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茹でカエル

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日経コンピュータの記者の眼の中に、以下の様な記事を見つけた。

IT業界の人月商売、多重下請けがもたらす45の害毒

内容は概ね以下の通りだ。
 ・これまでユーザ企業のIT部門とITベンダーのビジネスモデルと業界構造、すなわち人月売と多重下請け構造の問題を指摘してきたが、何も変わっていない茹でカエル状態

 ・昨今のクラウドの台頭と、IT投資権限がIT部門から事業部門にシフトしている様子をみるとゆで湯の温度は急激に上昇していると思われる

 ・そこで人月商売と多重下請け構造が、どれだけ多くの問題点をはらみ害毒を撒き散らしているかを、45にも分けて一気に指摘する

細かい内容は記事を読んでいただくとして、概ね書かれてあることはその通りだと思う。人月商売と多重下請け構造は確かに多くの問題をはらんでいるのは間違いない。
しかし、この記事の怒りの矛先は何処に向かっているのだろうか。
記事の冒頭に、以下のように書かれているのでITベンダーと業界に向かっての提言なのであろう。

ITベンダーの経営幹部なら随分前から自覚している。それでもITベンダーや業界は何も変わらない。

でも、少し冷静になって考えてもらいたい。

ITベンダーと業界は、人月商売と多重下請けのビジネスモデルで成り立っている世界である。そこにこのビジネスモデルは問題が多いから改善しろと、いくら捲し立てたところで代わりの、しかも今以上のビジネスモデルが見つからない限り、変わりようがない。たくさんの問題があることは知っている。でも、どうしろと?というのが彼らの本音であろう。

もう少し突っ込んだ事をいうなれば、ITベンダーおよびIT業界の全てが、人月商売と多重下請け構造のビジネスモデルではない。
システムやソフトウェアの請負開発を行うSIerを中心とした一部のITベンダーの話である。
ITベンダー・IT業界の中にはパッケージ販売や、SaaSなどのサービス提供、スマホやタブレット向けアプリの提供など様々なビジネスモデルで商売をしている企業や技術者がいる。例えば、ネット上のみで保険のサービスを展開する企業もあるが、広義で解釈するならばこれもIT業界の企業に含まれる。昔はシステムの請負開発企業が主であったIT業界は、その世界を広げ、他業種との境界が曖昧になってきているのだ。

だとすると、やはりこの記事は全てのITベンダーやIT業界に対して提言しているのではなく、人月商売、多重下請け構造をビジネスモデルとしている一部のシステム請負開発業企業に対して怒りの矛先を向けていることになる。

ならば、心配はいらない。

システム請負開発業企業は、人月商売・多重下請け構造こそが自分達のビジネスモデルのため変わることは難しいが、IT業界はそのすそ野を広げており、人月商売・多重下請け構造ではないビジネスモデルで商売をしている企業が多く出てきているし、今後も増えて行く。

もしこの記事がシステム請負開発企業への警鐘を目的とし、彼らを新しいビジネスモデルに切替させたいのであるならば、そのシステム請負開発企業が客先としているユーザ企業への啓蒙に労力を割くべきである。ユーザ企業が新しいビジネスモデルにメリットを見つけられるならば、必ずシステム請負開発業者は変わらざるを得ないのだから。

実際には、カエルたちも、水の温度が上がれば必ず逃げ出すらしい。

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