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合理性のある文章とは

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「自県が緊急事態宣言の対象となりました。これに伴い、出張時のPCR検査
 は原則不要とします」

これは、先日届いた指示文書の抜粋です。

すこし説明が必要です。実はこの前に、以下の指示がでていました。

「緊急事態宣言の対象となっている場所に出張する際は、戻り次第PCR検査
 を受け、陰性が確認されるまで自宅待機」

この時は自県が緊急事態宣言の対象となっいてなかったから、こういう指示
になったのでしょう。指示の出し方についてはいろいろ言いたいことありま
すが、それは置いといて、今回は文章の書き方について気になることを書い
てみようと思います。

今回の指示文書の言いたいことは「出張時のPCR検査は不要となった」とい
うことです。それを「これに伴い」という順接の接続語を介して前に「自県
が緊急事態宣言の対象となった」と理由を書いています。ところが「緊急事
態宣言の対象となった」というネガティブな文に「検査を不要とする」とい
うポジティブな文を何の説明もなくつないでいるので、読み手は軽くパニッ
クを起こしてしまいます。「緊急事態宣言の対象となったので、検査を必須
とします」もしくは「緊急事態宣言が解除されたので検査を不要とします」
と文が続くほうが素直です。

ではなぜ、このようなちぐはぐな文になったのでしょうか。
それは書き手が意図的か無意識かはわかりませんが、本来ならば直接的な理
由を書かなければならない場所に間接的な理由、きっかけやタイミングを書
いているからだと思われます。宣言の対象となることは、検査不要とするこ
との直接的な理由になりえません。仮に前回の指示文章で緊急事態宣言下の
場所に出張する際は検査必須だが、自県が緊急事態宣言対象となれば検査不
要、というルールが示されていたのであれば今回の文書は正当性を持ちます
が、そういうルールは示されていませんし、それは指示文書ではなく条件を
満たしたことをお知らせする連絡文書になるでしょう。

ここで重要なことは、なぜネガティブな文とポジティブな文を順接でつなぐ
と読み手はパニックをおこすか、ということです。それはその文章に合理性
が欠如しているからと考えられます。合理性とは道理にかなっている事。ま
た科学的であること。言い換えると、多くの人がわざわざ説明しなくても同
じ答えにたどりつく将来予測性だと思います。例えば「池に落ちた。だから
風邪をひいた」というのは合理性のある文です。池に落ちることは冷たく濡
れることで、風邪はそういう状況下でひきやすい、ということは誰でも想像
がつくことです。一方で、「池に落ちた。そしたら火傷をした」という文で
はそこに合理性はないので読み手はパニックになります。おそらく池に落ち
ただけで火傷をすることはないので、池に落ちた後に焚火にあたるなどして、
その火が爆ぜたなど、必要な情報が抜け落ちているのでしょう。

一方で文書はコミュニケーションのツールでもあります。そのため、皆が常
識的に知っていることをわざわざ改めて文章にすることはあまりありません。
どちらかというとこれまで共通認識でないことを、今後の共通認識として周
知するために使われます。ということは何も考えずに文を作成すると合理性
のない文になる可能性が高い、ということです。
逆に一度書いた文を読み直してみて、そこに合理性が欠けていることに気づ
けば、本来書かなければならないことが抜けているという気付きにもなりま
す。そこを直すことができるようになれば、ひとつ精度の高い文章を書ける
スキルが身についた、ということになるのではないでしょうか。

そんなことを考えてみました。

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