第571回 三層構造のススメ4 -目標の捉え方
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
「三層構造のススメ」も今回で4回目になります。前回は問題の本質はどこにあるか? そして、その問題に気づくためにはどのようなロジックを使うかについてご説明してきました。今回は問題の本質から目標の捉え方についてお話していきます。
■前回の振り返り
前回の復習です。前回は相手の持つ価値観に対してユニーク・ケースを見出し、そこに気づきのアプローチを使い、相手に問題の本質が何かに気づいてもらう所までお話ししました。前回の例でお話しするとこんな感じです。
相談者:転職したいと思っている
1層(事象の層)
- 上司が厳しく当たる
- 分からないことがあっても誰も教えてくれない
- 相談できる人がいない
- 職場の雰囲気が悪い(誰もしゃべらない)
これに対して、
2層(感情・思考の層)
- 誰も助けてくれなくて辛い
- 自分ばかりが我慢していてシンドイ
- 職場の雰囲気が悪くストレスが溜まってしまう
と感じています。なぜそのように感じていたか、それは
2層(思考・感情の層)...意図や想い
- 職場で困っていたら助けてあげるべき
- 職場では我慢が強いられるべきではない
- 職場の雰囲気は楽しくあるべき
という価値観があったからでした。だから、
3層(行動の層)
- 転職したいと思っている
のようになるのでしたね。
この価値観に対してユニーク・ケースがないかを考えてみます。ユニーク・ケースは自分の価値観は変えることなく「それだったら仕方ないよね」という例外的な価値観のことを言います。このユニーク・ケースに気づくためには何かしらの情報が必要です。今回の場合は、
上司はなぜ厳しく当たるのか? その意図を理解しているか?
という点から、
コミュニケーション不足(周りの人の考えがわかっていないという情報)
を不足している情報と捉え、
「上司の方はなぜ厳しく振舞うのでしょうね? そのことについて尋ねたことはありましたか? 」
「あなたが上司の立場だとして、部下であるあなたに厳しく当たっています。それはなぜだと思いますか? 」
このような問いかけをすることで気づきを促すアプローチをしてきました。ここまでが前回のお話でしたね。
■目標の捉え方
そうして、相談者が上司の考えを理解できていないことが問題の本質であることに気づいたとしましょう。この次に相談者が行うことは何でしょうか?
それは、目標を立てることです。
目標の立て方はちゃんと考えなければなりません。なぜならば、目標を正しく見据えないと到達点(ゴール)が明確にならないまま話が進んでしまう可能性があるからです。
それでは、今回の場合の目標ってどのようになるのでしょうか?
問題の本質が「上司の考えが理解できていない」だとするならば、目標は「上司の考えを理解する」になるように安易に考えがちになりますが、実はこれだと目標になりません。
そもそも、目標というのは状態を表します。今回の問題を解決した時に得られる姿が目標なのです。だから、目標というのは相談者が自分自身が考え導き出した姿でなければならないのです。そのためには、
「問題の本質がクリアになったら、あなたはどのような状態になるんでしょうね? 」
のような問いかけを行い、相談者自ら目標を見定めてもらう必要があるのです。これが、三層構造における目標の捉え方です。
そして、目標が明確に定まったら、後はその目標に到達するための具体的な方法(方策)を考えます。ここで初めて「上司の考え方を理解する」ための具体的な方法を考えるのです。
つまり、問題の本質、目標の設定、方策の実行には関連性があり、
問題の本質
↓
目標の設定:問題の本質が解決した姿(状態)
↓
方策の実行:問題の本質を解決する具体的な方法
という関係性があるのです。この関係性を正しく理解しておくことで目標や方策がブレなくなります。
これが三層構造における問題解決法(Aチャート法)です。参考までにここまでのAチャートの情報を図式化したモノをご紹介しますので、これまでの流れをご確認ください。
■三層構造を普段の生活に
三層構造の考え方は一見するととっつきづらい部分があるかもしれませんが、慣れると物事の本質を見極めやすくなります。特に1層(状況)と2層(思考・感情)を明確に意識できるようになると問題の本質が分かりやすくなり、相手の話に流されるようなことがなくなっていきます。
これは、仕事だけでなく普段の生活にも活かせますし、悩み事や相談事を解決する上で有効な手段です。興味のある方はぜひ試してみてくださいね。
それでは、今回はここまでです。次回は最終回として三層構造の活用例についてご紹介したいと思います。