第616回 EIを活用する
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近はプロマネ系研修を多く担当していることもあり、プロマネに求められる人間関係のスキルについてお話しする機会が増えています。これら人間関係のスキルは一般的に「パワースキル」と呼ばれるのですが、この中にEIというスキルがあります。
そう言えば、過去にEQに関するコラムを書いたことがあったなぁ...と思い出し、今回はこの続きを書いてみようと思いました。
■EI(Emotional Intelligence)とは
EQに関するコラムを書いたのはいつだったか調べてみると...ありました。コレです。
投稿日が2015/7/6になっているので、今から約9年くらい前になりますね。一部内容を抜粋します。
EQとは正式にはEmotional Intelligence Quotientといい、日本語に直すと心の知能指数と訳されます。EQによく似た言葉にIQ(Intelligence Quotient)がありますが、こちらは知能を数値で表したモノです。それに対してEQは心の知能(Emotional Intelligence、略してEIといいます) を数値で表したモノです。
(中略)
このEIで感情をコントールするには4つの段階があるとされています。
1.感情の認識
2.感情の利用
3.感情の理解
4.感情の調整
この感情のコントロールについては話が長くなるのでご興味のある方は過去のコラムをご覧いただければと思いますが、要するにEIというのは自分や他人の感情を認識し、その感情に対するアプローチの仕方を変えることで対人関係を良好にしていく技法だと言えます。
このEIの4段階を整理すると、このような構造になっています。
感情の認識(自分と相手の感情を認識する)
↓
感情の利用(自分の感情をどのように利用すれば良いかを考える)
感情の理解(相手の感情の原因を考える)
↓
感情の調整(自分の取るべき行動を決定する)
最初に自分と相手の感情を認識します(感情の認識)。ここをベースとして、自分の感情をどのように利用すれば良いかを考え(感情の利用)、相手の感情の原因を考えます(感情の理解)。そうした上で、自分の取るべき行動を決定します(感情の調整)。これがEIの構造です。
■EIを三層構造モデルで捉えてみる
このEIの構造を三層構造モデルに置き換えてみると、こんなことが分かります。
1層(事柄の層)...何かしらの出来事
↓
2層(心の層)...出来事に対して感じ考えたこと(感情の認識)
↓
3層(行動の層)...感じ考えたことに対する行動
この3層における「行動」に問題があると感じたとしましょう。例えばこのようなケースです。
1層(事柄の層)...上司が周りの人たちがいるまで私を叱責した
↓
2層(心の層)...上司の叱責に対して「みんなの前で言わなくてもいいのに!」と腹が立った
↓
3層(行動の層)...上司に怒りの感情をぶちまけてしまった
こんな感じですね。これをEIの視点で見た場合、1層の「上司が周りの人たちがいるまで私を叱責した」に対して2層の「腹が立った」訳ですが、これが感情の認識にあたります。そして、このままだと3層で「怒りの感情をぶちまけてしまう」行動を起こしてしまうことになります。これを何とかするために、このように考えました。
1層(事柄の層)...上司が周りの人たちがいるまで私を叱責した
↓
2層(心の層)...上司の叱責に対して「みんなの前で言わなくてもいいのに!」と腹が立った(感情の認識)
→ここで自分はどのような感情を表すべきなのかを考えてみる(感情の利用)
→併せて、上司がなぜみんなの前で叱責したのかを考えてみる(感情の理解)
↓
3層(行動の層)...この場は上司の叱責を素直に受け入れ、後で上司に1対1で話をする場を設けてもらおう(感情の調整)
このように、EIでは2層である心の層の有様を変えることで、3層である行動の層を変えようとしています。実はこれってユニーク・ケースと同じことをやっています。ユニーク・ケースとはこちらのコラムで紹介していますが、一言で言えば自分の価値観をアップデートさせることです。
このケースでは、上司から叱責されたという出来事(1層)に対し、腹が立ったという感情(2層)を持ちました。それを「感情の利用」「感情の理解」によって違う価値観を生み出そうとしています。それによって3層の行動が「感情の調整」によって変わってきています。このことから、この今までと違う価値観を生み出すこそが、EIにおいても重要であることが分かりますね。
■EIを活用しよう
プロマネのパワースキルにおいてもEIの重要性が説かれているのですが、EIはプロマネだけに留まらず、誰しもが持っておくべき人間関係のスキルだと思います。
時々、このEIのスキルが高い人を見かけます(俗に言うEQが高い人ですね)。こうした人は、自分と相手の感情をちゃんと理解し、うまく活用することで交渉事を有利に進めているイメージがあります。人間は感情の生き物と言われますので、その感情を制御することができれば、対人関係において大きなイニシアチブを取ることができます。
EIの実践は慣れればそれほど難しくないのですが、最初はとっつきが悪いかもしれません。その場合は、物事を三層構造モデルで捉え、1層に対して2層でどう感じているかを意識すること、つまり「感情の認識」から始めてみると分かりやすいかもしれません。ご興味のある方は是非チャレンジしてみてくださいね。