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第151回 善意を返すということ

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 先日、久しぶりに家族で外食をしていたのですが、そのときうっかり財布を落としてしまいました。翌日は出張だったので正直困り果ててしまっていたのですが、ほどなくして無事に戻ってきました。このとき、人の善意について考えさせられました。今回はこのことについて書きたいと思います。

■財布を落としたっ!

 最近、出張が続いており家を空ける機会が多かったので、その日は久しぶりに家族で外食することにしました。どこに行こうかアレコレ話し合った結果、中華料理の美味しいお店に行くことにしました。お店でたらふく食事した後、帰路につく途中で財布がないことに気づきました。

 「あれ? どこかで落としたかな? 」とカバンの中を一通り探したのですが、ありません。念のためと来た道を軽く戻ってみたのですが、ありません。しかし、そのときは美味しい料理を食べた後で気分が良くなっていたこともあり、「きっと、家に置いてきたんだろう」と何の根拠もない思い込みで財布を落としたという事実を払しょくし、何事もなかったかのように家路につきました。

 しかし、家に着いて財布を探してみるのですが、どこにも見当たりません。段々、焦りの色が濃くなってきます。家を徹底的に探してみるものの、どこを探しても出てきません。この段階になって初めて「落とした」ことを実感しました。ちょうど、その翌日は出張することになっており、この段階で財布がないといろいろ面倒なことが起こってしまいます。

  • クレジットカード、キャッシュカードの利用をストップ、再発行の手続きをする
  • 免許証の紛失を警察署に届ける
  • 財布に入っていたお金を別で用立てる

 翌日の出張は午後移動だったので、多少時間の余裕はあるにせよ、これだけのことを一気にやるには少し時間が足りません。幸いクレジットカードなどの紛失は24時間受け付けているので、紛失や再発行手続きはその日の内にやってしまうことができます。しかし、出張で新幹線に乗るときに使っているEX-ICカードは再発行の手続きが必要なためJRの駅に行かなければなりません。また、落とした日が土曜日だったため、銀行でお金の工面ができません。。。これらのことを考えると、翌日の出張をどうすればいいだろうか、と少し途方に暮れてしまいました。

EX-ICカード:JR東海が提供する新幹線予約サービスで、インターネットで予め新幹線の乗車券と特急券を購入しておくと、当日、EX-ICカードを自動改札機にかざすだけで入場することができます。その他にも、新幹線の予約は発車5分前までであれば何度も変更できるサービスなどもあり、新幹線を頻繁に利用する方には便利なサービスとなっています。

■財布が見つかった!

 しかし、これらの対応をする前に、もう少し足掻いてみたいと思い、先ほど食事した中華料理のお店に電話してみました。ですが、このお店には財布の届け物はなかったそうです。それではと、中華料理屋の近くにある警察署に電話してみました。

 正直、警察署に届けられている可能性はゼロだと思っていたのですが、足掻くだけ足掻いてみようと連絡してみたら、何と財布が届いているとのこと! しかも、いろいろと話を聞いてみると財布の中身は無事のようでした。そこで、大急ぎで警察署に向かいました。

 通常、財布などの遺失物を届けた人(拾得者)には、法律で規定された範囲内の報労金を請求することができます。私は財布を拾ってもらった人に、どれだけの謝礼、報労金を渡そうかと思いながら警察署に向かったのですが、警察官からこのようにいわれました。

 「今回、拾得者は報労金の権利をすべて辞退されています。また、お礼の品や電話なども一切不要とのことですので、連絡先も告げないでもらいたいとのことです。そのため、あなたには拾得者の情報をお教えすることができません

 私はこの話を聞いて、何だか複雑な心境になりました。

■拾得者に想いを馳せる

 それは、報労金を渡さずに済んだなどということではなく、お礼をいう機会がなかったことです。勿論、それは拾得者の方のお考えやご都合もあってのことだと思いますし、何より何一つ紛失することなく財布が戻ってきていることに感謝すべきだと思っています。しかし、何だか肩すかしを食らったというか、心にぽっかり穴が空いてしまったというか、そのような気持ちになりました。

 今となっては、その人に感謝の意を述べることも、頭を下げることもできません。しかし、その人の行動は私に何かを訴えかけているような感じがしました。そこで、私は報労金にあたる金額を慈善団体に寄付することにしました。

 善意を返すということは感謝することも勿論そうですが、善意を受けた相手が自分なりに考え、何か行動を移すことなのではないか、そんなことを考えました。

 私も財布を拾ってくれた人のように、本当の善意を与えられるような人間になりたいです。

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