第588回 物事の本質の捉え方
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近はキャリコンネタが続いており、今回もキャリコンネタです。最近、私がキャリコンの指導をする際、三層構造モデルを使って説明することが多いのですが、このモデルを使うと物事の本質をイメージしてもらいやすくなります。
そこで今回は私が指導している問題の本質の捉え方について簡単にご紹介します。
■物事を三層構造で捉える
例をあげて説明します。ここに転職をしたいと考えている相談者がいます。この相談者は単に転職したいと考えているのではなく、転職したいと思う何かがあったはずです。例えば、
- 上司が厳しく当たる
- 同僚は誰も助けてくれない
- 職場の雰囲気が悪い
こんなことがあったのでしょう。こうしたことが長く続いたことでこの人は転職をしたいと考えた訳です。
これを三層構造に当てはめてみます。三層構造とはこのような構造になっています。
1層(「事柄」の層)...何があったのか?(相談者の身に起こった出来事や事柄)
2層(「心」の層)...何を感じ、考えたのか?(相談者はどのように捉えたのか?)
3層(「行動」の層)...そして、どうしたのか?(相談者はどのような行動を取ったのか?)
今回の話であればこうなりますね。
1層(事柄)...上司が厳しく当たる、同僚は誰も助けてくれない、職場の雰囲気が悪い
↓
2層(心)...辛い、苦しい、逃げ出したい
↓
3層(行動)...転職活動をする
このように私たちの身に起こる全ての行動は必ずこの3つの層に分けることができます。そして、この3つの層に分けることが物事の本質を見極める鍵となります。
■物事の本質はどこにある?
私たちが何か問題を解決しようとする時、その方法を3層構造に照らしてみると2つ考えられます。それは1層にアプローチするか、2層にアプローチするかです。
1層にアプローチをするというのは、相談者の身に起こっている出来事をそのモノにアプローチし、出来事自体を変えてしまおうとすることです。先ほどの例であれば、
上司を変える(→1層の「事柄」を変えようとしている)
ということが考えられます。しかし、この方法は問題の本質を解決していることにはなりません。なぜなら、上司を変えたとしても、次の上司が前の上司と同じような事をしたら状況は改善されないからです。
このことから、問題の本質を考える場合、相談者の身に起こっている1層(「事柄」の層)にアプローチすることは抜本的な解決には繋がらないことが分かります。だとしたら、どの層にアプローチするのか?
そうです、2層である「心」の層です。
2層にどうやってアプローチをするのか? それは、2層の捉え方を変えるのです。
先ほど、相談者は1層である「事柄」の層を目の当たりにすることで「辛い、苦しい、逃げ出したい」という2層を感じていました。こうした気持ちや感情は相談者にとっては真実です。ですが、一旦この気持ちや感情を置いておき、もう1度1層を見て欲しいのです。
- 上司が厳しく当たる
- 同僚は誰も助けてくれない
- 職場の雰囲気が悪い
なぜこのようなことになってるのでしょうか? そこにはひょっとしたら相談者の知らない何かがあるのかもしれません。相談者にはその理由が分かっていません。理由がわからないから、相談者は自分の気持ちや感情を
辛い、苦しい、逃げ出したい
と表現するしかないのです。これは当たり前のことです。
つまり、物事の本質というのは、相談者が1層のような出来事が起こってしまっている理由を知らないことです。
だとすれば、その理由を相談者が知ったとしましょう。例えばこんな理由でした。
上司「相談者に厳しくしていたのは、相談者を次の部署の責任者に考えていたからだ。部署の責任者になってもらうためには色々学んで欲しいことがある。考えて欲しいことがある。だから、敢えて厳しく当たっていた。このことは職場のメンバーには伝え協力してもらっていた」
これはあくまで一つの例ですが、この理由を聞いたらどう思いますか? この理由が納得できるならこの職場で頑張ろうという気になるでしょうし、納得できないなら納得できないと上司に話して分かってもらうということをされるのではないでしょうか。
実はこの段階で2層の捉え方が変わっているのです。
当初の捉え方:1層を経験して、「辛い、苦しい、逃げ出したい」と感じた
新しい捉え方:1層を経験して、なぜこのようなことになっているのか、その理由を確認した上で、自分にとって適切な行動(納得できるなら~、納得できないなら~)を選択しようとする
これが捉え方を変えるということです。そうすると、3層はどうなるでしょうか。
当初の捉え方:転職活動をする
新しい捉え方:上司や同僚に理由を聞きに行く
と行動も変わってきますよね。
ここで1つポイントがあります。それは1層である「事柄」の層は何も変わっていないのです。これは問題の本質が1層にはないことを表しています。問題の本質は2層である「心」の層にあるのです。
このことが理解できていれば、キャリコンをしていても1層である「事柄」の層にフォーカスすることがなくなります。問題の本質は相談者の2層である「心」の層にあるので、そこにフォーカスして対話を進めていくことができるようになります。
■3層構造で捉えてみよう
今回は3層構造モデルを使ったキャリコンのお話をさせてもらいました。3層構造モデルについては過去にもいくつか書かせてもらっていますので、もし興味のある方はこちらをご参考ください。
第568回 三層構造のススメ1 -人間の行動における三層構造
3層構造モデルは言葉にすると少し難しく感じるかもしれませんが、実際にやってみると案外簡単に捉えられるようになります。非常に強力な技法なので、もし興味のある方は試してみてくださいね!