読む人が減ったんじゃないかと思います。
なんだろう、、全体的にキャラがダサいというか・・

aaa

なんでわざわざついらい思いしてまで読むんだか。

So-rei

大変楽しく読ませていただきました。

最初の方の作品を学生時代に発見し、夜を徹して最後まで読み終えたは、もう4年近く前になりますか……。
時が経つのは早いものです。
今や私もプログラマの端くれとなりました。日々コードの羅列に眼を走らせながら、
これらの主人公のような(?)凄腕になりたいと思っております。

しかし、今まで見た展開と全く違うパニックものでびっくりしました。
けど、期待はずれかというと全然そんなことはなくて。
恋愛もこんなにダイナミックに、そして麗しく描写出来る作者様とは思わなかった!
・・・良いですね。こういうの。実戦証明済のブラウンアイズさんの手管にメロメロになってしまいそうです。

じだ

いま社内用に開発してるシステムの名前をソリストにさせていただきました。笑

MSG

漫画版見てみたいです、島崎さんの最後とか。

774

新海誠監督による同意映画が1年後に大ヒットするとは…
とても面白かったです!

atlan

ロメロ監督がお亡くなりになったようで・・・・

リーベルG

atlan さん、どうも。
お亡くなりになってしまいましたね。
オブ・ザ・デッドシリーズの最新作を制作中だとのウワサがあって、楽しみにしていたのですが。
今日の「ゾンビ映画」のテンプレートを作った、偉大な監督だったと思います。

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