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第272回 【書評】MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 先週、あべっかんさんの新刊『週末パパ講座で子どもに【自分で考える力】を身につけさせる3つの方法』の書評を書かせていただきましたが、エンジニアライフの編集さん経由で書評の依頼をいただきましたので、2週続けて書評を書かせていただきます。今回はシバタナオキさんが書かれた『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の書評です。(例によって書評の場合、文章の雰囲気が少し変わります。あらかじめご了承ください)

■決算書を読むということと、その難しさ

 私たちがある会社の情報を知りたいと思ったとき、直ぐに考えられるのはネットを検索することだろう。その会社のWebサイトを閲覧することもそうだし、ネット上の噂を拾うこともするだろう。しかし、それ以上に、もっと正確な情報を入手する方法がある。それが決算書を読むということだ。決算書に書かれている数字情報を読み解くことで、見えない会社の一面が見えてくることがあり、それが仕事に役立つ場合がある。例えば、経営層や部門長など予算を握っている人との会話がそうだ。こういった方々と会話をする場合、会社の数字(KPIなど)を交えて話をする方が会話が進みやすくなる。言うなれば、決算書というのは経営層や部門長と会話をするための共通言語でもあると私は考えている。

 しかし、決算書は数字の羅列でとても読みづらい。決算書の中には数値の補足説明をしている場合もあるが、基本は自分で数字を読み解かなければならないので、その知識を有していないと到底読むことができない。

■決算書の敷居を下げる一冊

 そこで、『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』である。世の中には決算書の説明をしている書籍は数多くあるが、それらはすべて専門家によって書かれている。しかし、この本の著者であるシバタナオキ氏は専門家ではないという。ふとしたことがきっかけで決算書に関わることになり、そこから決算書にハマってしまった異端者(?)だ。

 しかし、専門家ではないからこその視点もたくさんある。例えば、決算書を解説している本は大抵簿記の説明から入っている。それは簿記の説明がないと決算書が読めないからだ。しかしこの本は違う。決算書で読むべきポイントしか書かれていないのだ。簿記の説明などはどこに書かれていない。ここまでバッサリ簿記の説明が削られているとある種の潔さを感じてしまう。この本でシバタナオキ氏は、

「細かいことはいいから、まずはココを読みなよ!」

と仰られているようにも感じられた。それができるのは氏が専門家ではないからなのだろう。しかし、不思議とそれだけでも決算書が読めるような気になってくるのだ。この本を一通り読んでみて、決算書の敷居がかなり下がったような気になってしまった。この本を読んだ後、

「この本のやり方で、あの会社の決算書を読んでみるか」

ふと、そんなことを考えてしまった。きっと、シバタナオキ氏の戦略にまんまとハマッてしまっているのだろう。

■この本の使い方

 本書をITエンジニアが読まれることを想定した場合、どのような使い方が考えられるだろうか。私ならこう考える。

  • 取引先企業の情報を決算書から入手し、その情報を商談に使用する
  • 自社や自部門の情報を決算書や報告書などから入手し、その情報で上司と会話をする

 実は私も会社の情報を調べようとするとき、決算書に目を通すことがある。といっても、私はそれほど深い簿記の知識がある訳ではないので、売上高、粗利(売上総利益)、経常(経常利益)、EBITDAなどを昨対(昨年対比)情報と比較する程度にしか見ていない。それでも、数字を見ていると、おぼろげに会社の状況が透けて見えてくることもある。

 そして、その情報は総じて仕事に役立つことが多い。例えば、顧客と会話をするとき、「ここ数年、御社の成長は凄いですね」と話すより「ここ数年、御社の売上が昨対110%なのは凄いですね」と話した方が会話も進みやすい。特に経営層や予算を持つ部門長と会話をする場合、このように数字で話すと好まれる場合が結構ある。

 また、自部門においても同様で、予算を管理している上長や責任者との会話で使ってみる。ITエンジニアは決算書を読めない方が結構数おられるので、その中で決算書が読め、自分なりの考えを話すことができれば他のITエンジニアとの差別化に繋がっていくことは容易に想像できる。

 このようにITエンジニアが決算書を読めることはメリットに繋がることがたくさんある。本書は分野の説明に少し偏りを感じる部分はある。しかし、本書に書かれてある内容を全体的に俯瞰して使うことで、網羅的に決算書を読む癖づけができ、決算書を読む敷居を下げることに繋がっていく。その繰り返しが決算書を読むことを「習慣」づけることになってくるのだろう。何より、業界の読み方を決算書を通じて理解する試みが単純に「面白い」と感じてしまった。

 決算書を苦手とされている方や決算書を読んでみたいと思われる方は、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。

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