第615回 本質を考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
キャリコンでは相談者の悩みから本質を見極めて、本当に目指したいと思えるキャリアを探します。この「本質」という言葉ですが、キャリコンをする上でとても重要な考え方なのですが、一方で分かりづらい表現のような気もしています。そこで今回は、本質について私なりの考えをまとめてみました。
■本質とは
本質を調べてみると以下のような記述がありました。
物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。「ーに迫る」「ーを見きわめる」
(デジタル大辞泉より)
これは分かりやすい表現ですね。キャリコンでは相談者の話を聴き、そこから相談の抱える根本的な問題を探し出し、それを相談者を共有することで問題の本質を明らかにします。
例えば、転職したいという悩みを持っている方がいたとしましょう。話を聴いてみると、転職したいと思ったのは職場の人間関係が悪かったからだと分かりました。だとすれば、解決すべき問題、問題の本質は転職することではなく、職場の人間関係を改善することですよね。
このように問題の本質を見極めることは抜本的な対策を取る上で必須となる考え方です。
■本質とは何か?
一方で、この本質は分かりづらい様にも感じます。本質とは根本的な要素であり本来の姿と定義されていますが、それって一体何なんでしょうか。これが明確にならないまま本質が何かを考えろと言われても、正直、雲を掴むような話だと思いませんか?
キャリコンの立場から考えると、本質とはその人の価値観だと言えます。言い方を変えればパラダイムです。つまり、その人がどのように物事を捉えているか、これが本質なんです。ただ、これだと少しわかりづらいので例をあげて説明します。
先ほどの転職したい悩みを抱えている人で考えてみます。この人は転職したいと思うに至った何かがあったはずです。例えば、
- 職場の雰囲気が悪い
- 職場で誰とも話をしない
こうしたことがあったのでしょう。こうしたことをこの人が経験することで、このような状況を何とかしたいと思い、転職すると考えるに至ったということですよね。
これを三層構造モデルに当てはめて考えてみます(三層構造モデルの詳細は過去のコラムをご参照ください)。
1層(事柄の層)...職場の雰囲気が悪い、職場で誰とも話をしない
↓
2層(心の層)...このような職場は辛い、逃げ出したい
↓
3層(行動の層)...転職活動をする
という形で整理できます。そして、先ほど問題の本質は人間関係の改善にあると書きました。これを三層構造モデルに当てはめてみるとこうなります。
1層(事柄の層)...職場の雰囲気が悪い、職場で誰とも話をしない
↓
2層(心の層)...このような職場の状況は何とかするべきだ
↓
3層(行動の層)...職場の人間関係を改善する
ここでのポイントは1層である事柄の層はどちらも同じですが、その1層に対しての捉え方である2層である心の層が違って来ている点です。当然、心の層の捉え方が変わるので、3層の行動の層も変わってくるのですが、この2層に着目すると1層の捉え方が違うことに分かります。
片方は逃げ出したいと思っていますが、もう片方は何とかしたいに変わっています。この「逃げたしたい」も「何とかしたい」もその人の価値観であり物の考え方ですよね。そして、最初は逃げ出したいという価値観を持っていましたが、抜本的な解決方法によって何とかしたいという価値観に変わっています。つまり、問題の本質というのはその人が持っている価値観に起因していることが分かります。
■価値観を表現するためには
しかし、この価値観というモノは正直分かりづらいです。。。というのも、「あなたの価値観は〇〇です」のような表現で価値観を言い表すことって難しくないですか?
実は価値観というのは絶対的な表現で言い表すことがでないんです。「あなたの価値観は〇〇です」というのは絶対的な表現で言い表そうとしているので言いづらいのです。
実は、価値観というのは、何かの対象がありその対象に対してどう感じ考えるかという相対的な表現でしか言い表すことができないんです。そして、これは事柄や事象に対して、その人が何を感じ考えたか、言い方を変えると1層に対する2層のことを言い表しているのです。
つまり、「職場の雰囲気が悪い、職場で誰とも話をしない」という対象(1層)に対して、「このような職場は辛い、逃げ出したい」という価値観(2層)を持っているということです。そして、「このような職場の状況は何とかするべきだ」という価値観に転換をすることが抜本的に問題を解決するということになります。
■本質を考える
これが理解できると本質とは何のことを言っているのかが明確になり、本質に対するアプローチもしやすくなります。
キャリコンにおける物事の本質は、その人の価値観が根っこにあります。目の前に起こっている事象、事柄に対してその人が何を感じ考えたのか、それがその人の価値観です。その価値観があるが故に苦しんでいる、困っている状況があるならば、その価値観をアップデートすることで悩みや困っている状況を改善する。これが、キャリコンが行おうとしている本質であり、問題解決の姿です。
こうした問題解決をするためには三層構造モデルが役に立ちますので、興味のある方は過去のコラムをぜひ見てくださいね。