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第589回 傾聴から来る信頼関係とは

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 最近は傾聴という言葉も一般化してきています。傾聴は相手の話をきく上での技法であり、姿勢であり、心構えです。そんな傾聴ですが、キャリコンのトレーニングでは傾聴は相談者と信頼関係を形成する上で不可欠と言われています。しかし、なぜ傾聴によって信頼関係が生まれるのでしょうか? 今回はそんな傾聴から来る信頼関係についてのお話です。

■信頼関係とは?

 世の中には色んな信頼関係があります。例えば、

「あなたのためなら命張れます!」

こんな信頼関係もありますが、傾聴で求められる信頼関係はこのような内容ではありません。では、傾聴に求められる信頼関係とは何なのでしょうか? それは、

「あなたになら本音で話せます」
「あなたの言うことなら素直に聴けます」

という信頼関係です。これは自分の心の底から本音で相手と話ができている状態であり、この状態で対話をするから関係性が深まっていくのです。

 それでは、どうすれば傾聴でこのような状態を作ることができるのでしょうか? それは、

「この人、私のことが分かってくれているなぁ」

のように相手に感じてもらうことです。この状態はその人が考えていることや感じていることを相手が分かってくれている状態です。例えるならば、初対面の人同士が同郷で地元話に花を咲かせるようなシーンってありますよね。あの時、妙な親近感を感じませんか。あの感覚こそ、

「私の思っていることをこの人は分かってくれている」

状態です。つまり、相手は傾聴によって自分のことを分かってくれていると感じるからこそ、

「この人、私のことが分かってくれているなぁ」

となり、

「あなたになら本音で話せます」
「あなたの言うことなら素直に聴けます」

に繋がるのです。これが傾聴における信頼関係です。

■傾聴の構造と信頼関係

 それでは、話を進めて、どうすれば相手に

「この人、私のことが分かってくれているなぁ」

と感じてもらえるのかを考えていきます。ここで傾聴についておさらいです。少し前のコラム傾聴の構造をお話ししました。内容を一部再掲します。

オープン・クエスチョンで答えた内容をクローズド・クエスチョンで確認することで、相手は自分が話した言葉を自分自身で確認し腹落ちさせることができるのです。これが傾聴の構造です。

 これは傾聴の構造ですが、実はこの構造こそが重要なポイントになってきます。例えば、こんな対話があったとします。

CC1:お考えになっていることを訊かせてもらえませんか?(オープン・クエスチョン)
CL1:...実はこのままじゃいけないと思って...、自分を変えたいんです。もっと、活躍できる自分でありたいんです。
CC2:なるほど...、〇〇さんはこのままじゃいけないと思って、自分を変えたい、もっと活躍できる自分でありたいと思ってらっしゃるんですね。(クローズド・クエスチョン
CL2:そう...!そうなんですよ!

※CCx:キャリアコンサルタント、CLx:相談者のことです

 相談者はCC1で自分の想いを自由な発想で促されており、それがCL1となって表現されています。この内容をキャリコンはオウム返しを使ってCC2で返す訳ですが、これはCL1の内容を確認しているという意味があります。それに対して、相談者はCL2で「そう...!そうなんですよ!」と自分の言葉を自分に反芻するような返答しています。これは自分の言いたいことが分かってもらえているという状態ですよね。

 つまり、オープン・クエスチョンで訊いて、クローズド・クエスチョンで確認する傾聴の構造は、その構造自体が相手からすると話を聴いてもらえているという状態を作り出しているのです。だから、傾聴によって

「この人、私のことが分かってくれているなぁ」

となり、そこから、

「あなたになら本音で話せます」
「あなたの言うことなら素直に聴けます」

のような関係性が生まれてくるのです。

■戦略を立てて聴くことの重要性

 相手の話を聴く上での傾聴だけならここまでのことを考える必要はないと思います。しかし、傾聴を技法として使い、傾聴の効果によって信頼関係を深め、抜本的な問題解決を行うようなことをされるのであれば、こうした傾聴や信頼関係の構造は知っておいた方が良いと思います。

 対話は技術です。傾聴も技術です。技術である以上、必ず習得することはできます。特にキャリコンのように対話を生業にする仕事の場合、こうした技術を高めることはITエンジニアがその技術力を高めていくことと同じくらい必要なことだと、私は思います。

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