第697回 私たちの教訓を残そう
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私が最近担当させていただく研修は圧倒的にプロマネ系が多くなっています。それだけプロジェクトマネジメントのニーズが高いことの表れでもあると思います。プロジェクトマネジメントには様々な側面があり、それらはプロジェクトだけに留まらず、私たちの普段の生活や仕事においても役立つことがたくさんあります。
プロジェクトマネジメントには教訓という考え方があります。これはプロジェクトの情報を教訓という形でアーカイブしておくことで、未来のプロジェクトに役立てようというモノなのですが、最近この教訓について考えることが増えてきたように思います。そこで今回は教訓について思うことを書きます。
■プロジェクトにおいて教訓を残す意味
プロジェクトが終わった後に「プロジェクトは終わったのだから、そこでおしまい」と振り返りをせず終わらせてしまうプロジェクトは少なくないと思います。そこには様々な理由はあると思いますが、プロジェクトでの成功や失敗の体験、そこから得られた教訓は未来のプロジェクトにおいてとても役立つ情報です。
逆にそのプロジェクトで得られた教訓を残し共有しなければ、ひょっとしたら未来において同じ過ちを繰り返してしまうかもしれません。そうした意味ではプロジェクトマネジメントにおいて教訓を残すことは、反省の記録だけではなく、未来への投資に繋がっているのではないかと私は思います。
■成功も失敗も、すべて教訓という財産
プロジェクトには必ず想定外がつきものです。計画どおりに進まない、コミュニケーションの齟齬が起きる、納期が厳しい...、こうしたことを不確実性と呼びます。
この不確実性について、どのように対処し、どのような結果になったかを言語化することは、未来のプロジェクトを失敗から成功へと導く道標になります。
「こうすればうまくいった」
「こうしたから失敗した」
こうしたことはその時にチームが考え、悩み、そして導き出したとても価値のある答えです。これらは未来のチームに二の轍を踏ませず、正しい道へと導くための地図となります。
■私たちの教訓を残そう
そして、この教訓は何もプロジェクトだけには留まる話ではないと思うのです。
私たち自身も、いつか仕事を離れ、後進に道を譲る時期がやってきます。その時に自分が長い年月をかけて積み重ねてきた知識や経験を、自分の中だけに留めて置いてしまってもいいのでしょうか。
私はそうは思いません。
私が苦労したこと、悩んだこと、苦しんだこと、後進の方々が同じような状況になった時、私と同じような想いをする必要はないと思います。私のつたない経験でもそれが後進の方の役に立つのであれば、喜んで差し出したいと思います。
思うんですが、教訓を残すということは、私自身のキャリアの一部を未来に継承するという意味を持つんじゃないかって思うんです。
教訓は単なる反省メモではありません。それは、これからのプロジェクトを支える上での貴重な遺産です。
チームのために、組織のために、そして未来のプロジェクトの成功のために。私たちが通ってきた道を記録として残すこと。それが、私たちにとっての最後の仕事なのかもしれません。