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第499回 対話のススメ6 -「考え方」の技術(2)気づきへのアプローチ

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こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 「対話のススメ」シリーズも今回で最終回になります。今回も前回に引き続き対話の最後の要素である「考え方」に関連する技術のお話です。前回は問題解決へのアプローチのお話をしましたが、今回は気づきへのアプローチを取り上げます。

■気づきへのアプローチ

 前回のお話で対話技法(ダイアログ・メソッド)における「考え方」の技術とは対話を行っていく上で必要となる考え方のことを指しているとお伝えしました。今回ご紹介する気づきへのアプローチは前回の問題解決へのアプローチと関連性があり、問題の本質に辿り着いた後、その問題の本質を相手に対し、気づきという形で合意形成を図ろうとしていますが、そのためのアプローチ法です。

 なぜこのようなことをするのか? それは相談者自身が気づきによって問題の本質を得ることが何より納得感が得られるからです。例えば、相談者の問題の本質が周囲とのコミュニケーション不足だっとします。これをそのまま

「周囲とのコミュニケーションが不足が問題の本質だと考えましたが、いかがですか?」

のように伝えてしまうと人によっては納得できず、なぜ?という疑問が湧いてくるかもしれません。それに対し、言葉を補うことような説明を重ねてしまうと、もはやそれは説得でしかなく相談者を無理やり説き伏せてしまうようになります。

 そのため、対話技法(ダイアログ・メソッド)では問題の本質など重要な内容については相談者自身の気づきをもって理解することを狙います。そのためにはイメージを促すことを行います。イメージの促し方には2通りの方法があります。

■気づきへのアプローチ(イメージの促し方)

  • 人の視点を変える
  • 時間の視点を変える

 人の視点を変えるというのは、物の見方、捉え方を自分ではない他の人にすることで違った考えを促す方法です。例えば、先ほどの相談者の問題の本質が周囲とのコミュニケーション不足だったことを取り上げてみます。この時、相談者に周囲の人になり切ってもらい、周囲の人から相談者自身を捉えてもらうようにします。そうした時に、

  • 相談者をどのように捉えているか?
  • 相談者にどのような感情を抱いているか?
  • 相談者に望むことは何か?

など、周囲の人になり切って相談者自身を見つめ直してもらいます。こうすることで、相談者にない新たな視点を与えることを狙います。

 時間の視点を変えるというのは、今ある状況を過去や未来に時間を移動させることで、その事象がどのように変化するか、その考えを促す方法です。例えば、今目の前にある事象に対し、

  • そのまま時間が過ぎ、3カ月後にはどのような状況になっているか?(結果)
  • 時間を遡り、今から3カ月前にはどのような状況になっていたか?(原因)

のように時間軸を動かすことで過去(原因)、未来(結果)を思い描いてもらいます。そうすることで、相談者にない新たな視点を与えることを狙います。

 この気づきへのアプローチで使うイメージの促し方にはコツがあります。それはできる限りリアルな情景を思い浮かべることです。

「では、〇〇さんをイメージしてみてください」ようなやり方ではなく、人の視点を変える時は視点を変える対象になり切り、その人の置かれている状況、自分との関係性をなどを事細かに心情面からリアルにイメージしてもらいます。そのイメージがリアルであればあるほど、気づきは具体的になり、深くなっていきます。これは時間の視点を変える場合も同様です。


 今回は「考え方」の技術から気づきへのアプローチについてお話ししました。もしかしたら気づかれた方もおられるかと思いますが、この気づきへのアプローチは「伝える」技術の質問の「イメージを促す」と繋がっています。そのため、気づきへのアプローチは質問との関連性が高くなります。

 また、気づきへのアプローチは問題の本質を共有する以外に様々な使い方が考えられます。ちょっとした気づきを促すために人や時間の視点を変えることを意識したオープンクエスチョンをすることで、相手にイメージを促すことができるようになります。


 さて、今回で対話技法(ダイアログ・メソッド)のご紹介は一通り終了です。私たちの生活や仕事において対話が求められるシーンは非常にたくさんあります。しかしながら、普段私たちはあまり対話ということに意識を向けていません。それは、別に意識を向けなくても対話ができるからです。

 しかし、対話に目を向け、そのレベルを向上させることで私たちの生活や仕事のレベルが変わってきます。

 対話とは意識しなくても使える反面、意識して使うことでとても大きな効果が得られる、そんなツールなのではないでしょうか。

 対話力を向上させることは人生そのものを向上させることに繋がってくる、私はそのように感じています。興味のある方は是非チャレンジしてみてくださいね!

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