閉ざされていく生成AIの未来
AI が登場して一気にブームになったこともあり、あまり周囲の整備が行われないまま今に至ってしまい、各所で問題が出ている状況になっているのは多くの人が知るところとなりました。メディアや SNS などでの話を見ていると、技術者側の意見と利用者側の意見とでかなり食い違いというか、いつになってもかみ合わない会話を続けているようにも思えています。どちらも間違ったことは言っていないのですが、お互いに基礎となる立ち位置が異なるために会話がかみ合わないのですが、この状況はまだしばらく続くのではないでしょうか。
技術者の視点では、AI による学習は著作権に影響されないものという意見がほとんどです。実際、パブリックな場所にあるものを学習することは、それだけであれば現状でも問題とは言い切れません。対して、利用者側の視点では著作権者の意思を別にしてモデルに取り込むこと自体も問題ですが、その結果としてクリエイターの成果を簡単に食い物にしてしまっていることが一番の問題にあります。そのため、悪意を持ったなりすましによる被害や意図せずして著作権に該当する成果物を生成してしまうことも発生しており、これは現時点では止める術がありません。
技術者としては、AI を利用する人のモラルの問題としてしまいがちですが、これまでの多くの技術を振り返ると、技術として問題がなくとも利用者によって大問題に発展してしまうことを数多く見てきています。その結果として、世の中から消え去ってしまったものもゼロではありません。言い換えると、技術者がどう思っていようと、世の中に認められなかったものは排除されてしまう運命になります。
この状況を見て、また日本がガラパゴスなことをやっている、と考える人も多いですが、今回の場合は世界的に同じような動きになっており、日本固有の話題とは言い切れません。世界的にクリエイター側が現状のままでは AI に NO を突きつけているのです。この状況を解決するには、AI が生成するものを確実に判定できるようにするか、生成するものを表に出してはいけない流れにするくらいしか思いつきません。そしてそれは、AI のもつ能力をかなり殺してしまう必要があるのです。技術者としては、それは避けたい未来です。
いまの自分たちがその未来を回避するためには、技術者側も利用する人のことを考えた行動をする必要があります。AI の学習は~、とかそういうレイヤーの話は別にして、自分たちの首を絞めるような使い方をしているケースを見かけたら忠告なり通報なりしていくようにするのが良いのではないでしょうか。現状では、クリエイター側から見て技術者は味方ではなく敵側に近いイメージを抱かれていますが、ここを解決していくような関係にならなければ、生成 AI には悪いイメージが付きまとっていくことになると思われます。
現状の一因には、技術者側の無関心さが関係しています。モラルの問題だからと、我関せずを貫いていたからここまでこじれた状況を作り出していることは、あながち間違った見方ではありません。このままではよくない未来になる可能性が高い以上は、技術者側も意識して行動するようにしていくことが、将来的に幸せな方向へ迎えるのだと思います。
恐らくは、自分たちは関係がないと思っているところにこそ、影響を与える要因が眠っていることも十分にあり得るのではないでしょうか。その考え方が変わらないと、技術者と利用者の間にある壁はなくならないのだと思います。それを望んでいる人はいないはずです。そうならないためにも、少しずつでも色々な考え方をしたうえで行動していきたいものです。
コメント
匿名
>技術者の視点では、AI による学習は著作権に影響されないものという意見がほとんどです。
私も技術者の端くれですがこれについては微妙です。
『著作権』は法律の分野であるので、技術者としてはそれを尊重する、というのが自分の見解です。
ここで書かれている学習というのは、おそらくアプローチの話をされていて、それが人間と同じように学習元データを(人間なら脳内で)取得解析し、それをもとに自身を更新して結果出力するというそのプロセスは同じじゃないか?ということを書かれていると推察いたします。
しかしそれは『学習は著作権に影響されない』とは別問題かと。著作権はあくまで法律であるので、学習のアプローチが影響されるかどうかは法律の定めるべきところにあるので、学習プロセスをどう判断されるべきかは、我々技術者が技術的観点をもってそれをすべきものではないと考えます。
匿名
世が世ならクリエイターと技術者で殺し合いになってたと思うのよね。この案件。
現代で本当良かったよね。帯刀してる時代だったらとっくに流血沙汰で血で血を洗う戦争だよ
オジロジカ
技術者側からの提言ありがとうございます。
海外も含めて、問題を解決した生成AIであっても開発するなという主張は一部ですので、技術者側からも問題提訴や自浄作用をお願いしたく思います。
ただ一つ誤解を解いておきたいのですが
「パブリックな場所にあるものを学習することは、それだけであれば現状でも問題とは言い切れません」
とおっしゃておりますが、現状問題になっているデータセットの権利騒動は技術者の方々にも分かりやすく言うならば、ライセンスの無視が一番近いです。
人が見て記憶して楽しむ事とは違い、人類が培った社会的契約の中に肖像や著作物を機械に記録して好きに再出力に利用して良いなどの概念はありはせんので、許可を仰ぎ契約することが公平な開発だと考えます。
また法律の視点でも、著作権法30~4においては「思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において」及び「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」との適応される範囲を限定しており、生成AIでの利用に適応されると判断するのは早計に過ぎるかと愚考いたします。