五月病の五月病による、五月病のための話
そろそろ、五月も終わりに近いですが、
五月病です……
というとにしております。
今回は、心の病気について少し書いてみようと思います。
これまで一緒に仕事をしたメンバーで、病気にかかってしまった人たちが、何人かいます。本当かどうかよく分かりませんが、「この業界は多い」と、よく言われます。
だからというわけではないのですが、もしもメンバーがそのような病気にかかった場合、何に気を付けなければならないか少しまとめておこうと思います。
【症例】
1.Aさんの場合
環境:
- 小規模プログラム開発プロジェクトに参画
- はじめての言語で開発
症状:
- 仕事中は顔色が悪く、つらそうにしている
- 体調が悪いから休む、と連絡が入るようになる
- 本人と話したが、体調がすぐれないだけで大丈夫 とのこと
対処:
- 内科の病院にかかっても具体的にどこか悪いところが見つからないようなので、心療内科を受診するよう提案
- 通院の間は、開発プロジェクトから外して、他のメンバーの手伝いへ
結果:
- 1か月ぐらいですっかり明るさを取り戻し、元気になった
- 何かが吹っ切れた様で、以前より前向きになった
2.Bさんの場合
環境:
- 中規模開発プロジェクトに参画
- 主に仕様のまとめと設計が担当
症状:
- 仕事中は顔色が悪く、つらそうにしている
- 仕事以外の飲み会などでは、とても元気
- アウトプットがまったく出なくなり、納期が近付くと休みがちになる
対処:
- 社外の方だったので、所属会社と相談
- 所属会社から状況を聞いてもらったところ、体調はすぐれないが、土日に出社して後れを取戻すから大丈夫とのこと
- 結局、体調は回復せず、納期オーバーが繰り返されるようになったので、プロジェクトから外れてもらうことになった
結果:
- 最後の日は何かが吹っ切れたようで、ニコニコと元気よくメンバーに挨拶をして所属会社へ戻っていった
- その後も、他のプロジェクトでうまくやっているとのこと
3.Cさんの場合
環境:
- 中規模開発プロジェクトに参画
- 設計作業の手伝いを担当
症状:
- 作業期限の前日に体調が悪いから休む、と連絡があった後、1か月ほど休みが続く
- しばらくすると入院していると連絡あり。休みが長くなっているので診断書を入手するように指示したところ、今週末には退院できるとのこと
- 出社したので話を聞くと、実は入院したわけではなく、電車に乗ると気分が悪くなるので、朝家を出たのち、どこかで時間を潰していたいとのこと
対処:
- 何かストレスになることがあるのかと聞いても、それはないとの返事だが、一度、心療内科を受診することを提案
- 来たり来なかったりが続くが、診療は終わるとのことなので、本人と医者と会社の三者面談を依頼
- 医者としては、電車に乗ると気分が悪くなるということで診療していたが、会社での様子を伝えて協議した結果、鬱の兆候なのでしばらく休職 して治療に専念することに
結果:
- 休職後、半日勤務からステップを踏んで通常勤務に戻してゆくことになったが、次のステップが近付いてくると体調が悪くなることが続き、やがて退職
4.Dさんの場合
環境:
- 中規模開発プロジェクトに参画
- 開発を担当
症状:
- 突然、仕事に来なくなる
- 社外の方だったので所属会社の社長さんに家へ行ってもらうと、荒れた部屋に酒ばかり飲んで引きこもっている様子。妄想に取りつかれたとのこと
- 社長さんは自社に連れて帰り、病院に通わせる
(**以降、後から聞いた話**)
対処:
- 半年間、休職して治療に専念
結果:
- 仕事に復帰するため、同じ会社のメンバーの仕事の手伝いから始めたが、やがて欠勤が多くなり、退職
- 実家に戻っていたが、また自宅に帰ったようで、しばらくすると家族の方から社長へ、本人と連絡が取れないとの連絡が入る
- 警察からも連絡があり、自宅で亡くなられていたことが発覚。また酒浸りで引きこもっていたとのこと
結果オーライの症例から、最悪の症例までさまざまです。これら経験から気を付けなければならないと思われる点を以下に記します。
【気を付けなければならないこと】
1.第三者が気づいてあげる
いきなり来なくなったCさんとDさんの場合は別として、AさんとBさんの場合は、社内でみるみる調子が悪くなってゆきました。
そして以下の様子が共通して見受けられました。これらは日頃から気を付けていると、早い段階で気がつくことができます。
- 仕事中、つらそうにしている
- 原因がはっきりとしない休みが増える
- 期日前や、休み明けに休みがちになる
- アウトプットがでない
- でも、仕事以外(飲み会など)では元気
2.本人に自覚がない
本人が、何がストレスになっているのか自覚がないことが多々あるようです。
A、B、Cさんに仕事内容や人間関係にストレスがあるのか? と聞いても、「ない」と答えます。なにかよくわからないけど体調が悪く、体調が悪いから仕事がはかどらない、という認識のようです。
しかし、はたからみていると、仕事にストレスがあるから体調が悪く なっているようでした。例えばCさんの場合は電車に乗ると調子が悪くるということでしたが、会社に来なければ、もしくは会社に来なくても、仕事上のストレスとなるもの(納期など)がなければ電車にのっても大丈夫なのです。
こうしたことは、1人で通院していても医者には伝わりません。本人は「電車に乗ると調子が悪くなる」としか、症状を伝えないのですから。だから三者面談などで、客観的な状況を医者に伝える必要があると思われます。
3.早めに医者にかかる、環境を変える
早い段階で医者に行くと、治りも早いようです。
Aさんの様にバージョンアップして帰ってくる場合もあります。Bさんは医者には行っていないようですが、プロジェクトから解放されるだけで元気になりました。体調不良でプロジェクトを離れる、とメンバーには説明しているので、もう少し調子悪そうに去っていけば良いのにと思うくらい…。
4.こじれると、復帰が長引く
こじれると復帰が長引くようです。いったん治ったように見えても、仕事を始めると調子が悪くなります。
そもそも原因が仕事にある場合、仕事に携わ らなければ調子は悪くないのです。だから治ったかどうかの判断が難しい。特に中小企業の場合は、環境を変えてあげたくても簡単にはできず、産業医もいない場合が多くあります。
そのような状況で、気長に面倒を見ていくのが良いのか、思い切ってこの仕事に向いていないと引導を渡すのが本人のためなのか、経営者は難しい判断を求められます。
5.1人にさせない
上記1~2の繰り返しになりますが、本人が自身の客観的な判断ができなくなるのが、この病気の特徴のようです。だから、誰かが様子を見ていなければいけません。
Dさんの場合、休職中は所属会社の社長が定期的に連絡して様子を確認していました。でも辞めてしまったら、なかなか連絡ができない。実家に戻ったので大丈夫だと思っていたのに……とその社長は退職願を受理したことをとても残念がっていました。
あくまでも私自身の経験則による私見ですが、「自分で気がつくことが難しい」「早めに病院に行けば、すぐに治る」というのが、この病気の特質だと思えます。この様に言い変えた方が良いかもしれません。「周りが気づいてあげないといけない」「こじれると、最悪のケースになる」。
もし自分の周りに調子の悪そうな人がいた場合に、もしくは自分が調子悪くならないための一助になれば幸いです。