第624回 意思決定を考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
過去のキャリコンコラムを振り返るのも今回で3回目になりました。前回までは自己理解、仕事理解と振り返りましたので、今回は意思決定について過去のコラムを振り返りながら今の私の視点で書いてみました。
■意思決定とは
前回同様、意思決定を厚労省のキャリコンページで確認してみると、以下のように書かれていました。
- キャリア・プラン(職業生活設計)の作成
- 中長期的目標及び短期的目標の設定
- 能力開発・教育訓練等に関する情報提供
要するに自己理解と仕事理解で知り得た情報をマッチングさせ、その人にとって最適な仕事を見つけ出し、そこに行き着くための具体的な方法を考えるということですね。
■過去のコラムを紐解くと...
この意思決定については結構回数を割いて説明しています。
第5回 あなただけのキャリアを設計する(1)
第6回 あなただけのキャリアを設計する(2)
第7回 あなただけのキャリアを設計する(3)
ここでは「意思決定の3フェイズ」という私なりの意思決定の考え方を紹介しています。
■意思決定の3フェイズ
第1フェイズ:目指すキャリアを考える
第2フェイズ:目指すキャリアに必要な能力・スキルを考える
第3フェイズ:目指すキャリアに就く方法を考える
今読み返してみると、よくここまで書いたなぁと思いますが、ここまで深く書いたのは確か理由が2つありました。
1つは当時の私が実際のキャリコンでこの意思決定に苦労しており、それを何かしらの形に残したかったという側面です。実際のキャリコンで意思決定まで進み、目指すべきキャリア(=仕事)を見出すことができたとしても、その仕事に就けないことが結構ありました。それはITエンジニアという職業の特徴でもあるのですが、ITエンジニアの職業は多岐に渡る一方、その仕事は案件(プロジェクト単位)に就くことが多くなるため、地場の市場やタイミングによってはその仕事に就けないことも結構あったのです。そうしたことから、自分なりにどうやって仕事に就くことができるかを模索していた時期だったと思います。その結果の一部がこのコラムで表現されているなぁと感じました。
もう1つの理由は私の1冊目の商業出版本である「ひとりでできる!ITエンジニアのキャリアデザイン術」の原稿ネタという側面です。この本が技術評論社さんから出版されたのはこのコラムを書いた約2年後なので、コラム執筆段階ではまだ商業出版の話はなかったのですが、この頃には自分なりのキャリコンを商業出版の形で残したいという想いを強く持っていました。そのため、先んじてコラムで原稿ネタを書こうと思っていた時期でもありました。結果、この本が出版されることになった際、この意思決定の部分も含め、結構な量をコラムから引用しています。
■意思決定を紐解く
そして、今読み返してみると意思決定における重要なポイントが一つ自分の中で生まれていたことに気づきました。それは、先ほどの話とも関連するのですが、
意思決定で自分の目指す仕事がなかった場合どうするのか?
に対する自分なりの答えです。先ほども書いたようにITエンジニアの職種は多様化されているので、目指すべき仕事に就けないことがあります。その場合、よくやってしまっていたこととして「その仕事(案件)が出てくるまで待ち続ける」ことが当時はよくありました。ひょっとしたらこれは今のキャリコンにおいてもそうなのかもしれませんが、これってキャリア形成とは言えないと私は思っています。
なぜなら、仕事(案件)がないから仕事(案件)が出てくるまでその仕事(案件)を待ち続けるというのは、単に結論を先送りしているだけのように思えるからです。言い換えるならば、いつ出てくる変わらない仕事(案件)を待ち続けるということですが、流石にこんな運が絡む要素が強いとキャリア形成とは言えないと思うんです。
それでは、どう考えれば良いか? 実はこの答えは2回前の自己理解を振り返るコラムで少し書いています。その部分を引用します。
キャリアはその人の経歴でもあります。その経歴を「生い立ち」「価値観」「適性」から辿っていくことでその人が本当に大事にしていること、つまりその人の人生における大切な想いを明らかにしていくことができます。この想いを知ることこそが本質的な自己理解であり、これがキャリアガイダンスの6分野において重要な意味を持つことになります。(この辺の話は次回のコラムで書きます)
実際には次回ではなく次々回でしたが、この部分を解説します。
例えば意思決定で目指すキャリアの職種が決まり、その仕事(案件)を探そうとします。しかし、生憎その仕事(案件)がなかったとします。そうした場合、私たちがよくやってしまうこととして別の仕事(案件)を探そうとします。一見、当たり前のように見える行動ですが、このやり方には大きな問題を孕んでいます。それは、仕事(案件)があれば就けるし、なければ就けないという点です。言い換えるならば、仕事(案件)のありなしが運の要素になってしまうのです。
それを解決するためにはキャリアを職種で考えるのではなく、自己理解の想いから考える必要があります。想いというのはその人が実現したいことであり、その想いを具体的にしたモノが仕事(キャリア)なのです。だから、仕事(案件)が見つからないのであれば、再度想いに立ち返り、自分の想いを実現する別の仕事がないかを考えます。こうすることで1つの職種ではなく複数の職種に対してキャリア形成できることになり、実現の可能性を高めることができます。
特にITエンジニアのような職種がたくさんある業界ではこのように職種よりも想いでキャリアを考えた方が実現可能性が高まります。
■過去のコラムを振り返ってみて
これまで3回に渡り、初期のコラムを振り返ってみました。ここまでやってきた感想ですが、やっぱり私はキャリコンなんだなぁと思いました。12年前に書いたコラムの内容は今でも覚えていますし、その考え方もアップデートはしているものの本質的な部分は変わってきません。それは、私のキャリコンは実践の中で何度も試行錯誤を繰り返し、自分なりの考えで理論や技法を構築してきたからです。その積み重ねが今に至っているのだと確認しました。
現在は厚労省が認定するキャリコン講座もいくつか実施させてもらっています。当然、講座を開く場合には厚労省の審査を受けています。そうした審査を通過しているということは私の理論や技法は厚労省に認められていることの証であり、それは自分がやってきたことの正しさの証明にも繋がっているのではないかと思います。
現在の私はキャリコンからほぼ身を引いておりスーパービジョン中心になっていますが、その根っこは変わらずキャリコンであり、それはこれからも変わらないと思います。ですので、これからもキャリコンとして日々研鑽を続け、キャリコンの発展に少しでも寄与できる情報の発信を続けていきたいと思っています。