地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

通じている「つもり」

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 SEとして仕事をしているとけっこう出合うことがあるのが「ローカル用語」。特にユーザーはユーザーの社内で通用する言葉で話してきますし、わたしたちIT業界側もこの業界でのみ通じる言葉を使って話してしまうことはよくあるのでは、と思います。

 このような場合、聞き手から「それはどのような意味ですか?」と聞いてくれればまだいい方で、ほとんどは華麗にスルーされているのではないでしょうか。そうして後々で問題になりやすい、と。

 わたしはかなりスルーしてしまう割合が高く、後々になって聞きなおすことがいまだになくなりません。分からないことを素直に聞くことができればいいのですが、自分の中の何かが邪魔をしているんですね。恐らくは、変な見栄ですとか、プライドなのだと思うので、いつかばっさりと捨ててしまいたいものだと感じています。

 しかし、人と人とが話をする場面において、もっと怖い場面というのは他にあります。それは「同音異義」な言葉です。

 言葉としては同じだけれども、その意味合いは異なるというのが本来の意味ですが、わたし達の仕事においても、このような言葉は大量に潜んでいます。例えば「請求日」と言われた時にどのような日付をイメージするでしょうか。わたしが思いつくところでは次の様な日付が出てきました。

  • 請求処理を行った日付(初回処理日に限定するケースもあり)
  • 請求書を発行した日付
  • 請求先に入金してもらう日付

 もう少しあったような気がするのですが、今までの仕事で覚えていたのはこの3つでした。……意外に出てこなかったな。

 とまあ、例があまり良くなかった気がしますが、それは置いておくとします。同じ言葉を使っていても意味するところが異なる場合、というのは確実に存在しています。打ち合わせを繰り返している最中に気付ければ良いのですが、よく耳にする言葉ほど気付きにくいのが現実だと思います。これはどうしてなのでしょう?

 原因の1つとしては、「今までの経験」があげられるのではないでしょうか。

 SEと呼ばれる人は頭の中に「システムに対するイメージ」を、程度の大小はあるにせよ、何らかの形で構築していると思います。そして、そこは「経験」を積むにしたがって、より強固に、現実的なイメージとして形作られているのだと思います。経験を積んだ人ほど「頭が固い」と呼ばれる割合が多い背景には、ここも絡んでいるのかな? などと私は勝手に思っています。実際はどうなのでしょう。

 自分の経験から作られたイメージに合わないものは、恐らく認めたがらないはずです。経験とはその人の自信の源でもあるので、その経験からくるイメージと一致しないものを認めるということは、自分の拠り所を認めないという事態に陥りやすいからだと考えます。

 冷静に考えれば、「今まで自分が知っていたことはただの一面でしかない」という事実であり、それまでの「自分は物事を知っている」と思っていた点が誤っていた、と考え至ればいいと思えるのです。経験で得たものも「正」ですし、新しく言われたものも同じく「正」なのです。どちらかのみが「正」だと思うことが間違いなのです。

 わたしは元々、それほど自分の考えに自信を持っている訳ではないので、「世の中知らないことばかり」と常日頃思っています。これはこれであまり褒められたものでもないのですが。自信を持つにしてもほどほどが一番なのでしょうね。

 では、どのように意識すればこの同音異義な言葉に気付くことができるのでしょう。

 残念ながらわたしの中では明確に「ここだッ!」という回答は持ち合わせていませんが、気になる点というのはあります。

 言葉にはできないけれど何か違和感を感じる……、とか、得体の知れない不安がある……とか。このような「言葉にできない要素」を感じた時こそ、何かしらのサインだと思います。

 見た目では、会話として成り立ってはいますが、その実、互いに伝えようとしたことは違うイメージで伝わっている……。このような打ち合わせを通じて出来上がったシステムというのは、大体にして不幸な結末が待ち構えています。打ち合わせの時点ですでに相違があるのですから、そこから先においてはもっと食い違う点はあることでしょう。そして、上手く通じ合わないのでますます傷は深くなる。

 ……書いていてイヤになるイメージですが、まぁこれは極端な例として思ってください。

 ちなみに、この違和感というのは直接打ち合わせをしている時だけに発生するものでもありません。メールで、電話で、ネットで……と、場所を問わず人と人とがコミュニケーションをとっている限りどこででも発生するものだと思っています。

 「何か会話がかみ合わないな」と感じる人、一度自分が使っている言葉の定義を見直してみるといいのではないでしょうか? 結構、自分が使っている言葉と、相手が使っている言葉、同じ発音だけど示すところが違う、というケースは身近に存在していますよ。特にネット上ではかなり多いように見受けられます。

 そこに気付くか気付かないかで、後々の展開は大きく変わります。結果として、ただ打ち合わせの回数だけを重ねていた、などと思われることのないよう注意していきたいものです。互いに「つもり」で終わりたくはないですからね。

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