イノウーのプログラミングなクリスマス (終)
「いいね、いいんじゃない? ずっとよくなったよ」
斉木係長は褒めちぎったが、イノウーは少しも安心しなかった。次の言葉が正確に予想できたからだ。
「でもさ、一ついいかな」
イノウーが考えたことは二つだった。同じ台詞を耳にするのは、これで19 回目だということ、「一つ」といいながら一つではありえないということ。もはや笑顔を作る余裕すらなく、イノウーは疲れた声で訊いた。
「なんでしょう?」
「クリパなんだからさ、色合いに赤と緑を入れたらどうかと思うんだよね」
24 日の11 時30 分過ぎだった。もうかれこれ2 時間以上も、ビンゴ画面のリテイクを繰り返している。
木名瀬の協力もあり、ビンゴシステムの構築は、比較的順調に進んだ。最初はやや抵抗があった「出来レース」ロジックも、コーディングを開始してしまうと、それほど気にならなくなっていた。これが誰かが不正に利益を得るような仕組みなら、わだかまりを捨てることができなかったかもしれないが、むしろ参加者全員に適度な満足感と幸福感を受け取ってもらえるのだ。
23 日の午後は、木名瀬と当選のシミュレーションを繰り返すことで、ほぼ潰れてしまった。過去5 年の当選者を考慮に入れ、均等な分布になるように少しずつ条件を変えてはテストを行ったのだ。ある程度、目処が立ったと安堵したとき、再び斉木係長の介入が発生したことで、シミュレーションは一からやり直しになった。斉木係長は、当選者が一つの所属に集中しないように、適度に散らしてくれ、と言ったのだ。シミュレーションに新たな因子が必要となり、それまでの数時間はムダになってしまった。
「去年、紙でやったとき」イノウーは木名瀬に訊いた。「こういう要望とかなかったんですか?」
「大きな声では言えませんが」木名瀬は声をひそめもしなかった。「実はありました。内容はここでは言えませんが、似たようなことです」
「どうやって制御したんですか?」
「MC が箱に入ったナンバーカードを引いていく、という方法だったので、カードにマークを付けておいて、引いていく順番を指定したんです。参加者に配られた数列カードも、無作為に渡しているように見えて、実はスタッフしかわからないようにマーキングしてありました」
「......いろいろ苦労があったんですね」
「他人事みたいに言ってますが」木名瀬はちらりとイノウーを見た。「今後、そういう苦労をするのは、井上さんかもしれませんよ」
「年に一回ぐらいなら我慢しますよ」イノウーは笑った。「それに、来年は同じシステムを流用できるじゃないですか」
「だといいですね。それで所属で分散させるのはできそうですか? 単純に所属の数で割る、というものではないですよ」
「所属の在籍人数に応じて、ですね」
斉木係長は、その後も何度か顔を出しては、細かい注文を追加していった。イノウーと木名瀬は、その都度、仕様を相談し、シミュレーションを修正する作業に追われ、ようやく誰もが満足できると思われる事前当選者が決まったのは、夕方近くだった。
「今日は娘と一緒に料理をする約束なので、これで帰ります」17 時になると木名瀬はさっさと立ち上がった。「あとはスマホ側のデザインだけです。お任せして大丈夫ですか?」
「さっき、ラフスケッチを見せてOK もらってますから」イノウーは頷いた。「明日、実装するだけです」
「今夜も予定はないんですよね」木名瀬は決めつけた。「今から実装を開始してください」
「スターウォーズ観に行こうと思ってたんですが......」
「映画はいつでも観られます。1 パターンだけでなく、最低でも10 個はパターンを作っておいてください」
「......10 個ですか?」
「最低でもです。フレーム素材、カラー、数字フォントなどを組み合わせて。明日も6 時に来ます。井上さんも同じ時間に来てください。では、お先に」
ほとんどの社員が帰った後、イノウーはスマートフォン側の画面パターンの作成を行った。夕食はコンビニで買ってきたフライドチキンとおにぎりだ。ビールを飲みたいところだったが我慢した。
翌朝、イノウーは眠い目をこすりながら、時間通りに出社してきた木名瀬に、作成した15 パターンの画面サンプルを見せた。木名瀬はざっと比較して、似たような3 つを除外してから言った。
「9 時から12 時まで斉木係長のスケジュールを押さえてあります。画面を見せて意見を聞いてください」
「ぼくたちで決めてしまってもいいんじゃないですか」
「どうせ斉木係長にダメ出しされるから、今、決めてもムダです」
「そんなに、このデザイン、ダメですか?」
木名瀬はイノウーの顔を正面から見つめた。
「井上さん、フロントの経験はあまりないようですね」
「......多くはないです」
「それを聞いて安心しました」木名瀬は本当に安堵した表情を浮かべた。「前職でバリバリのフロントエンジニアでした、なんて言われたら、経歴詐称を疑わざるを得ないところです。正直に言わせてもらうと、井上さん、フロントのセンスはあまりないですね」
少なからず傷ついたイノウーは、力ない声で木名瀬に訴えた。
「そんなにはっきり言わなくても......」
「オブラートに包んだ方がよかったんですか? 自分の欠点を素直に認められないようになったら、社会人としても人間としても成長が終わり、ということです。その年齢でフリーライダーになりたいんですか?」
「......」
「ちょっと用事があるので」木名瀬は気落ちするイノウーを気遣う様子も見せずに言った。「しばらく抜けます。午後になったら戻ってきます。斉木係長へのレビュー結果を教えてください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
木名瀬の言葉は、またまた正しかった。イノウーから画面デザインを見せられた斉木係長は、すぐにパターンを4 つにまで絞ると、それぞれについて、細かい指摘を加え始めた。フォントの種類とサイズ、背景色、フレーム、ヒットしたナンバーが反転するとき、リーチ成立時、ビンゴ完成時のアニメーションとサウンド、などなど。
イノウーはそれぞれの指摘を修正し、再度、確認を求めたが、斉木係長は満足しようとしなかった。木名瀬ほど明確にダメだ、とは言わず、「いいと思うんだけど......」とか「前より良くなったんだけどね......」などと前置きして、新たな指摘をしてくるのだ。
12 時近くになると、斉木係長は伸びをして立ち上がった。
「ぼく、ランチに行ってくるからさ」陽気にイノウーの肩を叩きながら、斉木係長は笑いかけた。「また午後イチで見せてよ」
斉木係長がミーティングルームを出て行くと、イノウーはぐったりとテーブルに突っ伏した。レビューに使った会社支給のスマートフォンが省エネモードに移行した頃、ドアが開いて木名瀬が入ってきた。
「おつかれでした」木名瀬は手にしていたコンビニの袋を差し出した。「ランチを買ってきてあげました。税込みで600 円です。端数はサービスしておきます」
そう言うと、自分は小さなランチボックスを手に、イノウーの向かいに座った。イノウーは礼を言って、PayPay で木名瀬に送金すると、袋を開けた。海苔が巻かれたおにぎりが2 個と、唐揚げ、卵焼きがセットになった弁当だ。暖かいペットボトルのお茶も一緒だ。
「何回ダメ出しされましたか?」
木名瀬は自分のランチボックスから、サンドイッチを出しながら訊いた。イノウーは苦笑しながら答えた。
「20 回までは数えていました」
「私の予想より少ないですね」
「この調子じゃ、ずっと決まらない気がしてきたんですが......」
「そうかもしれませんね」木名瀬は他人事のように言った。「斉木係長は、その気になれば、100 回でも新しい指摘事項を見つけ出せるでしょうから。協力会社相手だと、下請法の問題もあって、適当なところで妥協しますが、井上さんだとその心配はありません」
「勘弁してください」イノウーはおにぎりにかぶりついた。「確かに、ぼくはデザインセンスとかある方じゃないですけど、あんなの斉木係長の主観でしかないじゃないですか」
「井上さんが自分で自信がない、なんて言ってるうちは、斉木係長はOK を出さないでしょうね」
「はったりでもかませばいいんですか」
「もう遅いです。やるなら最初にやるべきでした。自分はこういうコンセプトで、このようにデザインした、とはっきり主張していれば、斉木係長はまた違った目で見たはずです」
「言ってくれればよかったのに」イノウーは木名瀬を恨みがましい目で見た。
「何か誤解しているようですが」木名瀬はタンブラーからカップに紅茶を注ぎながら言った。「言っても斉木係長を納得させるのは無理です。井上さん自身に確固たる信念もないのに、そんなはったりなど通用するはずがないでしょう」
「じゃあ......」どうすればいいのか、とイノウーが訊こうとしたとき、ミーティングルームのドアが小さくノックされた。木名瀬が応じると、ドアが開いて、一人の女性社員が入ってきた。その顔を見たイノウーは少し驚いて食べる手を止めた。業務三課の笠掛だった。
「お邪魔します」笠掛は一礼すると、木名瀬の隣に座った。「どうも、イノウーさん。以前、ちょっと絡んだんですが、憶えてますか?」
「ああ、はい、もちろん」イノウーは木名瀬を見た。「えーと......」
「デザインを見てもらおうと思って呼びました。マリちゃん、お願いできる?」
「はい」笠掛は頷いて、イノウーに向けて手を差し出した。「見せてください」
イノウーはスマートフォンのロックを解除して差し出した。笠掛は素早くスワイプして、デザインを見ていった。
「うーん、イノウーさん、フロントやったことは......」
「ないです」イノウーは遮った。「すいません。ないです」
「なるほど。まず、カラーのコンセプトがバラバラですね。色は使えばいいってもんではないので。フォントもいろいろ使いすぎで、統一感がないですね。あと余白。上下左右のマージンが適当だし、そもそも狭すぎです。ソース見たいんですけど、サーバってどれですか?」
イノウーがサーバ名を教えると、笠掛は持ってきたタブレットで、共有フォルダを開き、ソースを参照し始めた。イノウーが目顔で問いかけると、木名瀬は微笑みながら言った。
「マリちゃん......笠掛さんは、フロントの勉強をしているんです。デザイン系の専門学校を卒業していますし。社内報のレイアウトや、部門ブログのデザインもお願いしています。事情を話して協力してもらうことにしました」
「ぼくのデザインが使い物にならないからですか」
「井上さんのデザインでは、斉木係長が納得しないだろう、と思ったからです」
それは事実だったので、イノウーは反論しなかった。
「だったらもう少し早く参加してもらえばよかったのに」
「今日の午後でないと、身体が空かなかったからです。それに、井上さんのデザインがOK になる可能性だって、ゼロとは言えませんでしたから」
「ひょっとして、例のアレがNG だったのは......」
イノウーが言葉を濁したのは、斉木係長に依頼された、笠掛を当選させる件だ。木名瀬は頷いた。
「デザイン面でヘルプしてもらうなら、笠掛さんにしようと考えていましたから」
「イノウーさん」笠掛がタブレットから顔を上げずに訊いた。「ソース、修正していいですか? いくつか使えそうなテンプレートあるんで。あと、たぶん、タブレットで参加する人もいるから、このままのサイズだとズレます」
「何でもやってください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
午後のレビューには笠掛も同席し、斉木係長に対して、明確なコンセプトを説明してくれた。斉木係長は感心したような顔で頷きながら聞いていて、小さな要望をいくつか追加しただけで、デザインにOK を出した。
ホッとしたイノウーだったが、息つく間もなく、決定したデザインを、Flask に組み込む作業に取りかかった。サンプルのHTML やCSS をFlask に配置するには、いくつかの修正を加える必要があったが、笠掛が修正したサンプルには、イノウーがこれまで見たこともないような記述がいくつもあり、その都度、意味を確認しながら表示テストを繰り返さなければならなかった。フロアの他の社員が、楽しそうにクリスマスイブの予定を話しながら次々に帰宅していくのを尻目に、イノウーは再調整を続けた。木名瀬は娘とのお出かけ予定があるとかで定時で帰宅したが、笠掛は自分の仕事をしながら、定期的に様子を見に来て、イノウーの質問に答えてくれた。
クリスマスパーティ当日の朝、イノウー、木名瀬、笠掛は7 時に出社し、最終テストを何度か実行し、いくつかの問題点の修正を行った。9 時には斉木係長も出社し、通しでテストを行ってみせた結果、満足そうにOK を出してくれた。
イノウーの作業は終わりではなかった。事前決定した当選者の中に、仕事の都合や体調不良などで出席が未確定の社員がいることが判明したため、欠席した場合の調整を考慮しなければならなかった。また、賞品数が予想より大幅に増えそうだ、との情報が斉木係長より届いたため、再度、シミュレーションを実行しなければならなかった。パーティの準備のため、庶務グループは午後から会場の方に出向いていたため、イノウーは一人で作業を続けた。
パーティの時刻が近付くにつれ、イノウーの精神状態は陽と陰の間を揺れ動いた。考えられるエラーは全てトラップし、緊急やり直し機能や、一つ前の取り消し機能など、想定される事態には対応できている自信がある。だが、木名瀬が指摘したように、ぶっつけ本番のシステムだ。いくらテストがOK だったからといって、本番で動作する保証は全くない。100 台以上のモバイル端末からの同時アクセスも、理論上のテストは行ったものの、やはり本番で動作する保証はないのだ。こんな胃が痛くなる開発は初めてだ、二度とやりたくない、と考えながら、イノウーはパーティ会場へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
派手なサウンドと同時に、最後の当選者が「ビンゴ! ビンゴ!」と叫んで飛び上がった。一斉に拍手と呻き声が沸き起こる。当選者はMC 役の社員に招かれてステージに駆け上がった。景品のワイヤレスイヤホンを受け取ると、高々と包装された箱を頭上に掲げて喜びを露わにした。
バックヤードでそれを見ていたイノウーも、当選者に負けないぐらいの喜びと深い安堵を感じていた。それまで、見落としていたバグが発覚して、ビンゴ大会の進行が途中でストップする、という最悪の事態ばかりが何度も頭をよぎっていたのだ。
MC が「では、これでビンゴ大会を......」と言いかけ、イヤホンに耳を傾けた。横を見ると、庶務グループの中にいる木名瀬が、ヘッドセットに何か話している。MC は小さく頷くと、改めてマイクを握った。
「では、ここで、この素晴らしいビンゴシステムを、短い期間にも関わらず作り上げてくれたスタッフを紹介したいと思います。業務二課のイノウーこと井上さん。そして、業務三課の笠掛さん、どうぞ、ステージの方へ」
歓声や口笛が鳴り響く中、イノウーは茫然としながら、周囲の社員によってステージへと押しやられた。同じく寝耳に水だったらしい笠掛も、照れくさそうな顔でステージへ上がってくる。
「では、みなさん、お二人に盛大な拍手をどうぞ!」
新たに拍手の渦が沸き起こる。気分が高揚したイノウーは木名瀬を探したが、いつの間にか姿を消していた。笠掛も手を振って拍手に応えながら、キョロキョロと社員の中を見回していた。
「ありがとうございました。それでは、次の余興まで、しばしご歓談ください」
ステージを降りたイノウーは、もう一度、木名瀬の姿を探したが、発見することはできなかった。諦めたイノウーは、急速に主張を始めた胃袋をなだめるべく、料理が並ぶテーブルの方へ向かった。笠掛も同僚らしい女子に囲まれ、楽しそうに爆笑しながら料理に手を伸ばしている。視線が合った笠掛は、真面目な顔で会釈した後、不意に破顔して小さなガッツポーズを作って見せた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パーティが終わった後、イノウーは駅に向かって歩いていた。手には全員に配られたチョコレートケーキの袋がある。出遅れたせいで、あまりお腹にたまる食物を摂取できなかったイノウーは、どこかで牛丼でも食べていくか、と考えていた。
この近くにお店あったかな、と周囲を見回そうとしたとき、不意に肩を叩かれた。驚いて振り向くと、木名瀬の姿があった。
「木名瀬さん」イノウーは叫んだ。「どこにいたんですか」
「会場のあちこちにいましたよ」木名瀬は微笑んだ。「庶務は裏方ですから。雑用をあれこれとこなしながら」
「木名瀬さんもビンゴシステム作るのに貢献してくださったんだから、ステージに上がるべきだったんじゃないですか」
「私はそういうのはいいんです。それより、お腹空いているんじゃないですか? あまり食べてませんでしたね」
「ビンゴ大会が無事に終わるまでは、それどころじゃなかったんです」
「見かけによらず繊細な神経なんですね。近くにおいしい焼き鳥屋さんがあるんですが、一緒にどうですか?」
「割り勘ですよね」
「もちろんです。行きましょうか」
イノウーは木名瀬が示す方向に歩き出した。
「本当にお世話になりました」歩きながらイノウーは礼を言った。「木名瀬さんがいなかったら、今頃、みじめな思いで一人やけ酒でも飲んでたかもしれません」
「仕事です。礼はいりません」
「また、いつか、何かで一緒に仕事することがあったら、よろしくお願いしますね」
すると木名瀬はまた微笑んだ。事務的なそれではなく、心から楽しそうに。
「そのいつかと何かは、案外近いかもしれませんよ」
「え?」イノウーは木名瀬の顔を見た。「近いって?」
「たとえば来年とか」
「どういうことですか」
「年明けに内示が出るので、もう言っても構わないでしょう。来年度、4 月から社内に新しい部署が新設されます。名称はまだ未定ですが、総務部の下のグループになります。社内システム開発を行う部門です」
「社内システム開発......つまり」
「うちの会社は、システム会社のくせに、いろんな社内業務を紙で行っています。勤怠報告や各種稟議、見積書、請求書の処理。これでは見栄えがよくないので、社内で開発・運用を行う部門を新設することになったんです。今、庶務グループでやっているサーバの管理なんかも、そっちに移管されます」
「そこに、ぼくが......」
「異動になります」木名瀬は頷いた。「つまり、井上さんは試用期間が終わり、正式採用ということです。グループリーダーは斉木係長ですが、知っての通り、システム開発のスキルはないので、井上さんがリードすることになるでしょうね。私もそちらに異動です。あと笠掛さんも」
イノウーは思わず笑った。
「ビンゴシステム開発メンバーですね」
「そうですね」木名瀬も笑った。「今回のビンゴシステム開発は、どうやらそのテストケースだったようです」
「斉木係長は、そのつもりで、木名瀬さんを指名したんですか」
「そうかもしれません」そう言って木名瀬は、イノウーの目を覗き込んだ。「不満じゃないですか?」
「不満? なぜですか」
「うちの会社の本来の業務とは外れることになります。外部のクライアントや、協力会社と連携を取って大きなシステムを開発するのではなく、社内のシステムを地味に作っていくんです」
イノウーは少し考えただけで、首を横に振った。
「今回のビンゴシステム開発でわかりました。ぼくは、やっぱりプログラミングが好きなんですよ。確かに苦しい開発でしたけど、プログラムレベルで問題を解決していくのは楽しいし、完成したときの達成感は、そりゃもうすごいんです」
「それならいいんですが。いずれにせよ、内示の段階でなら、断ることもできますから、よく考えておいてください」
「わかりました」
「あ、イノウーくん」木名瀬は小ぎれいな店舗の前で立ち止まった。「その店です。席、空いてますか」
「見てきます」イノウーは足を踏み出しかけ、気付いて振り向いた。「今、なんて呼びました?」
「いいから早く」木名瀬は店を指した。「私もお腹ペコペコなんです」
イノウーは笑って店の扉を開いた。赤い帽子をかぶった店員の威勢のいい声が届き、焼き鳥の香ばしい匂いが鼻をついた。
(終)
この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今年の掲載はこれで終わりとなります。みなさん、よいお年を。また来年、よろしくお願いします。
コメント
匿名
面白かったです!
匿名
> 「何でもやってください」
めちゃくちゃ気持ちわかるw
匿名
おいおい、笠掛さんとくっつくのかと思ったら俺たちの戦いはこれからだかよ!!!
次の戦いはいつだよ!!
匿名
メリークリスマス!今年もありがとうございます
匿名
木名瀬かっこいいかよ
匿名
この有能っぷり、木名瀬は東海林の奥様では……?
匿名
イノウーを先に行かせて、実は笠掛さんが居て、木名瀬さんはすっと帰ってて、ってバターンかと思ったら違った。
次でかな?
匿名R.2
イノウーがエンジニアを辞めていなくて良かった……!
匿名
木名瀬さんはぎぼむすの人イメージですよね?
ななし~
> 笠掛も同僚らしい女子に囲まれ、楽しそうに爆笑しながら料理に
爆笑ですか~?(それはそれで...笑)
今年も楽しく拝読させて頂きました! また来年も楽しみにしています(^^)
MUUR
仕事に追われて終わっていったクリスマスに、ひとときの癒しの作品で楽しく読ませていただきました。
これから?を感じさせるラストもよかったです。
kemi
こんな糞みたいな仕様変更に対応しなきゃいけないとか絶対嫌だわ、、係長の心証とかどうでもいい
KARI
これブラック企業に警鐘を鳴らす告発小説ってことでいいんですよね?
まさかとは思いますがハッピーエンドだと思って読んでいる人はいないですよね?