第275回 貢献の競争について考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
ここの所、いろんな方とお会い機会が多くなっています。先日もLPI-Japanさんと商談させていただく場があったのですが、そこで「貢献の競争」というお話を聴かせていただきました。今回はそのことについて思うことを書きたいと思います。
■貢献の競争とは
LPI-Japanさんは日本におけるLinuxの普及とITプロフェッショナルの育成のために設立された団体で、ITエンジニアにはおなじみのLPICやOSS-DBといったオープンソースソフトウェアに関する試験などを提供されています。そのときは理事長さんとお話しをさせていただいたのですが、とても興味深いお話を聴かせていただきました。
ご存知の方も多いと思いますが、Linuxはオープンソースで開発が進められています。その開発には多くの企業や個人がボランティアとして参加されています。そもそも、なぜ多くの企業や個人が一銭の金にもならないオープンソースの開発に参加をしているのか、それは「貢献の競争」に勝つためなのだそうです。
例えば、オープンソースの一つにAndroidというOS(ミドルウェア)があります。AndroidはLinuxベースで開発が進められているオープンソースで、OHA(Open Handset Alliance)というAndroidを開発するために組織された団体によって開発が進められています。そこにはソフトウェア開発会社、携帯電話事業者、半導体会社、端末メーカーなど世界的企業が名を連ねています。これらの企業はAndroidに搭載するOSの開発を無償で開発しています。なぜそういったことをしているのか? その理由は自社のプログラムがOSに採用されると、Androidと自社の製品との親和性を高めることができるからなのだそうです。以前、日本のある大手家電メーカーの方がGoogle本社のAndroid開発を見学されたことがあったそうですが、そこにはサムスンの方が大勢開発に携われていたのをみて、日本製Android端末がグローバルレベルに普及しない理由を悟ったそうです。
サムスンはAndroid端末でGalaxyというブランドを販売していますが、サムスンがAndroidの開発に携わり貢献の競争に勝つことで、サムスンは自社のAndroid端末(Galaxy)とAndroidの親和性を高めることができるようになります。いい換えるならば「Galaxyが一番AndroidというOSを効果的に動かすことができる」ということなります。
つまり、オープンソースの開発に参加している企業はAndroidの開発は無償で行うものの、貢献の競争に勝つことでAndroid端末のシェアを拡大させることを狙っているのだそうです。そして、LinuxやPostgreSQLといったオープンソースもこのような貢献の競争によって発展しているのだそうです。
■個人における貢献の競争
そして、この貢献の競争は企業だけでなく個人にも波及しています。貢献の競争に勝つとそのプログラムはオープンソースとして採用されますが、その際、開発者の名前がOSにクレジットされます。それは一個人がオープンソースの開発に参加したともいえる訳で、その開発者の価値やブランドイメージを大きく高めることに繋がり、社内の待遇や転職といった本人のキャリア形成に活かすことができるようもなってきます。これも、個人における貢献の競争といえます。
■貢献の競争とキャリアづくりの可能性
ただ、日本ではまだまだオープンソースの開発に携わる企業が少ないのだそうです。しかし、今後は大小を問わず多くの日本企業がオープンソースに対して積極的に関わりを持ってくるようになるのではないかと思います。そうなってくると、企業や個人に対して様々な変革をもたらすのではないかと思います。
特に個人がオープンソースの開発に携わることで価値やブランドイメージを高め、そこから望むキャリアを実現させるようなキャリアパスも現実のモノとなっていくのではないかと思います。そして、このような技術力をアウトプットにしたキャリアづくりはITエンジニアとってとても有益なことではないかと思います。