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働き方改革、なんぞや?

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先日、自社で開発したERPのインタビューを受けていた際、記者さんから質問に
「働き方改革でお客様は増えてますか?」という質問を受けました。関心が高い
ので『働き方改革』に関連するとアピール度があがるのでしょう。同じように、
お客様を紹介してくれそうな会計士さんに商品パンフレットを見ていただいたと
ころ、「嘘でもいいから、表に『働き方改革』と文言を入れたらウケが違うのに」
と言われたこともあります。
当然、業務の効率化はシステム導入の目的の一つなので、働き方改革に無関係で
はありませんし、働き方改革をめざしてシステムを導入する、というお客様もい
らっしゃいますが、システム自体は『働きか方改革』という言葉がでてくるより
かなり前から開発を始めていますので、働き方改革を目的としたシステムとは、
なかなか言い切れないところがあります。実際のところ、働き方改革の名のもと
で労基が厳しくなり、ERPのなか勤務管理の管理機能強化の案件が増えていると
いうのが実態で、正直にそのことを記者さんに伝えると、「ちょっと働き方改革
とは違う気が...」という感想でした。

話は変わりますが別のお客様で、RPAやAIなどのベンダーを集めての提案コンペ
がありました。提案コンペというよりかは勉強会に近く、社長さんが、事務職の
メンバーを集めて、最新ツールを見せながら自分たちの業務を効率化、自動化す
ることを考えさせる、というイベントでした。業務の効率化は間違いないと思う
のですが、中には派遣社員のメンバーも参加しており、彼らは自分がやっている
仕事がコンピュータにとって代わるかもしれない、というイベントへどのような
気持ちで参加しているのか少し気になってしまいました。確かこのイベントも大
儀名分は働き方改革。

最近、会社から「働き方改革の中で、有休の5日以上の消化が義務化され、罰則
規定ができましたので、まだとっていない人は休むように」という通達がありま
した。現場からすると、仕事と体制のバランスがわるく、どうしても業務が集中
してしまうメンバーが有休を消化しきれていない、という実態があります。
そういう問題には対策を講じずに、ただ罰則規定ができたので有休を消化するよ
うにと指示するだけは、果たして働き方改革や否や?

厚労省のHPには、「働き方改革」の目指すもの、として以下の様に記載がありま
す。

***以下、引用

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、
働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大
や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、
多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展
望を持てるようにすることを目指しています。

***

しかし、実態は「働き方改革」というよりは「働くな改革」になってしまっている
ように思えてなりません。もしくは「人件費削減改革」。残業する奴が悪い、有休
とらない奴が悪い。付加価値の低い仕事はコンピュータに。しかし、残業が多く休
めない人間はハイパフォーマで仕事が集中するからであり、付加価値の低い仕事を
コンピュータにさせても生産性の向上には何も寄与しないという事が忘れ去らてい
ます。

首相官邸のHPには、働き方改革の実現、として以下の様に記載があります。

***以下、引用

働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可
能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配
の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

***

どこにも「働かない社会」を目指すと書かれていません。実現したいのは「成長と
分配の好循環」です。
ハイパフォーマな人間にノルマ達成のため無理やり有休をとらせることが成長では
ありません。ハイパフォーマな人間が残業をせず、有休も消化してもなお、組織と
して今以上のパフォーマンスを出すことができる仕組みを作る。これが成長であり、
時間外手当をもらわなくても、給与水準が今以上のものになること、これが分配の
好循環だと思います。
例えば、「付加価値の低い仕事をコンピュータにやらせて、できた余力で全員が付
加価値の高い仕事を行う」よく聞く、経営者の言葉ですが、これも気を付けなけれ
ばなりません。ここでいう、全員が付加価値の高い仕事をする、全員の中にコンピ
ュータにとってかわられる仕事をしていた個人は含まれてはいないのですから。付
加価値の低い仕事をしていた人が、余力ができたからと言って付加価値の高い仕事
ができるかは別問題です。コンピュータにとってかわられて仕事がなくなる、それ
が現実ではないでしょうか。
経営者は付加価値が高いだとか低いだとか、抽象的な言葉だけではなく、コンピュ
ータなどのツールと、今、会社が持っている人的リソース(能力、員数)を背景に
よりパフォーマンスを発揮できるビジョンを具体的に提示し、社員一人一人はコン
ピュータにとってかわられない能力を高めてゆく。そこまでして初めて真の働き方
改革が実現できるのではないでしょうか。

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