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第623回 仕事理解を考える

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 前回のコラムでは過去(第1~3回)のコラムを振り返りながら、今の私の視点でキャリコンを捉えてみました。今回はその続きでキャリコンにおける仕事理解を今の私の視点で書いてみます。

■キャリアガイダンスの6分野とシステマティックアプローチの違い

 前回のコラムで書き忘れたことだったんですが、自己理解や仕事理解という言葉はキャリアガイダンスの6分野の言葉であることはお話ししました。そのため、キャリアガイダンスの6分野とはキャリコンの進め方の方法を表しているのですが、一方でこのコラムでもよく出てくるシステマティックアプローチというキャリコンの進め方もあります。実際の国家資格や技能士の実技試験ではこちらのシステマティックアプローチをベースに問題が作られています。そのため、これらの資格に合格するためにはシステマティックアプローチを習熟する必要があります。

 しかし、なぜ厚労省のキャリコンサイトではキャリアガイダンスの6分野が紹介され、国家試験ではシステマティックアプローチが用いられているのでしょうね? 実はこのことついて語られているサイトや情報はあまりみかけないような気がします。

 これは私なりの見解ですが、それぞれ用途が違うからです。私は以下のように捉えています。

キャリアガイダンスの6分野...「仕事=キャリア」と見たてた場合のキャリアづくりの方法(職業選択理論に基づいている)
システマティックアプローチ...何かしらの問題を抱えており、その問題があることでキャリアが描けていない場合に、問題を解決することでキャリアづくりをする方法(行動理論に基づいている)

 キャリアガイダンスの6分野は「仕事=キャリア」と捉えているため、自己理解と仕事理解があり、それらをマッチングすることでその人にとって最適な「仕事=キャリア」を見出そうとする考え方です。一方で、システマティックアプローチは何かしらの問題を抱えている前提に立ち、その問題を解決することでキャリアづくりが行えるという考えに立っています。これらのことから以下のようなことが分かります。

キャリアガイダンスの6分野...ワークキャリア(仕事をキャリアと見立てる考え方)専用のやり方でライフキャリアには適応できない。その人が抱えている問題は自己理解、仕事理解、それらのマッチングという点に限定される
システマティックアプローチ...ワークキャリア、ライフキャリア問わず適用させることができるが、そもそも問題を抱えていない人に対しては適応できない

 こうしたことを理解し、相手によってキャリコンのスタイルを変えることがキャリアコンサルタントには求められることだと考えます。

■仕事理解を紐解く

 さて、今回の本題である仕事理解ですが、こちらは厚労省のキャリコンのページでは以下のように記されています。

  • 労働市場、企業等に関する情報提供
  • 職務に求められる能力、キャリアルートなどの理解

 こうしたことから仕事理解とは相談者が仕事の情報を得ることを目的としています。こうしたことから、キャリコンは相談者が求める仕事に関する知識を提供する必要があるのですが、ここで1つの問題が発生します。それは、

相談者に提供する仕事の情報をキャリコンが知っていなければならない

です。実際にはこれは正しい表現ではなくキャリコンの思い込み(バイアス)なのですが、こうした考え方があるが故に、特にIT業界のキャリコンをされようとする方は難しく考える傾向があります。実際、IT業界のことを全く知らない人がIT業界を希望する相談者にキャリコンをするのはハードルが高いと思ってしまいますよね。。。

 しかし、繰り返しますが、これはキャリコンの思い込み(バイアス)です。私からすれば別にITエンジニアのキャリコンをするキャリアコンサルタントがITエンジニアに熟知している必要はないと思っています。でも、それじゃ仕事理解はどうするんだ? って話になりますよね。。。

 ここで重要なことは、誰が仕事理解をするのか、という点です。別にキャリコンが仕事理解をする訳ではないですよね。仕事理解をしなければならないのは相談者です。だとすれば、キャリコンは相談者が仕事理解を深められるように支援することが本来やるべきことです。それはつまり、

相談者が求めている情報がどこにあるかを知っておくこと

です。これが本来あるべき仕事理解に対するキャリコンの支援です。相談者が欲しているITエンジニアの情報を社内の特定の人が知っているのであればその人に話を繋げば良いですし、過去のキャリコンの結果から参考になる情報があれば匿名性を確保した上で情報提供すれば良いですよね。要するに、キャリアコンサルタントは仕事の知識を知っておくことが本質なのではなく、その情報の在処を知っておくことが仕事理解の本質なのです。

■過去のコラムを読み返してみて

 今回の仕事理解に関係するコラムは「第4回 あなたが望む仕事とは?」です。今回、改めて読み直してみると、前回同様自分の経験値が多分に入っているなぁと感じます。特に、

■あなたの周りにある仕事の範囲

【1】あなたが知っている仕事の範囲
【2】あなたは知らないが、会社や組織のほかの人が知っている仕事の範囲
【3】あなたを含め、会社や組織の誰も知らない仕事の範囲

のように仕事の範囲をカテゴリ分けし、それぞれどのようにしてその情報を入手すれば良いのか、という視点で書かれています。この時点ではまだ仕事理解について今ほど深く考えられていなかったので、普段自分が行っている仕事理解の方法をご紹介していました。

 今回、改めて読み返してみると軸となる自分の考え方は変わっていないものの、その考え方はまだまだ浅かったなぁと感じてしまいます。それは当然のことなのかもしれませんが、逆の言い方をするならば、この12年という期間で自分の学びが少しは深まったと言えるのかもしれません。

 そして、12年後の自分がこのコラムを見た時に「やっぱりまだまだ浅かったなぁ」と言えるよう、これからも研鑽を積んでいきたいと思います。

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