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第569回 三層構造のススメ2 -問題解決の糸口

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 前回から「三層構造のススメ」のお話を書かせていただいております。前回は物事の捉え方を3つの層に分けて捉える「三層構造」の概要についてご説明しました。今回からはこの三層構造を使って問題を解決する方法についてご説明していきます。

■三層構造のおさらい

 三層構造はその人の置かれている状況を3つの層に分けて捉える考え方です。例をあげながら考えてみましょう。ここに転職したいと考えている人がいたとします。この人の置かれている状況を3つの層に分けてみます。

 最初は1層である事象の層です。ここはその人に何があったのかを表す層で、事実(ファクト)だけが入ります。この例であれば、

  • 職場で厳しく当たられた
  • 誰も見方をしてくれなかった

などですね。1層の特徴はあくまで起こった出来事、事実(ファクト)を表す層なので、この層には評価をすることがありません。そのため、善悪の判断もなければ良い悪いもありません。

 しかし、私たちはこうした事実を目の当たりにすることで何かしらの感情を抱き、考えを深めていきます。それが2層である思考・感情の層です。2層は1層(事象)を体験することでこの人が感じ、考えたことを表す層です。例えば、

  • 厳しく当たられるのは嫌だ
  • 誰も味方をしてくれないのはおかしい

などです。そして、この2層には更にもう1段階掘り下げることができ、こうした思考になったり、感情を抱くのはなぜか、その原因を掘り下げます。

  • 今の時代、職場で厳しく当たるべきではない
  • 本来、職場で困っている人がいたら助けてくれるものだ

このような価値観を持っているから、先ほどのような「嫌だ」「おかしい」といった思考や感情が芽生える訳です。

 そうして、こうした思考や感情を持つと私たちは何かしらの行動を起こします。それが3層である行動の層です。この例であれば

  • 転職したいと考え活動を始めた

などになります。このように、人の行動は三層構造で説明することができると考えています。

■問題解決の糸口

 この三層構造の考え方を発展させると問題解決に応用させることができます。三層構造で問題を捉えた場合、どの層で問題を解決するか? という点が大きなポイントになります。

 これは結論から言うと2層である思考・感情の層にアプローチをしています。なぜ1層である事象の層や3層である行動の層にアプローチしないのでしょうか。

 まず1層から考えてみます。1層にアプローチをするということは、その人に起こっている事象を変えていくことを意味します。先ほどの例では1層が

  • 職場で厳しく当たられた
  • 誰も見方をしてくれなかった

でしたので、ここを変えようと働きかけることになります。つまり、

  • 厳しく当たられないようにする
  • 周りが見方をしてくれるようにする

このようになれば1層そのものを変えることができます。そして、通常私たちが問題を解決しようとする時に働きかけをするのもこの1層です。先ほどの例だと、

  • 「私から上司に厳しく当たらないように話してあげる」
  • 「周りが見方をしてくれるような部署に配置転換してもらう」

のような感じになるでしょうか。しかし、この方法は抜本的な解決にならないことが多いです。

 先ほどの例で上司に厳しく当たらないように話をしたとして、上司が受け入れてくれなかったら状況は変わりません。また、部署を配置転換しても同じような事が起こる部署だと再燃してしまします。

 なぜ再燃するのか、それは2層にある価値観が変わっていないからです。つまり、その人の考え方が変わらない以上、同じ事象が再現されると同じ問題が再発してしまうのです。だから、1層にアプローチをする方法では抜本的な解決に繋がらないのです。

 次に3層を変えることについて考えてみます。3層は行動を表す層ですが、その根底にあるのは2層です。2層で感じ考えた結果が3層の行動となって表れます。だとすれば、3層を変えるということは2層を変えることに外ならないのです。

 そのような訳で、本質的に問題を解決しようとするならば、2層である思考・感情の層にアプローチをしなければなりません。言うなれば、

  • 今の時代、職場で厳しく当たるべきではない
  • 本来、職場で困っている人がいたら助けてくれるものだ

といったその人の価値観に問題があると考え、ここにアプローチをしていくのです。

■真実は人の数だけある、でも事実は一つ

 そういえば、最近、TVerで「ミステリという勿れ」というドラマが再放送されていました。私が好きなドラマだったので思わず見入ってしまったのですが、そこにこんな一幕がありましたのでご紹介します。(以下、多少のネタバレを含みますのでご注意ください)

筒井道隆さん演じる青砥警部は冤罪事件を起こしてしまった過去がありました。
その事件で青砥警部は無実の人を逮捕してしまい、そのことで当時青砥警部はマスコミから槍玉に挙げられてしまいました。しかし、当の青砥警部は今でもその人が犯人だと持っています。
そのような中、青砥警部はこんなことを言います。

「どんなに虚言を尽くしても真実は一つだ」

それを聞いた菅田将暉さん演じる主人公の久能整君はこんなことを言います。

「真実は人の数だけあるんですよ。でも事実は一つです」と。

 この話、三層構造で捉えてみるととても分かりやすくなります。久能君が言う「事実」とは1層、「真実」は2層のことです。真実が人の数だけあるというのは、事実に対する捉え方は人それぞれ違うのであり、それがその人の真実になるからです。

 だからこそ2層にアプローチすることで本質的な問題を解決しようと考えるのが、今、ご紹介している三層構造における問題解決法(Aチャート法)です。

 ということで、今回はここまでです。次回はこの続きで、2層に対してどのようにアプローチをしていけば問題解決につながるのかをご紹介したいと思います。

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