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第456回 気づきを考える

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 私はキャリコンやコーチングにおいて心がけていることがあります。それはどうやって相談相手に気づきを促すかです。気づきを促すことで相談相手自身の納得感が高まり、そこから先の行動変容につなげやすくなるから、反面、キャリコンやコーチングのトレーニングをしていると、どうやって気づきを促せばよいのかという質問を受けることがあります。そこで、今回は気づきを促すことについて考えてみました。

■質問の構造

 気づきを促すということは、気づきを促す質問をすることと同じ意味ですが、気づきを促すことを考える前に、質問の構造について考えてみます。

 私は質問は以下のような構造になっていると考えています。

「内容」×「方法」

 内容は質問の内容のことで、ここでは気づきを促すための質問内容のことを指します。方法は質問の仕方のことで、どうやって質問の内容を訊くかということです。

 先に質問の方法から見てみます。質問の方法には「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」の2種類の質問の仕方がありますが、それぞれに特徴があります。

オープンクエスチョン...相手に自由な発想が出考えを促す質問(考えを促す質問)
例:「このまま続けたら、結果はどうなりますか?」

クローズドクエスチョン...相手の答えが一意になる質問(確認を促す質問)
例:「このまま続けたら、失敗しますよね?」

 これらはどちらが良い悪いということはないのですが、一般的にオープンクエスチョンは相手に考えを促す質問として使われ、クローズドクエスチョンは相手に確認を促す質問として使われます。気づきを促すということを考える場合、相手に考えてもらう必要があるためオープンクエスチョンで質問するとやりやすいのではないかと思います。

 次に質問の内容を見てみます。この内容は気づきを促すような内容になるのですが、これはいろんな方法があります。今回は私が良く使う「スライド」と「チャンク」についてお話しします。

 スライドとはモノの見方を変える(=スライドさせる)ことで、新たなイメージを促します。

「あなたのやったことを周りの人はどう思うでしょうか?」(視点を周りの人にスライドさせる)
「どんなことを考えて上司はあなたに仕事を振ってたんでしょうね?」(視点を上司にスライドさせる)

 チャンクはモノの塊を表す言葉で、その塊を大きくしたり小さくしたりすることで、新たなイメージを促します。

「あなたがこれまでやってきたことにはどういった想いがあったんでしょうね?」(「あなたがやってきたこと」を大きな括りで考える)
「頑張るってことを具体的にすると、どういう行動になるのでしょうか?」(「頑張る」を小さなくくりで考える)

 このようにスライドやチャンクを使うと、普段の自分とは違うモノの見方が促されるため、自分では思いもつかなかったことに気づくことがあります。

■気づきの促し方

 実際に気づきを促す場合、このようなスライドやチャンクをオープンクエスチョンで質問していきますが、ただ闇雲に質問しても気づきは促されません。気づきを促すためには、相手が思いもよらなかった所に意識を向けなければなりません。そのためには相手がどこに意識を向けていたかを明確にする必要があります。その上で、意識を向けてこなかった所に気づきを促すのです。

 例えば、その人の考えを明確にする質問をするとします。そうすると相手は自分のやってきたことに意識を向けるようになります。

「あなたは中途半端に仕事を受けるべきではないと思ってたから、Aさんの仕事を断ったんですね」

 このような質問すると「仕事を断った根拠」が明確になります。つまり、この段階で相手はAさんの仕事を断ることに対して何の疑念も抱いていません。その上で、

「Aさんはあなたに仕事を依頼した時、どんな気持ちだったんでしょうね?」

のように質問をあててみます。そうすると相手はAさんの立場に立って自分のやったことをイメージします。ここでは相手がAさんの本当の考えや想いが分かる訳ではないのですが、相手はその時のAさんの言動からAさんをリアルにイメージしていきます。そのイメージが、Aさんの仕事を断ってしまったたことの正しさを考え直すきっかけになる場合があります。

 このように相手が意識していなかった所に意識を促すような質問をすることで、これまで相手自身が考えもよらなかった思考や感情が生まれてくることがあります。それが気づきへとつながっていきます。

 実際のキャリコンやコーチングでは、こういった気づきを促す質問を戦略的に行い、ある程度狙って相手に気づきを促すようなことをします。気づきを促す質問は慣れないと使いづらさを感じるかもしれませんが、使えるようになってくるととても効果的に相手の行動を変える(=行動変容を起こす)強いきっかけになります。非常に効果が高い方法でもあるので、もし興味のある方は使ってみてくださいね。

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