キャット ウォーズ
お盆という事もあり、たまに帰省すると親戚から積る話を聞かされる。何故か今年は猫に関わる話が盛りだくさんだった。その中の一つ。
その親戚はアパートを一棟所有しており、もう老朽化が進んでいるので今入居している人たちが全員退去すれば、取り壊そうと考えていた。あるとき、ある部屋の住人から隣の部屋で猫を飼っており、臭くてたまらないとクレームが入る。実はクレームを入れた住人も猫を飼っているので、何をいまさらと、親戚は思ったのだが一応、隣の部屋を訪ねてみることにした。出てきたのは男性。契約者は女性だったので、事情を聴いてみると、契約者だった女性は既に亡くなっており、その男性は女性と内縁関係にあったという。実は契約者の女性、近所に実家があり母親と住んでいたのだが、生活保護をもらうために名義的に部屋を借りて母親とは別居、という形をとっていたらしい。その母親も亡くなったので、実家を処分してアパートに移り住んだのだが、その際に実家で飼っていた猫を連れてきたという。
猫の問題はあるが、契約者だった女性は亡くなっているので、まずは今住んでいる男性と契約をやり直したが、家賃の支払いが滞るようになる。まったく払わないのではなく、今月は待ってくれと頼まれて、翌月か翌々月には支払われる感じ。困ったものだ、どうしようかと考えていると、また隣の入居者からクレーム。台所の天井を突き破って、猫が二匹落ちてきた。どうやら男性が飼っている猫は1匹や2匹ではないらしい。すると今度はアパートで漏電による停電騒ぎが勃発。電力会社に調べてもらうとどうも漏電箇所は男性の部屋であることが判明。男性の部屋以外は停電を解消したが、男性の部屋は漏電しているので直さないと電気は復旧できない。漏電箇所を修復するにしても、猫をどうにかしてもらわないと、と連絡したところ男性からは思わぬ回答が。猫は自分のものではないのでどうにもできない。停電のままで良い。
そうは言っても、この猛暑の中、停電のままでの部屋では猫も死んでしまうのではないかと心配した親戚は、猫の引き取り手探しに奔走。ようやく動物愛護協会が引き取りに来てくれたのだが、動物愛護法違反になるので警察にも連絡をしなければならないとのこと。結局猫は13匹もおり、そのうち1匹は死んでいたそうだ。親戚はこの騒動に懲りて、入居者には今年いっぱいで退去してもらい、アパートを早急に取り壊すことを決めた。
あとから、その男性に話を聞いたところによると、前の契約者だった女性も持病を持っており働けないので生活保護をもらっていた。その持病が悪化してきたが、猫の世話があるからと病院にかかることはせず、その部屋で亡くなってしまったとのこと。男性自身は働いてはいるが、女性の生活保護がなくなると猫の餌代が負担となり、家賃の支払いが滞りがちになったとのことなど。親戚は、アパートは取り壊すので必要最低限の物だけをもって次の家を探すよう、そして介護施設で働いているのだからもう少し清潔にしておくよう言って、男性とは別れた。
男性は仕方なく、どうしてよいかも分からなかったのかもしれないが、女性は持病を抱えながら生活に余裕のない中でなぜ13匹もの猫を飼ったのだろう。そんな、疑問を感じた中で、偶然シュバイツァー博士の言葉を見つけた。
「人生の惨めさから逃れる手段は2つある......音楽と猫だ」
ちょうど秋口に引っ越す予定のマンションがペット可能なので、猫でも飼おうかと考えていたのだが、親戚には引っ越すことは話したが猫のことは話せず終いの、お盆帰省であった。