第4回 あなたが望む仕事とは?
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
前回はキャリア発見の流れの最初の段階である「自己理解」についてお話ししましたね。
今回は、その続きである「仕事理解」について考えてみましょう。今回の話は前回の内容を引き継いでいますので、忘れちゃった方は前回のコラムにダッシュです! あなたの帰りを待っていますので、じっくり読み直してくださいね。
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準備はいいですか? それでは、始めましょう!
仕事理解、つまり仕事を知るってことですが、これもどう考えたらいいんでしょうね? どう思いますか?
「うーん、今回の題名から考えると、自分がやりたいと思っている仕事を知ることじゃないの?」
しまった! 題名でバレちゃいましたか!? ……というより、普通に考えばそうなりますよね。でも、この言葉だけだとちょっと言葉足らずなんです。というのも、「自分のやりたい仕事を知る」と言っても、あなたのやりたい仕事がすぐに見つかればいいんですが、見つからなかった場合どうしますか?
「うーん…………、詰んだわw」
とかなっちゃいますよね。そうなんです、在職者※1にとって仕事を探す範囲は、これまでその人が経験してきた会社や組織の中に限定されることが多いので、なかなか自分のやりたい仕事が見つけられなかったりするのです。
※1:ここでは在職者の話をしていますが、求職者や学生の方の場合、もう少し枠を広げて、「この職業はどんな仕事をするのだろう?」という捉え方をする場合もあります。すでに過去の事業仕分けによって廃止されてしまいましたが、キャリアマトリックスというサイトでは約500種類以上の仕事の概要を調べることができました。また、前回ご紹介したキャリアガイダンス・システム(CACGs:Computer Assisted Careers Guidance System)でも情報を得ることができます。ちなみに、閉鎖されたキャリアマトリックスに変わるサイトとして、以下のような素晴らしいサイトがあります。よかったら参考にしてみてください。
仕事・職業図鑑 ○○になるには?
年収ナビ
13歳のハローワーク 公式サイト
あしたね
あしたをつかめ
ここからはあなたのやりたい仕事を考えてみましょう。あなたのやりたい仕事を探すためには、あなたの想いを実現する仕事が何かを知らなければなりません。
例えば、ここに鈴木さんというITエンジニアに登場してもらいましょう。鈴木さんはネットワークエンジニアとして5年間働いています。そして、自己理解によって人に喜んでもらうことが自分の生きがいであることが分かりました。そんな鈴木さんに、人に喜んでもらう仕事とは何かをじっくりイメージしてもらいました。しばらく考えた後、鈴木さんはこんな答えを出しました。
「企業の経営課題を解決し、社長に喜んでもらう」
鈴木さん、素晴らしいです! これこそが鈴木さんにとっての「やりたい仕事」です。しかし、こんな壮大(?)なことを言ってしまうと、
「でも、この仕事って、鈴木さんの仕事と関係ないじゃないの?」
とか言われそうですね。でも、別にいいんですっ! この段階で出てきた仕事が、今の仕事とかけ離れていても構いません。ここでのポイントは、その人の想いを実現する仕事が何かを知ることにありますので、その実現可能性については考えなくても大丈夫です。
ちなみに、この段階では同じ想いを持っていたとしても、人によって答えが変わることがあります。先の鈴木さんは企業の経営課題を解決することを仕事に見立てましたが、人によっては違う答えが出てくるでしょう。仕事というのは、1人1人捉え方が違います。どんな答えが出たとしても、あなた自身が出した答えに自信を持ちましょう。
ここで大事なことは、あなたがその仕事を行うことで、あなたの想いが満たされるかどうかにあります。もし、あなたがその仕事をイメージしてみて、
「うーん、何だかちょっと違うなぁ……」
と思われた場合、それはあなたの望む仕事ではないかもしれません。その時は、あなたが納得のいくまで仕事をイメージし直してみてください。
「……とはいうものの、なかなかイメージできないんだよねぇ……」
という方もいるでしょう。分かります、分かりますよ。これは、ほかの仕事を知らないことに原因がありそうですね。そこで、あなたにもっと仕事を知ってもらうために、あなたの周りにある仕事の範囲をこんなふうに分けてみました。
■あなたの周りにある仕事の範囲
【1】あなたが知っている仕事の範囲
【2】あなたは知らないが、会社や組織のほかの人が知っている仕事の範囲
【3】あなたを含め、会社や組織の誰も知らない仕事の範囲
もし、あなたの想いを実現する仕事が【1】の中にある場合、あなたは誰の助けも得ずに自分のやりたい仕事を探すことができるはずです。
もし、あなたの想いを実現する仕事が【2】の中にあるとした場合、あなた1人でその仕事を探し出すことはできません。その場合は何かしらの手助けが必要です。例えば、あなたの上司や同僚に相談するのも、1つの方法です。そのときは、自己理解で見つけたあなたの想いをストレートにぶつけてみて、自分に適した仕事がないかを聞いてみてください。もし、そこで何かしらの反応があれば、それをしっかり捕まえてください。
しかし、もし上司や同僚の方から有効な情報が得られなかった場合や【3】の場合は、どうしたらよいでしょうか? この場合、いくつかの方法がありますが、ここでは簡単な方法を1つ紹介します。
それは、ITエンジニアの職種全体から仕事を探す方法です。ITエンジニアの職種全体とは? そんなモノあるの?
実はあるんですよ! コレが! もったいぶらずに種明かしすると、「共通キャリア・スキルフレームワーク※2」と呼ばれるものです。
これは、経済産業省がまとめた「日本が目指すべき高度IT人材像に即したキャリアと求められるスキルを示したもの」です。つまり、国が「ITエンジニアには、こういうキャリアやスキルが必要なんだよ!」とまとめたものなんです。詳しくは、この資料の1ページ目に書かれているので見てください。
「あれ? この資料って情報処理技術者試験じゃないの!?」
そうなんです、この資料は情報処理技術者試験の試験要項です。実は情報処理技術者試験というのは、共通キャリア・スキルフレームワークに基づいたIT人材像を国が認定するための試験なんです。しかし、ここで重要なことは試験そのものではなく、各試験に紐づく人物像です。この実施要項から読み取れることとして、国はITエンジニアを、
レベル4(高度区分)
・ITストラテジスト
・システムアーキテト
・プロジェクトマネージャ
・ネットワークスペシャリスト
・データベーススペシャリスト
・エンベデットシステムスペシャリスト
・情報セキュリティスペシャリスト
・ITサービスマネージャ
・システム監査
レベル3
・応用情報処理技術者
レベル2
・基本情報処理技術者
レベル1
・ITパスポート
の4レベル12区分に分類し、このいずれかの区分に当てはまるだろうと定義したのです。そう、これを読まれているITエンジニア(ITエンジニア候補)のあなたもいずれかに当てはまるわけです。
この資料の2ページ以降に「2.試験の対象者像」がありますが、ここにそれぞれの区分で要求される人物像や仕事内容が定義されています。はい、ここに注目です! ここからあなたの想いを実現する仕事がないかをイメージしてください。もし、この実施要項だとイメージしづらい場合、実際の試験問題を併せて見るとよいでしょう。特に、レベル4の「高度区分」と呼ばれる試験の午後I、もしくは午後IIの試験を見てもらうと、よりその職種をイメージしやすくなると思います。
※2:共通キャリア・スキルフレームワークについては、ここだけでは語れないほど内容が深かったりします。もし、興味のある方はこちらも参考にしてみてくださいね。
さて、ここまで、あなたのやりたい仕事を知ることについてお話ししてきました。そのうえで、1つ理解しておいて欲しいことがあります。それは、
仕事はあなたの想いを具体化するための手段である
ということです。
あなたは、あなたの想いを実現するために仕事をするのであって、その仕事に就くことが自体が目的ではないことを理解しておいてください。(これが曖昧になっていると、キャリア形成がうまくいかない場合があります)
それでは、また次回お会いしま……あれ? 何か忘れてますね……。
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あっ、田中さんに登場してもらうのを忘れていました! 前回、田中さんには自己理解まで進めてもらっていましたので、田中さんにもやりたい仕事も考えてもらおうと思っていたのですが、登場してもらうのを忘れていました……。気を取り直して……。田中さんは自己理解で以下のように考えていました。
(自己理解)
「私は小さいころからモノづくりが好きだった。学生の頃、コツコツ組み立てたプログラムが動くときの感動をいまでも覚えている。だから、私はITエンジニアとしての道を選んだんだ。ITエンジニアとしてシステム構築に携わり、自分たちの手で作り上げたシステムが稼働することに大きな喜びを感じていたんだ。それが私の仕事としての原点だった。その想いは、いまでも持っている」
これを受けて田中さんは仕事理解ではこのように考えました。
(仕事理解)
「ITエンジニアとしてモノづくりを続けていきたい。しかし、大きなシステム構築より、自分1人の力で何とかなるレベルの方がより実感が湧くと思う。だから、思い切ってAndroidアプリの開発を仕事にできたらいいなぁと思う。
Androidアプリを作ってスマートフォンを使う人の利便性を向上できたら最高じゃないか!」
■あなたが望む仕事とは?
自己理解で得られたあなたの想いを具体化するための手段
もし、仕事がイメージできない場合、ITエンジニアであれば、ITエンジニアの職種全体を示す共通キャリア・スキルフレームワークをベースに考えてみるのも1つの方法。なお、仕事はあなたの想いを実現するための手段であり、その仕事に就くことがあなたの目的ではないことに注意する。
それでは、また次回お会いしましょう!