地震で見えた“電力”問題、エンジニアは本気で考えるべき
東日本巨大地震で被災された方々にはお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
地震発生後、エンジニアライフには続々とコラムが寄せられている。いくつかのテーマに分けて、コラムを紹介しよう。
- いま、自分ができることを考え、実行する
- ITエンジニアと電力
- 今回の震災で浮かび上がった問題と、解決策の提案
いま、自分ができることを考え、実行する
◇被災しなかった人のミッション
「災害で苦しむ人たちがいる中で、自分は何をすべきなのか」――この問いに対して、『It’s Party Time!』のあずK氏は「いまやっている仕事をしっかりこなして、社会に貢献する」という答えを出している。
仕事を投げ捨てて現地へ向かい、ボランティアをしようとする勇気は素晴らしいが、実際には足手まといになることが多い。ならば、いま自分がしっかり働き、募金や節電などを通して支援すればいい。それが「被災しなかった人のミッションだ」と、あずK氏は語る。
また、メンタルヘルスへの関心が高いあずK氏は、メンタル面についていくつかの注意点をまとめている。
- テレビやインターネットでの情報収集は必要だが、収集しすぎない
- 誰かと話す
- 笑えること、楽しいことを見たりやったりする
- 医者やカウンセラーを訪れる
なお、メンタル的な注意点について専門家の知見を知りたい場合は、「災害後に知っておきたいメンタルケアまとめ」 を参照してほしい。
◇「また会いましょう」という約束で、人を励ます
『恋愛感情で仕事はできるか?』の森姫氏は、震災について何もできない無力感を克服する方法として、「必ずまた会いましょう」と約束することを提案している
「人と会う約束をする」――これは明日への活力を人に与えるのに簡単で有効な方法だと森姫氏は語る。約束を果たすために、人は一生懸命生きようとする。そして、無事に約束が果たせたら、笑顔で迎え入れる。このサイクルを繰り返すことによって、人を助け、励ませるのではないだろうか。
◇北海道で、サテライトオフィスを無償貸与中
『SEによる会社リファクタリング』を執筆するエスプランニング代表取締役のふくにし氏は、自社のオフィスを「サテライトオフィス」として、被災したIT企業に無償貸与する試みを行っている。概要は、下記のとおり。
- 提供するもの:作業用デスク、椅子、電源、インターネット環境、ノートPCの無償貸与
- 場所:エスプランニング開発室(北海道 札幌市)
- 期間:半年程度
- 方法:遠隔である程度の仕事ができるIT企業1~2社(罹災証明が取れること、北海道まで来られることが条件)
詳細は、コラム「再び立ち上がるために(サテライトオフィスの無償提供)」を参照してほしい。
ITエンジニアとして、考えなければならない「電力」
◇「われわれエンジニアは、電気がなければ仕事ができない」
今回の震災で、大きな問題となったのが「電力供給」だ。電力の需要に供給が追いつかない状況は、これからしばらく続く見込みである。
ここで、エンジニアは「電力」について考えなければならない。そう主張するのは、『ソフトウェア開発に幸せな未来はあるのか』を執筆する、プロジェクトマネージャのにゃん太郎氏だ。
「コンピュータは、電気がないとただの箱である」という言葉が示唆するように、エンジニアの仕事は電気があって初めて成立する。
「発電方法について、エンジニアは真剣に考える必要がある」――にゃん太郎氏はこう主張する。これから、原発に関する意見はさらに出てくるだろう。原子力発電は行わず、計画停電などを常態化しインフラも最小限に縮小するのか、原子力発電を安全性を高めながら推進するのか、エンジニアはこの問題について、もっと真剣に考える必要があると、にゃん太郎氏は問題提起している。
◇生活スタイルを根幹から変える「境界線」に立っている
『プログラマで、生きている』のひでみ氏は、いまの私たちは境界線の上に立っていて、これからの日本をどうしていくか選択を迫られているように思える、と語る。
「東京電力の管轄地域は、長期間にわたっての電力不足との戦いに突入した」――ひでみ氏はニュースを見ていてこう感じたそうだ。おそらく、この感覚は外れていない。電力を湯水のごとく使う環境ではなくなったのは確かだ。
「数年後は、もしかしたら以前とまったく同じどおりに戻っているかもしれない。しかしその未来を想像できない」と、ひでみ氏は述懐する。また、ひでみ氏はこうも問い掛ける。新しい道を模索する人のために、エンジニアは何ができるだろうか?
今回の震災で浮かび上がった問題と、解決策の提案
◇災害のエンターテインメント化を憂う
津波に飲まれる町や、家族を探して嘆く人々……今回の震災では、衝撃的な場面が繰り返し、報道された。確かに情報を知ることは必要だ。だが、被害を受けた人にTwitterやFacebookで話し掛けて「そっちはどう?」と聞くことまで必要だろうか。
『海外でも通用するエンジニアになる』の鹿島和郎氏は、被害を直接受けていない人が被害を受けた人とコミュニケーションして、あたかも自分も参加しているような気になる状況を「災害のエンターテインメント化」と呼び、警鐘を鳴らしている。
鹿島氏は、ほとんど話をしたこともないFacebook上の知り合いから突然Web上で「日本は大丈夫?」と話し掛けられた時、「困惑し、次第に怒りを覚えた」と語る。鹿島氏は、直接被害を受けなかった人々は、「自らがエンターテインメントに参加しないよう意識しなければならない」と、忠告している。
◇「不謹慎」ではなく、「ユーモア」を!
Twitterやインターネット、会話の中で「不謹慎」という言葉があちこちで見られた。『It’s Party Time!』のあずK氏は「笑うことを不謹慎だという風潮はよくない」と、問題提起する。
何が不謹慎で、何が不謹慎でないのか。明確な判断基準がない分、問題は複雑だ。全体的な雰囲気を気にして、あちらこちらで催し物の中止や自粛などが相次いでいる。
だが、こういう時だからこそ、楽しむことが必要なのでは、とあずK氏は語る。近所を散歩する、おいしいものを食べる、ギャグを言う、お笑いを見て笑うことは、人間に必要な活力を与えてくれる。
「不謹慎と言い合う風潮はなくなってほしい、風潮に負けないでくだらないことを言うべきだと思う」というのが、あずK氏の主張である。
◇生活スタイルを見直して、バックアップ体制を作る
『Crazy for life(セイカツ イチバン、IT ニバン)』のonoT氏は、「今回の震災ではバックアップ不足が目立った」と指摘する。特に、生活に直結する食料やインフラについて、人々はあまり意識してこなかったために、特に問題が浮き彫りになった。
そこでonoT氏は、「生活のバックアップ体制」を紹介している。
- 電気:太陽光発電を取り入れる、夜はアロマキャンドルなどを使う
- ガス:点火用のガスライターを確保
- 水:携帯用のろ過装置、浄水器を確保しておく
- 通信:災害時に役立つアプリをスマートフォンに入れる。バッテリを確保するためにソーラー充電器を持ち歩く
- 宿泊:職場に寝袋を常備しておく(デスマーチ時にも有効)
◇「優しくなければ、サバイバルじゃない」――こんなときのサバイバル術
普段からサバイバル用具を持ち歩くという『101回死んだエンジニア』のAnubis氏が、こんな時に必要なサバイバルのTipsを公開している。
重要なのは、下記の3点である。
- 自分にとって必要なものを把握しておく
- 非常用具は、普段からきちんと使いこなしておく
- 道具は、しっかりしたものを選ぶ
自分にとって必要な量を把握しておけば、無駄な買い占めを行うことはなくなる。また、非常用具だけ買い込んで、いざという時に役に立たない……ということを防ぐためにも、普段から道具は使いこなしておきたい、とAnubis氏はアドバイスする。
だが、最も重要なのは「優しさを忘れない」ことだ。非常時には、1人であたふたするより、他の人と協力して立ち向かうのが望ましい。Anubis氏が引用した言葉を紹介しよう。
戦場では、焦った奴から死んでいく。そして社会では、優しさを忘れた奴から取り残されていく。
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