第240回 トレーニングを7つの習慣で考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
先日、7つの習慣のワークセッションを担当してきました。初めての登壇だったのでどうなるかと思いましたが、今回は私以外ファシリテーターと2人で担当させてもらいましたので、何とか自分のパートはこなすことができました。この7つの習慣のワークセッションを登壇させていただくにあたり、秋口から約100時間程度はトレーニングをしてきました。1つの研修でここまでトレーニングしたのは久しぶりだったのですが、それだけにたくさんの気づきがありました。そこで、今回はトレーニングについて考えてみたいと思います。
■研修習得までのトレーニングの流れ
研修やワークショップなどのトレーナー、ファシリテーターを担当する場合、必ず事前にトレーニングを行います。よく『研修ってどんなトレーニングをするんですか? 』と聞かれるのですが、私の場合は主にこんなトレーニングをしています。
1.流れの確認
2.スライドの確認
3.実践を想定した練習
1.流れの確認では、研修全体の流れを確認します。タイムスケジュールを確認し、どのタイミングで何をするのかを把握します。またワークを行う場合はその内容(セルフワーク、ペアワーク、グループワークなど)やワークで使う道具(模造紙、ホワイトボードなど)を確認します。
2.スライドの確認では、研修を進める際に使うスライドを確認し、スライドの中で説明する内容を把握します。その後、このスライドで何を話すかといったトークスクリプトを練り上げます。また、次のスライドへスムーズに移行できるような「つなぎ」と呼ばれるトークスクリプトも合わせて練り上げます。
3.実践を想定した練習では、2.で練り上げたトークスクリプトを声に出して話しながら、実際の研修を想定した練習を行います。練習は基本的に一人で行いますが、客観的なフィードバックが欲しい場合には、別のトレーナーやファシリテーターに練習を見てもらいます。
研修やワークショップの難易度にも拠りますが、1日8時間かけて行う研修の場合、概ね1~2日間は練習をして頭の中に研修の全体像を叩き込むようにして、本番に臨んでいます。
■トレーニングをした後に起こった疑問
今回の7つの習慣も上記のようにトレーニングをし、ある程度自分の中で流れやトークスクリプトをつくりました。しかし、どうしても、腑に落ちない所がいくつかありました。その中に、第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」で出てくる「トーキングスティック」というツールを使ったワークがありました。
トーキングスティックとはネイティブアメリカンが部族間の話し合いなどで使われていた棒のようなモノで、話し合いの場ではトーキングスティックを持っている人だけが発言することができるようなルールになっているそうです。そして、トーキングスティックを持っていない人は、トーキングスティックを持っている人の話を理解するように聞くのだそうです。これをワークに取り入れたモノがあるのですが、その前段で傾聴のトレーニングをしています。そのため、ここは「傾聴」→「トーキングスティック」の流れでワークを行うようになっています。
傾聴の話はこのコラムで何度も出ていますが、相手の話や気持ち理解するように聴き入ることです。この傾聴が使われるケースというのは、必ず「聴き手」と「話し手」に分かれます。こういった聴き手と話し手に分かれるコミュニケーションには、カウンセリング、コーチング、面談などがあります。そして、これらのケースにおいて、「聴き手」と「話し手」というのは原則役割は変わりません。
カウンセラーやコーチングなどの場合:聴き手...カウンセラー、コーチ、話し手...クライエント
面談の場合:聴き手...リーダー、上司、話し手...部下
この前提に立ってトーキングスティックのワークをすると、前段で傾聴のワークをやっているためか、聴き手と話して固定されてしまい、ほとんどトーキングスティックが動かないのです。この疑問を別のファシリテーターに聞いてみたのですが、どうもその人もしっくり来ていないらしく、混乱を招くからとの理由でトーキングスティックのワークを意図的に外しているそうなのです。
そこで、そのファシリテーターと私とでトーキングスティックを使ったワークのあるべき姿を考えました。7つの習慣で言えば、第6の習慣「シナジーを創り出す」の実践です。そうして、いろいろ議論を重ねて出た結論というのが、
ディベート形式でやってみる
案が出ました。例えば、「山好き vs 海好き」のようなお題を用意し、片方が山好き、もう片方が海好きに分かれてもらいます。そうして、お互いが自分の良い所を話し合うような感じでワークを進めてみるとトーキングスティックの動きが活発になり、かつトーキングスティックを持っていないときは傾聴に徹するといったワークが行えるようになりました。
■トレーニングの先にあるモノ
今回のことで、一人でトレーニングすることの限界を感じました。というのも、一人でトレーニングをすると自分の価値観(パラダイム)で研修のコンテンツをつくり上げてしまうため、それが正しいかどうかの判断ができないのです。もちろん、トレーニング中にフィードバックをもらうことはできますが、フィードバッカーがコンテンツへの理解を深めていないと、受講者側の立場に立った感想しか聞くことができず、コンテンツの理解や違和感などについて深く考察することができない場合があるのです。
そのため、ファシリテーターとしての技術スキルを高めるためには、コンテンツやトークスクリプトの理解、把握ができていることが前提で、同じ立ち位置にいる人とともに創りあげていくことが必要なのだと感じました。7つの習慣で言えば「相互依存」の状態です。
ITエンジニアもそうですが、モノを創り上げていく人がより高いレベルを目指すためには、自分と同じ立ち位置にいる人とのトレーニングが必要になってくるのではないかと感じました。