好きになれないメタバース

業界動向

» 2022/08/31

　今月にいろいろな意味も含めて話題になったものにはメタバースがあります。技術系の仕事をしている以上は、こういったビジネスワードでしかないものであっても自分なりに調べて考えを持つ必要があるのですが、今回のこれら単語では今までにないほどビジネス界隈でしか盛り上がりを見せていません。

　私個人としての解釈・意見となりますが、メタバースは技術的に目を見張る点は何もなく、単純にビジネスの世界で活用できていなかった要素を活用する、もしくは他よりも先にビジネス要素として取り込んでしまい後続を断つ、といった狙いがあるように思えています。そのくらいには、技術的要素に目新しいものはありません。特にメタバースは、突然現れていろいろな要素を勝手に自分たちの領域のものだと組み込む発言をしているようにしか見えず、やっていることはゲームの世界の数年前を追いかけている程度です。単純に言えば、技術もないし魅力もない、どこかの会社がビジネスになることを目論んでいるだけのものでしょう。

　この業界で仕事をしていると、時折このような現象に合うことは珍しくありません。もともと同じような技術を改善し、新しい技術であるかのように扱うこともこれまでの歴史上多々行われてきました。エンドユーザーコンピューティングが市民開発者によるローコード・ノーコード開発に切り替わったように、過去に行ったがそのときには時期尚早だった点を改善して新しく登場させたりします。これはこの業界だから、ということでもなくどの界隈でも似たようなものです。

　そのスパイラルな出来事を非難するつもりはありません。完全な使いまわしというわけではなく、部分的にでも新しく手を加えたうえでの再登場です。これ自体は非常に健全とまでは言えなくとも、問題のある行為とは思えません。ですが最初に出てきたメタバースはそうではありません。3D技術や VR による仮想世界、そういった一般的に知名度もある技術を集め、さも新しいもののように宣伝しているのです。

　私は技術者側なので詳しくありませんが、ビジネス的な界隈ではよくあることなのかもしれません。もしかすると、その行為のどこが問題なのかと考えているのかも知れません。界隈だけで閉じた話であるならば、そこまで気にする必要もないのでしょうが、広く一般に根付かせようとしているのが非常に質の悪いことなのだと考えています。

　なお、近い位置にいる NFT は同じように良いイメージを持つものではありませんが、まだ独自のことを行おうとしているだけマシな点があります。私の中ではマシなだけで、NFT が行おうとしていることには非常に反対ですが。今の仕組み上、どうしても偽物にシリアルナンバーを割り当てて販売できてしまう以上、NFT は検討するラインには立ちません。ですが、その仕組みを考えたことについては、独自要素もあり否定するところではありません。

　ここまで全くいいところを書いていないことから伝わると思いますが、私は心底メタバースには魅力を感じないですし、新しい要素を見つけられませんし、未来を見ることができません、この考えが正しいか誤っているかは別として、個人としてそうとしか感じられないのです。ここを覆すような発展を見せてくれればよいのですが、恐らくはなにも新しいものはでてこないまま時間が過ぎていくでしょう。

　このようなビジネス界隈だけで世の中に定着させていこうとする動きは、少々危険な空気を感じてしまいます。技術的視点から見て、怪しいと思ったことはもっと声を大きくして伝えていくのが必要かもしれません。