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なんのための工数管理ぞ?

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仕事柄、ERPや管理会計を看板に掲げていることもあるためか、ちょく
ちょく工数管理の問合せを受けることがあります。

曰く。事務職の効率化をしたいので、工数管理のツールを探している。
曰く。会社が管理会計の導入を検討しており、全社員に作業内容×案件
の時間をとって提出するように言われた。集約、集計が大変なのでよい
ツールはないか。

工数管理のツール自体は大したことはありません。いろいろな件名に対
して入力された工数を集計するだけです。

しかしこの手の話が出るたびに、必ず「入力の手間」という現場からの
反発がついてきます。基本的に時間単位でやる作業が決まっているよう
な職種ではわざわざ個人単位で工数を取る必要はないわけで、個人裁量
でタスクをこなすような職種でこそ、誰がどの作業にどれくらいの時間
をかけているかを(エライ人たちは)知りたい欲求にかられみたいです。

しかしここに盲点があります。仕事ができる人は多くの作業をかかえ、
分単位でこなしていいきます。それをいちいち記録・報告するとなると
かなりの手間が増えるのでやりたくありません。一方で仕事ができない
人は抱える作業は少ないので記録の手間はありませんが、仕事ができな
い事がばれたくないので正しい記録・報告をしたがりません。

そう。よしんば強制的に工数を記録させても、正しいデータは集まらな
いのです。社員の不満を募らせ、役にたたないデータの記録に時間を使
わせる。工数管理が一番の無駄、などという本末転倒な状況が起きてし
まいます。

工数管理を売っている手前、工数管理そのものを否定するつもりはあり
ません。ドラッカーも時間管理の重要性を説いていますし、我々も担ぐ
ERPのRには「人」「物」「金」そして「時間」を定義しています。
では何故、工数管理が壮大な時間の無駄になってしまうのかというと、
それはやはり、ツールではなく導入する側の未熟なマネジメント力が問
題。なんのためにやるか?という目的周知の不足、目標設定の曖昧さに
あると思います。

何のために時間を記録するか。時間を記録することで何を見つけたいか。
その見つけたものに対して(例えば)どう対処しようとしているか。結
果、何を実現しようとしているか。このストーリがないために、記録す
る側の納得感、腹落ちが醸成されず結果、適当に実施され何も生まない。
そんな状況がおきていると思われます。

思い付きで実施される未熟なマネジメントの、なんと罪深いことか。

あまり工数管理が無駄とばかり書いていると商売に影響するので、ここ
でらで少し、成功し事例も紹介しておきます。

①案件の作業が現場での作業以外にも前作業、後作業として机上作業を
 が発生している。案件単位で前作業、机上作業の工数をとって精度の
 高い標準工数を算定し、見積に反映させた
②客先都合で待ちが発生している。その待ち時間の工数をとって、客先
 との価格交渉に使った
③現場から現場への移動時間が発生する。それら工数を記録し、最適な
 営業所、事業所の場所を決めた
等々。

これら成功事例に共通してみられる特徴は、やはり目的がはっきりして
いることではないでしょうか。やりたいことがはっきりしているので記
録者も全作業を細かく記録する必要はありません。また、腹落ちして記
録・報告するので情報精度も高くなります。さらに記録した結果が、問
題解決の対策に活かされています。これは仮説検証の繰り返です。ずっ
と同じことを繰り返すのではなく、ある程度の答えがでたら次のテーマ
に切り替えて検証するのがよいでしょう。要は工数管理はそれ自体が目
的なのではなく、カイゼン活動の手段なのです。

もう一点。工数記録の対象作業の単位は、評価可能な単位に設定するの
がセオリーです。例えば「会議」の工数を取りたいという話はよく聞く
のですが、「会議」にかけた時間を把握できたとしても、その時間が妥
当か無駄だったのかが判断つかなければカイゼンのしようがありません。
評価できないものをいくら記録しても、どうしようもないのです。
どうせやるなら「有益な会議」「無駄な会議」という単位で工数をとる
ほうがまだマシ、ということになります。「無駄な会議」にこんなに時
間をかけているのかとわかれば、会議の開催時にすこしは有益にしょう
という意識が働きだしますから。

最後に工数管理を導入しようとしている方々に一言。

もし従業員に工数管理をさせようと思った際には是非、まずご自身で自
分の時間管理をやってみてください。役員室にこもってネットを見てい
た時間、パターの練習をしていた時間、何も決まらない役員会議の時間。
時間を記録することでそれら自分の時間の無駄に気が付き、カイゼンす
ることができてから、従業員に工数管理を展開しても遅くはありません
よ。

などと余計なことを言ってしまうから、商売にならないのかもしれませ
んが。

Comment(2)

コメント

ニコ

最初から最後まで同意でした…
工数取りたいがために工数取っている人がどれだけ多いことか

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