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第152回 新卒社員の学びを考える

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 毎年、4月は新卒社員の研修を担当させてもらっています。この時期、新卒社員は研修という環境に身を置きますが、この新卒社員が受ける研修は、学校で学ぶような感じでもなければ一般的な仕事でもない、ちょっと独特の雰囲気を持っています。新卒社員研修にはたくさんの同期入社社員の人たちが集まり、共に仕事の体験や学びを得ますが、今の段階では彼らにとってこれが「会社で働く」ということになります。そのため、皆一生懸命研修についていこうとされるのですが、中にはこれから先の自分の置かれる状況に不安を覚える方もおられます。毎年、そのような新卒社員は何人かおり、相談などを受ける場合もあります。そこで、今回は新卒社員の学びについて書いてみたいと思います。

■「この仕事をやっていけるか心配です」

 研修ではビジネスマナーや実際の仕事のOJT、Off-JT、はたまたコンプライアンス(法令遵守)や情報セキュリティといった様々なことを学びます。新卒社員はそれらの研修を通じ、自分がやならければならないこと、身に着けなければならないこと、やってはいけないことなどを少しずつ習得し、自分がこの先仕事をする内容をイメージしていきます。しかし、新卒社員研修はマンツーマンの研修と違い、大勢の新卒社員と一緒に受ける研修であるため、当然人によって出来不出来が出てきます。

 例えば、プログラミングの講義などでは、学生時代に学校で学んでいる人にとっては比較的スムーズに習得することができますが、文系でコンピューターはOfficeのWordとExcelの基本的な部分しか触ったことがない人にとって、プログラミングは全くの未知の世界です。コンパイル、ビルド、モジュール…こういった言葉の意味を最初から理解しなければならないのです。そのため、研修が進んでいくと、少しずつ理解できている新卒社員と、理解できていない新卒社員に分けられていきます。そうなると、理解できていない新卒社員はこれから先、自分がやらなければならない仕事を本当にこなすことができるのか、不安になってきます。

今日の講義、意味が分からない言葉が多かったんですが、大丈夫でしょうか?

研修の内容を理解できていないままで仕事をしてもよいのでしょうか?

 このような質問はほぼ毎年聞かれます。社会人であるならば、自分が習得できていない技術やスキルがあり、それをある期日までに習得しなければならない状況があったとき、どうやって習得していけばよいかはある程度経験から考えることができます。しかし、新卒社員である彼らは本格的な就業経験がないため、仕事というものをイメージすることができず、どう対処してよいか分からないのだと思います。

■新卒社員から質問をされたらどう答えるか?

 このとき、私の考えをそのまま伝えてしまうような受け答えはほとんどしていません。それをしてしまうと、せっかく彼らが自ら考えるチャンスを奪うことになると思っているからです。

 そのため、彼らには研修の目的をもう一度理解してもらいます。彼らにとっては、研修の内容を理解し実践できるようになることが、彼らが会社から課せられた仕事であることをまっすぐ伝えます。その上で、彼らが自分の仕事を遂行するために、何が足りなくてできないのかをじっくり考えてもらいます。それは単に「技術力が足りない」というあいまいな答えなどではなく、例えば、

講義中に分からない単語をそのままにしてしまった理由は何か?

といった根本的な所まで考えてもらいます。ひょっとしたら、そこには「講義だから、研修だから、本当の仕事じゃないから」という認識の甘さがあったのかもしれません。しかし、もしそれが本当の仕事で起こったことだとしたら一体どうなっていたか? その影響も考えてもらいます。

 その上で、彼らが本気で技術やスキルを習得するために必要なことを彼ら自身に考えてもらいます。ひょっとしたら、その答えは間違っていたり、正解から遠回りになっているかもしれません。しかし、それでも研修の段階ではまずは彼ら自身が自分で考えた答えをやってみて体験してもらいます。

 そうやって、少しずつ自分で考え行動することの必要性、大切さを学んでもらうようにしています。それをしないと、いつまでも人に頼ってばかりで自立(自律)できない社会人になってしまうと考えているからです。

■質問してきたときが、成長のチャンス!

 これから先、新卒社員が研修を修了し、それぞれの現場で仕事をスタートさせる時期がやってきます。そのとき、現場の先輩にあたる方は新卒社員をしっかり育て、一人前の戦力にしたいと思われることでしょう。そのような場合に、もし新卒社員から質問してきたら、それはチャンスです。是非、彼ら自身が自分で考え、行動させる機会を与えてあげてください。その積み重ねによって、いつしかその新卒社員は立派な会社の戦力になるはずです。

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