追悼 野中郁次郎先生
2025年1月25日、一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生訃報の記事を見つけました。
野中先生は、失敗の研究者、知識経営の生みの親で、SECIモデルの開発者、アジャイル型開発のフレームワーク「Scrum」の提唱者です。当然、面識があるわけではありませんが、30年近く前の仕事でナレッジシステムの開発というテーマがあり、それをきっかけに野中先生の著書で随分と勉強させていただきました。また、身近な話で言うと仕事柄システム開発、ソフトウェア開発が主としてあるので、どうしてもその開発方法論が大きなテーマとなります。我々は自社開発を始めた当初からW/Fではなくアジャイルを採用していますが、それはこの時の勉強がきっかけになっています。野中先生の著書でアジャイルを知ったということではなく、著書でナレッジを勉強していたからこそ、アジャイルという概念に触れたときにW/Fに比べて腹落ち感があったので採用の判断をした、ということです。ただ、BtoBという仕事形態の中にアジャイルを持ち込んで最初からうまくいったわけではなく、試行錯誤のなかで最近になってようやく自社にあうアジャイル開発のフレームワークができつつある、といった感じでしょうか。
ただ、W/Fやプロマネ至上主義こそが正義という風潮が蔓延している周辺環境のなかで、アジャイルで上手くいかなかった案件もいくつかあるのですが、アジャイルで上手くいかないからやはりW/Fという思考には陥らず、アジャイルという概念を踏まえたうえで方法論の模索に注力できたのは、ナレッジというベースとなる考え方があったからに他なりません。
奇しくも2021年に出版されたPMBOKガイドの第7版では、これまでプロセス・ベースから原理・原則ベースの内容に変更されアジャイル型プロジェクトも取り扱えるようになりました。個人的には「アジャイル型プロジェクトも取り扱えるようになった」というよりかは「アジャイル型プロジェクトの考え方になり、手続き型プロジェクト(W/F)を包含した」という方が正しいのではないか、と思っています。実のところまだ目を通していないので言い過ぎかもしれませんが。時代はVUCAと言われて久しくなります。今後、野中先生が研究された「知識」が、より実践ベースで重要になってくるのではないか、そんなことを感じております。
謹んでの野中郁次郎先生のご冥福をお祈りします。