第3回 自分の何を知る?
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
キャリアのお話も3回目になりました。
前回はキャリア発見の流れをお話ししました。忘れたという方はをもう一度読み直してください。ちなみに、トップページからご覧いただいている方は、マウスホイールを力の限り下向きにぐりぐり回してください。きっと、前回の記事が出てきます♪(回しすぎに注意)
さて、前回のコラムは、こんなことを書いていました。
■キャリア発見の流れ
- その人自身をもっとよく知る!(自己理解)
- その人の身の回りにある仕事・業務をもっとよく知る!(仕事理解)
- その人と仕事・業務を合致させる!(意思決定)
話が長くなりましたので、今回はここまでです。次回はこの続きで、キャリア発見についての1つ1つの段階についてもう少し詳しく見ていきましょう。
ということで、今回は「自己理解」を考えてみましょう。
そもそも、「自己理解」ってなんでしょうね? 文字どおり、自己を理解する、つまり自分を知るということなんですが、一体自分の何を知ればいいのでしょうか?
「私には人に言えない趣味があって、それをもっともっと深く知りたいんです……ごにょごにょ……」
いや……それ、ちょっと違ってます……。アブない方向に進みそうなので軌道修正しましょう。
キャリア・コンサルティングにおいて「自己理解」を行うのは、その人の職業適性を知るという目的があります。これは、学生の方や求職者の方が自分の適性を知った上で仕事を探そうと適性テスト※1をしたり、キャリア・コンサルタントが直接対面式の面談を行い、その人の適性を確認するようなことが当てはまります。これらは主に就職や転職に対するキャリア・コンサルティング※2として行われます。
※1:こういった適正テストは、キャリアガイダンス・システム(CACGs:Computer Assisted Careers Guidance System)と呼ばれるモノで行うことができます。CACGsの代表的なモノにキャリア・インサイト(仕事経験がない、もしくは少ない方用)、キャリア・インサイトMC(ミッド・キャリア:中高年向け用)呼ばれるものがありますが、これらは公的な職業相談機関、ハローワークなどに設置されていますので、ご興味のある方はぜひ触ってみてください。
※2:世間一般で言われているキャリア・コンサルティングはこちらのイメージが強いように思います。転職サイトなどで企業と求職者の懸け橋になる人を人材コンサルタントと呼ばず、キャリア・コンサルタントと呼ぶこともあります。ちなみに筆者はこの領域の専門ではないので、あまり深く突っ込まないでください……。
しかし、このコラムを読まれている方に、
「さぁ、あなたを知るために職業適性テストをやってみましょう!」
と言われても、
「私はすでにITエンジニアとして仕事してるんですよ。それを今さら職業適性テストしても仕方ないじゃないですか!」
とお叱りを受けそうです。ええ、ごもっともです。ITエンジニアとして仕事をされている方が仕事の適性について考えてしまうと、どうしても「いまさら感」が前面に出てしまい、自分を知るということには繋がりにくい感じがしてきますね。ですので、ここではすでにITエンジニアとして仕事をしている在職者の方に限定した自己理解について考えてみます。
それでは、前回、前々回のコラムでご紹介し続けている田中さんに3度登場してもらいましょう! 田中さん、大人気ですね!
田中さんは、ご自身のキャリアについてこんな考えを持っていました。
「ITエンジニアっていったって、もともと社内の出世ルートがあるじゃん。このまま普通に働けば、主任、係長、課長、部長……って昇進していけるだろうし、それに乗っかることがキャリアなんじゃないの? 」
「社内の出世ルートに沿って管理職で仕事をするより、定年まで第一線に立って現場でモノづくりをしたい! 」
もし、田中さんが自己理解をするならば、田中さんは自分の何を知らなければならないのでしょうか? それは……、
自分が何のために仕事をしているのか?
なのです。ここは重要な所なので、もう少し深くお話しします。
サラリーマンの場合、事業主に対して労働力を奉仕する代わりにお金という対価を得る行為を、仕事と呼びます。多くの方は、そのお金を基に生計を立てています。
この大前提を踏まえた上で考えて欲しいのですが、あなたは一体何のために仕事をしているのか、あなたの心の奥にある想いに問いかけて欲しいのです。
その答えは人によって大きく違います。しかし、筆者が実際にキャリア・コンサルティングをした際によく出てきたキーワードとしては……、
- 相手に喜んでもらいたい
- ありがとうと言ってもらいたい
- 自分に頼ってもらいたい
- 注目されたい
- 充実感を味わいたい
- 挑戦し続けたい
こんな言葉が多く出てきました。筆者は、これこそがその人を知るということだと考えます。
思い出してみてください、あなたが学生から社会人になった当時のことを。
- 社会人になった時、ワクワクとした気持ちにならなかったでしたか?
- 何か立志(志を立てること)を持ちませんでしたか?
- 純粋に、誰かの、何かの役に立ちたいと思いませんでしたか?
この気持ちこそが、その人の仕事における行動の源となっています。この気持ちがあるからこそ、その人は仕事に向き合おうとします。しかし、長く仕事を続けていれば、その人の気持ちや想いを後回しにしなければならないことが出てきます。それが積もり積もると、そのうち最初の想いなんて忘れてしまいます。そうなると、物事の判断基準は、その時点での利害や損得で考えてしまいがちになってしまいます。それは一見正解のように見えますが、時としてその人自身の想いからかけ離れてしまうことにもなりかねません。
だからこそ、今一度あなたが何のために仕事をしているのか、あなた自身の想いを知って欲しいのです。そして、その想いこそがあなたのキャリアの土台(ベース)となります。その土台があるからこそ、ここから考えるキャリアが、あなただけのキャリアになるのです。
ちなみに、考えに考え抜いて、
「やはり、それでも私は仕事はお金のためにやっている」
と答える方もいらっしゃいます。これは、仕事以外にライフワーク的な生きがいを持たれている方に多いのですが、この結論が出たとしても、それもその人の真摯な想いです。素晴らしい立派な考えです。この答えを大事にしてください。この答えを土台(ベース)にキャリアを考えていきましょう。
そんな訳で、田中さんもじっくり自分と向き合いました。そうして、田中さんはこう考えました。
「私は小さい頃からモノづくりが好きだった。学生の頃、コツコツ組み立てたプログラムが動く時の感動を今でも覚えている。だから、私はITエンジニアとしての道を選んだんだ。ITエンジニアとしてシステム構築に携わり、自分たちの手で作り上げたシステムが稼働することに大きな喜びを感じていたんだ。それが私の仕事としての原点だった。その想いは今でも持っている」
■自分の何を知る?
自分が何のために仕事をしているのか?あなた自身の心の奥にある想いを知ること
ちょっと最後はアツくなってしまいました……。しかし、自分を知るということがおざなりになったままだと、次の段階である職業理解、意思決定もうまくいきませんので、ちょっと声を大にして(文章を多くして)話をさせてもらいました。まずはじっくりご自身を向き合い、あなた自身を知ってくださいね。
それでは、また次回お会いしましょう!