チート(cheat)の罪
チート(cheat)とは「イカサマ」や「不正行為」を意味し、コンピュータゲーム界隈ではバグやハッキング行為を使って、自分に有利な状況をつくりだし公平性を毀損する行為をいいます。
英語圏では、浮気やカンニングで使われ、最近はやりのラノベや漫画の異世界転生ものなのどもチートと表現されているみたいです。
チートのニュアンスには、そこに罪の意識があるわけではなく、逆に提供された仕組みのバグを見つけた自慢と満足感の方が強く、そこで得られたメリットはその報酬である、というような意識も含まれているのではないでしょうか。
話しはそれますが、コンビニでレギュラーサイズのコーヒーを購入したのに、ラージサイズのコーヒーを注ぐことを常習的に行って逮捕された人の記事を読んだことがあります。軽い気持ちでやったが、職場を懲戒処分で解雇され、ネットで実名をさらされて受けたペナルティは軽くはなかったようです。抜粋ですが、本人曰く。
「買ったもの以外は注げないような仕組みにしたり、そもそも店員さんが注いでくれるような形であれば、間違いは起きない。コンビニや経営者には、犯罪者を出さないような努力をしてもらえないかと思っている」
コンビニもバカではありありません。人手不足の昨今、店員の手間を増やさずセルフでコーヒーを提供すれば、買ったもの以外のものを持ち出す人がでてくる可能性は十分に認識していたはずです。そして、そのようなことを阻止する仕組みを今の技術でつくることも十分可能です。しかし、その様な仕組みを導入してしまうと、100円前後でコーヒーを提供するサービスは実現できません。だからコンビニは客を信用したのです。
もし治安の悪い国で、客の殆どがインチキをするのであれば、そもそもこんなサービスは成り立たちません。日本のコンビニ来る客は、そんなインチキをする人はいないと信用しているから、このようなサービスを提供でき、客もその信用に応えているから今でもこのサービスは成り立っています。ごく少数の人間を除いて。
信用が成り立っているサービスのコストは低くなりますが、信用が成り立たないとコストは膨大になります。チートで得たメリットは、その何倍ものをコストを誰かが引き受けないといけない。だから、畑の横で売られている空き缶一つの無人販売所の野菜は安いし、信用のおけない国に備える防衛費は膨大です。
そういった意味でチートの罪は意外と大きい。自分へのメリット(エゴ)のために、信用を壊していくから。チートが増えた世界は、無茶苦茶コスト高になってしまいます。
そんなことを考えていたら、東京都知事選に立候補者が56人も出たというニュースが流れて来ました。最初はさすがは東京、地方とは違うな、などとのんきに思っていたのですが、実はユーチューバが宣伝のために立候補している、という話を聞いて驚きました。供託金300万円以上に稼げるのだとか。また、どこかの政党は20人以上立候補させ、その分で確保した選挙ポスター掲示板を一般の広告媒体としてつかっているとという話も驚きました。さすがは東京、地方とは違います。
どんな口実をつけようとも、公職選挙法のバグに付け込んだチート行為には変わりありません。チートの行きつく先は、ハッピーな世界にはならないでしょう。なによりチートな人たちが思いのほか多くいた、というのが都知事選の大きな驚きでした。