第582回 PMP試験からプロマネを考えてみる
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近はずっとプロマネ研修漬けの毎日を送っています。そのせいか、プロマネに関する色んな資料、文献を読む機会が増えてきました。私自身も昔はプロマネとして仕事をしていましたが、今のプロマネ事情は昔と比べて随分変わったなぁという印象を持っています。そこで、今回はPMP試験から現在のプロマネについてあれこれ書いてみたいと思います。
■PMP試験=PMBOK?
PMP試験を語る上で絶対に出てくるワードはPMBOKです。PMBOKをWikipeiaで調べてみるとこんなことが書かれていました。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge、頭字語として「ピンボック」と読まれることがある)は、「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」(英語: A Guide to the Project Management Body of Knowledge、略称: PMBOK Guide、PMBOKガイド)の略語である。PMBOKガイドは、プロジェクトマネジメント協会 (PMI) が発行している。(Wikipediaより)
また、概要欄にはこのようなことが書かれています。
プロジェクトマネジメントの知識を体系化したものである。第6版までは10の知識エリアと5つのプロセス群から定義されているものであり、第7版からは12の原則と8つのパフォーマンス・ドメインから定義されている。また、ソフトウェア開発のプロジェクト管理において必要な知識体系である。
PMBOKガイドは、国際的に標準とされているプロジェクトマネジメントの知識体系(ガイド、手法、メソドロジー、ベストプラクティス)であり、建設、製造、ソフトウェア開発などを含む幅広いプロジェクトに適用できるプロジェクトマネジメントの基盤を提供する。(Wikipediaより)
第6版、第7版の違いについては過去のコラムで書かせてもらっていますので今回は割愛しますが、要するにPMBOKとはプロジェクトマネジメントのやり方が定義されているモノと考えれば分かりやすいでしょうか。
そして、PMP試験の方に話を移すと、PMP試験はPMBOKの理解度を測る試験と印象を持たれている方がおられるのではないかと思います。それは、PMP試験はPMBOKをリリースしているPMIが提供しているからで、事実私も過去にPMPを取得した時もPMBOK 2000(PMBOK第2版)を使って勉強していました。
しかし、この考え方は既に過去のモノとなっています。なぜなら、現在PMP試験はPMBOKではなくECOに則って出題されているからです。
ECOとは「Examination Content Outline」の略でPMPの試験範囲という意味です。このECOは世界各国の様々な業界にいるPMPホルダーによって策定されており、このようになっています。
ECO(PMP試験の出題範囲)
・プロセス(50%)
・人材(42%)
・ビジネス環境(8%)
これを見てもなんのこっちゃよくわからないので、もう少し補足します。。。
■PMIタレントトライアングル
少し話が飛びますが、PMIはプロマネのあるべき姿としてPMIタレントトライアングルを提唱しています。これはプロマネには3つの要素が必要であるという考え方です。
PMIタレントトライアングル
・Ways of Working(働き方)→プロジェクトマネジメントやり方・手法・プロセス
・Power Skills(パワースキル)→プロマネが持つべき人間関係のスキル
・Business Acumen(ビジネス感覚)→プロジェクトを取り巻くビジネス環境を意識すること
Ways of Working(働き方)というのはプロジェクトマネジメントのやり方なので、これが凡そPMBOKのことを表しています。
Power Skills(パワースキル)はプロマネが持つべき人間関係のスキルということで、リーダーシップ、コミュニケーションスキル、傾聴、コーチング、コンフリクトマネジメント、EQ(感情的知性)などプロマネ個人の能力のことをを表しています。
Business Acumen(ビジネス感覚)はプロマネは目先のプロジェクトだけを考えるのではなく、自分の組織や会社がこのプロジェクトに与えるビジネス的な影響は何かを考え振舞うことを言っています。
つまり、以前のプロマネであればWays of Working(働き方)だけを意識していれば成立していたのかもしれません。しかし、現在はWays of Working(働き方)に加え、Power Skill(パワースキル)、そしてBiusiness Acumen(ビジネス感覚)を持つことが求められているのです。
そして、先ほどのECOはPMIタレントトライアングルがもとになっているのです。
ECO → PMIタレントトライアングル
・プロセス(50%) → Ways of Working(働き方)
・人材(42%) → Power Skills(パワースキル)
・ビジネス環境(8%) → Business Acumen(ビジネス感覚)
だから現在のPMP試験はPMBOKだけを覚えてもそれは凡そプロセス(Ways of Working)の範囲でしかなく、ECO(PMIタレントトライアングル)を網羅することはできないのです。。。
■これからのプロマネに求められるモノ
これまでのプロマネはPMBOKのやり方を正確に把握し、その通りに実行することでプロジェクトを成功させるような考え方をしていました。しかし、今のプロマネは単にPMBOKに右に倣えをするのではなく、自身のプロジェクトに合う最適な形にテーラリング(仕立てる、調整する)ことが重要となっています。そして、やり方だけではなく、プロマネ自身のスキルを磨き、組織や会社を意識したビジネス感覚を身につけることが必要なのだとPMIは伝えています。
こうやってみてみると、今のプロマネの役割は本当に大きいなぁと感じます。しかし、その一方でまだまだプロマネという職業はやり方(プロセス)にフォーカスされる傾向があるように思います。
前回のコラムでも書きましたが、プロジェクトマネジメントのやり方自体も旧来のウォーターフォールからアジャイルに変わりつつある今、プロマネという職業に対する捉え方、考え方をアップデートする時期に来ているのかもしれませんね。