第568回 三層構造のススメ1 -人間の行動における三層構造
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私は国家資格キャリアコンサルタントの更新講習を幾つか担当させてもらっていますが、その中でキャリコンにおける問題解決法を指導しています。この問題解決法は私が提唱している対話技法(ダイアログ・メソッド)の一部であるAチャート法と呼んでいる方法なのですが、このAチャートを実践する上で必要になる「三層構造」という考え方があります。この考え方を理解しているだけでも物事の本質を見極めることができるようになります。
そこで久しぶりに「〇〇のススメ」シリーズとして、この三層構造を取り上げた問題解決法についてお話ししたいと思います。今回はその第1回としてベースとなる三層構造のお話しをしたいと思います。
■人間の行動における三層構造
三層構造は正式には「人間の行動における三層構造」と呼んでいます。
私たちには3つの層があり、それぞれ「1層(事象)」「2層(思考・感情)」「3層(行動)」に分かれています。これらの3つの層は繋がっており、他の層に影響を与えます。
1層(事象)...私たちに起こった出来事や事実(ファクト)を表す層
2層(思考・感情)...1層の出来事や事実(ファクト)に対して私たちが抱く気持ちや感情、考え方などを表す層
3層(行動)...2層によって得た気持ちや感情、考えに基づいて私たちが行動を起こす層
私たちの身に降りかかるおよそ全ての出来事はこの3つの層に分けて考えることができます。つまり、この3つの層に分けて世の中を見ると、人間の行動における本質を見極めることができるようになります。
■1層(事象)とは何か?
それでは、1つずつの層についてお話していきます。まずは1層である事象の層です。
ここは私たちの身の回りに起こった出来事を表す層です。例えば会社を退職したいと思っている人がいたとします。この人は会社を退職したいと思う出来事があったはずです。例えば...
- 上司が厳しくあたる
- 分からないことがあっても誰も教えてくれない
- 相談できる人がいない
- 職場の雰囲気が悪く、誰も喋らない
きっとこういうことがあったのでしょう。このようにその人の身の回りで起こった出来事がこの1層に入ります。
ここでの注意点として、この1層には事実(ファクト)しか入らないということです。それ故、この層に入っていることに対して私たちが何か善悪の判断をしたり、評価をしたりすることはなく、ただそうした出来事が起こった事実のみを受け入れるようにします。
■2層(思考・感情)とは何か?
次に2層である思考・感情の層です。
ここは先ほどの1層で私たちが体験した事象や事実(ファクト)に対して、私たちがどのような感情や気持ち、考え方を持ったのかを表す層です。先ほどの1層では善悪の判断や評価をしないと言いましたが、それは2層で行うからです。あくまで1層は事象や事実(ファクト)のみを表現した上で、2層でその事象や事実(ファクト)に対してどのような感情を持ったのか、どのように考えたのかを表します。先ほどの例で言えば、
- 誰も助けてくれなくて辛い
- 自分ばかりが我慢していてシンドイ
- 職場の雰囲気が悪くストレスが溜まってしまう
こうしたことが考えられるでしょう。
そして、この2層は更にもう1段階掘り下げることができます。それは、なぜこのような思考・感情が湧き起こったのか? そこには理由があるはずです。それを掘り下げるのです。先ほどの例で出てきた感情や気持ちをさらに掘り下げると、
- 職場で困っていたら助けてあげるべき
- 職場では我慢が強いられるべきではない
- 職場の雰囲気は楽しくあるべき
こうした想いがその人にあったからではないでしょうか。こうした想いがあったにもかかわらず、1層での事象や事実(ファクト)がそのようにならなかったことから、辛い、シンドイ、ストレスが溜まってしまうという気持ちや感情を引き出したのだと捉えます。
■3層(行動)とは何か?
最後は3層である行動の層です。
先ほどの2層で私たちが感じた感情や気持ち、想いを持つと、私たちはそれらに従って私たちは何かしらの行動を起こそうとします。例えば、
- 今の職場を退職したい(と思い、相談に来た)
のような行動として表れるのです。行動には必ずその元となる行動原理が紐づいており、その行動原理が先ほどの2層である思考や感情の層になるのです。
■三層構造で世の中を見渡してみる
つまり、私たちの身の回りで起こった出来事(1層)に対し、私たちは何を感じ考え(2層)、それによりどう行動したか(3層)によって表現されます。丁度図で表すとこんな感じになります。
この枠組みを理解しているだけでも、物事の本質を見極めやすくなります。
例えば、旧2ちゃんねるの創始者であるひろゆきさんの言葉で「それってあなたの感想ですよね? 」というフレーズがありますよね。あれを三層構造に照らしてみると2層のことを言っていることが分かります。1層という事象、事実(ファクト)を踏まえた上でその人がどう感じたが2層なので、1層と2層をちゃんと見極めてそこを突いているのだと考えられますね。
このように世の中を三層構造に分けて考えると、その人に何があって、どう考えて、何をしたのかがハッキリ見えてきます。実はこれが問題解決のベースとなっていきます。
という訳で、次回は問題解決の着眼点についてみていきたいと思います。
コメント
ちゃとらん
いつも楽しく拝読させていただいています。
> 次回は問題解決の着眼点について
次回が楽しみです。
この季節、他人の人事評価などが気になって、精神的に不安定になります。
そんな中、3層目の行動が、どうしても1層目の事象(事実)を変えるための行動になってしまいます。本来なら、変えられない事ではなく、2層目の感情をコントロールすることで、1層目に自然と影響を与える行動に紐付けなければいけないと思いつつ、そんなことでは何年、何十年かかるのかと、自暴自棄になってしまいます。
# 若い時なら良いのですが、すでに手遅れの定年間近なのに、ジタバタしてしまいます。
キャリアコンサルタント高橋
ちゃとらんさん、
いつもコメントありがとうございます。
誰しも自分の身の回りにある状況(1層)を変えたいと思いますよね。でも、現実問題として1層を変えることはそう簡単な事ではありません。。。
また、1層を変えたとしてもそれが抜本的な解決に繋がらないこともあります。
だとすれば、どこに着目すれば問題が解決するのか…? というのが次回のテーマになっています。
この内容は私が実際の研修でお伝えしている内容が結構入っていますので、良かったら次回もご覧くださいね♪