高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇 (2)
「はじめまして」ユカリが細い手を差し出した。「エマちゃんね?」
ユカリがかけているスマートグラスのカメラとマイクを通して、丸顔でショートボブの女の子が、ユカリの手をおずおずと握り、小声で「よろしくお願いします」と答える様子が届いた。
二人が会っているのは、横浜市内のファミレスだ。エマは明るい色のワンピースとカーディガンで、マスクをかけている。花粉症なのか、初対面の相手に素顔をさらすことを警戒しているのかはわからない。
ユカリも今日は簡単に変装している。最近のユカリは、インディーズ映画に準ヒロインとして出演するなど、役者としての活動の幅を広げている。まだ、それほど知名度は高くないが、バイト中に声をかけられる頻度も高くなってきたようだ。喜ばしいことだが、今回の仕事に高い知名度は逆に妨げになりかねないので、ウィッグとメイクで知的なイメージを作り上げていた。服も地味なパンツスーツだ。
ユカリの勧めに応じて、エマはドリンクバーとパスタをオーダーした。パスタが届くまでの間、ユカリは本題に入らず、ファッションや芸能ニュースなど、たわいのない会話を交わして、エマの緊張をほぐすことに終始していた。最初は緊張気味に短く応えるだけだったエマも、すぐに年相応の無邪気な笑い声を上げるようになった。老若男女を問わず、他人と仲良くなれるのは、ユカリの特技の一つだ。初対面の相手の警戒心を緩和させる笑顔と、大部分の人間に好感を抱かせる柔らかい声、日本舞踊の師範に褒められたこともある優雅な動きを、生まれながらに備えている。様々な業界のバイトにも従事しているため話題も豊富だ。パスタが届き、マスクを外したエマがそれを平らげる頃には、二人は仲の良い姉妹のように笑い合っていた。
キサラギからエマの話を聞いた私は、すぐにユカリに連絡し、仕事を依頼した。金欠のユカリが喜んで応じてくれたので、私は依頼内容を説明した。ユカリは、キサラギがエマから受け取ったCacao ID を使ってエマに連絡を取ったのだ。エマというのも本名ではなく、Cacao のニックネームだ。
追加オーダーしたパフェが届いたとき、ユカリは切り出した。
「さてと。じゃ、少し話を聞かせてもらっていい?」
エマは小さく頷いた。
「そもそもなんだけど」私の指示に従って、ユカリは質問を開始した。「例のリンクはどこから入手したの?」
「ヒマコイの中学生板で......」
「ヒマコイって?」
エマは、ああ、と呟くと、スマートフォンを出して、数回タップしてから、画面をユカリの方に向けた。そこには、<ヒマコイチャット>というオープンチャットサイトが表示されていた。私は手元のPC で同じサイトを検索して開いてみた。「中学生」「高校生」などのチャットルームが準備されている他、ログインすると自分でチャットルームを作成することもできるらしい。「自動更新まで41 秒...」と表示されているところをみると、WebSocket などを使っているのではなく、古典的な自動リロード型のチャットシステムのようだ。
「ここの中学生板で」エマは慣れた手つきでチャットルームを開いた。「ドルヲタの子とチャットしてたら、エルくんのプライベート流出画像あるよって言われて」
「もらったの?」
「ううん。別サイトに置いてあるからって、プライベートルームに誘われて。そこでアドレスもらったの」
「で、行ってみたんだ」
「うん。ちょっと画質悪かったけど、見たことないエルくんの画像がホントにあって。びっくりしちゃった」
「その画像はダウンロードした?」
エマは残念そうな表情で、首を横に振った。
「いつでも見に行けるって思ってたから。そんで、お礼言おうと思ったんだけど、もうその子は退室してて、プライベートルームも消えてて」
「で、オープンルームの方にアドレス貼ったのね」
「うん。別に秘密にしろとか言われてなかったし」
「誰か、何か言ってきた?」
「もう遅かったし、あたしもすぐ退室したから」エマは再び首を横に振った。「次の日、友達にも教えてあげようと思ってたんだけど......」
次の日の昼休みに、<ヒマコイチャット>を開いてみると、「変なメッセージが出るだけじゃん!」という書き込みが連続していたという。自分でも開いてみたエマは驚いた。いつの間にか、リンク先は例のジョークスクリプトのページに変わっていたのだ。
「消したかったけど、自分じゃ消せないし」エマはパフェをつつきながら話した。「夜になって、みんなが発言すれば流れていっちゃうから、ま、いいかって」
事実、夜になってから、再び訪れたときには、そのリンクのことは話題にもなってなかったという。エマ自身、すっかり忘れてしまっていたが、翌日の朝、警察官の訪問を受けることになった。
「ん、ちょっと待って」ユカリは首を傾げた。「いたずらで貼ったって言ったんじゃなかったの?」
「違うの」エマは真剣な顔でユカリを見た。「あたしは、ちゃんと説明したの。もらったアドレスを貼っただけだって。でも、警察の人は、いたずらで貼ったんだろう、って、しつこく訊いてきて......本当のことを言うまで帰れないよ、って言うから、怖くなって、つい......」
「いたずらで貼ったって認めちゃったわけね」
エマはうなだれた。ユカリは手を伸ばして、エマを元気づけるように、その頭をポンポンと撫でた。
「ところで、この依頼のことだけど」ユカリは話題を変えた。「どこで知ったのか教えてもらってもいい? 普通の中学生だと、結構、たどり着くのが難しいと思うんだけど」
「えーと」エマは言い淀んだ。「ある人から教えてもらって......」
「ネットの人? リアルの人?」
エマは口をつぐみ、背の高いグラスに残ったチェリーをスプーンですくった。持ち上げかけて、思い直したようにグラスに戻す。顔を上げてユカリを見たとき、目に逡巡が浮かんでいるのがわかった。
「あの、それ、どうしても言わなきゃダメ?」
「そんなことはないけど......どうして?」
「一応、言わないって約束したから。ごめんね」
ユカリは判断に迷ったように言葉を切ると、指でテーブルを二回叩いた。どうする? のサインだ。私は「無理に訊かなくていい」と答え、話の続きを待った。
「あ、いいよ」ユカリは安心させるように笑った。「ちょっと気になっただけだから。で、その人はなんて?」
「イマ・トピ見ろって」
「それだけ?」
「そのときはね。ピーター斎藤なんて知らなかったんだけど、検索してみたら、あたしの事件の話だって番組予定に書いてあったから見てみたの。もしかすると、あたしの無実を証明してくれる話かな、と思って。でも全然、そんな風にならなかったけど」
まことに申しわけない、と、私は心の中でエマに謝罪した。
「で、番組終わった後、また、すぐSMS が来て、君の名誉を回復したかったら、ここに連絡してみろ、ってLINE ID が書いてあったの。ちょっと怪しかったけど、一応、電話してみたら......」
「つながったってことね」
「相手の男の人も、ちょっと驚いてたけど。ねえ」エマはユカリを正面から見つめた。「本当に、あたしの名誉を回復してもらえるの? もう、仲のいい友達とか、友達の友達とか、みんな知ってるし、学校からもハッカーみたいに扱われてるんだけど」
「任せて」ユカリは勝手に保証した。「私のボスならやってくれるから」
「それで、あの......」エマは躊躇いがちに訊いた。「お金の方だけど......」
「大丈夫よ。学生割引ってことで1,000 円」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「安請け合いするなよ」私は苦言を呈した。「まだどうなるのかわからんのだから」
『ごめんね、ボス』ユカリは笑った。『でも、何とかしてくれるんでしょ?』
少し明るい表情になったエマと手を振って別れたユカリは、近くの駅に向かって歩きながら私と話していた。
「まあやってみるが......」
『中学生から1,000 円も取るんだから、名誉を回復してもらわないと。だいたい、1,000 円って高くない? 中学生だよ。タダでもよかったんじゃ......』
「タダだと、自分が正義の味方か何かだと錯覚しそうだからな。成功報酬だし、良心的な価格だよ。だいたいファミレスの代金で、もう足が出てる」
『あ、レシートの画像は送っといたよ。次は?』
「帰って着替えてきてくれ。普通の服でいい。清楚な感じがいいかな」
『じゃ、この前買ったカットソーにしようかな。誰と会うの?』
「警官だ。たぶん夜になるだろう。場所と時間は後でDM する」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『3 人目がよさそうです』キサラギが言った。『一番年長なのに、こいつだけ独身です。いろいろ不満を抱えてそうですよ』
「不満というと?」
『一般企業のSE からサイバー捜査官に転職したんですが、IT 系の仕事がほとんどなかったり、書類仕事の泥沼だったり、体育会系気質の上下関係だったり』
「なるほど。よさそうだな。コンタクトに都合のいい場所はあるか」
『毎日、外食して帰ってるみたいだから、いくつかあります。ピックアップして送りますよ』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『世界一、退屈な男だったよ』ユカリは不満をぶちまけた。『話の半分、いや、99.9%ぐらいは、もう何言ってんだかさっぱりだった』
「すまなかったな」
『悪い人じゃないんだけどね』缶ビールを開ける音が聞こえてきた。『システムの知識を警察で生かせれば、って思って転職したのに、入ってみたら、全然違ってたんじゃあクサりたくもなるってもんよね。でもさ、普通、初めて会った女に、延々と人生相談する? 3 時間よ、3 時間』
「口説かれたり、セクハラされたりはしなかったんだろ」
『だから、退屈な男なの』
言うなりユカリは、喉を鳴らしてビールを飲んだ。私は、ユカリが大きく息を吐くのを待って訊いた。
「それで、どうだった?」
『訊けたよ。録音したデータ、送るね』
しばらくして、音声データがVPN 経由で届いた。再生すると、県警のサイバー捜査官の男性がくどくど喋っている声がヘッドホンから流れた。
『......あれね、ここだけの話だけどさ、うちの偉いさんが最初にうっかり開いちゃったんだよ。スマホでさ。なんでJC 板なんか見てたのか知らんけどさ。だって訊けないだろ。で、何回OK ボタン押しても消えないから、パニクって若い署員に訊いたらしいんだな。ウィルスに感染したとでも思ったのかね。そのときさ、その署員がクスクス笑ったんだ。そりゃ笑うよな。無理もないよ。でも、偉いさんはバカにされたとか思ったんだろうな。んで、うちの課長呼んで怒鳴りつけたんだよ。なんで、こんなのを放置しとくんだ、お前ら、真面目に仕事してんのか、ウィルスだろう、これ。そんな感じでさ。課長は大慌てで、俺たちに貼った奴見つけて逮捕してこい、って喚いてた。給料泥棒呼ばわりされたんだから、まあ気持ちはわかるけどな。言っとくけど、俺たちも一応止めたんだよ。書き込みしたのが中学生だってわかったからさ。こんなの補導したら笑いものになるって。あんなジョークプログラムなんて、何年も前から出回ってたんだ。笑って閉じれば済むだけの話だよ。でも課長はネットリテラシーゼロ人間でさ、自分で判断なんかできないんだ。だからHSS ジャパンに問い合わせしちまったんだよ。あそこがウィルスでもマルウェアでもない、って言ってくれれば、それを根拠に上申するつもりだったんだろうな。消極的な選択だけど、まあ、何も選択しないよりはマシだ。ところがどっこい、HSS ジャパンは、実際に被害を与える危険なスクリプトだって回答してきやがった。そうなったらもう、俺たちも動かざるを得ないだろう? だから、あの女子中学生には気の毒だけど、人柱になってもらうしかなかったんだ。こんな騒ぎになって、俺ら全員後悔したよ。でも仕方なかったのはわかってくれるだろ? 警察じゃ上からの命令は絶対なんだ。こんな仕事だと知ってたら、絶対、転職なんかしなかったのにな。この前、どっかの新聞が取材に来て、その偉いさんが受けたんだ。ネットで批判の声が上がってますが、と訊かれて、自分の子供にもそんなこと言えるのか、って逆ギレしてたな。俺は逆に訊きたいね。自分の子供がピンポンダッシュしたら、あんた、補導すんのかよってな...... 』
私は音声データをキサラギにも送り、裏付けを頼んだ。キサラギは4 時間後に回答をよこした。
『裏、取れました』明らかに憤慨している声だった。『別のサイバー捜査官が似たような話をしてました』
「ありがとう」私は頷いた。「次はどうするかな」
『これで必要充分な証拠じゃないですか』キサラギは勢い込んで提案した。『この音声データ、匿名でネットにアップしちまいましょうよ』
「それはダメだ」
『どうしてですか。そりゃ盗聴みたいなもんだから、問題にはなるかもしれませんけど......』
「ネットに上げれば、誰が話したのかぐらい、すぐ特定される。話に出てきた偉いさんもだ。そんなことになったら、その二人の警察官としてのキャリアは終わる」
『自業自得じゃないですか』キサラギは声を荒げた。『罪もない中学生を、見せしめで補導したりしたんだから。エマちゃんが警察に補導されたって事実は、もう消えないんですよ。今後、進学や就職でどれだけ不利になるか。それに、あいつらが何をしたか、ボスだって知ってるでしょう? 県警のホームページから、Google Analytics のスクリプトを何も言わずにサクったんですよ。ネットで指摘されて大慌てで。やってることが汚いじゃないですか!』
いつもは醒めた口調で冷笑的に事実を指摘するキサラギが、今日は感情が理性より上位に位置しているようだ。よほど、この件が腹に据えかねているらしい。
「だからこそだ」私はため息をついた。「いいか、もしその二人の警察官が特定されて、氏名がネットでさらされたら、警察は全部その二人に押しつけて幕引きを図るぞ。それで何が変わる? 三人の人間の人生が狂っただけだ。依頼に応えたことにならないじゃないか」
『エマちゃんの無実は証明されますよ』
「いや、警察関係者の処分なんぞで終わってしまったら、世間は一件落着とみなして、それ以上問題の本質を知ろうともしなくなる。あの子を知っている人間、特にスクリプトが何なのかわからない大部分の知人にとって、真相はグレーのままだ。ブラック寄りのな。あり寄りのなしってやつだ。警察が動いたぐらいだから、彼女は確かに何かやったんだろう、ドジな警察官が勇み足で補導したことで処分されたが、もっと慎重に捜査をしていたら、れっきとしたネット犯罪が立証されたんじゃないか。そんな風に思うかもしれない。推定無罪は司法の原則だが、一般の認識はどちらかと言えば推定有罪に傾くからな」
キサラギは少しの間、考え込むように黙っていたが、やがて大きなため息をついた。
『......すいません。少し感情的でした。マジでムカついてたんで。お前たちはもう感情にまかせて過ちを冒せる年齢じゃないんだよ、って柊先生も言ってたのに』
「誰が言ってたって?」
『いえ、何でもないです。で、どうするんです?』
「とりあえず敵のデータをできるだけ収集する」
『敵というと?』
「ハウンドだ」私は答えた。「正確に言えば、HSS ジャパンだな」
『ああ、やっぱりあそこが敵なんですね』
「それは間違いない」
『どんな情報が必要ですか』
「全部だ。会社の経営状態、主力商品、従業員数、資本金、特に、例のパーフェクト・ディフェンダー関係は詳しい仕様も知りたい。CoinMaker の一件までは、マイナーなアンチウィルスアプリだったな」
『確かにそうですね。高いだけで、大した性能じゃないと思ってました。調べてみます』
「できるだけ急いで頼む。この手の事件は熱くなるのも、冷めるのも早い。このまま新事実が何も出ずに、ネットの黒歴史として固化してしまうと、もうどうしようもない」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
怒りがキサラギの能力を最大限に回転させたらしく、24 時間が経過しないうちに調査結果が送られてきた。HSS ジャパンは、多国籍軍産複合企業であるハウンド・インターナショナルが無数に抱える子会社の一つ、ハウンド・セキュリティ・サービスの日本支部だ。主にIDS/IPS 機器に搭載するソフトや、WAF(Web Application Firewall) など、エンタープライズ向けの製品を販売している。これらの製品は、海外の大企業でも採用されている信頼性が高いもので、日本でもセキュリティ対策に充分な予算を計上できる企業が顧客となっている。いくつかのメディアに、HSS ジャパンがセキュリティ専門会社として露出しているのは、これらの実績によるものだ。
HSS ジャパンが個人向けのアンチウィルスソフト、パーフェクト・ディフェンダーを市場に投入したのは、約2 年前だ。この分野では後発であり、売れ行きは順調とは言えなかった。Windows10 ではWindows Defender で済ませてしまうユーザが多いし、Android ではアンチウィルスソフトの有効性が低い。iOS ではそもそもApp Store にアンチウィルスソフト自体がほとんど存在していない。加えて、発売の数ヶ月後、パーフェクト・ディフェンダーの関連製品がApp Store から全て締め出されてしまったことも、信用を落とす一因となった。パーフェクト・ディフェンダーがブラウザ履歴を収集し、HSS に送信していたことが判明したのが原因だと言われている。その後、問題となった機能を削除したバージョンがApp Store に復活したものの、市場の反応は冷ややかだった。IT 系のネットメディアが調査した利用ランキングでは、トップ20 からも外れていた。
ところが、CoinMaker の件で真っ先に対応版をリリースしたことがキッカケで、パーフェクト・ディフェンダーの知名度と売り上げは、急角度で上昇を開始する。先日の番組で同席した須加野氏が、異動によって広報技術部の部長職に就いたときと時期が一致している。須加野氏は、古典的なウィルス駆除よりも、当時、雨後の筍のように出現・流行していた仮想通貨のマイニングスクリプトの検知に力点を置いた製品改良を指示したのだ。どういうわけか、仮想通貨のマイニングを目の敵にしていた警察のサイバー犯罪対策課と利害が一致したらしく、以後、HSS ジャパンはマイニングスクリプトに関しては、サイバー犯罪対策課の顧問のような立場で助言などをしている。
『さすがにソースは入手できませんでしたが』キサラギは技術者らしく冷静な口調で言った。『検知したスクリプトの数と種類はHSS ジャパンのサイトで堂々と公開されているので、傾向を読み取ることはできそうです』
「ほう」私は調査のため、というより、純粋に技術的な興味から訊いた。「どんな方法でやるんだ」
『まず、これまで検知されたと公表されているスクリプトを集めてきます。これは、その気になれば、どこからでも入手できますからね。それから、まだ検知対象となっていないスクリプトも同様に。それらのスクリプトを、オレが持ってるサーバに仮想マシン作って、Web サーバ立ち上げた上で組み込みます。後はパーフェクト・ディフェンダーをインストールしたスマホからアクセスしてみるだけです。検知できる奴とできない奴で、差があるはずなので、それをチェックしていけば。面倒なのは、スクリプト同士の影響を避けて、シンプルな環境にするために、スクリプト毎に仮想マシンを作る必要があるってことで......』
キサラギの話を聞いているうちに、自分の頭の中に分散していた情報の断片が寄り合わさり、波動関数が収束するみたいに、一つの思考として脈打ち始めるのを感じた。
「それ、いいな」私は思考をブラッシュアップしながら言った。「私も手伝おう。仮想マシンのクローンをイメージファイルにして送ってくれ。スクリプトのリストもだ。お前は先頭から、私は後ろから試していくことにしよう。全部終わったら、それぞれのスクリプトを部分的に修正して亜種を何パターンか作る。それも、同じようにテストするんだ」
『何か反撃方法を思いついたんですか?』
「漠然とだが。仮想マシンとスクリプトのリスト、どれぐらいでできる?」
『昨日から寝てないんで、少し仮眠を取ったらすぐ......』
「前にも言ったが」私はキサラギを遮った。「あまり時間をかけるわけにはいかない。寝てるヒマなんかないぞ。一日ぐらい寝なくても死にはしないだろう。すぐ取りかかってくれ」
『ブラック企業ですね』キサラギは乾いた笑い声を上げた。『わかりました。オレが作業している間、ボスは寝るんでしょうね』
「残念ながら、そうじゃない」私は苦笑した。「ピーター斎藤について調べる必要がある。高村ミスズのためにな」
(続く)
この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係なく、たとえ実在の人物に似ているとしても偶然です。また登場する技術や製品が、現実に存在していないこともありますので、真剣に探したりしないようにしてください。
コメント
かずき
柊先生で吹いた
匿名
3年A組www
匿名
某なんたらマイクロのなんたらバスター問題とかネタには事欠かなくていいですねwwww
匿名
>最近のユカリは、インディーズ映画に準ヒロインとして出演するなど
カメ止めかよ(笑)
ユカリさんすげえ
atlan
最近サイバーポリス辞めた人の話が出てきたばっかりですね
取り込むのが速い
匿名
エマちゃんにキサラギを紹介した人、白川ナオミさんだったりして。
へなちょこ
柊先生w
匿名
「LINE ID」は「Cacao ID」の間違いかな?この物語はフィクションですよね!?
匿名
この展開、このテイスト。これこれ。