第529回 気づきの構造
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
キャリコンでもコーチングでもそうですが、相手に気づきを促すことはとても重要です。なぜならば、気づきを促すことによって相手は自ら行動を変えることに繋がり、それが目標達成に繋がっていくからです。
ただ、一方で気づきを促す方法はコミュニケーション技法の中でも難しい部類で、トレーニングを積まないとなかなかできなかったりします。そんな気づきについてですが、私もこれまで色々と考え実践してきました。その成果は過去のコラムにも書かせてもらいましたが、最近、私の中で気づきの構造が整理されてきましたので、今回はそのご紹介です。
■気づきとは
気づきを辞書で調べてみると以下のような意味なのだそうです。
それまで見落としていたことや問題点に気づくこと。「小さな―が大発見につながる」「日々の―が成長をもたらす」「生徒の―を促す」
デジタル大辞泉(小学館)より
つまり、自分の気づいていないこと、分かっていなかったことを自ら知るということだと言えるでしょう。その効果は「自ら知る」という点にあり、これにより自分自身への納得感を生み出します。
こうした気づきはキャリコンやコーチングにおいてよく使われる技法でもあり、私自身も模索をしながら自分なりの方法を考え、実践してきました。その成果は過去のコラムにも書かせてもらっています。
今読み返してみると、最初のコラムはコーチング目線で、次のコラムはキャリコン目線で書いています。そしてこれらは現在、対話技法(ダイアログ・メソッド)という手法に統合しています。
第499回 対話のススメ6 -「考え方」の技術(2)気づきへのアプローチ
これらコラムはすべて気づきを促す手法を紹介した感じになっていました。しかし、実際には気づきを促すにはその流れがあり、そこには構造があることに気づきました。それをご紹介します。
■気づきの構造
気づきの構造は、体感、内省、変容の3段階に分かれてます。それぞれ簡単にご紹介します。
体感は気づきを促す最初の段階で、気づきを促す元となる事柄を体験、経験、イメージすることです。例えば、心に残る体験をした、コーチやキャリコンから色んな考え、イメージを促されたといったことが考えられます。過去のコラムで書いた視点のスライドはこの段階にあたります。
内省とは気づきを促す2段階目の状態で、先ほどの体感を自分の中で内省することで、気づきを促します。自身で自然発生的に気づきが生まれる場合、閃きとなって現れます。これを意図的に行う場合、
「今体感したことから何に気づきましたか」
「今、イメージしたことから分かったことは何ですか」
のような問いかけをすることで、相手への内省を深め、その内容を言語化させます。
変容とは気づきを促した次の段階で、内省によって気づいたことを踏まえ行動を変えていくことです。あまり語られることはないのですが、気づきというのは行動変容のためにあります。例えば、自分が効率の悪い方法をしていたと気づいたのなら、効率の良い方法に変えようとしますよね。
このように気づきというのはそれだけでは意味をなさず、本来は行動変容とセットにして捉えることで初めて価値を生み出します。言い方を変えるならば、気づきを生み出す側は相手が生み出した気づきに価値を与えるために行動変容を促すように振舞う必要があります。
これが、私の考える気づきの構造です。
■気づきの構造とAチャートとの関係性
先ほど、対話技法(ダイアログ・メソッド)の気づきへのアプローチを紹介させてもらいましたが、今回の内容はそれを補完するモノです。特に気づきの構造は対話技法(ダイアログ・メソッド)のAチャートという問題解決のアプローチ手法をベースにしています。
第498回 対話のススメ5 -「考え方」の技術(1)問題解決へのアプローチ
Aチャートでは物事を3つの層(事象、捉え方、行動)に分けて考えるのですが、これは気づきを促す上でも同じことが言えます。
事象...体感
捉え方...内省
行動...変容
Aチャートの考え方に沿うと、体感というのはその人に起こった事象を表しています。その事象に対しその人がどのように捉えたかを内省してもらうことで気づきを促し、その気づきによって行動(変容)を起こすのです。このように気づきをAチャートに当てはめてみると、気づきを構造的に捉えることができるようになります。
■気づきを促そう!
今回は気づきを促すための構造をご紹介させていただきました。話が少しややこしいとお感じになられる方もいらっしゃったかもしれません。その場合は
体感させて内省で気づきを促し、行動を変容させる
だけでも意識していただくことで気づきを促しやすくなるのではないかと思います。この辺はトレーニングによってどなたでも習得できる内容です。興味のある方は是非実践してみてくださいね!