失わないための努力
福岡空港は、ターミナルビルの南北に出発口があり、約300mほど離れている。
先日、始発便に乗るため北口に向かったところ出発口前は大行列。行列の端が
背を向けて並んでいたので、折り曲げて並んでいるのかと思ったら、なんと南
口に並ぶ行列の最後尾が北口に達していたのだ。当然北口にならぶ行列の最後
尾は南口前。コロナが明け移動客も増えたとはいえ、これは増え過ぎではと思
ったりしたが、理由はそれだけではなく各出発口にある殆どの保安検査場が閉
鎖されてるのだ。なんでもコロナ禍で乗客が激減した際に検査員も減らしたた
め、人数が足りず検査場をあけられないのだそうな。
最近、重工メーカが国産旅客機の開発中止を発表した。YS-11以来となる国産
飛行機の開発。結構期待していたので残念な限りだ。日本は戦後、GHQの航
空禁止令により、飛行機を作ることはおろか大学で航空工学を教えることも禁
止された。この時に飛行機開発をしていた優秀な技術者が自動車に転身し、自
動車産業の成長を支えた、と言われている。その後、規制は緩和されたが一度
失った技術を取り戻すことは難しい。大学で航空工学を教えれる先生にも、実
際に飛行機の開発を経験したした方は、既にいなくなってるのだそうだ。
そのような状況で失われた飛行機開発の技術を取り戻すべく、今回の開発。苦
労は目に見えているが、大成功はせずとも事業としての継続はしてほしかった。
技術を積み重ねるには時間が必要だ。続けられさえすれば、いずれ日の目が見
れる。
本当か嘘かはわからないが、中国が海外の自動車メーカからパーツを取り寄せ
て国内で組み立て、中国製の自動車を作ろうとして失敗した、という話を聞い
たことがある。動くものはできるが、安全性能が基準に満たなかったというの
だ。安全基準というものは積み重ねである。何か起こればそれなりに厳しくな
ってゆくので、ノウハウも積み重ねてゆかないといけない。その技術ノウハウ
をもっていかなかったので、性能が基準に満たないのだ。
先の国産飛行機開発も型式証明書の取得がネックになったと聞く。メーカ以上
に審査を行う国にもそのノウハウがないのだそうな。
震災以後、日本の多くの原発が止まっている。廃炉が決まったものもあるが、
殆どが稼働待ち状態。いずれは動かすことが前提だ。そうなると問題になるの
が運転技術。10年以上も止まっていると、何もしなければ運転技術は失われて
ゆくはずだ。そのため電力会社は、共同で訓練を続けている。
技術やノウハウを失うことは意外と簡単だ。しかし技術やノウハウを蓄積する
ことは時間と労力が必要になる。そして一度失った技術やノウハウを復活させ
ることは、一からの蓄積に近い労力が必要だ。
ようやくコロナ禍が明けようとしている。コロナ禍は多くの変革をもたらした。
それがようやく4年前の状態に戻ろうとした際、知らずに失ったものの弊害が
出てくるのではないか。それを心配している。